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3 頻度副詞「ちょくちょく」との違い

3.2 共起制限の違い

立 政 治 大 學

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説明よりもむしろ回数性を問題にした例をあげ、頻度の「よく」は、基本的 には事象の回数の多さを表すが、そこから文全体が状態説明(属性表現)と なるような用法にずれることもあると指摘している。214

(36) ベッドシーン?1回だけ、松坂慶子さんと。あれは、いいとか悪い とかいう感性の問題じゃないね。いや、よく人に聞かれるけど、絶対 ヘンな気持ちなんてなれないよ。215

(37) 近くの人の話では、子供たちには池のそばで遊ばないように口がす っぱくなるほど注意しているが、大人がサクを乗り越えて釣りなどを していることがよくあったという。216

3.2 共起制限の違い

次に「よく」と「ちょくちょく」の共起制限の違いを考察する。次の例か らして、「よく」は頻度を表すとき、依頼(命令)、希望、勧誘(意志)を表 す文末表現と共起することができない、ということがわかる。

(38) [ちょくちょく/*よく]幸子さんを連れ出して下さい、と園長は 嬉しそうに答えた。217

(39) 富小路さんには、[ちょくちょく/*よく]テレビに出てもらいたい。

218

(40) 美味かったですね。これからも[ちょくちょく/*よく]行きまし ょう。219

先行研究においては、上の文法現象から「よく」の意味用法を考察してい るのが森本(1992)である。森本(1992)によれば、習慣性の表現では、動

214 「ちょくちょく」は「時々」、「しばしば」と同じく、出来事の回数性を問題にした修飾 成分である。

215 1986 年 8 月 22 日週刊宝石

216 1986 年 3 月 4 日京都新聞

217 ケニー・マン『天使のままで』

218 有吉佐和子『悪女について』

219 http://d.hatena.ne.jp/wadashin/20090125

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詞の現在形を用いても述べているのは既に起こっている出来事である。そこ で、「よく」が表すのは、既に生じた事に対する一種の評価と考えられる。事 態に対してある評価をするには、その事態が既に生じていることが前提であ る。頻度の「よく」が意志のモダリティと共起できないのはそのためである。

この文法現象について、森本は「評価性」のためと指摘しているが、ほかの 頻度副詞たとえば「ちょくちょく」の場合になると、どう解釈すればいいの か。これを考察の出発点として、本稿は回数の〈顕在〉と〈潜在〉を考察し て、その原理の解明を試みる。

「よく」は、頻度を表す場合だけでなく、量を表すときも依頼や命令など の表現類型と共起しない。

(41) *時間が余っているので、よくしゃべってください。220

(42) *せっかくだから、よく食べなさい。221

(43) *酒をよく飲むと気分が悪くなる。222

上の「よく」をどんなことばに入れ替えると適格文になるかを考えれば、

まず頭に浮かぶのは「たくさん」、「いっぱい」などの量副詞である。

(44) 時間が余っているので、[たくさん/いっぱい]しゃべってくださ い。

(45) せっかくだから、[たくさん/いっぱい]食べなさい。

(46) 酒を[たくさん/いっぱい]飲むと気分が悪くなる。

では、なぜ「ちょくちょく」と「たくさん」、「いっぱい」なら、依頼や希 望の表現との共起が自然に感じられるのか。ここで、「よく」と「ちょくちょ く」両者の細かい差を図式化して説明する。まずは両方とも出来事の回数性 を問題にする場合を考察する。次の図を見てみよう。

220 佐野由紀子「あり方に関わる副詞としての「よく」について」

221 佐野由紀子「あり方に関わる副詞としての「よく」について」

222 佐野由紀子「あり方に関わる副詞としての「よく」について」

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(47) (ちょくちょく)

時間の流れ

● ● ● ● ● ● ● ● ●

(48) (よく)

時間の流れ

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

上の黒い点は出来事を表し、黒い点の数量は出来事が繰り返される回数を 表す。「よく」と「ちょくちょく」両方とも出来事の回数性が高いことを表す 場合には、「よく」と「ちょくちょく」の違いは、黒い点の数量つまり回数の 多さにあるだけである。一方、(35)のように、「よく」は状態や性質を問題 とする場合になると、次の図になり、上の「ちょくちょく」の図と大きく違 う。

(49) (よく)

時間の流れ

● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●

上の図で、もとの黒い点が薄くなり、そして楕円に囲まれているのは、全 体として焦点になることを表す。つまり、この場合の「よく」は、回数性が 抽象化されて、具体性を失い、それが頻繁に発生する「性質」ないし起こり やすい「傾向」に変化したものと考えることもできよう。

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「ちょくちょく」と「よく」の意味素性の違いによって、頻度副詞が依頼

(命令)、希望、勧誘(意志)表現と共起する条件は、その頻度副詞の表す回 数が顕在的でなければならないということが得られる。また、量副詞の場合 も同じように考えられるであろう。「ちょくちょく」の文において、出来事の 回数性が顕在的で、はっきり表れて存在しており、そして「たくさん」、「い っぱい」の表す量も「ちょくちょく」と同じく、顕在的で、はっきりした存 在なので、依頼や意志のモダリティと共起する。一方、頻度の「よく」は、

出来事の回数性を問題にするときもあるが、多くの場合には出来事が頻繁に 起こるという状態説明、属性表現を表す。「よく」の文において、元の顕在的 な出来事の回数性が潜在化されて、全体として出来事が頻繁に発生する「状 態」になる。「よく」は、その回数性がすでに抽象化されて、具体性を失って いるので、上のいう頻度・量と依頼、意志の表現の共起条件を満たすことが できず、依頼、意志の表現と共起すると、不自然文になる。

また、次の例文は頻度の「よく」と共起できるが、それはなぜか。

(50) (グランド開きの前に)このグランドじゃあ、活発な子供はよく怪 我をする。223

(51) 山田さんもこの近くに引越ししたそうです。今後、彼とよく会うで しょう。224

(52) 主人は来月から台湾へ転勤します。これから、よく台湾へいくかも しれません。225

よく考えて見れば、依頼(命令)、希望、勧誘(意志)表現には、相手(自 分)にあることの達成を要求するという共通点を見出すことができる。相手

(自分)にあることをする頻度や量が一定の程度に達するという要求を提出 するため、その頻度副詞や量副詞が表す回数、量は顕在的でなければならな い。上の例からみると、「子供が怪我をする」、「山田さんと会う」、「台湾へい

223 仁田義雄『副詞的表現の諸相』

224 作例

225 作例

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く」事態の発生する頻度が高いということは、要求ではなく単なる話者の推 測に過ぎない。推測は、回数の〈顕在〉と〈潜在〉という頻度副詞の意味素 性に関わりがなく、事態の発生する可能性の有無に関わる問題である。した がって、上の例はいずれも自然文である。

また、次の例のように、「よく」を「ちょくちょく」に入れ替えられない理 由についても回数の〈顕在〉と〈潜在〉で解明できるであろう。

(53) かつて、医療後術が進歩していなかった頃、子供は可愛い盛りに[よ く/*ちょくちょく]死んだ。乳幼児の死亡率は高かった。226

(54) また、飯場暮らしの若手社員には現地採用の女子事務員と手近に恋 愛に陥りやすく、[よく/*ちょくちょく]結婚する。227

(55) 看護婦と医者は[よく/*ちょくちょく]結婚します。228

上の例文は、回数性ではなく「傾向」を問題にしたものなので、共起する 頻度副詞の回数が潜在的でなければならない。したがって、出来事の回数性 が顕在的で、はっきり表れて存在する「ちょくちょく」に入れ替えると、逸 脱性が生じる。

4 まとめ

以上、動詞との共起関係から、頻度の「よく」の意味を考察したことをま とめれば、次のようになる。

(a) 頻度の「よく」の修飾成分は、様態副詞の「よく①」と程度副詞に似た働 きを持つ「よく②」と違って、動きの外側から事態の成立状況を限定して いる。

(b) 頻度の「よく」と共起する動詞のタイプについて、頻度の「よく」は、

動詞句をスコープとし、動きの外側の位置で働くものなので、反復発生す

226 http://usjuku.jugem.jp/?eid=1099

227 http://careerconnection.jp/review/kutikomiList.html?corpSeq=2784

228 http://ton.2ch.net/hosp/kako/1016/10166/1016656807.html

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ることができる動作を表す動詞であれば、頻度の「よく」と共起可能であ る。よって、共起する動詞の幅は「よく①」と「よく②」より広い。

(c) 「死ぬ」、「結婚する」などのような一回的な意味を持つ動詞は、基本的に 頻度の「よく」と共起しにくい。共起しても、次のような特徴が見られる。

① 動作主が単数でなく複数であるということ。

② 文脈で「場所、対象、時間」などの成分が限定されているということ。

(d) 時間の観念を超越して状態を表す状態動詞と第四種の動詞は、反復発生す ることができる動作を表す動詞でないため、頻度の「よく」と共起するの は不可能である。したがって、頻度の「よく」と共起する「ある」、「いる」

は静的述語としての用法でなく、動的述語としての用法だと考えられる。

また、「よく」と「ちょくちょく」の異同についても考察してきた。両者の 違いをまとめれば、次のようになる。

(a) 頻度の高さが違う。仁田(2002)によれば、「よく」は「次から次へと X 人が来る」の構文に挿入可能で高頻度の副詞に属し、「ちょくちょく」は挿

(a) 頻度の高さが違う。仁田(2002)によれば、「よく」は「次から次へと X 人が来る」の構文に挿入可能で高頻度の副詞に属し、「ちょくちょく」は挿