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2-1、日本人の投資性向

まず、「家計の金融資産に関する世論調査」(平成 18 年(2006))42 を見てみる。

2-1-1、金融資産の保有額

「①各年とも安全資産である、預貯金・郵便貯金を合わせると、50%

以上(平成16 年;60.1%、平成 17 年:58.1%、平成 18 年:54.6%)

②一方、有価証券の比率は、平成 16 年(2004):9.3%、平成 17 年(2005):12.4%、平成 18 年(2006):15.8%である。

③ 金融資産の平均保有額は、1.073 万円、前年対比では、平均保有 額が前年を下回った。

④ 金融商品別に見ると、預貯金(郵便貯金を除く)構成比がもっと も高く約4割、ついで郵便貯金が約15%を占め、両者合計で5割 強となった。また、前年や前々年と比べ、株式や投資信託の構成 比がそれぞれ増加している。」(表21.表 22)

42金融広報中央委員会「家計の金融資産に関する世論調査」平成 18 年(2006):1、

調査機関:金融広報中央委員会.2、調査期間;平成 18 年(2006 年)6 月 23 日

~7 月 10 日.3、調査対象:全国 10.080 世帯(満 20 歳~79 歳男女個人).4、回 収率:34.5%.5、調査対象世帯の抽出方法:層化 2 段階無作為抽出法.6、調査 方式;留置面接回収方式 p.3p.9.p.11

表 21 家計における年度別金融商品内訳

年 合計 内訳(主な金融商品) (万円)

平成 16 年 1.022 預貯金 424 郵便貯金 190 保険 270 有価証券 96 平成 17 年 1.085 預貯金 431 郵便貯金 200 保険 268 有価証券 135 平成 18 年 1.073 預貯金 419 郵便貯金 167 保険 170 有価証券 170 資料出所:金融広報委員会『家計の金融資産に関する世論調査』.2006.

p.3

表 22 主な金融商品別構成比

年 構 成 比

平成16 年 預貯金 41.5% 郵便貯金 18.6% 保険 26.5% 有価証券 9.5%

平成17 年 預貯金 39.7% 郵便貯金 18.4% 保険 24.7% 有価証券 12.4

平成18 年 預貯金 39.0% 郵便貯金 15.6% 保険 25.2% 有価証券 15.9

資料出所:金融広報委員会『家計の金融資産に関する世論調査』2006 p.3

2-1-2、金融商品を選択する際に重視すること

「金融商品の選択の際に最も重視していることは、「元本が保証さ れているから」が最も多く、ついで「少額でも預け入れや引き出し が自由にできるから」、「取扱金融機関が信用できるて安心だから」

の順となっている。また、「取扱金融機関の信頼性」を重視するとの 回答が前年比増加したほか、「預入・払戻しの自由度」や「換金性」

も増加した。一方、「利回りの良さ」を重視するとの回答は減少した。

これを「安全性」、「流動性」、「収益性」の3基準(注)に分けて みると、「安全性」を重視するとの回答が5割弱、「流動性」が約3 割、「収益性」が2割弱となっている。前年と比べると、安全性の割 合が若干低下する一方で、流動性、収益性の割合がわずかに上昇し ている。」(表23)

「(注)ここでは、「安全性」「流動性」「収益性」に関わる項目をそ れぞれ下記のように分類。

安全性:「元本が保証されているから」および「取扱金融機関が信用

できて安心だから」

流動性:「少額でも預け入れや引き出しが自由じできるから」および

「現金に換えやすいから」

収益性:「利回りが良いから」および「将来の値上がりが期待できる から

表 23 金融商品の選択基準

年 項 目

平成16 年 安全性:51.1% 流動性:27.7% 収益性:13.9% その他:

7.3%

平成17 年 安全性:48.3% 流動性:27.4% 収益性:14.7% その他:

9.6%

平成18 年 安全性:46.1% 流動性:29.4% 収益性:17.3% その他:

7.2%

資料出所:金融広報委員会『家計の金融資産に関する世論調査』2006.

p.9

2-1-3、今後の金融商品の保有希望(複数回答)

「今後の金融商品の保有希望では、預貯金が5割強と前年に比べ増 加したことに加え、有価証券も約2割と前年よりわずかに増加した。

預貯金残高(郵便貯金を除く)別にみると、保有する預貯金残高 が大きくなるにつれて預貯金と郵便貯金の保有希望が減少し、有価 証券や外貨建金融商品の保有希望が増加した。」(表24 表 25))

表 24 今後の金融商品の保有希望の主なもの(複数回答)

預貯金 郵便貯

金 保険 有価証券 外貨建金融商 品 平成16 年 53.9 36.9 15.9 15.0 3.6 平成17 年 45.9 29.0 16.0 18.6 4.1 平成18 年 52.8 29.2 15.2 20.9 4.7 資料出所 金融広報委員会『家計の金融資産に関する世論調査』2006 p.11

項 目 年

表 25 預金残高の別今後の金融商品の保有希望(複数回答)

預貯金 郵便

貯金 保険 有価 証券

外貨建金 融商品 500 万円未満 58.8 28.8 15.3 11.0 2.8 1.000 万円未満 52.1 31.9 16.0 25.7 4.2 1.500 万円未満 56.0 37.8 14.1 26.8 4.5 2.000 万円未満 53.7 35.1 17.6 33.0 9.0 3.000 万円未満 44.7 28.8 13.5 41.9 8.4 5.000 万円未満 45.4 22.4 11.7 49.3 13.7

1億円未満 47.9 22.5 14.1 53.5 16.9 1 億円以上 33.3 13.3 6.7 50.0 16.7 資料出所:金融広報委員会『家計の金融資産に関する世論調査』2006.

p.11

2-1-4、タンス預金

前節までで、日本人の投資性向は、外国の主要国と比較し、リス ク回避性、安全指向であることが浮かび上がってきたが、さらにこ こで家の金庫等に保管するので心理的距離感ゼロ、超安全指向の「た んす預金」の存在について触れておきたい。(斉藤安伸2008)43

「家庭に紙幣としてため込まれている「たんす預金」は総額三十 兆円。日銀が、市中で必要とされる一万円の量の変化に着目し、こ のほど発表した、たんす預金の試算結果だ。

1995 年以降の金融システム不安、2002 年のペイオフ(預金の払 戻保証額を一千万円とその利息までとする措置)部分解禁が重なり、

低金利もあって、高齢者が銀行などの定期預金を解約し、現金を手 元に保管する動きが進んだ。

95 年に五兆八千億円だったたんす預金は、01 年に二十兆円の大 を超え、02 年に二十六兆円四千億円となった。その後銀行の経営が 安定し、金利もわずかに上昇しているが、いったんたんすに移った 約三十兆円が逆流する動きは鈍い。ただ、今後団塊世代などお金の 運用に積極的な高齢世代が増えてくるにつれて、新たな動きが出る

43 斉藤安伸『東京新聞』2008.9.2

種 金 類

可能性もある。なお日銀券(お札)の発行残高は2007 年末残高は約 74 兆円。」

2-1-5、考察

上記の調査結果から以下の点が指摘できると考える。

①保有金融資産のうち、「安全資産」である「預貯金・郵便貯金」の 合計比率は、2004~2006 年(平成 16~18 年)各年いずれも 50%

を超えている。

②金融資産を選択する際に重視すること、に関しても、各年とも「安 全性」は、45%以上と他の選択基準を引き離しているである。

③今後の金融商品の保有希望(複数回答)についても、第一位は、

預貯金で50%前後であり、また第二位は、郵便貯金で、30%超か あるいは30%弱とリスク回避性向が強い。

このことから、日本人の家計での投資性向は、超安全指向とい うか、リスクを嫌うというかリスクヘッジを指向していることが はっきりと読み取れる。預貯金・郵便貯金は利息は非常に低いは 元本が保証されているのである。即ち、いわゆるローリスク・ロ ーリターンであることがわかる。

④今後の金融商品の保有希望について、預金残高別にみると、預金 残高が多くなるに従って、安全資産である預貯金・郵便貯金の比 率が下がり、逆にリスク資産である有価証券・外貨建金融商品の 比率が上がるというはっきりした傾向があらわれている。

つまり、現状ですでに安定した資産を保有している人は、将来 の生活に対するリスクヘッジが既にできているため、今後の保有 資産でリスク回避をする必要性がない。よってリスク資産である 有価証券や外貨建金融商品を選択することができる。

しかし、それでも、預金残高が、一億円以上の層でも、郵便貯 金を含めた安全資産指向の比率は、46%を超える。

一方、現状の預金残高に不安のある人は、将来の保有資産の選 択でリスクをとれず、安全資産である預貯金や郵便貯金を選んで、

リスクヘッジをせざるを得ない、と考えられる。

結論として、預金残高の大小に拘わらず、日本人のリスク回避 性向が観察される。

このリスク回避性向は、日本人特有のものなのか否かについて、

日本と先進諸国と投資性向の比較対照してみる。

⑤日本の個人金融資産残高は、1.424 兆円(2004 年末)である。こ のうち約 50%の約 700 兆円が預貯金(郵便貯金を含む)を占め、

このうち約 30 兆円がタンス預金が占めることになる。、

また、上述、斉藤安伸によれば、日本経済のバブル崩壊後から、

タンス預金が増え、その後残高が減る動きが鈍いということは、

それまで信じ、安全とされたきた銀行さえも倒産しする時代とな った。このような状況を目の当たりにすれば信じられるのはわが 身だけという心境になり、自分の家の“タンス”(実際には家庭の 金庫)に預けるという行動も理解ができる。

タンス預金という最も心理的距離感のない預金が減らない状況 をみても「リスクと心理的距離感とは相関関係がある」という前 章での結論が、経済学的立場からも検証されたものと考えられる。