第二章 先行研究
2.2 ダロウの意味・用法
2.2.4 宮崎(2004)
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2.2.3 菊地(2000)
菊地(2000)では、ヨウダとラシイの違いを考察しており、さらに伝聞のソ ウダとダロウとの比較を通して、それぞれの特性を把握している。菊地による と、ダロウは<見当をつけて予想や創造を述べる>語であり、観察や推論を伴 う場合でも、漠然と(時には無責任に)見当をつける程度でも使えるものであ る。例えば、正体の分からない料理について、その正体を探る場合、まだ食べ たわけでもなく、手がかりもないけど、下のような文が成り立つと思われる。
(9) 「これ、何かな」「さてね。たぶん鶏肉か何かダロウ」
Cf.(食べた後)「うん、鶏肉のヨウダ。」 (菊地2000:pp56-57)
菊池の考察によって、ダロウは話者の主観的、概略的な判断が含まれる表現 ということがわかる。
2.2.4 宮崎(2004)
宮崎は、ダロウの用法には、一般に、推量と確認要求があるとされる。それ ぞれ次のように定義している。
推 量:その事柄に対する話し手の認識が不確かであるということを基本 条件として成立する用法。
確認要求:その事柄に対する聞き手の認識が確かであるということ基本条件 として成立する用法。
その中で、ダロウの基本用法は推量であり、確認要求用法は推量から派生し たものと宮崎は考えている。その理由は、まず、聞き手の知識に関与的な事柄 を聞き手の前で推量することによって、その推量内容の真偽を知っている聞き 手を刺激し、その真偽の確定に協力するよう働きかける機能が発生するという メカニズムを仮定できるからである。こうすると、その推量判断が未成立でな ければならない。真偽について考えているが、結論がまだ出せないという状態 であってこそ、聞き手の協力を仰ぐことができるのである。
また、宮崎はダロウの推量用法には聞き手の認識は不確かでなければならな いという語用論的な原則が存在する、と述べている。聞き手の前で聞き手が直 接知りうることについては、推量ではなく、確認要求のダロウになる。ただし、
聞き手の前で聞き手が直接知り得ることを推量することもある。こうした用法 が成立するのは、相手を気遣った発言をする場合である。
さらに、ダロウの確認要求用法は、話し手自身の認識のあり方に基づいて下 位分類すると、二つある。一つは<聞き手依存型>、もう一つは<聞き手誘導 型>である。その定義は下の通りである。
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<聞き手依存型>
話し手自身の認識が不確かな状況で、確かな情報を有していると見込まれ る聞き手の応答に依存してその情報の確定化を図ることである。
(10) もしかして、君、嘘ついてるだろう。(下線筆者)
<聞き手誘導型>
話し手自身の認識が確かな状況で、聞き手にその情報を認識するように働 きかけることである。
(11) よく見ろよ。君の計算、間違えてるだろう。(下線筆者)
従って、ダロウの用法について図示すると、下のようになる。
図6 ダロウの用法 ダロウ ─ 推量 ↓
(派生) ┌ 聞き手依存型(話し手の認識:不確か)
└ 確認要求 ┤
└ 聞き手誘導型(話し手の認識:確か)
二つの用法をまとめてみると、次のような相違があると認められる。
表2 推量と確認要求の比較
推量 確認要求
共起できる形式
「タブン」等の確信度表示副詞 終助詞「ナア」など
ホラ
出現位置 文末・文中 文末のみ
イントネーション 下降調のみ 上昇調・下降調
テクストのタイプ 独話・対話 対話のみ
不確か ①確か :聞き手誘導型
②不確か:聞き手依存型 話し手の認識
①原則不確か
聞き手の認識 確か
②確かな場合:聞き手への気遣い
2.2.5 日本語記述文法研究会(2003)
日本語記述文法研究会(2003)では、認識のモダリティを断定と推量に二分
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している。両者はいずれも話し手が事態の成立を主張することであるが、断定 は事態を経験や知識によって直接的に認識しているのに対して、推量は想像や 思考によって間接的に認識している、と定義されている。そして、ダロウの意 味・用法について次のように挙げられる。
(12)
① 話し手の記憶にあることや自身の行動予定など、ダロウを用いることが 出来ない。そうした場合に、「かもしれない」や「と思う」を用いるのが 普通である。
a. 急いでいたので、エアコンを切らずに来た{かもしれない/?だろ う}
② 想像・思考の中に捉えた事柄を描き出すので、仮定条件の帰結として、ご く自然に用いることが出来る。
鈴木氏が委員長になれば、会議は早く終わるだろう。
③ 主張を控えめにする断定回避の用法がある。
a. 君はもっと努力すべきだろう。
b. 今回の作戦は失敗だったと言えるだろう
④ 推量から派生した確認要求の用法がある。話し手が推量した内容を聞き 手に問いかけたり、眼前に存在している状況について聞き手の注意を喚 起したり、話し手の知識や記憶を確認したりする用法である。
a. 君、昨日徹夜しただろう?
b. ほら、あそこに信号があるだろう
⑤ 〔名詞+だろう〕の形で表わす、ものを確認しながら例を挙げていく用法 a. あのとき会場にいたのは、佐藤だろう、鈴木だろう、田中だろう、
それから、山本もいたなあ。
⑥ 「だろうと」という形で、「であっても」に相当する逆接条件節を形成す る用法
a. 相手が誰だろうと、彼女の父親は結婚を認めないにちがいない。
以上のように、ダロウの意味用法を詳しく考察されているが、その共通点を 取り上げて、次のようにまとめられる。
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表3 ダロウの意味・用法
意味 用法
①② 推量 事態を想像や思考によって間接的に認識している。
③ 断定回避 主張を控えめにする。
④⑤ 確認要求
話し手が推量した内容を聞き手に問いかけたり、眼前の 状況について聞き手の注意を喚起したり、話し手の知識 や記憶を確認したりする。
⑥ 逆接 「だろうと」の形で、逆接を表す。