第 3 章 「じゃないか」 の使用状況
3.1 母語話者の「じゃないか」の使用状況
3.1.2 平板調
ここで言う平板調は、音声分析ソフトで分析を行うことにより、
図 10 のようになったものである。
図 10 平板調(発話者 NS19 の「じゃないですか」の音声表示)
図 10 を見ると、「じゃないか」の語末イントネーションは、語頭イ ントネーションと比べ、ほぼ同じ高さであるため、平板調だと判断 する。
今度の調査では、平板調の用例は、24 例あり、全体の約 32%を占 めている。そのうち、「じゃないか」が 10 例、「じゃないかな」が 6 例、「じゃないですか」および「ではないか」が 3 例、「じゃない」
と「ではないですかねえ」がそれぞれ 1 例ある。これらの例文をま とめ、その用法を分析してみると、表 8 になる。
表 8 NS の平板調の用例文およびその用法
番 話者 用例 用法
8 NS1(3)
あのーやはり住みやすくするのはそういうこと の、メンタルなことまで、考えないといけない んじゃないかっていうふうな、あのーその時の 感想でしたので、
述べ立て
じ ゃ な い で す か
9 NS2(2)
探してる事なんじゃないかなということで、
の、生きていく、上で、あのー、/そういう事
27 NS47(6)
表 8 から分かるように、用例 8・11・14・15・16・18・19・20・
現実判断」、9・13・17・25・30 番は「一般通念」、10 番は「仮定状 況」、27 番は「否定疑問」の用法である。
用例 8・14・28 番は個人的な感想で、11 と 19 番は個人的な経験 で、15・16・18・23・24 番は個人的な意見で、20・21 番は個人的な 評価であり、それぞれ話し手自身の考え方を聞き手へ伝達しようと するもので、相手に同意を求めるつもりがないため、「述べ立て」と いう用法に属する。
また、用例 12 番は大学にある喫煙スペース、22 番は女子スポー ツ選手の増加、26 番は日本語学習者の増減、29 番は子供の登校拒否 の状態、31 番はいじめ問題につながることに対して、話者が発話の 現場で見た物事や今の現実状況をもとに、判断を下すもので、「視 覚・現実判断」の用法に当たる。
次に、用例 9 番は学校での学習経験、13 番はオリンピック、17 と 25 番は日本での働く状況および集団意識、30 番は教師のすべき 働きかけについて、話し手がこの社会での普遍的な認知概念を用い て相手の認識を喚起するため、確認用法の「一般通念」という用法 に該当する。
さらに、用例 10 番は話者がまだ発生していないことを想像し、聞 き手の共感を喚起するものであるので、確認用法の「仮定状況」と いう用法に当たる。
最後に、用例 27 番は話し手が聞き手に答えを要求するため、「じ ゃないか」の典型的な「否定疑問」用法に相当する。