• 沒有找到結果。

第 2 章 先行研究

2.6 本研究の「じゃないか」用法の分類

これまでまとめてきたように、「じゃないか」の用法は少なくない ことが分かった。しかし、その中、用法の名付けが異なるだけで、

解釈が同じ、あるいは類似するものがある。例えば、張(2004)で 言う「不確定質問文」は、三枝(2004)の「否定疑問用法」とは同 じく、「じゃないか」の典型的な否定疑問文を指している。そこで、

この節では、蓮沼(1995)、三宅(1996)、吉川(2002)、張(2004)、 三枝(2004)で言及する「じゃないか」の全ての用法を表 6 のよう に整理し、本研究の分析基準としたい。

表 6 本研究の「じゃないか」の分析基準

用法 説明

1.

確 認

(1)視覚・現実判断

話し手が発話の現場にある物事やある事実を対 象として判断を下し、聞き手に認識を喚起して 確認する

(2)共有経験 話し手が聞き手に共有する過去の経験の中の要 素を気付かせつつ確認する

(3)一般通念

世間一般の人々が、共通して認められている考 えで、聞き手の認識を喚起したり、確認したり する

(4)仮定状況 想定の上で仮に構築された状況で聞き手に認識 を喚起する

(5)伝聞情報確認

話し手が、聞き手も知っているという見込みか ら、自分と聞き手の認識体験・情報との一致性 を確認する

2.否定疑問 話し手が聞き手に丁寧に疑問の答えを要求する 3.述べ立て 話し手が自分の持つ情報・知識や個人的な価値

判断・意見を聞き手へ伝達する

4.認識形成の要請 話し手が聞き手に認識を迫り、認識形成を要請 し、非難するニュアンスを伴う

5.疑念表出 話し手が聞き手の話す内容について疑念を持 ち、不信感を表明する

6.自己確認 話し手が自身に入手した情報を確認する独話 7.勧誘 話し手が、自分の意向を一方的に聞き手に伝達

する

表 6 は、本研究の「じゃないか」の用法の分析基準である。先行 研究(2.1~2.5)から引用したものもあるが、類似する意味を結合し て新しく生成した用法もあり、筆者の考え方で解釈を変えたり、意 味を添加したりした用法もある。具体的に言えば、「(3)一般通念」

「(4)仮定状況」「(5)伝聞情報確認」「2.否定疑問用法」「4.認識形成 の要請」「5.疑念表出」「6.自己確認」「7.勧誘」「8.決意表明」は引 用したものであるが、説明する用語や内容は筆者の言葉で統一され、

出されたものである。また、蓮沼(1995)の「共通認識の喚起(認 識喚起)」というものを「確認」で称することにした。

「1.確認」の(1)視覚・現実判断は、話し手が発話の現場にある物 事や事実を対象として判断を下し、聞き手に認識を喚起して確認す る用法である。これは蓮沼(1995)の「発話の現場にある対象につ いての視覚的な認知」と張(2004)の「判断表出12」に近い用法で あるが、蓮沼(1995)の視覚によって捉えられる対象に現実、つま り話し手が明確に把握している現象や事実を加えたものである。ま た、張(2004)の「判断表出」にある「聞き手への伝達性を帯びる ことはない」とは違って、聞き手への伝達性が可能であるとした。

(2)共有経験は、蓮沼(1995)で指摘された「話し手・聞き手の共 有する過去の経験の中の要素」に当たり、三枝(2004)の「気付か せ」で述べられた「話し手が聞き手の忘れていること、気付いてい ないこと気付かせる」ことや「話し手、聞き手の目の前にあるもの、

共通の記憶にあるはずのもの、共通に想定できるものが対象のため、

話し手が聞き手に気づかせつつ確認する」という用法としている。

12 話し手が発話の現場にある事実をもとに、判断を下す用法だが、聞き手への伝

三枝(2004)の「話し手、聞き手の目の前にあるもの」を別の用法 とし、以上の解釈を踏まえ、ここでは、話し手が聞き手に共有する 過去の経験の中の要素を気付かせつつ確認する用法とする。

(3)一般通念は、蓮沼(1995)のものを引用したものである。これ は吉川(2002)で述べられた「一般的既知情報」と類似する内容で あるが、蓮沼(1995)の説明がより詳しく、理解しやすいので、本 研究では、蓮沼(1995)の「一般通念」を採用することにした。

(4)仮定状況および(5)伝聞情報確認は、蓮沼(1995)での「仮定 的に構築された(想定した)状況」と「話し手の認識体験の表明・

アピールというものから、聞き手との情報の一致を確認するものに、

機能を転化させていると考えられ、確認の意味は、その情報を聞き 手も知っているという話し手の見込みから派生されているもの」か ら援用したものである。ただし、蓮沼(1995)は、(5)伝聞情報確認 を一項目として設けているが、ここでは、相手に確認する意図を持 っているため、「確認要求」の下位分類に入れたのである。

2.否定疑問は、話し手が聞き手に丁寧に疑問の答えを要求する用 法である。これは、三枝(2004)の「否定疑問」および張(2004)

の「不確定質問文」で言われた「じゃないか」の典型的な用法であ り、否定の意味は持っていない。

3.述べ立ては、話し手が自分の持つ情報・知識や個人的な価値判 断・意見を聞き手へ伝達する用法である。これは、張(2004)で言 われた「話し手の持つ情報を聞き手へ伝達するという特徴を持つ」

である「述べ立て」用法を基に、蓮沼(1995)の「認識生成のアピ ール:話し手の知識獲得の詠嘆的表明で、個人的な評価や意見を聞

の用法は、吉川(2002)で言及された「新しい情報を提供する用法」

と「個人的な価値判断を含む個人情報の場合に使われる用法」も包 括する。

4.認識形成の要請は、蓮沼(1995)から引用したものであり、話 し手が聞き手に認識を迫り、認識形成を要請し、非難するニュアン スを伴う用法である。これは蓮沼(1995)では、「確認用法」の下位 分類とされている。しかし、この用法は相手に事柄を確認する意図 よりも、非難するニュアンスが強いため、「確認用法」から抽出し、

一項目として取り上げることにした。

5.疑念表出と 6.自己確認とも、張(2004)にある用法を援用し、

疑念表出とは、話し手が聞き手の話す内容について疑念を持ち、不 信感を表明する用法であり、自己確認とは、話し手が自身に入手し た情報を確認する独話用法である。

7.勧誘および 8.決意表明は、蓮沼(1995)から引用したものであ り、勧誘とは、話し手が自分の意向を一方的に聞き手に伝達する用 法である。一方、決意表明という用法は、蓮沼(1995)では、詳し く説明されていないため、例文から考察することにより、「話し手が 自己意思を表出する用法」を取り上げた。