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AダロウガBダロウガについて

第四章 ダロウと接続助詞ガ

4.3 AダロウガBダロウガについて

立 政 治 大 學

N a tio na

l C h engchi U ni ve rs it y

量の働きをしていることが推測できよう。

4.3 A ダロウガ B ダロウガについて

4.3.1 A ダロウガ B ダロウガの意味・用法

A ダロウガ B ダロウガの意味について、グループ・ジャマシイ(1998)で は次のように述べている。

「~だろうが~だろうが」の意味は「X でも、Y でも関係なく、だれでも(何 でも)」と述べられている。

ただ説明が足りないのは、先行研究で挙げられたX と Y は、同じ範囲や集 合の一種に限られているということである。それに、必ず後に来る主節と関連 しなければならない。これは後の主節に現れる「疑問詞+デモ」の形式からも みられる。

「疑問詞+デモ」とは、例えば、前節で挙げた例(103)の場合は「どんな 天気でも」、(104)は「どんな障子紙でも」、(105)は「なんだって」というこ とが背後に隠されている。「疑問詞+でも」が表わす意味は、自由選択24で、

すなわち、どんなものでもかまわず、範囲や集合内の一つであればいい、とい うことである。そして、関連する物事をいくら挙げても、後に来る主節事態は それらに影響を与えられずに進行・成立することが表される。つまり、挙げら れた事物を平等に評価づけることになる。

4.3.2 他の並列表現との比較

A ダロウガ B ダロウガと類似して並列を表す表現には「~(ヨ)ウガ~(ヨ)

ウガ/~(ヨ)ウガ~マイガ」や「~(ヨ)ウト~(ヨ)ウト/~(ヨ)ウト

~マイト」、「~テモ(デモ)~テモ(デモ)」などが挙げられる。「~(ヨ)ウ ガ~(ヨ)ウガ」と「~(ヨ)ウト~(ヨ)ウト」意味はほぼ同様で事柄の並 列を表わしているが、A ダロウガ B ダロウガが名詞相当語にしか接続できな いのに対して、その二者は動詞と形容詞という用言に接続しており、統語的な 使い分けが相補分布している。また、「~(ヨ)ウト~(ヨ)ウト」のトはト

24 疑問詞と助詞の共起を観察してみると、主に四つのパターンに分けられる。

(1) 【疑問詞+…か。】という形式で、「疑問」を表わす。例えば、「これは何ですか」。なお、

この表現における助詞「か」は語尾に置かれるものである。

(2) 【疑問詞+も】という形式で、「全称否定」を表わす。例えば、「どこへも行かない」。

(3) 【疑問詞+~か~】という形式で「不定用法」を表わす。例えば、「どこへ行くか、分か らない」。なお、その時の助詞「か」は文中に位置されるものである。

(4) 【疑問詞+ても/でも】という形式で現れる。意味は、全ての条件が可能であるが、行 動は同時に成立はしない、ということである。つまり、「自由選択」の意である。例えば

「どこへでも行く」。

‧ 國

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モの異形態で、ガと同じく逆接を表す接続助詞として使われている。以上の両 形式はA ダロウガ B ダロウガと形式や意味はほとんど一様であると言える。

それに対して「~テモ(デモ)~テモ(デモ)」はA ダロウガ B ダロウガと異 同がある。

テモは逆接の仮定条件を表す形式である。「~テモ(デモ)~テモ(デモ)」 に並列表現があることについて、以下のような指摘が挙げられる。

「ても」は「も」の働きにより、主節の事態を引き起こす条件が複数あるこ とを示すので、逆条件節を複数並べることができる。

(日本語記述文法研究会2008:pp148)

その意味はどんな条件でも同じ結果になるということである。この点はAダ ロウガBダロウガと一様である。相違点ではAダロウガBダロウガは名詞しか接 続できないのに対して、「~テモ(デモ)~テモ(デモ)」は名詞のみならず、

動詞や形容詞にも接続できる25

また、「~デモ~デモ」の場合、挙げられた物事が一つだけでも成立するが、

A ダロウガ B ダロウガは、二つ以上の物事が必要である。これは例(97)や

(98)のダロウガをデモに置き換えればはっきりわかる。

(97)相手が重役だろうが、〔社長だろうが/*φ〕、彼は遠慮せずに言いた いことを言う。

(97’)相手が重役でも〔社長でも/φ〕、彼は遠慮せずに言いたいことを言 う。

(98)彼は、山田さんだろうが、〔加藤さんだろうが/*φ〕、反対する者は 容赦しないと言っている。

(98’)彼は、山田さんでも〔加藤さんでも/φ〕、反対する者は容赦しない と言っている。

(97’)と(98’)のように、デモに接続する名詞は一つでも成立する。それ は、デモはほかの関連する物事を暗示する働きを持っているからである。それ に対して、ダロウガは複数のメンバーを挙げることによって集合全体を表す働 きを持つ。

もう一つの相違は、A ダロウガ B ダロウガは、特に会話の場合では、話し 手が相手の考えなどに反駁する場面でよく用いられる。

25 ただし、「AだろうがBだろうが」と比較するために、ここでは名詞に接続する「~でも~で も」を中心に考察する。

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(106) 「大体貴様が悪いんだぞ!怪電話があった時にすぐ何人か引き連れ て駆けつけていれば、山崎一人ぐらい簡単に逮捕できた!」

「何言ってるんですか」

野々山も黙っていない。「彼女がせっかく知らせたのに一人で来るな んて!いや、一人で来るならともかく、彼女まで連れて来るなんて、ど ういうつもりです!」

「そ、それはあの女がどうしても来ると……」

「来るな、と止めるのが当り前じゃないですか!おかげで彼女は獣のよ うな男のえじきに……。僕は一生警部を恨みます!」

「お、おい!そりゃ筋違いってもんだ!恨むなら山崎を――」

「筋違いだろうがギックリ腰だろうが、あんたを恨むんだ!ワラ人形を 作って五寸釘を打ち込んで、呪い殺してやる!」

「貴様!よ、よくも日頃の恩を忘れて――」

「何が恩だい、笑わせるな、畜生!人をこき使って、自分は上役のご機 嫌伺いしかしないくせに!」 (『死者は空中を歩く』)

(107) 真知子は由子の死の唯一の目撃者として、警察で事情聴取をされたの だが、そこへ恵子が怒鳴り込んで来たのである。

「一体どういうつもりなんです。家の娘をつかまえて!あの子は感じや すい、デリケートな性質なんですよ。友達が目の前で死んだだけでもシ ョックなのに、こんな薄汚いバイ菌だらけのゴミ捨て場に何時間も閉じ 込めとくなんて、無神経にもほどがあります!すぐ帰してもらいましょ う!それに狭い部屋に男と二人で入れておくなんて、危険です!刑事だ ろうが警視総監だろうが男じゃありませんか。何です、その顔は。そん な蛙のオバケみたいな顔を見たら、娘はひきつけを起こすかもしれませ んよ!さっさとあの子をここへ連れてらっしゃい!」

(『死者の学園祭』) 例(106)の場合、発話者の飯沢が野々山と山崎という人の逮捕について言 い争うシーンである。(107)は、母親の恵子は娘の真知子に警察の審問につい て不満を表す。いずれも反駁のニュアンスが感じられる。なぜこんなニュアン スが生じてくるかというと、これは情報提示の量の食い違いから生じてくるか らである。すなわち、もともと提示された人物(情報)は一つだけである。(106)

では「筋違い」が、(107)では「刑事」が挙げられている。しかし、その情報 を受けた発話者は、それ以上の情報、つまりギックリ腰や警視総監など相手が 思いつかないような例も挙げて、どんなものでも結果が同じであると強調して いる。このように、相手の予想範囲外の情報を提示する、あるいは相手の認識 不足を突くことによって、反駁あるいはやや攻撃的なニュアンスが生み出され る。それに対して「~デモ~デモ」は単に相手の予想範囲内の仮定条件を述べ

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るだけである。

先に挙げたのは会話の場面であるが、その時のA ダロウガ B ダロウガには 反駁や押し付けのような評価付けが感じられる。しかし、全ての表現にあるわ けではない。下のように、中立的に物事を挙げる表現もある。

(108) 「おじさん、作家なの?」

伊波は、ちょっと面食らったが、

「ああ、そこの本を見たんだね?」と笑った。

彼の旧作で、カヴァーに写真が出ているのである。

「大分若い写真だろう」

「そうね。でも、今でもそう老けていないよ」

「そいつはどうも」

「いいなあ、作家って。好きなことして暮せるんでしょ」

「そう単純じゃないよ」と、伊波は苦笑した。

「どうしてこんな所に住んでいるの?」

「さあ。――何となく、こういう静かな所が好きなんだよ」

「やっぱり、こういう場所の方が、よく書けるの?」

「いや、そんなことはない」

と、伊波は首を振った。「場所じゃないよ、問題は」

「それじゃ、なあに?」

「精神状態だな。色々あって気持が乱れていると、どんなに静かな所で も書けない。逆に、書きたいことが溢れ出て来るときには、やかましい 喫茶店の中だろうが、列車の中だろうが、書けるよ」

(『失われた少女』)

(108)の場合は、伊波がまず相手の質問に答えて、さらに情報を補充する ように、静かでない環境の例を言い出している。前の例と比べてみれば、同じ ように他の情報を提示しているが、前のことと後に加えた情報はいずれも発話 者自身が出したものであるので、反駁や攻撃的な意味というより、むしろ情報 の補足と考えればよいだろう。この時のダロウガは、デモに置き換えても意味

(108)の場合は、伊波がまず相手の質問に答えて、さらに情報を補充する ように、静かでない環境の例を言い出している。前の例と比べてみれば、同じ ように他の情報を提示しているが、前のことと後に加えた情報はいずれも発話 者自身が出したものであるので、反駁や攻撃的な意味というより、むしろ情報 の補足と考えればよいだろう。この時のダロウガは、デモに置き換えても意味