当該地滑りの発生によって生ずる土石等(以下「土石等」という)の下記の土質定数を決 定する。
①土石等の単位体積重量(γ)
②土石等の内部摩擦角(φ)
これらの土質定数は後述する著しい危害のおそれのある土地の区域を把握する際に重要 な要因となるため,直接的な土質調査結果に基づいて決めることが望ましい。ただし,地 滑り地塊の土質特性を考慮して,標準的な値を参考に決めることもできる。
解 説
「著しい危害のおそれのある土地」の検討に際し,当該地滑りの滑動によって生ずる土 石等の土質定数が必要となる。土質調査では,既往地質調査資料,既存地質図,現地にお ける地質状況の確認等により,地滑り及びその周辺の地質状況を把握し,土質定数を検討 する。必要な場合には,土質定数決定のための資料として土質調査(ここで言う土質調査 には,土質定数を決定するためボーリング調査や標準貫入試験,コア判定等も含む)を実 施する。ここで調査する土質定数は,以下のものである。
① 土石等の単位体積重量(γ)
② 土石等の内部摩擦角(φ)
① 土石等の単位体積重量(γ)
ⅰ)地滑り防止工事が実施されている地滑りブロックでは,この計画・設計において採用 されている値を用いる。
ⅱ)ⅰ)以外の対象地滑りブロックについては,以下の文献等を参考に 18kN/m3 を用いる こととする。
【設定根拠】
・建設省河川砂防技術基準(案) 計画編(1997),p199
「土塊の単位体積重量は一般の地滑りでは 18(kN/m3)を用いてよい。」
・道路土工のり面工・斜面安定工指針 平成 11 年 3 月 (社)日本道路協会 p348
「一般の地滑りでは,土塊の湿潤単位体積重量をγ1=18kN/m3として計算する。」
注)ここで書かれている単位体積重量は,極限平衡法(最も広く採用されている地滑りの 安定計算の手法)における地滑り地塊の平均単位体積重量であって,家屋に向かって移動 してきた土塊の単位体積重量とは必ずしも同じではない。しかし,移動してくる土石の単 位体積重量を求められる試験が現在確立されていないことから,上記にならいγ=
第Ⅲ編第6章 6-3 に示す告示式では,φは「地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等 の内部摩擦角」となっており,地滑り解析で用いられる「すべり面強度」から得られる内 部摩擦角とは異なったものである。したがって,解析結果で得られた逆算値でなく土質を 反映した値とすべきものであると考えられる。
この値を求めるためには,以下の方法が考えられる。φの信頼度は,①>②>③の順に 高いが,土質試験を行わない場合は,広島県では②,③の方法を用いてよいものとする。
①地滑り地塊の土質試験を行う(すべり面粘土ではなく,地滑り地塊による試験)
②地質調査結果(ボーリングコアや
N
値等)を参考に決定する。③地滑りの型の分類を参考に土質状況を推定する。
②,③により値を求める際には,表Ⅲ-3.1 を参考にする。
表Ⅲ-3.1 地滑り地塊の内部摩擦角の参考値 地滑り地塊の土質 せん断抵抗角(φ) 地滑りの型分類
礫質土 30° 風化岩地すべり
(巨礫混じり土砂または強風化岩)
砂質土 25° 崩積土地すべり
(礫混じり土砂,一部粘土化)
粘性土 20° 粘質土地すべり
(粘土または礫混じり土砂化)
※( )内の記載は,前出の参表-3.4 を参考とした。
広島では事例の少ない岩盤地滑りを取り扱う場合は,別途検討する。
表Ⅲ-3.2~表Ⅲ-3.4 に土石等の内部摩擦角に関する表を示す。表Ⅲ-3.2 は,地すべり鋼 管杭を設計する際に移動土塊の受働破壊の検討のために用いられる表であり,表Ⅲ-3.3 は,
高速道路設計の際に用いる一般的な土質の強度を示す表である。また,表Ⅲ-3.4 は擁壁の 設計を行う際の裏込め土(締め固めた盛土)のせん断定数を示すものである。表Ⅲ-3.1 に 示す値は,これらの表を参考として決定したものである。
表Ⅲ-3.2 代表的な土質および岩石の諸定数 軟らかい,わずかに有機質粘土 16/10 22~27 20~50
軟らかい水成粘土 17/12 27~32 30~70
硬い水成粘土 20/17 30~32 70~150
混合粒径氷礫土 23/20 32~35 150~250
<硬質火成岩>
花崗岩,玄武岩,斑岩 25**~30 35~45 35000~55000
<変 成 岩>
珪岩,片麻岩,粘板岩 25~28 30~40 20000~40000
<硬質堆積岩>
石灰岩,ドロマイト,砂岩 23~28 35~45 10000~30000
<軟質堆積岩>
砂岩,石炭,チョーク,頁岩 17~23 25~35 1000~20000 岩石
表Ⅲ-3.3 土質定数