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3 量副詞「たくさん」との違い

3.2 両者が表す「量」の違い

立 政 治 大 學

N a tio na

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蔵されているのである。

3 量副詞「たくさん」との違い

大辞泉によると、「たくさん」の用法は次のように述べられている。

①数量の多いこと。また、そのさま。多数。副詞的にも用いる。

例:「たくさんな(の)贈り物」「本をたくさん持っている」

② 数量が十分であること。十分で、それ以上はいらないこと。また、そのさ ま。 例:「お説教はもうたくさんだ」

③(名詞に付き、多く「…だくさん」の形で)それが十分であったり、十分 すぎたりするさま。

例:「子だくさん」「盛りだくさん」

「たくさん」は名詞、形容動詞、副詞という三つの用法を持つが、「よく」

との類義関係にあるのは「たくさん①」の副詞の用法だと考えられる。した がって、本稿でいうのは副詞としての「たくさん①」である。

3.1 類別の違い

「よく」と「たくさん」の異同について、まずは類別の違いを述べる。前 にも述べたように、仁田(2002)は、「よく」は形容詞を修飾できないから基 本的に様態副詞で、ある条件が揃うと量程度副詞として使えると指摘してい る。量程度副詞としての「よく」は、形容詞に係らないが、動詞に係り、そ の動きの質、動きの量、ものの属性や状態の程度限定を行うことができる。

一方、「たくさん」は、人・物の数量を表すもので、形容詞に係りその属性・

状態の程度限定を行うことができず、典型的な量副詞に属する。

3.2 両者が表す「量」の違い

次は量副詞「たくさん」が表す量を考察し、「よく」との異同を明らかに する。次の例を見てみよう。

‧ 國

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(27) それから、この街にはオレみたいに苦労をして、つらい思いをして 流れてきた人がたくさんいる…。173

(28) 日本人は、世界のどの国の人よりも、その数において、また種類に おいて、魚をたくさん食べるので、魚の食べ方については世界で一番 すぐれた知識をもっているといえる。174

(29) 幸恵は船柄の網元の娘で、お嬢さん育ちのはずなのに、性格も口調 もざっくばらんである。しかも、何でもよく食べる。175

(27)の「たくさん」は主体である「人」の数量を表す。(28)で、「たく さん」は対象である「魚」の数量を表し、それに対して、(29)の「よく」は

「食べたものの量」を表すのでなく、「食べる」という動きの量が多いことを 表す。

つまり、「たくさん」の主な働きは、量程度副詞としての「よく」と違って、

動きの量や主体の状態・属性・態度の量などを修飾するのでなく、主体や対 象の量を修飾するということである。では、はじめに提起した問題を分析す る。次の例文の「よく」は、なぜ量副詞「たくさん」に置き換えることが可 能なのか。

(30) 順子は、[よく/たくさん]しゃべる人だなと思った。同時に安心 感を覚えた。176

(31) 幸恵は船柄の網元の娘で、お嬢さん育ちのはずなのに、性格も口調 もざっくばらんである。しかも、何でも[よく/たくさん]食べる。177

(32) 子ども達は[よく/たくさん]走る。一人でも走るし、友だちと一 緒だともっと走る。178

(33) 私も忙しくて、手紙が遠のいているのに気づくと「昨曰は雨が[よ

173 今西乃子『ちかい家族とおい家族』

174 末広恭雄『日本の魚』

175 佐直義治『和田一族の末裔』

176 亀山等『春陽』

177 佐直義治『和田一族の末裔』

178 下住まゆり『あなたのうた』

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く/たくさん]降ったが、そっちはどうでした」等と電話する。179

(34) あたりまえのようだが、息を[よく/たくさん]吐くことが、[よ く/たくさん]吸うため、酸素を十分に取り入れるための条件なので ある。180

以上の例文で、「しゃべる、食べる、走る、降る」などの動作をいくら持続 させても、その動きの量が増えるだけで結果はだんだんよくならない。した がって、(30)~(33)の「よく」が表すのは「よく①」の意味でなく、「よ く②」の意味であり、主に動きの量を修飾する。(34)の「よく吐く」、「よく 吸う」は、「よく①」の意味にも「よく②」の意味にも解釈でき、上に述べた

「よく①」と「よく②」の間に曖昧な存在である。仁田(2002)は、量副詞 の代表的で中心的な働きは、主体や対象の個体の数量限定であり、動きの量 限定は、周辺的な用法であると指摘している。(33)で「たくさん」は主体で ある「雨」の量を、(34)では対象である「息」の量を限定している。(30)

~(32)のような主体や対象の数量が明確に表されていない場合、「たくさん」

は「よく」と同じく動きの量限定を行っていると考えられる。

引き続き、次の「たくさん」が用いられる例が、「よく」に置き換えると不 自然文あるいはもとの意味と違う例文になる理由について説明する。

(35) 「そのほかにも、女性ができる仕事は[たくさん/*よく]ありま す」181

(36) アメリカの戦略、世界戦略の展開のために不可欠なものというのを 日本は[たくさん/≠よく]作っている。182

(37) 私はマキにくだらない冗談を[たくさん/≠よく]言い、「手紙、た くさんちょうだいね」と言って笑ってみせた。183

179 畠山久米子『わが心の故郷満州の広野』

180 岡野守也『生きる自信の心理学』

181 逢坂剛『[ノスリ]の巣』

182 2002 年国会会議録)

183 小池真理子『夢のかたみ』

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上の「たくさん」はすべて主体や対象の数量を表す。(35)は、主体である

「女性ができる仕事」の数量、(36)(37)は、対象である「アメリカの戦略、

世界戦略の展開のために不可欠なもの」「冗談」「手紙」の数量をそれぞれ表 す。「よく」は主体の数量を表すことができず、「ある」と共起するとき頻度 としか解釈できないので、(35)の「たくさん」を「よく」に入れ替えると不 自然文になる。(36)の「よく」は後ろの「作っている」に係って「うまく」

の意味を表すので、もとの「たくさん」が表す量の意味と違う。(37)の「よ く」は動きの量と解釈しにくく、頻度と解釈しやすいので、もとの「たくさ ん」が表す量の意味と違う。

4 まとめ

以上、動詞との共起関係から、「よく」が表す量の意味を考察したことをま とめれば、次のようになる。

(a) 「よく」は量の意味を含んでいるが、主な働きは動きや主体の状態・属性・

態度の程度性を修飾することで、量の意味は程度性が高められると共に招 来される結果だけである。

(b)「よく①」は動きの量に限らず客体の変化する量、要する時間あるいは事 柄の量も表すことができる。

(c) 主体の具体的な動作を表す動詞にかかる「よく②」は動きの量を表し、非 動作動詞にかかる場合は、「主体の状態・属性・態度の量」を表す。

また、「よく」と「たくさん」の異同についても考察してきた。その結果、

次のことが明らかになった。

(a) 類別が違う。「よく」は、動詞に係り、基本的に様態副詞で、ある条件が揃 うと、量程度副詞として、動詞の動きの質、動きの量、ものの属性や状態 の程度限定を行いうる。一方、「たくさん」は、人・物の数量を表すもので、

典型的な量副詞に属する。

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(b) 両者が表す量が違う。「よく」は主に動きの量や主体の状態・属性・態度 の量を表し、焦点を「動詞」に置く。それに対して、「たくさん」の代表的 で中心的な働きは、主体や対象の個体の数量限定であり、動きの量限定は、

その周辺的な用法であり、焦点を主体や対象としての「名詞」に置く。

‧ 國

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第 5 章 「よく」と頻度副詞「ちょくちょく」

1 はじめに

多義語の「よく」について、前に考察した様態、程度、量の意味用法を除 いて、もうひとつの重要な働きは、頻度副詞の用法である。頻度の「よく」

は、多くの場合に「ちょくちょく」と互いに置換することができ、「事態の発 生する回数が高い」ことを表す。たとえば、次のような例文の「よく」は、

いずれも「ちょくちょく」と置き替えられる。

(1) 「昼間はオムライスが大好きで[よく/ちょくちょく]ここに来ます。

でも今夜はお肉にします。お肉もここはおいしいの」184

(2) [よく/ちょくちょく]「恋をすると女性は美しくなる」といわれます が、それは、相手にもっと愛されるようになろうと、スキンケアを念 入りにしたり体重管理に心を配ったりして、一生懸命綺麗になる努力 をするからです。185

(3) 新幹線を[よく/ちょくちょく]利用するビジネスマンにとって、駅 弁を買って車内で食べることは楽しみの一つです。186

「よく」は「ちょくちょく」と同様に頻度副詞として動詞を修飾すること ができるが、次の例のように、互いに置き換えられない場合がある。したが って、両者の間に何らかの違いが存在すると思われる。

(4) [ちょくちょく/*よく]幸子さんを連れ出して下さい、と園長は嬉し そうに答えた。187

(5) 富小路さんには、[ちょくちょく/*よく]テレビに出てもらいたい。188

(6) 美味かったですね。これからも[ちょくちょく/*よく]行きましょう。

184 坂上弘『近くて遠い旅』

185 浅野裕子『女の運命を動かす 100 の方法』

186 小島章裕『儲けのヒントはこの本から盗みなさい!』

187 ケニー・マン『天使のままで』

188 有吉佐和子『悪女について』

‧ 國

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上の例からして、同じ文末表現において、「ちょくちょく」と「よく」の適 格性が違うということがわかる。つまり、「よく」は頻度あるいは量の意味を 表すとき、依頼(命令)、希望、勧誘(意志)を表す文末表現と共起すること ができない。が、なぜ上のような「ちょくちょく」の使える文脈で「よく」

上の例からして、同じ文末表現において、「ちょくちょく」と「よく」の適 格性が違うということがわかる。つまり、「よく」は頻度あるいは量の意味を 表すとき、依頼(命令)、希望、勧誘(意志)を表す文末表現と共起すること ができない。が、なぜ上のような「ちょくちょく」の使える文脈で「よく」