第二章 先行研究
2.1 ダロウの位置づけ
國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
第二章 先行研究
本節では、先行研究におけるダロウはどのように位置づけられるか、またダ ロウの意味・用法についてどう思われるかを考察する。
2.1 ダロウの位置づけ
2.1.1 寺村(1984)寺村は、述語の活用形である確言形はムードの一次的形式であり、あるコト を確かな現実の事実として述べるムードであると認めている。そしてダロウな どの形式は、ムードの一次的形式に後接し、節全体を包むので、ムードの二次 的形式とされている。また、これらの形式は伝統文法に従えばすべて助動詞と されている。この二次的ムードは二種に分けられる。一つは「概言」を表す助動 詞であり、もう一つは「説明」を表わす助動詞である。
「概言」を表す助動詞とは、ある事態の真偽について、それを自分が直接見た り、経験したりしたのでないから確言はできないが、自分の過去の経験、現在 持っている知識、情報から、概ねこうであろうと述べる表現である。ダロウ、
ヨウダ、ラシイ、ソウダはこの類に属する。
図1 文の構造 (寺村 1984:pp222)
文
節
コト ムード1 ムード2 テンス <説明>
子供ガ生マレ タ ノダ
節
<概言>
ソウダ ムード2
2.1.2 益岡(1991)
益岡(1991)では、「モダリティ」という概念を「判断し、表現する主体に 直接関わる事柄を表わす形式」と規定している。また、モダリティの形式には、
恒常的に主観性を表現するものと、客観的表現になり得るもの、の2 種類があ る、と益岡は指摘している。そして、前者を「一次的モダリティ」と、後者を
「二次的モダリティ」と呼んでいる。具体的な形式としては九つの種類に分け られ、下図のようにまとめられる。
‧
命題間の範列的(paradigmatic) 関係に関する判断を表わすもの
命題間の統合的(syntagmatic) 関係に関する判断を表わすもの
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
図4 モダリティの種類
┌ 叙述のモダリティ
┌ 情報系 ┤
│ └ 疑問のモダリティ
│ ┌ 意志のモダリティ
┌ 表現類型のモダリティ ┼ 行為系 ┼ 勧誘のモダリティ
│ │ └ 行為要求のモダリティ モ│ └ 感嘆のモダリティ
ダ│ ┌ 認識のモダリティ リ┼ 事態に対するとらえ方を表す ──┤
テ│ モダリティ └ 評価のモダリティ ィ├ 説明のモダリティ
│ ┌ 丁寧さのモダリティ
└ 伝達のモダリティ ───────┤
└ 伝達態度のモダリティ
ここから、表現類型のモダリティに基づいて、様々なモダリティの相互関係 が下表のように整理できる。
表1 各モダリティの相互関係
評価 認識 説明 丁寧さ 伝達態度
叙述 ○ ○ ○ ○ ○
情報系
疑問 ○ △ ○ ○ ○
意志 × × × ○ △
勧誘 × × × ○ ○
行為系
行為要求 × × × △ ○
表現類型
感嘆 × × × △ ○
(日本語記述文法研究会2003:pp8)
記号について、日本語記述文法研究会によると、○はそのモダリティが分化 できることを、×は分化できないことを、△はそのモダリティの分化に留保や 例外現象があることを示している。中に、認識のモダリティは主として叙述文 に現れるものであるが、ダロウは疑問文にも現れることができるので、表では
△が付けられるのである。
2.1.4 まとめ
以上のように、各先行研究でダロウをどのように位置づけるかをまとめる。
それぞれの位置づけの仕方はほぼ類似しているが、いずれもモダリティ(ムー
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
ド)には段階性があると認めて、2 つの段階に分けられる。しかし、益岡では 取り立て詞もモダリティの一種類として取り上げられている。この点は他の研 究とやや異なっている。そして、ダロウについては、主として話し手の経験や 考え、あるいは現時点の認識によってある事態を判断・叙述する形式であると 考えられている。
しかし、同じ認識のモダリティとして、ダロウは他の形式と異なっている。
例えば、日本語記述文法研究会によると、認識モダリティの中に、ダロウだけ 疑問文に現れる、ということからダロウの特異性を覗うことができよう。