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田(2002)は「よく」を様態副詞に分類しているが、上記の誤用例を見ると 外国人学習者は「よく」を程度副詞と捉えているようであり、ある条件が揃 うと程度副詞として用いられるのではないか。

また、「顔を[よく/しっかり]洗ってください」、「家を[しっかり/*よく]

建てなさい」、「彼女が食事を[たくさん/よく]食べる理由」、「お金、[たく さん/*よく]ちょうだい」、「新幹線を[よく/ちょくちょく]利用するビジ ネスマン」、「[ちょくちょく/*よく]幸子さんを連れ出して下さい」のよう に、「よく」は、様態副詞「しっかり」、量副詞「たくさん」、頻度副詞「ちょ くちょく」と、互いに入れ替えられる場合もあり、入れ替えられない場合も ある。それはなぜであろうか。

上述の問題を解明するために、本研究は、「よく」と動詞との共起関係を起 点とし、「しっかり」、「とても」、「たくさん」、「ちょくちょく」などの類義副 詞との異同を比較することを通して、「よく」の文法的な性質(「よく」が程 度副詞として用いられる条件を含んでいる)を考察しようと思う。

2 先行研究

「よく」についての先行研究には、近藤(1986)、森本(1992)、仁田(2002)、

佐野(2006)などがある。用法辞典系では森田(1989)、飛田・浅田(1994)

にも「よく」の用法の説明がある。

2.1 森田(1989)

森田(1989)は、「よく」の意味を次のように記述している。

(a)困難な事柄を遂行したことに対する評価

①肯定的な評価の場合

(5) 子供一人でよく東京まで出て来られたね。

(6) たった一か月でよくあんなに外国語が上手にしゃべれるようになった ものだ。

② 否定的な評価の場合

(7) 教えを受けた先生によくあんな失礼な口が利けたものだ。

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(8) よく嘘をついてくれたな。

(b) 行為・作用のおこなわれ方の説明

①行為・作用の完全さを表す場合

(9) この汚いズボンをよく洗ってください。

(10) 次の文章をよく読んで、あとの設問に答えなさい。

(11) あの人はよく知っている。

(12) 双子なのでよく似ている。

(13) よく消える消しゴム。

② 行為・作用の頻繁さを表す場合

(14) 昔はよく古本屋めぐりをしたものだった。

(15) 彼はよく電話を掛けてくる。

森田(1989)の「困難な事柄を遂行したことに対する評価」は、対事的モ ダリティを表す用法に相当する。程度と頻度の用法はそれぞれ「行為・作用 の完全さを表す」、「行為・作用の頻繁さを表す」と指摘している。

2.2 飛田・浅田(1994)

飛田・浅田(1994)は、ニュアンスやプラス/マイナスのイメージの観点 から、以下のように「よく」を六つの意味に分類している。

(a) 望ましく好ましい様子を表す。

(b) 相手の困難な行為を評価したり賛賞したりする様子を表す。

(c)(b)の反語の用法で、相手の行為に疑問をもったり憤慨したりする様 子を表す。

(d) 行為や状態の程度が十分である様子を表す。

(e) 頻度が高い様子を表す。

(f) 完全に達成する様子を表す。

(b)(c)は対事的モダリティを表す用法に相当すると思われる。(a)(d)

(f)は程度副詞的用法であり、(e)は頻度副詞の用法である。

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先行研究のうち、「よく」の共起制限を考察しているのは、近藤(1986)、

森本(1992)、仁田(2002)、佐野(2006)などが挙げられる。以下ではこれ らの代表的な研究を年代順で見ていく。

2.3 近藤(1986)

近藤(1986)は、頻度、程度、ムードという「よく」の主な三つの用法を 考察している。頻度の「よく」は、基本的に「事象の回数の多さ」を表すが、

そこから文全体が状態説明(属性表現)となるような用法へずれていく可能 性があるものと指摘している。また、程度の「よく」についていくつかの点 も言及されており、それを次の二点にまとめている。

(a)程度の「よく」が状態性動詞と共起する場合は、動詞が語義として持つ 状態性に対する程度の規定をし、「程度副詞+形容詞」(「とても美しい」

など)と類似しているので、両者をあわせて考える必要がある。

(b)程度の「よく」が動作性動詞と共起する場合は、主に「所要時間の長さ」

「注意深さ」「極限状態への接近度」の意味を規定する。

2.4 森本(1992)

森本(1992)は、一般的に副詞は、その機能的なスコープによって分類す ることが可能であり、「よく」の機能を以下の三つのスコープによって、様態 副詞、程度副詞、頻度副詞、文副詞に分けられると指摘している。

(a)動詞(の意味)だけをスコープとしてとるもの (様態副詞、程度副詞)

(b)動詞句をスコープとするもの (頻度副詞)

(c)文全体がスコープとなるもの (文副詞)

森本(1992)は、程度副詞は静的状態の述語であれば、統辞論的カテゴリ ーを問わずに使われるものが多いのに対し、「よく」の場合は程度副詞の性質 を十分備えているわけではなく、様態と程度の間を浮遊しているような面が ある、と言及している。また、「量」の問題について、森本(1992)は、(16)

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を「量的読みが優勢になる」もの、(17)を「量的読みが強く現れない」もの として取り上げて説明している。

(16) 木村さんは、よく食べる。

(17) 近くへ寄ってよく見たら、それはなんとアリだった。

(森本 1992:p74)

2.5 仁田(2002)

仁田(2002)は、「よく」には多義性があると述べている。「よく」には、

形容詞に直接かかることはないものの、評価に関わる意味を有し、程度限定 の働きを持ったものがある。また、「よく」は、頻度の副詞の用法もあり、事 態が高頻度に繰り返され反復することを表している。その意味記述に加え、

程度の副詞を加えることができることや「{スル/シタ}コトガ+頻度の副詞 類+アル」との共起関係をも指摘している。

程度副詞と量副詞について、仁田(2002)では、<程度量の副詞>として まとめたものを、文法的な働き方や共起する述語のタイプから、<程度の副 詞>と<量の副詞>に分け、程度の副詞を<純粋程度の副詞>と<量程度の 副詞>とに分ける。程度の副詞と量の副詞の違いは、前者は形容詞に係り、

その属性・状態の程度限定を行うが、それに対して、量の副詞は、形容詞に 係り、その属性・状態の程度限定を行うことができない。

(18) 彼は[とても/*たくさん]健康だ。 (仁田 2002:p162)

また、仁田(2002)によれば、次のような構文は、純粋程度の副詞と量程 度の副詞とを識別するテスト・フレームとして、構文に挿入可能なタイプが、

量程度の副詞であり、それに対して、構文に挿入すると逸脱性を生じてしま うのが、純粋程度の副詞である。もっとも、程度の副詞の下位類化であれば、

形容詞に係って、それが表す属性・状態の程度限定を行いうることが前提で ある。

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(19) 「オ酒ヲ[X]飲ンダ」/「[X]歩イタ」

(20) お酒を[相当/ちょっぴり]飲んだ/[相当/ちょっぴり]歩いた。

(21) ?お酒を[非常に/極めて]飲んだ/?[非常に/極めて]歩いた。

(仁田 2002:p163)

「相当」「ちょっぴり」は、(19)の構文に挿入可能で、また、「雪は止んだ が、相当寒いようです」、「ちょっぴり寂しい感じ」のように、形容詞に係り その程度限定を行いうる。したがって、「相当」「ちょっぴり」は、量程度の 副詞である。「非常に」「極めて」は形容詞に係りその程度限定を行いうるが、

(19)の構文に挿入することができないので、純粋程度の副詞に属する。「よ く」は上の構文に挿入できるが、「*彼女はよく美しい」のように、形容詞を 修飾できないから、量程度の副詞ではない。

2.6 佐野(2006)

佐野(2006)は動詞との共起関係から、あり方に関わる副詞4としての「よ く」の意味・用法について考察している。あり方に関わる副詞としての「よ く」には、大きく<質的限定>と<量的限定>の二つの用法がある。質的限 定は動きや状態の質的な高さについて限定を行い、量的限定は動きの量につ いて限定を行うものである。動きを表す動詞と共起した場合、動きが十分行 われる様子を表すという点では共通すると指摘している。

なお、佐野(2006)では、程度の副詞は形容詞以外でも、「驚く、怒る、悲 しむ、喜ぶ、緊張する、心配する…」などの心的活動動詞、「頑張る、協力す る…」などの態度の表れに関わる動きを表す動詞5、また「効果がある、違う、

優れている…」などの状態動詞なども共起するが、このうち「よく」と共起 する動詞はむしろ少なく、共起するものは、やはり動きや状態そのものの質 的な高さについて限定を行うことができる動詞、たとえば「慣れる」のよう な動詞に限られるも指摘している。

4 仁田(2002)は「結果の副詞・様態の副詞・程度量の副詞-特に程度の副詞-は、述語の 表す語彙的意味そのものと関係を取り結びながら、事態の内側から事態の実現のされ方を限 定し特徴づけている」とし、これらを「あり方に関わる副詞」と呼んでいる。

5 仁田(2002)参照。

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(22) この犬は人間によく慣れている。 (上毛新聞)

2.7 先行研究のまとめ及び問題点

上の森田(1989)と飛田・浅田(1994)の分類では、評価および頻度を除 いた「よく」の用法を、「行為・作用の完全さを表す」や「行為や状態の程度 が十分である様子を表す」として統一的に捉えているが、「よく」が「驚く」、

「緊張する」、「心配する」などの心理動詞と共起しにくい理由を説明できな い。

近藤(1986)と森本(1992)は、「よく」の共起制限という文法現象を考察 しているが、「なぜ心理動詞が程度の「よく」と共起しないのか」の理由に言 及していない。

仁田(2002)では、「オ酒ヲ[X]飲ンダ」/「[X]歩イタ」のような構文で、

仁田(2002)では、「オ酒ヲ[X]飲ンダ」/「[X]歩イタ」のような構文で、