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頻度の「よく」と共起する動詞の性質

立 政 治 大 學

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上の例からして、同じ文末表現において、「ちょくちょく」と「よく」の適 格性が違うということがわかる。つまり、「よく」は頻度あるいは量の意味を 表すとき、依頼(命令)、希望、勧誘(意志)を表す文末表現と共起すること ができない。が、なぜ上のような「ちょくちょく」の使える文脈で「よく」

は使えないのであろうか。この問題を解明するために、本章は、「よく」と「ち ょくちょく」の違いを比較することを通して、頻度の「よく」の意味と文法 的な性質を追究してみたいと思う。

2 頻度の「よく」と共起する動詞の性質

『大辞林』によると、「よく」の頻度副詞の用法は次のように書かれている。

たびたび。しばしば。

例:「よく忘れる」、「よく言うところの他人の空似だ」

頻度副詞について、仁田(2002)は、「一定期間内に、ある間隔を置いて生 起する事態の生起回数のあり方を多寡性をも含めて表す副詞である」と規定 している。頻度副詞は時間に関わっているので、頻度の「よく」と共起する 動詞と時間を表す表現のアスペクトとの間に、何らかの関わりがあると思わ れる。したがって、頻度の「よく」と共起する動詞を考察する前に、先に金 田一(1950)の日本語動詞の 4 分類について説明する。金田一(1950)は、

動詞に「ている」が付くか付かないか、付いたときにはどのような意味を表 すかによって、動詞を次のような 4 種類に分けている。

(A)「状態動詞」: 事物の状態を表す動詞で、「ている」が付かない。

例:ある、いる、(日本語が)できる、(このナイフはよく)切れる、要 する、値する…

(B)「継続動詞」: ある時間内継続して行われるような動作・作用を表す。

189 http://d.hatena.ne.jp/wadashin/20090125

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「ている」が付くと動作が進行中であることを表す。

例:読む、書く、笑う、泣く、見る、降る、歌う、飲む、聞く…

(C)「瞬間動詞」: 瞬間に終わってしまう動作・作用を表す動詞。「ている」

が付くと動作・作用が終わってその結果が存在していることを表す。

例:死ぬ、(電灯が)つく、届く、決まる、見つかる、始まる、終わる、

到着する…

(D)「第四種の動詞」: 時間の概念を含まず、ある状態を帯びることを表す 動詞で、常に「ている」が付く。

例:そびえる、優れる、おもだつ、ずば抜ける、ありふれる、馬鹿げる、

似る…

次に、検索エンジン Google や Himawari のコーパスなどを用い、頻度の「よ く」と共起する動詞を検索して、その特徴を考察する。

(7) 恋の始まりはふたりの意思で始まるのに、別れは片方の意思だけでい いのです。別れは突然やって来る。そんなことをよく聞きます。190

(8) 新聞やテレビで乗用車や原付きバイクの広告はよく見ますが、オート バイはなぜ宣伝しないのでしょうか。191

(9) 確かに、わたしの関係する講演会ではよく雨が降ります。192

(10) 私は夕焼け空を見ているうちに、若いころよく歌った三高の寮歌

「紅萌ゆる…」を、夜道を歩いていると坂本九の「見上げてごらん夜 の星を…」を口ずさんだりしています。193

(11) 彼女はよく鍵を忘れます。194

(12) ウソをつく人は、口や鼻のあたりをよく触る?195

(13) よく転ぶので膝が傷だらけである。196

190 唯川恵『彼女は恋を我慢できない』

191 読売新聞東京本社「雑学新聞」

192 ひろさちや『比叡山と高野山』

193 西満正『がんは死の宣告ではない』

194 森泉『CD BOOK しっかり身につくドイツ語トレーニングブック』

195 渋谷昌三『「見た目としぐさ」でホンネを見抜く心理学』

196 秋元波留夫『新版てんかん』

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(14) しょっちゅう扁桃腺を腫らし、よく熱を出す。197

(15) 夕方になり、太陽が沈み、プスタ(ハンガリーの平原)からヴァイ オリンの音色が聴こえてくると、私はワイングラスを持ちここでよく 一人で座る。198

(16) このような塑性ヒンジはよく発生します。199

上から見ると、頻度の「よく」と共起する動詞が、動作主が有情物である かどうか、動詞の意志性を持つかどうかに関わりがないということがわかる。

頻度副詞とは、事態の生起回数の多寡を表す副詞である。したがって、反復 発生することができる動作を表す動詞であれば、ほとんど頻度の「よく」と 共起可能であろう。たとえば、上の「聞く、見る、降る、歌う」などのよう な「継続動詞」は、繰り返されて行われることができるので、4 種類の動詞 で頻度の「よく」と一番共起しやすい。また、「忘れる、触る、転ぶ、熱を出 す、座る」などの「瞬間動詞」は、何回も繰り返し発生することができるの で、頻度の「よく」と共起しても逸脱性が生じない。

ここで、注意に値するのは動きや状態という事態の実現のあり方である。

次の(17)(18)は「よく①」の例で、(19)(20)は「よく②」の例である。

(17) そして火にかける前にひき肉と煮汁とよく混ぜ合わせ、とろとろに なじんだところで加熱するので、よくあるかたまりができないのです。

200

(18) もりのきは、どれもおなじようにみえるけれど、よくみるとぜんぶ ちがいます。201

(19) アメリカの看護師養成の制度は、日本とよく似ています。202

(20) 言うまでもなく、わたしたちは目ざめたときに見ていた夢をいちば

197 遠藤仁郎『もっと緑を!青汁博士大いに語る』

198 白石直樹『あなたもできるヨーロッパ一人旅』

199 星陸廣『保有水平耐力入門上』

200 松本忠子『「おかずの素」でもっとおかずを』

201 いとうひろし『おさるのもり』

202 並木浩一『夢のハワイ暮らしが実現できる本』

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んよくおぼえています。203

前に考察したように、様態副詞の「よく①」と共起する動詞は、動作を重 ねることによって、招来された結果状態が極限に達するために、ある一定の 時間持続しなければならない。また、程度副詞に似た働きを持つ「よく②」

と共起する動詞は、主体の状態・属性を表す動詞でなければならない。した がって、「瞬間動詞」は「よく①」、「よく②」と共起することができない。で は、なぜ「よく」が頻度副詞として動詞を修飾するとき、その共起制限がな いのか。仁田(2002)では、頻度副詞の修飾成分は、事態そのものに内在し ている側面ではなく、事態の外側から、事態の成立のありようや成立状況を 限定し特徴づけたものである、と指摘されている。つまり、様態副詞の「よ く①」と程度副詞に似た働きを持つ「よく②」は、動きの内側から事態の実 現のされ方を限定する修飾成分である。それに対して、頻度の「よく」の修 飾成分は、動きの外側から事態の成立状況を限定している。また、(9)(11)

(14)(15)の例からわかるように、頻度の「よく」は必ずしも動詞の前に付 くというわけではないが、「よく①」と「よく②」は、動詞の前に付かなけれ ばならない。「『大盛りにしてくれる』簡単にお客様はよく、こうおっしゃり ます」204のように、頻度の「よく」は、「よく①」と「よく②」と違って、読 点で後ろの動詞から分けられうる。これらの文法的な性質は、頻度の「よく」

が動詞句をスコープとし、動きの外側の位置で働くことの証左といえるであ ろう。

頻度の「よく」は瞬間動詞と共起することができるが、次の瞬間動詞は一 回的な意味を持つので、頻度の「よく」と共起しにくい。

(21) *よく「結婚する、卒業する、死ぬ、滅亡する、壊滅する…」

上の瞬間動詞が頻度の「よく」と共起しにくいとはいえ、必ずしも共起す

203 相原真理子/デイヴィッド・ライバック/レティシャ・スワイツァー『気になる夢、本当 になる夢』

204 横田克治『ファミリーレストラン(裏)マニュアル』

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ることができないというわけではない。実際に検索してみると、次のような 例が見つかる。

(22) かつて、医療後術が進歩していなかった頃、子供は可愛い盛りによ く死んだ。乳幼児の死亡率は高かった。205

(23) また、飯場暮らしの若手社員には現地採用の女子事務員と手近に恋 愛に陥りやすく、よく結婚する。206

(24) 看護婦と医者はよく結婚します。207

上の例からして、動作主が単数でなく複数であるということが観察できる。

まず、動作主が単数の場合を説明する。「この機械がよく壊れる」や「この服 がよく破れる」などは、「壊れては直す」、「破れては縫い合わせる」のような 状況と解釈するなら、極自然な文である。しかし、一般的にいえば、「死ぬ、

結婚する」のような動作は、一度起こったらその結果状態が継続的に存在す るので、動作が繰り返し実現されることとは不可能である。したがって、特 殊な状況を考えない限り、「死ぬ、結婚する」のような動詞は、動作主が単数 である場合に、やはり頻度の「よく」と共起しにくい。一方、「死ぬ、結婚す る」の動作主が複数であれば、頻度の「よく」との共起制限上のルールがよ り緩む。これは、(22)~(24)での「よく」が「子供が可愛い盛りに死んだ」、

「飯場暮らしの若手社員が現地採用の女子事務員と結婚する」、「看護婦が医 者と結婚する」という出来事の頻度性を限定し、動作主が複数であれば、「死 ぬ、結婚する」という動作が繰り返し実現されにくい性質と食い違いしない からである。

特殊な状況を除き、「死ぬ、結婚する」のような動詞は、一回的な意味を持

特殊な状況を除き、「死ぬ、結婚する」のような動詞は、一回的な意味を持