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副詞「YOKU」之意義用法-以比較類義副詞為中心 - 政大學術集成

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Academic year: 2021

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(1)國立政治大學日本語文學系 碩士論文. 指導教授:吉田妙子 博士. 立. 政 治 大. ‧ 國. 學. 副詞「よく」の意味用法. ‧. -類義の副詞との比較を中心に-. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. i n U. 研究生:杜宜衿 撰 中華民國一百年一月. v.

(2) 要旨 本論文は、「よく」と動詞との共起関係を起点とし、様態副詞「しっかり」、 、頻度副詞「ちょくちょく」など 絶対程度副詞「とても」、量副詞「たくさん」 の類義副詞との異同を比較することを通して、副詞「よく」の意味用法を明ら かにすることを目的とする。 本論文は 7 章から構成されている。第 1 章は序論である。第 2 章から第 3 章までは、「よく」が程度副詞として用いられる条件及び「しっかり」、「とて も」との異同を論述する。第 4 章では、 「よく」の表す量の意味と「たくさん」 との異同を考察する。第 5 章では、「ちょくちょく」との異同を比較すること を通して、頻度の「よく」の意味と文末表現との共起制限について論ずる。第 6 章では、評価の「よく」の文法的な性質を考察する。第 7 章は結論である。 「よく」については、先行研究は主に程度、頻度、評価の三つの用法を考察 しているが、「なぜ心理動詞が程度の「よく」と共起しないのか」の理由を説 明できない。この問題を解明するために、まず本研究は、従来「程度」と捉え られている「よく」を「よく①」と「よく②」とに分けた。それらと共起する 動詞の性質を考察すると、次のことが明らかになった。 1.「よく①」と共起する動詞が意志動詞、「〈反復性〉を持つ動作を重ねれ ば重ねるほど結果がよくなる」という性質を持ち、そして低から高への程度性 とプラスの意味を持っているということ。 2.「よく②」と共起する動詞は、動作動詞と非動作動詞とに分けられる。 動作動詞と共起する場合、「よく」は主体や対象の量を修飾するのではなく、 動きの量を修飾する。そして、「よく」に修飾された動詞は形容詞に似た働き を持っている。非動作動詞と共起する場合、共起する動詞の特徴は低から高へ の程度性を持つことと、プラス評価を表すこと、動詞の程度性が明らかに表し うることである。 本論文は、心理動詞が程度の「よく」と共起しにくいのは心理動詞が上の性 質を有しないためだと主張したい。本論文の分析を通して、程度副詞としての 「よく」 (「よく①」と「よく②」を含む)が、様態副詞、程度副詞、量副詞に 似た働きを持つものの、様態と量と程度の間で連続層をなしている副詞で、独 自の性質を有するものであることがわかった。また、本論文では「よく」と他 の類義副詞との異同も明らかにされた。 「よく」が「しっかり」、 「とても」、 「た くさん」、 「ちょくちょく」と似た働きを持っているが、ある場合に置換するこ とができない。それは、「よく」の働きが他の類義副詞より抽象度が高いため だと考えられる。. 立. 政 治 大. ‧. ‧ 國. 學. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. i n U. v. キーワード:よく、様態副詞、程度副詞、量副詞、頻度副詞、評価副詞.

(3) 摘要 本論文以副詞「よく」與動詞的共起關係為研究起點,並欲透過比較副詞「よ く」與樣態副詞「しっかり」、絕對程度副詞「とても」、量副詞「たくさん」、 頻度副詞「ちょくちょく」等類義副詞之異同,來闡明副詞「よく」之意義用法。 本論文共分七章。第一章為序論。第二章到第三章是在論述「よく」做為程 度副詞使用的條件,以及與「しっかり」、 「とても」之異同。第四章則是研究「よ く」量的意思以及其與「たくさん」相異之處。第五章則是透過比較「よく」與 「ちょくちょく」之異同來論述「よく」的頻度意思以及其句末表達的共起限制。 第六章則是在分析評價的「よく」之文法性質。第七章為結論。 過去關於「よく」的研究主要在分析程度、頻度、評價這三種用法,然而卻 無法說明「為何心理動詞無法和程度的「よく」共起」之原因。為了解開此疑問, 首先本文將過去所認為表示程度的「よく」分為「よく①」與「よく②」,分別 觀察其共起動詞的性質後,發現以下兩件事:. 政 治 大 1.和「よく①」共起的動詞皆為意志動詞,並具有「越重複做〈反復性〉動作 立 結果會越來越好」這樣的特性,也擁有由低至高的程度性及正面意思。 ‧. ‧ 國. 學. 2.和「よく②」共起的動詞可分為動作動詞和非動作動詞。和動作動詞共起時, 「よく」所修飾的並非主體或對象的量,而是動作的量。並且「よく」所修飾的 動詞具有類似形容詞的功能。和非動作動詞共起時,共起動詞的特徵為具有由低 至高的程度性、正面評價、能明確表現動詞的程度性等功能。. n. al. er. io. sit. y. Nat. 本論文主張心理動詞之所以無法與程度的「よく」共起乃因心理動詞不具有 上述之性質所致。透過本論文的分析,可知做為程度副詞的「よく」(包含「よ く①」與「よく②」)雖然擁有和樣態副詞、程度副詞、量副詞類似的功能,但 實際上是游移在樣態、量和程度之間,可說是非常獨特的副詞。此外,本文也說. Ch. i n U. v. 明了「よく」和其他類義副詞之相異處。「よく」雖具有和「しっかり」、「とて も」、 「たくさん」、 「ちょくちょく」相似的功能,但有時並無法替換,這乃是因 「よく」功能的抽象度高於其他類義副詞所致。. engchi. 關鍵字:よく、樣態副詞、程度副詞、量副詞、頻度副詞、評價副詞.

(4) 謝辭 那一年,我帶著剛考上政大時的欣喜以及對未來研究生活的憧憬,踏進夢想 中的政大校園。從那日起,我就一直期待自己寫謝辭的那一天。一千多個日子過 去了,這一天終於讓我等到了,現在心中的激動真是非言語所能形容。 首先,我最要感謝的人就是我的指導教授吉田妙子老師。這篇論文是以二年 級下學期的期末報告為基礎發展而來的,那時吉田老師不僅在評語中勉勵我,更 是在分數上給予我肯定。人家說萬事起頭難,若當時沒有老師的支持,我想我一 定沒有信心繼續研究下去。去年五月,適逢東海大學舉行副詞相關的學術研討 會,吉田老師以師生共同發表的形式,帶著我到東海大學發表論文。因為那場學 術研討會,我得以認識許多有名的語言學專家,例如在本論文中常引用的文獻作 者仁田義雄教授,以及野田尚史教授等,讓我在學術上的視野更為廣闊,這都要 感謝以神的愛來愛學生的恩師。同時,感謝擔任論文口試委員的蘇文郎老師以及 東海大學的黃淑燕老師,對本篇論文思慮不周之處,不吝提供許多寶貴的意見, 使得本篇論文更臻至完善,在此謹向兩位老師致上最大的謝意。此外,感謝外語 學院院長于乃明老師,在去年五月率領我們幾位研究生前往韓國高麗大學參加學 術研討會,讓我們與來自中國大陸與韓國優秀的研究生互相交流,在韓國留下美 麗的回憶。也感謝任用我當研究助理的蔡瓊芳老師,在學期間,老師不僅在課業 上做我的精神支柱,更在生活上做我的經濟支柱。還有王淑琴老師總是在我為論 文煩憂時適時給予我鼓勵與關懷。在此向這三位老師獻上我最深的謝意。. 立. 政 治 大. ‧. ‧ 國. 學. n. al. er. io. sit. y. Nat. 其次,感謝真如苑提供高額獎學金讓我得以赴日收集許多珍貴的相關資料。 再來要感謝的是助教庭筠學姊,以及同在研究室奮鬥的同學們。遠在日本念博班 的秉杰學長、工作中的志傑學長、幫我惡補語言學的麻紀學姊、當兵的昭英學長、 凱博學長,感謝你們以過來人的身分,在學術上以及研究生活上不斷地給我寶貴 的建議。還有一起考進政大的禮寧、毓瑾、雅涵、毓親,語學組的學弟妹們,我 永遠不會忘記跟你們在研究室互吐苦水、聚餐的點點滴滴。因為有你們的陪伴, 使我在政大的日子不至孤單而充滿歡笑。還有,感謝我的日本友人深川先生,在 論文寫作期間,一直提供我所沒有的日語語感,若沒有他的幫忙,我想這篇論文 也不會順利完成。 再來,我要感謝一直在背後默默支持我的媽媽、哥哥、大嫂、姊姊、姊夫、 弟弟。尤其是媽媽、哥哥、大嫂,由衷地感謝你們肯在經濟上支援我,並且常常 忍受我寫不出來時的吼叫、眼淚,你們永遠是我最心愛最重要的家人。這些漫長 的日子,有好幾次,遇到過不去的關卡,以為自己走不下去了,感謝教會的弟兄 姊妹為我多方代禱,使我能走到畢業,你們就像雲彩圍繞在我身旁,讓我感受到 無比的溫暖。除此,我感謝那些曾經不看好我的人,正因為有你們的刺激讓我憑 著一股氣拼出這本論文。最後,我感謝一直引領我前面道路的主,榮耀歸給祂。 我想畢業不是代表結束,而是另一階段的開始,我期許自己日後能努力不懈,不 斷尋求自我超越,為自己的人生增添更多驚嘆號。. Ch. engchi. i n U. v.

(5) 目次 第1章. 序論. 1 研究動機及び目的…………………………………………………………….1 2 先行研究……………………………………………………………………….2 2.1 森田(1989) ………………………………………………………………2 2.2 飛田・浅田(1994) ………………………………………………………3 2.3 近藤(1986) ………………………………………………………………4 2.4 森本(1992) ………………………………………………………………4 2.5 仁田(2002) ………………………………………………………………5 2.6 佐野(2006) ………………………………………………………………6 2.7 先行研究のまとめ及び問題点 ……………………………………………7 3. 研究方法 ……………………………………………………………………8. 立. ‧ 國. 「よく」と様態副詞「しっかり」. 學. 第2章. 政 治 大. ‧. 1 はじめに……………………………………………………………………….9 2 「よく①」と共起する動詞の性質…………………………………………10 3 様態副詞「しっかり」との違い……………………………………………14 3.1 本質が違う………………………………………………………………….16 3.2 共起成分の違い…………………………………………………………….16 4 まとめ…………………………………………………………………………21. er. io. sit. y. Nat. al 「よく」と絶対程度副詞「とても」 iv n. 第3章. n U engchi はじめに………………………………………………………………………24. Ch. 1 2 「よく②」と共起する動詞の性質…………………………………………25 2.1 主体の具体的な動作を表す動詞と共起する場合……………………….26 2.2 主体の状態・属性を表す動詞と共起する場合………………………….29 3 絶対程度副詞「とても」との違い…………………………………………34 3.1 類別の違い………………………………………………………………….35 3.2 共起成分の違い…………………………………………………………….35 3.2.1 限界を有しない進展的変化動詞 ………………………………………38 3.2.2 内的情態動詞 ……………………………………………………………42 3.2.3 程度性を有する静態動詞 ………………………………………………45 3.3 修飾スコープの違い……………………………………………………….46 4 まとめ…………………………………………………………………………47. 第4章. 「よく」と量副詞「たくさん」.

(6) 1. はじめに……………………………………………………………………..51 2 「量」を含意する「よく①」と「よく②」……………………………...51 2.1 「よく①」が表す「量」…………………………………………………52 2.2 「よく②」が表す「量」…………………………………………………53 2.2.1 主体の具体的な動作を表す動詞と共起する場合…………………….53 2.2.2 主体の状態・属性を表す動詞と共起する場合……………………….54 3 量副詞「たくさん」との違い……………………………………………...56 3.1 類別の違い…………………………………………………………………56 3.2 両者が表す「量」の違い…………………………………………………56 4 まとめ………………………………………………………………………...59. 第5章. 「よく」と頻度副詞「ちょくちょく」. 1 はじめに………………………………………………………………………61 2 頻度の「よく」と共起する動詞の性質……………………………………62 3 頻度副詞「ちょくちょく」との違い………………………………………68 3.1 表す頻度の違い…………………………………………………………….68 3.2 共起制限の違い…………………………………………………………….70 4 まとめ…………………………………………………………………………74. 立. ‧ 國. 學. 評価副詞の「よく」. ‧. 第6章. 政 治 大. al. er. io. sit. y. Nat. 1 はじめに………………………………………………………………………76 2 先行研究………………………………………………………………………77 2.1 命題とモダリティ………………………………………………………… 77. n. 2.2 モダリティ副詞の研究…………………………………………………….79 2.3 評価副詞について………………………………………………………….80 3 評価副詞「よく」の機能……………………………………………………82 3.1 プラス評価とマイナス評価……………………………………………….82 3.2 評価副詞「よく」の文法特徴…………………………………………….85 3.2.1 共起する動詞のタイプ..…………………………………………………85 3.2.2 述語動詞にル形とタ形の意味の違い..…………………………………86 3.2.3 モダリティ表現との共起制限 …………………………………………87 4 まとめ…………………………………………………………………………91. 第7章 1 2. Ch. engchi. i n U. v. 結論. 本論文の結論…………………………………………………………………93 今後の課題…………………………………………………………………..100 参考文献………………………………………………………………………..101.

(7) 第1章 1. 序論. 研究動機及び目的 副詞「よく」は、多様な語句と結びつき、様々な意味を表す。 『大辞林』に. よると、 「よく」は「十分に、ていねいに、非常に、しばしば、その行いを褒 めるあるいは非難する」などの意味を含んでいる。 「よく」については、従来 の先行研究が「基本語的な語で結びつく語が多く、多義性がある」とその特 徴を記しているが、そのため、不自然な誤用文も生まれやすい。たとえば、. (1) *先週、授業で先生の質問が答えられないとき、よく緊張しました。. 立. 政 治 大. のような例文で、 「とても」、 「非常に」など他の高い程度を表す副詞を入れ替. ‧ 國. 學. えると適格文になる。次のような例文も同じである。. ‧. (2) まだ一年生で十四歳位のこと、何かが話題になり次々と意見が出たと き、K さんが立って「それは机上の空論です」と言って自分の意見を. y. Nat. sit. 堂々と述べました。私は「机上の空論」というのは初耳だったので[と. n. al. er. io. ても/*よく]驚きました。1. i n U. v. (3) 新入社員たちは、新しい職場に入って四月のうちは[とても/*よく] 緊張しています。2. Ch. engchi. (4) しかしカナダに行くときは今までと違い、ホームステイではないため ホストファミリーに頼ることもできず、まったく一人でしたので母は [とても/*よく]心配しました。3. 上の例文によると、 「よく」は「とても」、 「非常に」などと同じく、動きや 状態の程度が高いことを表すが、 「驚く」、 「緊張する」、 「心配する」などの心 理動詞とは共起しにくいことがわかる。しかし、それはなぜであろうか。仁. 1 2 3. 佐保川ふみ『忘れ水』 渋谷昌三『部下を動かす心理学』 宇津宮薫『母への通信簿―天国で受け取ってね』 1.

(8) 田(2002)は「よく」を様態副詞に分類しているが、上記の誤用例を見ると 外国人学習者は「よく」を程度副詞と捉えているようであり、ある条件が揃 うと程度副詞として用いられるのではないか。 また、 「顔を[よく/しっかり]洗ってください」、 「家を[しっかり/*よく] 建てなさい」、 「彼女が食事を[たくさん/よく]食べる理由」、 「お金、 [たく さん/*よく]ちょうだい」、 「新幹線を[よく/ちょくちょく]利用するビジ ネスマン」、「 [ちょくちょく/*よく]幸子さんを連れ出して下さい」のよう に、 「よく」は、様態副詞「しっかり」、量副詞「たくさん」、頻度副詞「ちょ くちょく」と、互いに入れ替えられる場合もあり、入れ替えられない場合も ある。それはなぜであろうか。. 政 治 大. 上述の問題を解明するために、本研究は、 「よく」と動詞との共起関係を起. 立. 点とし、 「しっかり」、 「とても」、 「たくさん」、 「ちょくちょく」などの類義副. ‧ 國. 學. 詞との異同を比較することを通して、「よく」の文法的な性質(「よく」が程 度副詞として用いられる条件を含んでいる)を考察しようと思う。. ‧. 先行研究. 2. y. Nat. sit. 「よく」についての先行研究には、近藤(1986)、森本(1992)、仁田(2002)、. n. al. er. io. 佐野(2006)などがある。用法辞典系では森田(1989)、飛田・浅田(1994) にも「よく」の用法の説明がある。. 2.1. Ch. 森田(1989). engchi. i n U. v. 森田(1989)は、「よく」の意味を次のように記述している。. (a)困難な事柄を遂行したことに対する評価 ①肯定的な評価の場合 (5) 子供一人でよく東京まで出て来られたね。 (6) たった一か月でよくあんなに外国語が上手にしゃべれるようになった ものだ。 ② 否定的な評価の場合 (7) 教えを受けた先生によくあんな失礼な口が利けたものだ。 2.

(9) (8) よく嘘をついてくれたな。 (b) 行為・作用のおこなわれ方の説明 ①行為・作用の完全さを表す場合 (9). この汚いズボンをよく洗ってください。. (10). 次の文章をよく読んで、あとの設問に答えなさい。. (11). あの人はよく知っている。. (12). 双子なのでよく似ている。. (13). よく消える消しゴム。 ② 行為・作用の頻繁さを表す場合. (14). 昔はよく古本屋めぐりをしたものだった。. (15). 彼はよく電話を掛けてくる。. 政 治 大. 立. ‧ 國. 學. 森田(1989)の「困難な事柄を遂行したことに対する評価」は、対事的モ ダリティを表す用法に相当する。程度と頻度の用法はそれぞれ「行為・作用. y. Nat. 飛田・浅田(1994). sit. 2.2. ‧. の完全さを表す」、「行為・作用の頻繁さを表す」と指摘している。. n. al. er. io. 飛田・浅田(1994)は、ニュアンスやプラス/マイナスのイメージの観点. i n U. v. から、以下のように「よく」を六つの意味に分類している。. Ch. engchi. (a) 望ましく好ましい様子を表す。. (b) 相手の困難な行為を評価したり賛賞したりする様子を表す。 (c)(b)の反語の用法で、相手の行為に疑問をもったり憤慨したりする様 子を表す。 (d) 行為や状態の程度が十分である様子を表す。 (e) 頻度が高い様子を表す。 (f) 完全に達成する様子を表す。. (b)(c)は対事的モダリティを表す用法に相当すると思われる。(a)(d) (f)は程度副詞的用法であり、(e)は頻度副詞の用法である。 3.

(10) 先行研究のうち、「よく」の共起制限を考察しているのは、近藤(1986)、 森本(1992)、仁田(2002)、佐野(2006)などが挙げられる。以下ではこれ らの代表的な研究を年代順で見ていく。. 2.3. 近藤(1986). 近藤(1986)は、頻度、程度、ムードという「よく」の主な三つの用法を 考察している。頻度の「よく」は、基本的に「事象の回数の多さ」を表すが、 そこから文全体が状態説明(属性表現)となるような用法へずれていく可能 性があるものと指摘している。また、程度の「よく」についていくつかの点 も言及されており、それを次の二点にまとめている。. 立. 政 治 大. (a)程度の「よく」が状態性動詞と共起する場合は、動詞が語義として持つ. ‧ 國. 學. 状態性に対する程度の規定をし、「程度副詞+形容詞」(「とても美しい」 など)と類似しているので、両者をあわせて考える必要がある。. ‧. (b)程度の「よく」が動作性動詞と共起する場合は、主に「所要時間の長さ」 「注意深さ」「極限状態への接近度」の意味を規定する。. sit. y. Nat. n. al. er. 森本(1992). io. 2.4. i n U. v. 森本(1992)は、一般的に副詞は、その機能的なスコープによって分類す. Ch. engchi. ることが可能であり、 「よく」の機能を以下の三つのスコープによって、様態 副詞、程度副詞、頻度副詞、文副詞に分けられると指摘している。. (a)動詞(の意味)だけをスコープとしてとるもの (様態副詞、程度副詞) (b)動詞句をスコープとするもの. (頻度副詞). (c)文全体がスコープとなるもの. (文副詞). 森本(1992)は、程度副詞は静的状態の述語であれば、統辞論的カテゴリ ーを問わずに使われるものが多いのに対し、 「よく」の場合は程度副詞の性質 を十分備えているわけではなく、様態と程度の間を浮遊しているような面が ある、と言及している。また、 「量」の問題について、森本(1992)は、 (16) 4.

(11) を「量的読みが優勢になる」もの、 (17)を「量的読みが強く現れない」もの として取り上げて説明している。. (16). 木村さんは、よく食べる。. (17). 近くへ寄ってよく見たら、それはなんとアリだった。 (森本 1992:p74). 2.5. 仁田(2002). 仁田(2002)は、「よく」には多義性があると述べている。「よく」には、 形容詞に直接かかることはないものの、評価に関わる意味を有し、程度限定. 政 治 大. の働きを持ったものがある。また、 「よく」は、頻度の副詞の用法もあり、事. 立. 態が高頻度に繰り返され反復することを表している。その意味記述に加え、. ‧ 國. 學. 程度の副詞を加えることができることや「{スル/シタ}コトガ+頻度の副詞 類+アル」との共起関係をも指摘している。. ‧. 程度副詞と量副詞について、仁田(2002)では、<程度量の副詞>として まとめたものを、文法的な働き方や共起する述語のタイプから、<程度の副. y. Nat. sit. 詞>と<量の副詞>に分け、程度の副詞を<純粋程度の副詞>と<量程度の. n. al. er. io. 副詞>とに分ける。程度の副詞と量の副詞の違いは、前者は形容詞に係り、. i n U. v. その属性・状態の程度限定を行うが、それに対して、量の副詞は、形容詞に. Ch. engchi. 係り、その属性・状態の程度限定を行うことができない。. (18). 彼は[とても/*たくさん]健康だ。. (仁田 2002:p162). また、仁田(2002)によれば、次のような構文は、純粋程度の副詞と量程 度の副詞とを識別するテスト・フレームとして、構文に挿入可能なタイプが、 量程度の副詞であり、それに対して、構文に挿入すると逸脱性を生じてしま うのが、純粋程度の副詞である。もっとも、程度の副詞の下位類化であれば、 形容詞に係って、それが表す属性・状態の程度限定を行いうることが前提で ある。. 5.

(12) (19). 「オ酒ヲ[X]飲ンダ」/「[X]歩イタ」. (20). お酒を[相当/ちょっぴり]飲んだ/[相当/ちょっぴり]歩いた。. (21). ?お酒を[非常に/極めて]飲んだ/?[非常に/極めて]歩いた。 (仁田 2002:p163). 「相当」 「ちょっぴり」は、 (19)の構文に挿入可能で、また、 「雪は止んだ が、相当寒いようです」、「ちょっぴり寂しい感じ」のように、形容詞に係り その程度限定を行いうる。したがって、「相当」「ちょっぴり」は、量程度の 副詞である。 「非常に」 「極めて」は形容詞に係りその程度限定を行いうるが、 (19)の構文に挿入することができないので、純粋程度の副詞に属する。 「よ. 政 治 大. く」は上の構文に挿入できるが、「*彼女はよく美しい」のように、形容詞を. 立. 修飾できないから、量程度の副詞ではない。. ‧ 國. 學. 2.6. 佐野(2006). ‧. 佐野(2006)は動詞との共起関係から、あり方に関わる副詞4としての「よ く」の意味・用法について考察している。あり方に関わる副詞としての「よ. y. Nat. sit. く」には、大きく<質的限定>と<量的限定>の二つの用法がある。質的限. n. al. er. io. 定は動きや状態の質的な高さについて限定を行い、量的限定は動きの量につ. i n U. v. いて限定を行うものである。動きを表す動詞と共起した場合、動きが十分行. Ch. engchi. われる様子を表すという点では共通すると指摘している。 なお、佐野(2006)では、程度の副詞は形容詞以外でも、 「驚く、怒る、悲 しむ、喜ぶ、緊張する、心配する…」などの心的活動動詞、 「頑張る、協力す る…」などの態度の表れに関わる動きを表す動詞5、また「効果がある、違う、 優れている…」などの状態動詞なども共起するが、このうち「よく」と共起 する動詞はむしろ少なく、共起するものは、やはり動きや状態そのものの質 的な高さについて限定を行うことができる動詞、たとえば「慣れる」のよう な動詞に限られるも指摘している。 4. 仁田(2002)は「結果の副詞・様態の副詞・程度量の副詞-特に程度の副詞-は、述語の 表す語彙的意味そのものと関係を取り結びながら、事態の内側から事態の実現のされ方を限 定し特徴づけている」とし、これらを「あり方に関わる副詞」と呼んでいる。 5 仁田(2002)参照。 6.

(13) (22). 2.7. この犬は人間によく慣れている。. (上毛新聞). 先行研究のまとめ及び問題点. 上の森田(1989)と飛田・浅田(1994)の分類では、評価および頻度を除 いた「よく」の用法を、 「行為・作用の完全さを表す」や「行為や状態の程度 が十分である様子を表す」として統一的に捉えているが、 「よく」が「驚く」、 「緊張する」、「心配する」などの心理動詞と共起しにくい理由を説明できな い。 近藤(1986)と森本(1992)は、 「よく」の共起制限という文法現象を考察 しているが、 「なぜ心理動詞が程度の「よく」と共起しないのか」の理由に言 及していない。. 立. 政 治 大. 仁田(2002)では、 「オ酒ヲ[X]飲ンダ」/「[X]歩イタ」のような構文で、. ‧ 國. 學. 純粋程度の副詞「とても」と量程度の副詞として用いられる「よく」とを識 別することができると指摘している。しかし、この構文だけでは、筆者が「研. ‧. 究動機及び目的」で提出したいくつかの問題点はやはり詳しく説明できない。 したがって、 「よく」との共起制限からもっと詳しく研究する必要があると思. sit. y. Nat. われる。. n. al. er. io. 佐野(2006)では、従来の先行研究と違って、質的限定と量的限定または. i n U. v. 動詞との共起する関係を用いて、新たな視点から「よく」の独自の性質を考. Ch. engchi. 察している。「とても」類と「よく」の違いについて、佐野(2006)は、「よ く」と共起するものは、やはり動きや状態そのものの質的な高さについて限 定を行うことができる動詞に限られると指摘している。動きや状態そのもの の質的な高さとは、 「動詞そのものの持つ語義が十分に実現されること」と述 べているが、やはり筆者の疑問点を解明できないと思われる。 「よく」はいろいろな動詞との共起が可能である。しかし、すべての動詞 との共起が可能であるわけではない。管見の限り、先行研究において「よく」 が具体的にどのようなタイプの動詞と共起するのかについて、まだ明らかに されたものはない。なお、副詞とは、自立語で活用がなく、主として用言ま たは他の副詞を修飾する語である。よって、副詞「よく」を研究するときに は、他の副詞との関わりや副詞の語順などを注意しなければならない。 7.

(14) 副詞「よく」については、諸先行研究ですでに分析と考察がなされている が、上に述べたように、いろいろな問題点はまだ解明されておらず、深い考 察が保留になっている観がある。そこで、本研究は、先行研究を踏まえて、 「よく」と動詞との共起関係を起点とし、ほかの副詞「とても」や「たくさ ん」、 「しっかり」、 「ちょくちょく」などとの関わりを研究することを通して、 「よく」の文法的な性質を全般的に考察しようと思う。6. 3. 研究方法 まず、インターネットに公開されている小説や新聞などのコーパスを利用. し、用例を集める。それから、集めた資料の分析から、その規則を帰納し、. 政 治 大. 一般化を試みる。本研究は、動詞分類によって、 「よく」の多義性をテストす. 立. ることを通して、「よく」の独自の性質について考察を試みる。. ‧. ‧ 國. 學. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. 6. i n U. v. 「よく」は、もともとは形容詞「よい」の連用形なのだが、すでに独立した語になって おり、 「良好」という意味をほとんど持たず、副詞的に使われる。次のような用法は「よい」 の連用形とみなして研究範囲に入れないことにする。 「ええ、大分、気分がよくなりましたわ、でも、何だか體が怠くて— 」(山崎豊子『白い巨 塔』) 8.

(15) 第2章 1. 「よく」と様態副詞「しっかり」. はじめに 「よく」は、多くの場合に「しっかり」と互いに置換することができ、 「し. っかり」と似た働きを持っている。たとえば、次のような「よく」を用いる 例文は、「しっかり」に入れ替えても差し支えない。. (1) 両親とか兄弟とか友人とかと[よく/しっかり]話し合って、あなた の考え方が世間で通用するかどうか、今一度考え直して下さいよ。7 (2) どんなものでもよくかむこと。 [よく/しっかり]かんで食べれば胃の. 政 治 大. 負担が少なくなります。8. 立. (3) ぬるま湯で石けんや洗顔料を[よく/しっかり]泡立て、肌の上で泡. ‧ 國. 學. をころがすような気持ちで洗います。9. ‧. しかし逆に、 「しっかり」が用いられる例文を見ると、むしろ「よく」に置 き換えることができない場合が多い。たとえば、. sit. y. Nat. n. al. er. io. (4) 晴夫は「そうだよ。ゆっくり休んで、子供達との思い出を[しっかり. i n U. v. /*よく]作りなさいや。私は明日忙しいから寝るよ」と床についた。 10. Ch. engchi. (5) 夫と私が園の夏祭りに参加したときも、ごみ置き場の前に守護神よろ しく陣取り、ごみを捨てに来た人たちに「缶はこっち、紙はここ」と、 いちいち分別の世話を焼いている兄の姿を[しっかり/*よく]目撃し てしまった。11 (6) もちろん 100 点を取ることは大切ですが、それがどれだけ人生で役に 立って、日常生活に役に立つものなのかということを、授業の中で教. 7. 8 9 10 11. 北路冬人『カメレオン賛歌』 河野友美・高山英世共著『高年者食事』 かづきれいこ『美肌をつくるメイクの法則(ルール) 』 山田芝夫『てるてるぼうず』 信田妙子『星さん出とるで明日は天気』 9.

(16) えていく習慣や仕組みを[しっかり/*よく]持つことが重要です。12. なぜ(1)~(3)の例文においての「よく」と「しっかり」が置き換えら れるのに対して、 (4)~(6)の「しっかり」を「よく」に入れ替えると不適 格文になるのか。一体両者の間にどのような違いがあるのか。上述の問題を 解明するために、次は、 「よく」と「しっかり」と共起する動詞の性質を別々 に考察して、両者の異同を明らかにする。. 2. 「よく①」と共起する動詞の性質 『大辞林』によると、 「よく」は多様な意味を担っている。その中で、程度. 政 治 大. 副詞的用法は次のように述べられている。. 立. ‧ 國. 例:「よく調べる」、「よく洗えば落ちる」. 學. ① 十分に。念を入れて。手落ちなく。ていねいに。. ‧. ② 非常に。大変に。. 例:「よく晴れた日」「よくできる人」「よく食べる奴だ」「よく走る」. sit. y. Nat. n. al. er. io. 上が示すように、程度副詞として用いられる「よく」は①と②の意味に分. v. けられる13。以下はこの二つの意味の順番に従い、動詞と程度副詞として用. Ch. engchi. i n U. いられる「よく」との共起制限に、 「動詞の性質」と「動詞の意志性」、 「プラ ス・マイナスの意味」と「動詞の程度性」などが関わっていることを指摘す る。 「よく」は「十分に、念を入れて、手落ちなく、ていねいに」を表すとき、 どんなタイプの動詞と共起するのか。まず、その例を見てみよう。. (7) 両親とか兄弟とか友人とかとよく話し合って、あなたの考え方が世間. 12. 堀井恵『先生と生徒の心をつなぐ NLP 理論』 便宜上、以下は、①の意味を表す「よく」を「よく①」で、②の意味を表す「よく」を「よ く②」で表示することにする。ほかの副詞は一つ以上の意味を持てば、同じような表示法で 表示する。. 13. 10.

(17) で通用するかどうか、今一度考え直して下さいよ」14 (8) 老人ホームも各種あるので必ずよく調べてからにしましょう。15 (9) 先輩たちは、決して皆毎日同じ営業手法で行動してはいません。それ ぞれが自分に合った営業活動をしているはずです。また、先輩の営業 資料をよく見てください。16 (10). 「いまから大至急、あなたを助けに行きますから、私の指示をよく 聞いてください。いいですか。」17. (11). どんなものでもよくかむこと。よくかんで食べれば胃の負担が少な くなります。. (12). 18. ぬるま湯で石けんや洗顔料をよく泡立て、肌の上で泡をころがすよ. 政 治 大. うな気持ちで洗います。19. 立. みじん切りのタマネギをバターで炒め、よく冷ましておく。20. 學. ‧ 國. (13). 以上のように、 「よく①」と共起できる動詞、たとえば「話し合う」、 「調べ. ‧. る」、 「かむ」、「泡立てる」、「冷ます」などに、二つの共通点があることが分 かる。一つは、共起する動詞はすべて意志的動作を表すものである。もう一. y. Nat. sit. つは、これらの動詞は「動作を重ねれば重ねるほど結果がよくなる」という. n. al. er. io. 種類の動詞である。. i n U. v. 例えば「話し合う」と「かむ」は、それぞれ「話し合えば話し合うほど互. Ch. engchi. いに理解が進む」、 「かめばかむほど消化がよくなる」というふうに、 「動作を 重ねれば重ねるほど結果がよくなる」という種類の動詞である。「調べる」、 「見る」、 「聞く」も同じように、 「調べれば調べるほど調査対象に対して理解 が進む」、「見れば見るほど資料に対する理解が進む」、「聞けば聞くほど指示 内容が分かる」、というふうに、この種類の動詞に属する。 この種類の動詞においては、 「泡立てる」、 「冷ます」のように、対応する自. 14 15 16 17 18 19 20. 北路冬人『カメレオン賛歌』 河村美都子『海外生活から学んだ年金生活の知恵』 永井滋『今日から営業マン』 PHP 文庫「文蔵」編集部『文蔵 2007.5』 河野友美・高山英世共著『高年者食事』 かづきれいこ『美肌をつくるメイクの法則(ルール) 』 中山千賀子『キッチンで簡単、ダッチ・オーヴン』 11.

(18) 動詞を持つ他動詞、いわゆる「有対他動詞」21が取り上げられる。こういう 動詞の動作を重ねるとともに、客体が変化を受ける程度も高まる。例えば、 (12)で、 「泡立てる」という動きが加えられることによって、客体の「石け んや洗顔料の泡」はだんだんと増える。(13)も同様、「冷ます」という動作 が重ねられるとともに、「タマネギの温度」もだんだん低くなる。 では、こういう性質を有する動詞を修飾する「よく」は、どんな働きをし ているのか。近藤(1986)で提示されているように、この場合の「よく」は 他動詞に対応する自動詞の表す状態への接近度を表している。 (12)の「泡立 てる」は洗顔料が完全に泡だった状態を、 (13)の「冷ます」はタマネギが完 全に冷めた状態を、目指しての動作を表す。つまり、この場合の「よく」は、. 政 治 大. 動作を重ねることによって招来された結果状態が、その他動詞に対応する自. 立. 學. (14). ‧ 國. 動詞が表す状態になることを表している。図示すれば、次のようになる。. 動作を重ねる. (例:冷ます. 冷ます. 冷ます. ‧. 他動詞. 冷ます). y. Nat. n. al. i n U. 客体が段階的に自動詞の表す状態に変化する. Ch. er. io. sit. ●目標. v. 自動詞. e n g c h i (例:タマネギが冷めた状態). また、 「泡立てる」、 「冷ます」などと違って、対応する自動詞を持たない「無 対他動詞」、例えば、「話し合う」、「見る」、「聞く」、「調べる」、「かむ」など の動詞が「よく」と共起する場合も同じである。たとえば、(11)の「かむ」 は食べ物が完全に砕けた状態を、(7)の「話し合う」は、相談することに対 して、相談に参与する人の考えが完全に互いに理解された状況を、目指して の動作を表す。 (8)の「調べる」と(9)の「見る」と(10)の「聞く」も同. 21. ある動詞は「立つ(自動詞)-立てる(他動詞)」のように自動詞と他動詞が対応してい る。これを有対動詞と言う。その自動詞の方が有対自動詞で、他動詞の方が有対他動詞であ る。 12.

(19) じように、対象が完全に理解された状態を目指しての動作を表す。ここで鍵 となるのは、 「見る」や「聞く」時間の長さや「調べる」事柄の多さなどでは なく、動作を重ねることによって招来された結果状態が極限に達するか否か、 ということである。その結果状態が極限に達すると同時に、動きも限界にな る。したがって、(7)~(13)の「よく」の働きは、動きの極限的な程度に ついて限定を行うことであるといえる。図示すれば次のようになる。. (15) 動作. 動作. 動作. 動作. (例:かむ. かむ. かむ. かむ). 政 治 大. ●︳限界. 學. ‧ 國. 立. 動作の完遂. 結果が漸進的によくなる. 結果が極限に達する. ‧. (例:食べ物が完全に砕けた状態). y. Nat. sit. 動作時間の長さは問題の鍵でないにもかかわらず、完全に関係ないとはい. n. al. er. io. えない。動作を重ねることによって招来された結果状態が極限に達するため. i n U. v. には、その動作はある一定の時間持続しなければならない。言い換えれば、. Ch. engchi. 瞬間動詞は程度副詞としての「よく」と共起することができない。次に挙げ る動詞は意志動詞でありながら、瞬間動詞に属するので、程度副詞の「よく」 と共起することができない。 「よく」と共起する場合があっても、頻度としか 解釈できない。. (16). (程度の)*よく「結婚する、卒業する、死ぬ、出発する、到着す る、目撃する、一瞥する、座る、入る、出る、乗る…」. 以上から、 「よく」と共起する動詞はある一定の時間持続するということが わかったが、その動詞が必ずしも長時間持続するというわけではない。もち ろん、動作の結果が極限状態に達するためには、その動作に要する時間は相 13.

(20) 対的に長くなる。たとえば、 (13)において、炒めたばかりのタマネギが完全 に冷めた状態に達するには、通常長い時間を必要とする。しかし、扇風機な どを使えば、短時間でもタマネギを完全に冷めた状態に到達させることがで きる。したがって、程度の「よく」は、有対他動詞や他動性22の高い動詞と 共起するとき、その動詞の表す動作の完遂することを限定する点が重要であ る。 また、知覚動詞「見る」、 「聞く」と心理的働きかけ性の強い動詞「調べる、 話し合う、確かめる、持て成す、謝る、選ぶ、捜す、見比べる、目を配る、 言い聞かせる、教える」など、他動性の低い動詞も同じである。動作を重ね ることによって招来される結果が一番よい状況に達するには、要する時間や. 政 治 大. 事柄の量は相対的に多くなる。しかし、動作主体が客体に対して注意を深く. 立. 集中すれば、短時間でも達することができる。それゆえ、この種類の動詞と. ‧ 國. 學. 共起する「よく」は、時間あるいは事柄の多さよりもむしろ主体の「精神集 中」に重点がおかれるであろう。. ‧. 3. 様態副詞「しっかり」との違い. y. Nat. n. al. er. io ①かたく。. sit. 『広辞苑』によると、「しっかり」の用法は次のように述べられている。. Ch. 例:「紐をしっかり結ぶ」 ②堅実な。. engchi. i n U. v. 〔堅固でゆるぎないさま〕 例:「しっかりとした土台」 〔堅実で信頼できるさま〕 例:「考え方がしっかりしている」. 22. 他動性について、吉村(2004)は、次のように述べている。具体的に他動性の高い表現と は、 (ⅰ)出来事への参与者が二つ以上、 (ⅱ)一つの参与者が意図をもち、 (ⅲ)働きかけ、 ないしは動作を、もう一つの参与者に対して行い、(ⅳ)状態変化が明らかである、という ことである。四つを満たす代表的な動詞は、破壊動詞(例:破壊する)、殺害動詞(例:殺 す)、状態変化動詞(例:壊す) 、調理動詞(例:ゆでる)などである。他動性の低い動詞は、 移動動詞(例:運ぶ) 、接触動詞(例:触る) 、知覚動詞(例:見る、聞く) 、心理動詞(例: 愛する) 、記憶・忘却動詞(例:忘れる)などである。 14.

(21) 〔気力が充実していたり精神作用が健全であったりするさま〕 例:「しっかりしろよ」 ③確実に。十分に、また確実に物事を行うさま。 例: 「しっかりおぼえる」 「しっかり勉強しなさい」 「戸をしっかり閉め る」「しっかり立つ」「しっかりやれ」「しっかりがんばれ」 ④量が多いさま。たくさん。 例:「しっかり食べる」「しっかりためこむ」 ⑤ 市場に活気があり、相場が下落しそうにないさま。 例:「株価はしっかりしている」. 政 治 大. 上が示すように、 「しっかり」は①~⑤の意味に分けられる。①と②と⑤の. 立. 意味が程度副詞としての「よく」の意味と大きく違うということが明らかで. ‧ 國. 學. ある。周知のように、ある語の意味を分析しようとする時、ほかの類義語と 比較することを通し、分析する語の意味を次第に明らかにすることができる。. ‧. しかし、多くの場合には、類義語の用法の中で、もとの語の意味と似ていな い用法が少なくないので、両方のすべての用法を比較する必要はない。もっ. y. Nat. sit. とも比較価値を持つところは、もとの語に対して類義関係にある部分と言え. n. al. er. io. るであろう。この点について、中道(1991)は、次のような図を用い、同様. i n U. v. の指示対象を指す、同様の使用環境に現れる、等の類義関係にある用法は、. Ch. engchi. A において A2 の諸用法、B においては B2 の諸用法だけであり、A1 と B1 の諸用法は互いに類似性が認められず、このような場合、類義語比較に先立 って、比較すべき用法がどれであるのかを見分ける作業がなされなければ、 分析作業は非常に不効率であり、また正確な分析が期しがたい、と説明して いる。 (17). (中道 1991:p162) 15.

(22) 「よく」と「しっかり」をそれぞれ語 A と語 B とすれば、「よく①」の用 法は、用法群 A2 に相当し、 「十分に、また確実に物事を行うさま」を表す「し っかり③」の用法は、用法群 B2 に相当すると考える。 「よく①」の性質はす でに考察した。次は「しっかり」の性質を分析し「よく①」と「しっかり」 の異同を考察する。. 3.1. 本質が違う. 「よく」と「しっかり」は、ある場合に類似の用法があって入れ替えるこ とができるが、いくつかの相違点があり、まずは「しっかり」と「よく」の 類別を考察する。 「しっかり」は、動詞にかかって、動作行為が着実真剣に行. 政 治 大. われるさまや、物事が堅固であるいは堅実なさまなどを修飾する働きを持ち、. 立. 様態副詞に属する。様態副詞は、程度副詞や頻度副詞や結果副詞などに比べ. ‧ 國. 學. て、語彙的に雑多なタイプを持つ副詞である。しかし、様態副詞についての 全体的でまとまった研究は、非常に少ない。管見のかぎりでは、仁田(2000). ‧. を除けばほとんど存していない。仁田(2000)は、様態副詞の類いを大きく <動き様態の副詞>と<主体状態の副詞>とに分けている。「しっかり」は、. y. Nat. sit. 様態副詞の中核的な存在である<動き様態の副詞>のうちの<動きの勢い・. n. al. er. io. 強さを表すもの>と分類されている。23一方、「よく」は、「お酒をよく飲ん. i n U. v. だ」「よく歩いた」のように、「オ酒ヲ[X]飲ンダ」/「[X]歩イタ」という. Ch. engchi. 構文に挿入できるが、形容詞を修飾できないから、量程度副詞ではなく、基 本的に様態副詞である。しかしながら、多くの場合に「よく」は確かに、程 度性を持つ語を修飾して、その属性・状態の程度限定を行いうる。そしてあ る場合に程度を表すのみならず、量副詞が果たす働きをも担っている。した がって、様態副詞にある条件が揃うと、程度副詞、量副詞のように使えると いえるであろう。. 3.2. 共起成分の違い. 23. さらに、仁田(2002)は、 「久子は、信一にしっかりとしがみついていた。 」などの下線部 が、密着性を色濃く出しながら、動きの勢い・強さに関わっているタイプであり、 「しっか り見て買ってらっしゃいよ」などになると、既に密着性から距離を置き、動きの勢い・強さ や程度性の表現になっているものである、と説明している。 16.

(23) 次は共起成分の違いを述べる。 「しっかり」と共起する動詞を考察する前に、 先に日本語の動詞分類について説明する。吉田(2005)は、湯(2003)の立 場に従い、日本語の動詞分類が次のように分けられると指摘している。. (18) a. 能格動詞:自他両様の機能を有する動詞。 「開く」「閉じる」など。 b. 非能格動詞:従来の自動詞:意志性の動詞。 「歩く」「立つ」など。 c. 対格動詞:従来の他動詞。. 意志性の動詞. 政 治 大. ① 典型的他動詞:「本を読む」など。. 立. ② 非典型的他動詞:「熱を出す」など。. ‧ 國. 「落ちる」「死ぬ」「転ぶ」など。. 學. d. 非対格動詞:非意志性の自動詞。. 非意志性の動詞. ‧. では、「しっかり」はどんなタイプの動詞と共起するのか。検索エンジン. y. Nat. sit. Google や Himawari のコーパスなどを用い、共起する動詞を検索したが、ほ. er. io. とんど全部のタイプの動詞と共起することができそうである。. al. n. v i n C h 開いて立ち、まず首を左右にまげる。 脚を[しっかり/≒よく] engchi U. (19). 24. 25. (20). 牛乳は茶葉が[しっかり/≒よく]開いてから入れる。26. (21). 立っている時はなにかに寄りかかるような立ち方ではなく、両足で [しっかり/*よく]立つ。27. (22). このままの運動習慣で、 [しっかり/≠よく]歩いて気力体力を充実 させ、自分のやりたいことを積極的に続けていきましょう。28. (23). 「元気を出して、これからも、 [しっかり/*よく]がんばってね―」. 24. 例文中の記号、≒は意味が似ていることを示し、*は不適格であることを示し、≠は意味が 違うことを示す。 25 古屋三郎『1年の体育』 26 http://www.d2.dion.ne.jp/~chisa708/image1/tea-oisi.html 27 東照二『社会言語学入門』 28 黒田恵美子『いつもの歩き方を変えるだけでキレイになる!』 17.

(24) 29. (24). 一週間目は危険曜日と[しっかり/≒よく]覚えてくださいね。30. (25). 「富美子さん、卒業まで[しっかり/≒よく]勉強しなさいね」敏 は彼女の掌を今度は力強く握り締めて言った。31. (26). 女性の就寝しているところを目撃されると性的被害を受けるので、 カーテンは[しっかり/≒よく]閉めておく。32. (27). [しっかり/≠よく]やれば誰もがちゃんとできるようになります。 33. (28). つまり[しっかり/*よく]熱 を 出 した ほうが 早 く 癒 る 可能性 が 高 いのです 。 34. (29). 政 治 大. 痰が粘調で排痰しにくい場合は、水分をとるより[しっかり/*よ. 立. く]咳をすることが大切である。. そのときの目安としてエンドラインの毛が[しっかり/≒よく]落. ‧ 國. 學. (30). 35. ちているか、を確かめます。36. 歩き始めたばかりの赤ちゃんが転んでも大ケガをしないのは、体に. ‧. (31). 余計な力が入っていないからだ。転ぶときには、へんに抵抗せず、素. y. Nat. sit. 直に[しっかり/*よく]転ぶ。その「自然体」がかえってリスクを軽. n. al. er. io. 減するのだ。37. Ch. engchi. i n U. v. 以上のように、 「しっかり」は「開く」などのような自他両様の機能を有す る「能格動詞」、 「立つ」 「歩く」 「がんばる」などのような「非能格動詞」、 「覚 える」 「勉強する」 「閉める」 「やる」などの「対格動詞」 (典型的他動詞)、 「熱 を出す」 「咳をする」などの「対格動詞」 (非典型的他動詞)、 「落ちる」 「転ぶ」 などの「非対格動詞」と共起し、したがって「しっかり」と共起する動詞の. 29 30 31 32 33 34 35 36 37. 清田道義『迷せんせいの覚書』 高信太郎『ひっそり始める「禁煙」実践ガイド』 木下勇作『如来が弁護してござる』 谷山悌三『女性のための生活安全作法』 兼若逸之『らくらく韓国語マスター』 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail.php?qid=146833779 http://www.hosp.go.jp/~sokayama/clinic/are/check.html 湯谷純明『ストロークカットをマスターする』 大越俊夫『こう考えると、人生は変わるよ』 18.

(25) 幅は極めて広いといえる。また、 「しっかり」がプラス・マイナスのイメージ がない語ということも分かる。 (7)~(13)の例文において、 「よく①」と共 起する動詞は、いずれも「しっかり」と共起でき、しかももとの意味といく らも違わず、両方とも動作が十分に行われることを表す。しかし逆に、(19) ~(31)の「しっかり」が用いられる例を見ると、全部「よく」に置き換え ることができるわけではない。2.2 で考察したように、「よく①」と共起する 動詞は、意志動詞且つ「動作を重ねれば重ねるほど結果がよくなる」という 性質を有しなければならない。「しっかり」と比べて、「よく①」と共起する 動詞は、ずいぶん限られている。したがって、(19)~(31)において、「し っかり」を「よく」に入れ替えても意味が大きく変わらない動詞は、やはり. 政 治 大. 「よく①」の共起成分の要求に応じなければならない。. 立. では、 「しっかり」と共起する「作る」、 「建てる」、 「彫る」などの生産動詞. ‧ 國. 學. は、「よく①」と共起できるのか。次の例を見てみよう。. 晴夫は「そうだよ。ゆっくり休んで、子供達との思い出を[しっか. ‧. (32). り/*よく]作りなさいや。私は明日忙しいから寝るよ」と床についた。. y. sit. n. al. ストック形成」の時代へ。 (34). Ch. er. 「[しっかり/*よく]建てて、長く住む」― 家づくりは「良質な. io. (33). Nat. 38. 39. engchi. i n U. v. そして、もし、そのお店(実店舗)が気に入ってご注文される場合 には、忘れずに必ず一言[しっかり/*よく]彫って。」と付け加えて ください。40. 「作る」、「建てる」、「彫る」などの生産動詞は、一見して「動作を重ねれ ば重ねるほど結果がよくなる」という性質がありそうだが、実際には、 「かむ」、 「泡立てる」、 「冷ます」などと違って、 「よく①」と共起できない。というの は、これらの動作が〈反復性〉の性質を持たず、 〈完成性〉の性質を持つから だ。 〈反復性〉を有する動詞とは、同じ動作を繰り返すことができる動詞であ 38 39 40. 山田芝夫『てるてるぼうず』 http://www.tokyo816.jp/event/axis/volume1/axis0202.html http://www4.ocn.ne.jp/~tsuda21/kotu.html 19.

(26) る。たとえば、 「話し合う」、 「調べる」、 「かむ」、 「泡立てる」、 「冷ます」など である。動作の繰り返しに焦点を絞る〈反復性〉に相対し、 〈完成性〉は動作 の完了に重点をおく。次に挙げる生産動詞は、動作の繰り返しに重点を置か ず、生産物を産出するという点に重点をおくから、「よく①」と共起すると、 いずれも不適格文になる。. (35). (程度の)*よく「家を建てる、料理を作る、仏を彫る、鶴を折る、 洋服を縫う、セーターを編む、穴を開ける、トンネルを掘る、ご飯を 炊く…」. 政 治 大. したがって、「よく①」と共起する動詞は、〈反復性〉を持つ動作を重ねれ. 立. ば重ねるほど結果がよくなる」という性質を持たなければならないといえる. ステーキをよく焼くことで、肉汁が落ちて脂質と糖質が少なくなっ. y. Nat 41. sit. ている。. n. al. er. 離乳食をあげたほうがよくなるという噂 もあるので、とりあえ. io. (37). ‧. (36). ‧ 國. たとえば、. 學. であろう。しかし、生産動詞は全部「よく①」と共起しないわけではない。. i n U. v. ず「にんじんおかゆ」を よく煮て、よくつぶして、あげてみまし た。 42. Ch. engchi. のような文は「よく①」と共起する実例である。鈴木(1972)によると、 「~を」 の語は対象語と言われ、典型的なものは「はたらきかけを受ける対象」にな る。たとえば、「熊を撃ち殺す」など。一方、「ご飯を炊く」、「鶴を折る」な どの例が、 「熊を撃ち殺す」のような典型的な例の変種とされ、述語(「炊く」、 「折る」)が生産性の動詞であり、対象(「ご飯」、 「鶴」)がその動作によって 生産されたものであり、このような構文における動詞は「生産動詞」と呼ば れている。 41 42. http://kiroyn.blog.drecom.jp/archive/765 http://baby2timerimit.blog89.fc2.com/blog-entry-31.html 20.

(27) (38). 具体名詞(を格). 生産性の動詞. (生産物). (鈴木 1972:p74). したがって、「肉をステーキに焼く」の「焼く」は変化動詞で、「特上の肉 でステーキを焼く」の「焼く」は生産動詞である。 (36) (37)の「焼く」、 「煮 る」は生産動詞でありながら、文脈において、動作の繰り返しに焦点を絞る と認められるので、「よく①」と共起できる。 以上のことから分かるように、 「よく①」と共起する場合、動作主が有情物 であること、そして動詞が意志動詞、「〈反復性〉を持つ動作を重ねれば重ね. 政 治 大. るほど結果がよくなる」という性質を有することが要求されると考えられる。. 立. また、こういう性質からいって、この種の動詞が低から高への程度性とプラ. ‧ 國. 學. スの意味を持っているということがわかる。. 次に挙げる心理現象を表す動詞は、動作主が有情物でありながら、通常動. ‧. きの主体が自分の意志でそれを制御できないため、 「よく①」と共起しにくい。 そして、これらの心理動詞は、「〈反復性〉を持つ動作を重ねれば重ねるほど. y. Nat. sit. 結果がよくなる」という性質を持っていないので、程度の「よく」と共起す. n. al. er. io. ることができない。. (39). Ch. engchi. i n U. v. (程度の)*よく「飽きる、苛立つ、浮かれる、驚く、怯える、悔 やむ、困る、しょげる、躊躇う、照れる、妬む、腹立つ、迷う、悩む、 苦しむ、心配する、緊張する…」. 4. まとめ 動作が十分に行われることを修飾・限定する場合に、 「よく」と「しっかり」. は互いに置き換えられるが、両者の間には細かい差が存在する。程度副詞と 様態副詞の違いについて、仁田(2002)では、程度副詞は、程度性という抽 象度の高い側面への言及であり、それに対して、様態副詞は、あり様という 具象性を備えた側面への言及である、と指摘されている。ここで「よく①」 と共起する動詞の種類をまとめれば、次の表が得られる。 21.

(28) (40). 「よく①」と共起する動詞の種類. 有対他動詞:(泡立てる、冷ます…). 無対他動詞. 他動性の高い動詞:(かむ…). 他動性の低い動詞. 知覚動詞:(見る、聞く…). 心理的働きかけ性の強い動詞: (調べる、話し合う、謝る、選ぶ、教える…). 治 政 大 以上、動詞との共起関係から、 「よく①」の意味や働きを考察したことをま 立 とめれば、次のようになる。 ‧ 國. 學. 「十分に、念を入れて、手落ちなく、ていねいに」の意味を表す「よく」と. ‧. 共起する場合、その共起する動詞が意志動詞であること、そして「〈反復性〉. sit. y. Nat. を持つ動作を重ねれば重ねるほど結果がよくなる」という性質を有することが. io. al. n. る。. er. 要求される。この種の動詞が低から高への程度性とプラスの意味を持ってい. Ch. engchi. i n U. v. また、 「よく①」と「しっかり」の異同についても考察してきた。その結果、 次のことが明らかになった。. (a) 本質が違う。 「しっかり」は様態副詞の中核的な存在である動き様態の副詞 のうちの動きの勢い・強さを表すものと分類されており、あり様という具 象性を備えた側面への言及である。それに対して、 「よく」は、形容詞を修 飾できないから、量程度副詞でなく、基本的に様態副詞である。だが、 「よ く」はある条件が揃うと、程度副詞あるいは量副詞のように使える。程度 副詞として用いられるとき、 「よく」は程度性という抽象度の高い側面に言 及する。 22.

(29) (b) 共起成分が違う。 ①「しっかり」と共起する動詞のタイプは、自他両様の機能を有する「能格 動詞」、 「非能格動詞」、 「対格動詞」 (典型的他動詞と非典型的他動詞を含 む)、「非対格動詞」などであり、共起する動詞の幅は極めて広い。それ に対して、「よく①」と共起する動詞は、ずいぶん限られている。 ②「しっかり」はプラス・マイナスの意味がないが、「よく①」は、プラス の意味に限定する。. 立. 政 治 大. ‧. ‧ 國. 學. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. 23. i n U. v.

(30) 第3章 1. 「よく」と絶対程度副詞「とても」. はじめに 「よく」は「とても」と同じく、ものの属性や状態を表す成分にかかって、. その程度性が高いと修飾・限定する働きを持つ。しかし、両者は決してまっ たく同じ意味を有するものではない。たとえば、. (1) まだ一年生で十四歳位のこと、何かが話題になり次々と意見が出たと き、K さんが立って「それは机上の空論です」と言って自分の意見を 堂々と述べました。私は「机上の空論」というのは初耳だったので[と. 政 治 大. ても/*よく]驚きました。43. 立. (2) 新入社員たちは、新しい職場に入って四月のうちは[とても/*よく]. ‧ 國. 學. 緊張しています。44. (3) しかしカナダに行くときは今までと違い、ホームステイではないため. ‧. ホストファミリーに頼ることもできず、まったく一人でしたので母は [とても/*よく]心配しました。45. sit. y. Nat. n. al. er. io. 上の例文によると、程度副詞としての「よく」は「とても」と同じく、動. i n U. v. きや状態の程度が高いことを表すが、 「驚く」、 「緊張する」、 「心配する」など. Ch. engchi. の心理動詞とは共起しにくいことがわかる。また、それに対して、 「よく」を 「とても」に換えると不自然な文になる場合もある。それはなぜであろうか。. (4) 体温が高いせいでのどが乾き、酒を[よく/*とても]飲んだ。46. 上述の問題を解明するために、 「よく」と動詞との共起関係を起点とし、程 度副詞としての「よく」の意味を考察することとする。それだけではなく、 「よく」と「とても」の異同も考察しようと思う。 43 44 45 46. 佐保川ふみ『忘れ水』 渋谷昌三『部下を動かす心理学』 宇津宮薫『母への通信簿―天国で受け取ってね』 毎日新聞社『話のネタ: 会話がはずむ教養読本』 24.

(31) 2. 「よく②」と共起する動詞の性質 「よく」は「非常に、大変に」を表すとき、どんなタイプの動詞と共起す. るのか。次の例を見てみよう。. (5) 順子は、よくしゃべる人だなと思った。同時に安心感を覚えた。47 (6) 幸恵は船柄の網元の娘で、お嬢さん育ちのはずなのに、性格も口調も ざっくばらんである。しかも、何でもよく食べる。48 (7) 子ども達はよく走る。一人でも走るし、友だちと一緒だともっと走る。 49. (8) 落ちたといっても、小学校の周りの子と比べれば、はっきり言って算. 政 治 大. 数もできるし、国語もよくできる。50. 立. (9) よく晴れた休日で、辺りには母親に見守れられて無邪気に遊ぶ子ども 51. ‧ 國. 學. がたくさんいた。. 燃え盛る太陽の下で、よく冷えたビールがさらにおいしい。52. (11). 海から打ち上げられてよく乾いた流木がふんだんにある。53. (12). 街を歩く若い人達を見ても、一緒に歩いている連れとよく似ている。. ‧. (10). y. Nat. io. えていることも似ているのだろう。54. n. al. (13). この構造図での説明はよく分からない。55. (14). 若者には、明るい笑顔がよく似合う。56. Ch. engchi. er. sit. 髪の形、服装、化粧、言葉つき、顔までそっくりである。恐らく、考. i n U. v. 「よく①」と比べて、 「よく②」と共起できる動詞のタイプはずっと多様で ある。「しゃべる」、「食べる」、「走る」などの継続動詞や、「できる」、「わか る」 「似ている」、 「似合う」などの状態動詞、また「晴れる」、 「冷える」、 「乾 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56. 亀山等『春陽』 佐直義治『和田一族の末裔』 下住まゆり『あなたのうた』 和田秀樹『受験に強い子のパパがしていること』 田森蒼羽『大人になれなかった「僕」に』 佐藤富雄『あなたの夢をかなえる「未来日記」』 野田知佑『カヌーライフ No.2』 大津秀夫『経営錬金術「大津会計事務所だより」から』 松山羊一『話すことば・書くことばを考える』 安藤知恵『日本語教師が行く』 25.

參考文獻

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131 佐藤哲英〔1972〕 〈俊芿律師帶回日本的天台文獻〉 (石田充之《鎌倉佛教成