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副詞「よく」については、諸先行研究ですでに分析と考察がなされている が、上に述べたように、いろいろな問題点はまだ解明されておらず、深い考 察が保留になっている観がある。そこで、本研究は、先行研究を踏まえて、

「よく」と動詞との共起関係を起点とし、ほかの副詞「とても」や「たくさ ん」、「しっかり」、「ちょくちょく」などとの関わりを研究することを通して、

「よく」の文法的な性質を全般的に考察しようと思う。6

3 研究方法

まず、インターネットに公開されている小説や新聞などのコーパスを利用 し、用例を集める。それから、集めた資料の分析から、その規則を帰納し、

一般化を試みる。本研究は、動詞分類によって、「よく」の多義性をテストす ることを通して、「よく」の独自の性質について考察を試みる。

6 「よく」は、もともとは形容詞「よい」の連用形なのだが、すでに独立した語になって おり、「良好」という意味をほとんど持たず、副詞的に使われる。次のような用法は「よい」

の連用形とみなして研究範囲に入れないことにする。

「ええ、大分、気分がよくなりましたわ、でも、何だか體が怠くて— 」(山崎豊子『白い巨 塔』)

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第 2 章 「よく」と様態副詞「しっかり」

1 はじめに

「よく」は、多くの場合に「しっかり」と互いに置換することができ、「し っかり」と似た働きを持っている。たとえば、次のような「よく」を用いる 例文は、「しっかり」に入れ替えても差し支えない。

(1) 両親とか兄弟とか友人とかと[よく/しっかり]話し合って、あなた の考え方が世間で通用するかどうか、今一度考え直して下さいよ。7

(2) どんなものでもよくかむこと。[よく/しっかり]かんで食べれば胃の 負担が少なくなります。8

(3) ぬるま湯で石けんや洗顔料を[よく/しっかり]泡立て、肌の上で泡 をころがすような気持ちで洗います。9

しかし逆に、「しっかり」が用いられる例文を見ると、むしろ「よく」に置 き換えることができない場合が多い。たとえば、

(4) 晴夫は「そうだよ。ゆっくり休んで、子供達との思い出を[しっかり

/*よく]作りなさいや。私は明日忙しいから寝るよ」と床についた。

10

(5) 夫と私が園の夏祭りに参加したときも、ごみ置き場の前に守護神よろ しく陣取り、ごみを捨てに来た人たちに「缶はこっち、紙はここ」と、

いちいち分別の世話を焼いている兄の姿を[しっかり/*よく]目撃し てしまった。11

(6) もちろん 100 点を取ることは大切ですが、それがどれだけ人生で役に 立って、日常生活に役に立つものなのかということを、授業の中で教

7 北路冬人『カメレオン賛歌』

8 河野友美・高山英世共著『高年者食事』

9 かづきれいこ『美肌をつくるメイクの法則(ルール)』

10 山田芝夫『てるてるぼうず』

11 信田妙子『星さん出とるで明日は天気』

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えていく習慣や仕組みを[しっかり/*よく]持つことが重要です。12

なぜ(1)~(3)の例文においての「よく」と「しっかり」が置き換えら れるのに対して、(4)~(6)の「しっかり」を「よく」に入れ替えると不適 格文になるのか。一体両者の間にどのような違いがあるのか。上述の問題を 解明するために、次は、「よく」と「しっかり」と共起する動詞の性質を別々 に考察して、両者の異同を明らかにする。

2 「よく①」と共起する動詞の性質

『大辞林』によると、「よく」は多様な意味を担っている。その中で、程度 副詞的用法は次のように述べられている。

① 十分に。念を入れて。手落ちなく。ていねいに。

例:「よく調べる」、「よく洗えば落ちる」

② 非常に。大変に。

例:「よく晴れた日」「よくできる人」「よく食べる奴だ」「よく走る」

上が示すように、程度副詞として用いられる「よく」は①と②の意味に分 けられる13。以下はこの二つの意味の順番に従い、動詞と程度副詞として用 いられる「よく」との共起制限に、「動詞の性質」と「動詞の意志性」、「プラ ス・マイナスの意味」と「動詞の程度性」などが関わっていることを指摘す る。

「よく」は「十分に、念を入れて、手落ちなく、ていねいに」を表すとき、

どんなタイプの動詞と共起するのか。まず、その例を見てみよう。

(7) 両親とか兄弟とか友人とかとよく話し合って、あなたの考え方が世間

12 堀井恵『先生と生徒の心をつなぐ NLP 理論』

13 便宜上、以下は、①の意味を表す「よく」を「よく①」で、②の意味を表す「よく」を「よ く②」で表示することにする。ほかの副詞は一つ以上の意味を持てば、同じような表示法で 表示する。

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動詞を持つ他動詞、いわゆる「有対他動詞」21が取り上げられる。こういう 動詞の動作を重ねるとともに、客体が変化を受ける程度も高まる。例えば、

(12)で、「泡立てる」という動きが加えられることによって、客体の「石け んや洗顔料の泡」はだんだんと増える。(13)も同様、「冷ます」という動作 が重ねられるとともに、「タマネギの温度」もだんだん低くなる。

では、こういう性質を有する動詞を修飾する「よく」は、どんな働きをし ているのか。近藤(1986)で提示されているように、この場合の「よく」は 他動詞に対応する自動詞の表す状態への接近度を表している。(12)の「泡立 てる」は洗顔料が完全に泡だった状態を、(13)の「冷ます」はタマネギが完 全に冷めた状態を、目指しての動作を表す。つまり、この場合の「よく」は、

動作を重ねることによって招来された結果状態が、その他動詞に対応する自 動詞が表す状態になることを表している。図示すれば、次のようになる。

(14) 動作を重ねる 他動詞

(例:冷ます 冷ます 冷ます 冷ます)

●目標

客体が段階的に自動詞の表す状態に変化する 自動詞

(例:タマネギが冷めた状態)

また、「泡立てる」、「冷ます」などと違って、対応する自動詞を持たない「無 対他動詞」、例えば、「話し合う」、「見る」、「聞く」、「調べる」、「かむ」など の動詞が「よく」と共起する場合も同じである。たとえば、(11)の「かむ」

は食べ物が完全に砕けた状態を、(7)の「話し合う」は、相談することに対 して、相談に参与する人の考えが完全に互いに理解された状況を、目指して の動作を表す。(8)の「調べる」と(9)の「見る」と(10)の「聞く」も同

21 ある動詞は「立つ(自動詞)-立てる(他動詞)」のように自動詞と他動詞が対応してい る。これを有対動詞と言う。その自動詞の方が有対自動詞で、他動詞の方が有対他動詞であ る。

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じように、対象が完全に理解された状態を目指しての動作を表す。ここで鍵 となるのは、「見る」や「聞く」時間の長さや「調べる」事柄の多さなどでは なく、動作を重ねることによって招来された結果状態が極限に達するか否か、

ということである。その結果状態が極限に達すると同時に、動きも限界にな る。したがって、(7)~(13)の「よく」の働きは、動きの極限的な程度に ついて限定を行うことであるといえる。図示すれば次のようになる。

(15)

動作 動作 動作 動作 動作の完遂

(例:かむ かむ かむ かむ)

●︳限界

結果が漸進的によくなる 結果が極限に達する

(例:食べ物が完全に砕けた状態)

動作時間の長さは問題の鍵でないにもかかわらず、完全に関係ないとはい えない。動作を重ねることによって招来された結果状態が極限に達するため には、その動作はある一定の時間持続しなければならない。言い換えれば、

瞬間動詞は程度副詞としての「よく」と共起することができない。次に挙げ る動詞は意志動詞でありながら、瞬間動詞に属するので、程度副詞の「よく」

と共起することができない。「よく」と共起する場合があっても、頻度としか 解釈できない。

(16) (程度の)*よく「結婚する、卒業する、死ぬ、出発する、到着す る、目撃する、一瞥する、座る、入る、出る、乗る…」

以上から、「よく」と共起する動詞はある一定の時間持続するということが わかったが、その動詞が必ずしも長時間持続するというわけではない。もち ろん、動作の結果が極限状態に達するためには、その動作に要する時間は相

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対的に長くなる。たとえば、(13)において、炒めたばかりのタマネギが完全 に冷めた状態に達するには、通常長い時間を必要とする。しかし、扇風機な どを使えば、短時間でもタマネギを完全に冷めた状態に到達させることがで きる。したがって、程度の「よく」は、有対他動詞や他動性22の高い動詞と 共起するとき、その動詞の表す動作の完遂することを限定する点が重要であ る。

また、知覚動詞「見る」、「聞く」と心理的働きかけ性の強い動詞「調べる、

話し合う、確かめる、持て成す、謝る、選ぶ、捜す、見比べる、目を配る、

言い聞かせる、教える」など、他動性の低い動詞も同じである。動作を重ね ることによって招来される結果が一番よい状況に達するには、要する時間や 事柄の量は相対的に多くなる。しかし、動作主体が客体に対して注意を深く 集中すれば、短時間でも達することができる。それゆえ、この種類の動詞と

言い聞かせる、教える」など、他動性の低い動詞も同じである。動作を重ね ることによって招来される結果が一番よい状況に達するには、要する時間や 事柄の量は相対的に多くなる。しかし、動作主体が客体に対して注意を深く 集中すれば、短時間でも達することができる。それゆえ、この種類の動詞と