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1、中国人と日本人との人生観の比較

最近日本では銀行・証券会社の投資相談コーナーのみならず、大 学・大学院、高校・中学・小学校に至るまで“投資教育・金銭教育”

ブームである。

しかし、俄か作りのこの種の教育が本当に根付いたものになって いくのかという点に関しては筆者は疑問を感ずる。「ブーム」とは所 詮、一過性のものであり、また日本人は昔から金儲けは下手である といわれ、金儲けを良しとしない風潮があった。お金に関する諺・

言い伝えを例にとっても、

「金は天下の回り物」「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」「金に 汚い」「吝嗇」など、金に執着することを良しとしない風潮がある。

これに対し、中国人は、物事すべてをお金に換算して考えるとい われる。

人生の折り目の行事等を例にとって、中国人と日本人との生き方 の違いについて、邱の説40を踏まえつつ、比較してみよう。

表 20 中国人と日本人の人生観の比較

項目 中國人 日本人

新年の挨拶 恭喜発財。 おめでとうございます。

ご健康をお祈りします。

教育

出世しなさい。

金儲けしなさい。

名利双収。

(名誉と利益いずれも 大事)

立派な人間になりなさい。

社会に役立つ人になりな い。

墓参り 紙幣(模造品)を焼く。 生前の好物(菓子・煙草・

酒等)を供える。

死生観 不老長壽。 パッと咲いてパッと散る。

遺産 生 き て い る 間 の 使 い 切

る。 子孫のために残す。

40 邱永漢『奥様はお料理がお好き』中公文庫 1981.中央公論社p.61p.91p.100.

邱永漢『お金の法則』知恵の森文庫2001.光文社p.26~p.29

商慣習 100.『お金の法則』(2001)p26~p29 を参考にしつつ、筆者が作成

表20 のように、人生観全般についての考え方については、中国と 日本とは、一千年以上の永きにわたる交流、また地理的な位置関係

から、一衣帯水の関係等との言い方もある程なのに、中国人と日本 人との考え方には大きな違いがあるようである。

とりわけ、、中国人と日本人との金銭感覚の大きな違いについて、

邱の指摘を引用する。41

「たとえば、あるとき、私は、日本で有名な裁判官と対談したこ とがあるが、その裁判官は、裁判というものは、「外科的」と「歯 科的」に分けて、「まあ、裁判というものは歯科的なものですよ」

といった。なるほど歯科医は、一本の歯を治療するのにも、毎 日少しずつやって、そのたびに五十円とか百円とかとって、一 ヶ月も二ヶ月もかかってやっと治療を終わる。だから「歯科的」

といえば、日本人には、「ああグズグズやることだな」とすぐピ ンと頭にくる。ところがこの表現は中国人には全然通用しない。

どうしてかというと、毎日毎日引き延ばされたのでは、医者の ほうにとってはいい飯の種だが、患者のほうはたまったもので はない。そこで妥協案として、この歯は治療し終わるまで三千 円などという請負制度がとられる。そうなると引き延ばしただ けただ働きだから、歯痛が再発しない範囲で可及的迅速に仕上 げをしてしまう。

あるとき、わたしは奥歯の金冠がとれて新しく入れ直しても らったところが、たった三日で通っただけで、治療が終わった のにはびっくりした。それまで日本流の歯科医にばかりかかっ ていたので、これで大丈夫なんだろうか、とかえって不安にな ったが、その後どうもないところをみると、日本流の治療法は 日本人の労働観、金銭観と深い関係があるようである。そうい うわけで、中国人の世界ではすこぶる能率的にできているので ある。

洋服一着つくる場合でも、このことは同じである。日本の洋 服屋では何回も仮縫いをしたりして、実際に仕上がるまでに一 週間も二週間もかかる。長い時間がかかるほうがていねいに仕 立てているように見えるし、仕事をいっぱいかかえていて店が 繁盛しているようにも見える。香港でもマッキントッシュとか ウィリアム・ポウエルなどという英国人の店は注文してから二、

三週間もかかるが、中国人の洋服屋さんは、「明日の飛行機で発 つから」といえば、その晩徹夜をして仕立てて、翌朝の飛行便 にまにあうように持ってきて来てくれる。これほど勤勉な国民 がほかにあろうか。

41 邱永漢『奥様はお料理がお好き』中公文庫 1981.7 中央公論社p.92~p.93

ところが、その同じ中国人が金にならないこととなると、打

って変わったように怠惰になる。自分や肉親のことは非常に熱 心だが国家や公共のこととなると、けっして政府が号令したり

標榜したりするほど情熱を傾けない。国家的な統一や国家的な 産業開発が日本に遅れをとったのは、こうした中国人のがめつ さが原因しているのであろう。―以下略―」(p.92~p.93)

邱の中国人と日本人との金銭感覚の違いについての指摘は、筆者 としても首肯できるところである。それでは、日本人は、そのお金 の運用に関して具体的にどのような性向があるのかについて外国人 との対比を踏まえつつ、考察を行う。