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第 3 章 「じゃないか」 の使用状況

3.1 母語話者の「じゃないか」の使用状況

3.1.3 下降調

図 11 のような結果が出たものである。

図 11 下降調 1(発話者 NS39 の「じゃないかな」の音声表示)

図 11 から分かるように、「じゃないか」の語末イントネーションは 下がるものなので、下降調だと判断する。一方、図 12 のように、語

図 12 下降調 2(発話者 NS26 の「じゃないですか」の音声表示)

末は上がる傾向があり、平板調にも近いが、語頭イントネーション と比べたら、下がる傾向が見られたため、下降調だと判断した。

今回の調査では、下降調だと判断した用例は、43 例あり、全体の 約 58%を占めている。そのうち、「じゃないか」が 13 例、「じゃな いかな(あ/ー)」が 12 例、「ではないか」「じゃない(ん)でしょ

すか」が 2 例、「じゃない」「じゃないのかなあ」「じゃないですかね

兼業シュクとその、(1:ええ、ええ)なんか仕

は、だらだら長くっていう方も割と多いんじゃ

いかと思って探してはいるんですけど、(1:あ

資格、って感じで、(1:うん)こういつになっ

か?)小学校、中学生、小学校、中学校じゃな

59 NS32(3)

メリカにいっておりましたときに、アメリカで

らないんですけど(1:うん、うん)、どっちか

食べ物もおいしくないしねー。私、本当にもう 日本に帰りたいの。もう勉強辞めて。)うん。/

いいんじゃない、それも。

否定疑問

73 NS48(9)

はい。//えー、今日は、皆さんが待ちに待った 体育会です。で、体育の、例えば、100 メートル の競争、これは速い人もいれば遅い人もいると 思います。で、先生が思うのは、やはり、その 人が全力を尽くせば、それで満足していけばい いんじゃないかと思います。

一般通念

74 NS49(1)

それからもう一つ、一番大きな点は、なんとい うんですかね、まあ、どれだけ(1:うん)相 手に対して(1:うん)相手を理解しながらコ ミュニケーションをしていこうか、という(1:

うん)というその態度ではないか14、と思うんで すね。

述べ立て

表 9 のように、用例 32・36・37・41・45・46・49・52・56・60・

67・69・74 番は「述べ立て」、35・38・39・40・43・51・54・55・

57・58・59・61・63・64・65・66・68・70・71 番は「視覚・現実判 断」、33・34・42・44・47・48・50・53・62・73 番は「一般通念」、

72 番は「否定疑問」の用法である。

用例 32 番は個人的な経験で、36 番は情報の引用で、37・41・45・

46・49・52・60・67・69・74 番は個人的な意見で、56 番は個人的な

14 「上村コーパス」における発話の原稿には「じゃないか」と書いてあるが、実

評価であり、それぞれ話し手が自分の持つ情報や思いをを聞き手へ 伝達しようとするもので、相手に同意を要求する意図がないため、

「述べ立て」という用法に当て嵌まる。

次に、用例 35 番はオリンピックの金問題、38 番は現在の景気、

39 と 40 番はドイツ人と日本人の働き方、43・59・65 番は学校のテ ニス部のやり方・給食問題・学部生と大学院生との比較、51 番は JR の通勤手当、54 番は塾に通っている学生の比率、55 番は黒人の集会、

57・58・63・71 番はアメリカと日本の労働時間の長さ・休日数、61 番は欧米人と日本人の働き振り、64 番はアメリカでアパートを探す こと、66 番は西欧人の色の使い方、68 番はモネの絵への見方、70 番は反核のサインを求めることに対して、話者が発話の現場やテレ ビニュースで見たり聞いたりした事実、また現在の実際状況をもと に、自分の判断を下すもので、「視覚・現実判断」の用法に適する。

さらに、用例 33 番は先輩後輩制度、34 番は夫婦二人の就職活動、

42 番は試合、44 番はアルバイトの時給、47 番はいじめ問題、48 番 は試験のシステム、50 番は野球試合の時間の長さ、53 番はスポーツ のドーピング問題、62 番は日本文化にある家の存在、73 番は体育会 の見方について、話し手が人間社会で普遍的な認知概念を用い、聞 き手に認識を喚起するため、確認用法の「一般通念」という用法に 相応する。

最後に、用例 72 番は話者が聞き手に返事を求めるため、典型的な

「否定疑問」用法に相当する。

3.1.4 まとめ

使用状況を調査した。その結果をまとめると、表 10 のようになる。

表 10 NS の「じゃないか」の使用状況

イントネーション

用法 上昇調 平板調 下降調 合計

1.

確 認

(1)視覚・現実判断

3 5 19 27

(2)共有経験 0 0 0 0

(3)一般通念

1 5 10 16

(4)仮定状況 0

1

0

1

(5)伝聞情報確認 0 0 0 0

2.否定疑問 0

1 1 2

3.述べ立て

3 12 13 28

4.認識形成の要請 0 0 0 0

5.疑念表出 0 0 0 0

6.自己確認 0 0 0 0

7.勧誘 0 0 0 0

8.決意表明 0 0 0 0

合計

7 24 43 74

表 10 から、上昇調・平板調・下降調に現れた用法の使用分布が明ら かになった。まず、全体 74 例のうち、上昇調は約 9.4%、平板調は 約 32.4%、下降調は約 58.1%を占めている。ここから、NS が「じ ゃないか」を使用する際に、下降調で発音する場合は全体の半分以 上も超え、圧倒的に多いことが見られ、一方、上昇調で発音する場 合は一割だけで極めて少ないことが分った。

次に、用法の分析結果を見ると、全体 74 例のうち、「3.述べ立て」

が 28 例、「(1)視覚・現実判断」が 27 例、「(3)一般通念」が 16 例、

「2.否定疑問」が 2 例、「(4)仮定状況」が 1 例ある。「(2)共有経験」

「(5)伝聞情報確認」「4.認識形成の要請」「5.疑念表出」「6.自己確認」

「7.勧誘」「8.決意表明」などの用法は、まったく見られなかった。

つまり、今度の調査では、NS は筆者が設定した「じゃないか」の 12 種の用法のうち、5 種類の用法を使っていることが観察された。

そして、出た用法の占めている比率は、「3.述べ立て」が約 37.8%、

「(1)視覚・現実判断」が約 36.5%、「(3)一般通念」が約 21.6%、「2.

否定疑問」が約 2.7%、「(4)仮定状況」が約 1.4%である。ここで、

NS が「じゃないか」を使うとき、「3.述べ立て」および「(1)視覚・

現実判断」という用法が多いことが示唆されている。

また、これらの用法の内訳を見ると、「述べ立て」は上昇調が 3 例、平板調が 12 例、下降調が 13 例であり、それぞれ約 10.7%、42.9%、

46.4%を占めており、下降調および平板調で発音する場合が多いこ とが分かった。次に、「視覚・現実判断」は上昇調が 3 例、平板調が 5 例、下降調が 19 例であり、それぞれ凡そ 11.1%、18.5%、70.4%

を占めており、下降調で発音する方が圧倒的に多いことが観察され た。そして、「一般通念」は上昇調が 1 例、平板調が 5 例、下降調が 10 例であり、それぞれ約 6.3%、31.2%、62.5%を占めており、下降 調で発音する場合が圧倒的に多いことが見られた。さらに、「仮定状 況」は 1 例、「否定疑問」は 2 例だけで、用例が少ないため、ここで は、論述を加えない。

一方、イントネーションと用法の使用分布と合わせてみると、上

用法、平板調では「述べ立て」「視覚・現実判断」「一般通念」「仮定 状況」「否定疑問」の五つの用法、下降調では「述べ立て」「視覚・

現実判断」「一般通念」「否定疑問」という四つの用法が見られた。

そこで、NS は、平板調での用法がより多く、上昇調での用法がよ り少ない傾向がある。

さらに、上昇調の使用現状を分析してみると、「述べ立て」が 3 例、「視覚・現実判断」が 3 例、「一般通念」が 1 例であり、それぞ れ凡そ 42.9%、42.9%、14.3%を占めており、「述べ立て」および「視 覚・現実判断」の使用率が多いことが分かった。

また、平板調は「述べ立て」が 12 例、「視覚・現実判断」が 5 例、

「一般通念」が 5 例、「仮定状況」が 1 例、「否定疑問」が 1 例であ り、それぞれ約 50%、20.8%、20.8%、4.2%、4.2%を占めており、

「述べ立て」という用法の使用率が圧倒的に多いことが確認された。

そして、下降調の使用実態を見ると、「述べ立て」が 13 例、「視覚・

現実判断」が 19 例、「一般通念」が 10 例、「否定疑問」が 1 例であ り、それぞれ凡そ 30.2%、44.2%、23.3%、2.3%を占めており、「視 覚・現実判断」の使用率が一番多いことが分かった。

なお、今度の調査では、「じゃない」「じゃない(ん)ですか」「じ ゃない(ん)でしょうか」「ではないか」「ではないでしょうか」な ど位相の差異による「じゃないか」の変種および終助詞「な(あ)」

「ね(え)」と併用するものは、上昇調・平板調・下降調のいずれに も見られ、イントネーションに顕著的な影響が見られなかった。し かし、「じゃない(ん)でしょうか」は殆ど下降調の分野に属し、上 昇調では見られなく、平板調ではただ一例の語末に「ねえ」を加え