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日本語彙複合動詞的自自交替現象 - 政大學術集成

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Academic year: 2021

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(1)國立政治大學日本語文學系 碩士論文. 指導 教授 : 王 淑琴. 語彙的複合動詞の自自交替について. 研 究 生 :張 惠 茹 中華民國一○一年七月.

(2) 摘要. 本研究以日文的語彙複合動詞為研究對象,探討自自交替發生時的 條件及制約,以及在整個複合動詞中所佔的位置。 本 論 文 共 分 為 七 章。第 一 章 為 緒 論,闡 述 本 研 究 的 目 的 及 考 察 對 象。 第二章則針對語彙複合動詞的自他交替及自自交替之過往相關文獻進 行研究,並提出尚未解決的問題。第三章到第六章則依照字組下去分 別 做 探 討 。 字 組 依 序 為 「 出 る / 出 す 」「 通 る / 通 す 」「 回 る / 回 す 」 「抜く/抜ける」為後項的複合動詞。第三~六章主要在探討前項動 詞 與 後 項 動 詞 的 特 徵,以 及 自 自 交 替 形 成 的 原 因。最 後 第 七 章 為 結 論。 透過本研究,我們可以得到以下結論。 ( 1) 形 成 自 自 交 替 的 前 後 項 動 詞 皆 為 位 置 變 化 動 詞 。 ( 2) 自 自 交 替 發 生 的 原 因 依 據 前 項 動 詞 的 性 質 而 有 所 不 同 。 例 如 前項動詞為非能格自動詞時,自自交替的原因主要為再歸導 致的他動性低下;前項動詞為非對格自動詞時,自自交替的 原 因 為 「 非 対 格 性 優 先 の 原 則 」; 前 項 為 他 動 詞 時 , 自 自 交 替 的原因則來自於文全體的他動性低下。. 關鍵字:語彙複合動詞、自自交替、自他交替、他動性、非對格優先 原則、位置變化.

(3) 語彙的複合動詞の自自交替について 【要約】. 本研究の目的は、語彙的複合動詞における自自交替の発生条件、 制約及び位置づけを明らかにすることである。 本研究は 7 章で構成される。第一章は序論で、本研究の目的及び 研究対象を述べる。第二章ではまず自他交替と自自交替に関する先 行研究を検討し、さらに本研究の位置づけについて述べ、問題点を 提 出 す る 。 第 三 章 か ら 第 六 章 に お い て は 、「 出 る / 出 す 」「 通 る / 通 す 」「 回 る / 回 す 」「 抜 く / 抜 け る 」 の 組 み 合 わ せ に 分 け 、 そ れ ぞ れ 考察を行い、 「 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 」と「 自 自 交 替 が 可 能 に な る理由」について分析する。第七章は結論である。 本研究を通して次のような結論が得られる。 ( 1) 自 自 交 替 に お け る 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 は 、 両 方 と も 位 置 変 化を表していることが判明した。 ( 2) 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 は 、 前 項 動 詞 の 性 質 に よ っ て 異 なる。前項動詞が非能格自動詞である場合は、主に再帰に よる他動性低下の影響を受け、自自交替が可能になる。前 項 動 詞 が 非 対 格 自 動 詞 の 場 合 は 、「 非 対 格 性 優 先 の 原 則 」 の 制約で自自交替を成す。前項動詞が他動詞である場合は、 文全体の他動性低下という原因で自自交替が可能になるの である。. キーワード:語彙的複合動詞、自自交替、自他交替、他動性、 非対格性優先の原則、位置変化.

(4) 目次. 第一章. 序 論 ............................................. 01. 1.1. 研 究 動 機 と 目 的 .................................... 01. 1.2. 研 究 対 象 ..........................................02. 1.3. 本 研 究 の 構 成 ......................................04. 第二章. 先 行 研 究 と 本 研 究 の 位 置 づ け ........................05. 2.1. は じ め に ..........................................05. 2.2. 先 行 研 究 ..........................................05. 2.2.1. 複 合 動 詞 の 自 他 交 替 ............................05. 2.2.1.1. 影 山 ( 1993) ..............................05. 2.2.1.2. 朱 (2009)..................................07. 2.2.1.3. 陳 (2010)..................................09. 2.2.2. 複 合 動 詞 の 自 自 交 替 ...........................10. 2.2.2.1. 姫 野 ( 1999) ..................... .........10. 2.2.2.2. 徐 ( 2007) ................................11. 2.2.3. 問 題 点 ........................................11. 2.3. 自 自 交 替 の 位 置 づ け ................................14. 2.4. ま と め ............................................16. 第三章. 「 出 る 」「 出 す 」 を 後 項 と す る 複 合 動 詞 の 自 自 交 替 ....18. 3.1. は じ め に ..........................................18. 3.2. 先 行 研 究 ..........................................18. 3.2.1. 影 山 ( 2002) ..................................18. 3.2.2. 松 本 ( 2009) ..................................1 9. 3.3. 語 彙 的 な 「 ~ 出 す 」 と 統 語 的 な 「 ~ 出 す 」 ............21. 3.3.1. 二 種 類 の 「 ~ 出 す 」 に つ い て の 先 行 研 究 ..........21. 3.3.2「 ~ 出 る 」 と 「 ~ 出 す 」 の 意 味 的 対 応 に つ い て ......22.

(5) 3.3.2.1 3.3.2.2 3.3.3 3.4. A 類 に お け る 「 ~ 出 る 」 と 「 ~ 出 す 」 ...,,,..22 B 類 に お け る「 ~ 出 る 」と「 ~ 出 す 」 .......26. ま と め ........................................27 前 項 動 詞 が 非 能 格 自 動 詞 の 場 合 ....................28. 3.4.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 ......................28. 3.4.2. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 ......................30. 3.5. 前 項 動 詞 が 非 対 格 自 動 詞 の 場 合 ....................33. 3.5.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 ......................34. 3.5.2. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 ......................36. 3.6. 前 項 動 詞 が 他 動 詞 の 場 合 ............................39. 3.6.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 ......................41. 3.6.2. 共 起 名 詞 及 び 文 レ ベ ル の 特 徴 ....................43. 3.6.3. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 ......................45. 3.7. ま と め ............................................4 7. 第四章. 「 通 る 」「 通 す 」 を 後 項 と す る 複 合 動 詞 の 自 自 交 替 .....48. 4.1 は じ め に ............................................48 4.2 前 項 動 詞 が 非 対 格 自 動 詞 の 場 合 ........................48 4.2.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 .......................49. 4.2.2. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 .......................52. 4.3. 前 項 動 詞 が 他 動 詞 の 場 合 .............................53. 4.3.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 .......................55. 4.3.2. 「 突 き 通 す 」 構 文 の 特 徴 に つ い て .................55. 4.3.3. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 .......................61. 4.4. 第五章. ま と め .............................................6 4. 「回る」 「 回 す 」を 後 項 と す る 複 合 動 詞 の 自 自 交 替 ......66. 5.1. は じ め に ...........................................66. 5.2. 前 項 動 詞 が 非 能 格 自 動 詞 の 場 合 .......................66. 5.2.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 .......................68.

(6) 5.2.2. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 .......................68. 5.3 前 項 動 詞 が 非 対 格 自 動 詞 の 場 合 ........................70 5.3.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 ...................... .71. 5.3.2. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 .......................72. 5.4. 前 項 動 詞 が 他 動 詞 の 場 合 .............................73. 5.4.1. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 .......................75. 5.4.2. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 .......................75. 5.5 ま と め ..............................................79. 第六章 「抜く」 「 抜 け る 」を 後 項 と す る 複 合 動 詞 の 自 自 交 替 .....80 6.1. は じ め に ...........................................80. 6.2. 前 項 動 詞 が 他 動 詞 の 場 合 .............................80. 6.3. 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 ...........................81. 6.4. 自 自 交 替 が 可 能 に な る 理 由 ...........................82. 6.5. ま と め .............................................84. 第七章 7.1. 結 論 ..............................................85 本 研 究 の 結 論 ...................................... .85. 7.2 今 後 の 課 題 .......................................... 88. 参 考 文 献 ..................................................90.

(7) 第一章. 序論. 本研究の目的は、日本語の語彙的複合動詞における後項動詞が形 態上自他対応をなしているものの、複合動詞全体が自動詞の用法に なる、いわゆる「自自交替」という現象の発生条件、制約及び位置 づけを明らかにすることである。本章においては、主に研究動機と 目的、考察対象と構成について述べる。. 1.1. 研究動機と目的. ま ず 本 研 究 の 研 究 対 象 を 述 べ る 。複 合 動 詞 は 、形 態 上 二 つ の 動 詞 要素からなり、前項動詞の連用形に後項動詞が続く複合語を指す。 ま た 、複 合 動 詞 の 後 項 動 詞 に は 、 「 上 が る /上 げ る 」 「 出 る /出 す 」の よ う な 自 動 詞 と 他 動 詞 で 一 つ の ペ ア を 成 す も の が 多 く 見 ら れ る 。こ の よ う な 自・他 ペ ア を 持 つ 動 詞 は 他 の 動 詞 と 組 み 合 わ さ っ て 複 合 動 詞 に な る 際 、次 の よ う に 構 文 上 格 の 変 動 が あ る 場 合(( 1) ( 2)参 照 ) と な い 場 合 (( 3)( 4) 参 照 ) が 見 ら れ る 。. (1). 花火を打ち上げる⇔花火が打ち上がる. (2). 時間を積み重ねる⇔時間が積み重なる. (3). 彼が飛び出す⇔彼が飛び出る. (4). 惑星が黄道を突き通す⇔惑星が黄道を突き通る. 日 本 語 の 複 合 動 詞 は 、 影 山 ( 1993) に よ れ ば 、 一 般 的 に 句 構 造 と 同じ右側主要部の規則が成立している。つまり、複合動詞全体の性 質が後項動詞によって指定される。また、語彙的複合動詞は統語上 一つの動詞として振舞う以上、本動詞と同じように自他交替の能力 を 備 え て い る は ず で あ る 。例( 1) ( 2)の「 ~ 上 げ る /上 が る 」 「~重 1.

(8) ね る /重 な る 」は 、本 動 詞 の 用 法 と 同 じ く 、構 文( ガ /ヲ )と 形 態( 上 げ る /上 が る , 重 ね る /重 な る ) の 交 替 が 見 ら れ る 。 し か し 、 例 ( 3) ( 4) の 「 ~ 出 す /出 る 」「 ~ 通 す /通 る 」 は 、 本 動 詞 と は 違 い 、 格 の 交替が見られない。 このように日本語では本動詞として使われる場合に自他交替が 見られるが、複合動詞の後項動詞として使われる場合は、必ずしも 同じ交替現象が見られるとは限らないものがある。また、先行研究 で は 、 例( 1)( 2) の よ う な「 自 他 交 替 」に 関 す る 研 究 は 今 ま で 盛 ん に 行 わ れ て き た が 、例( 3) ( 4)の タ イ プ に つ い て ほ と ん ど は 個 別 的 な動詞に対する研究で、体系的に論じたものは少ない。従って、本 研 究 の 目 的 は 、主 に 例( 3)( 4)の よ う な 、後 項 動 詞 の 自 他 対 応 が あ るにもかかわらず複合動詞全体が「自動詞⇔自動詞」という交替を なす「自自交替」を全般的に考察することである。. 1.2. 研究対象. 本研究では語彙的複合動詞における後項動詞が形態上自他対応を 成しているものの、複合動詞全体が自動詞の用法になるものを考察 するため、まず国立国語研究所の「複合動詞資料集」を主要の参考 資料としてどのような自他対応の動詞が複合動詞の後項になりうる かを確認する。そして、それらが同一の前項動詞と結び付けるか否 か を 辞 書 1 で 検 索 し 、対 象 範 囲 を 絞 る 。自 自 交 替 を な す ペ ア を 抽 出 し 、 抽出されたものを実際の使用状況によって、現在ではあまり用例が 見 つ か ら な い も の を 除 外 す る 。 2 筆 者 の 考 察 に よ り 、「 自 自 交 替 」 と 1. 大辞林第2版と広辞苑第6版を使用する。 除外したペアは以下のように実際使われていない、あるいは古語として扱わ れ る も の で あ る 。 「 言 ひ 通 る /言 い 通 す 」 、 「 押 し 通 る /押 し 通 す 」 、 「 攻 め 寄 る / 攻 め 寄 せ る 」 、「 詰 め 寄 る / 詰 め 寄 せ る 」 、「 吹 き 寄 る / 吹 き 寄 せ る 」 、「 引 き 寄 る / 引 き 寄 せ る 」、「 聞 き 渡 る /聞 き 渡 す 」、「 差 し 渡 る /差 し 渡 す 」。ま た 、 次のような例も対象外にする。 a . 唯 一 の 武 器 と し て の 十 手 は 、そ の 押 し か か っ た 瞬 間 に は ね 飛 ば さ れ て し ま ったことは確実で、そうして素手で向った相手の曲者に、すり抜けられ て し ま っ た こ と も 現 実 の 通 り で す 。 ( 中 里 介 山 『 大 菩 薩 峠 17 』 ) b. 債 権 者 は 一 度 に 押 し か け て 来 た 。 ( 石 川 達 三 『 青 春 の 蹉 跌 』 ) 2 2.

(9) いう現象は以下の 4 組の複合動詞に見られる。実際の例文を見てみ よう。. ( 5) わ し は 小 屋 を 飛 び 出 た 。( 香 山 滋 『 香 山 滋 集 :: 魔 境 原 人 』) ( 6) 造 船 所 の 幹 部 た ち は 、 ニ ュ ー ス を 耳 に す る と 、 家 を 飛 び 出 し建造主任室に続々と集ってきた。 ( 磯 田 光 一『 戦 艦 武 蔵 』) ( 7)槍 の 切 っ 先 は ひ し ゃ げ た 防 具 の 隙 間 か ら 突 き 刺 さ り 、ザ ッ ク リと騎士の身体を貫き通る。 ( http://t-walker.jp/eb/adventure/rp.cgi?sceid=3770 ) ( 8)ち ら の 気 力 も ほ と ん ど 尽 き か け て て ,も う ダ メ か と も 思 っ た とき、ついに仲間の剣がヤツの心臓を貫き通したんだ。 ( http://www.4gamer.net/weekly/lotro/004/lotro_004.shtml ) ( 9)し か し 、私 が こ の 猫 を 嫌 え ば 嫌 う ほ ど 、猫 の ほ う は い よ い よ 私を好くようになってくるようだった。私のあとをつけまわ り、そのしつこさは読者に理解してもらうのが困難なくらい であった。 (『 黒 猫 エ ド ガ ー ・ ア ラ ン ・ ポ ー 』佐 々 木 直 次 郎 訳 ) ( 10)「 監 視 し よ う じ ゃ な い か !. ぼくはやつをつけまわすよ!」. とラズミーヒンは力強く言った。. (『 罪 と 罰 』江 川 卓 ). ( 11) 煙 が 空 高 く 、 あ く ま で も 高 く 昇 り 、 横 に 棚 引 く 雲 を 突 き ぬ けて、傘の形をしたお化のような大きな煙であった。 (『 黒 い 雨 』 河 上 徹 太 郎 ) ( 12) 来 年 は 筍 が 椽 を 突 き 抜 い て 座 敷 の な か は 竹 だ ら け に な ろ う と云ったら、若い女が何にも云わずににやにや と笑って、 出て行った。. (『 草 枕 』夏 目 漱 石 ). a と b は一見、同じ「~が押しかかる/~が押しかける」のような自自交替の 対 応 を し て い る が 、同 じ 文 脈 で の 言 い 換 え が 不 可 能 で あ る た め( 例 え ば * 十 手 は 押 し か け る / * 債 権 者 は 押 し か か っ て 来 た )、除 外 し た 。つ ま り 、本 研 究 の 自 自 交替は、形態上だけではなく、意味上も同じでなければならないということで ある。 3.

(10) ( 5) ~ ( 12) は 、 そ れ ぞ れ 「 ~ ガ ~ ヲ 飛 び 出 す /~ ガ ~ ヲ 飛 び 出 る 」「 ~ ガ ~ ヲ 貫 き 通 す /~ ガ ~ ヲ 貫 き 通 る 」「 ~ ガ ~ ヲ 付 け 回 す /~ ガ ~ ヲ 付 け 回 る 」「 ~ ガ ~ ヲ 突 き 抜 く /~ ガ ~ ヲ 突 き 抜 け る 」 の 例 で ある。これらの例は形態上他動詞文のように見えるが、そのヲ格名 詞は典型的な対象ではなく、殆ど経路や通過する場所などを表すた め、意味上は自動詞文である。つまり、後項動詞に自他対応がある ものの、構文上格の変動が見られない、という自自交替の現象であ る。本研究は、実際の使用状況を通して自自交替が考察される「~ 出 る /~ 出 す 」 「 ~ 通 る /~ 通 す 」 「 ~ 回 る /~ 回 す 」 「 ~ 抜 く /~ 抜 け る 」 の4組を研究対象とする。3. 1.3. 本研究の構成. 以 上 で は 、研 究 の 動 機 、目 的 、考 察 対 象 に つ い て 概 ね に 紹 介 し た 。 次は本章各章の概要を説明する。 まず、第二章「先行研究と本研究の位置づけ」においては、複合 動詞における「自他交替」と「自自交替」に関する先行研究を検討 し、先行研究と本研究との接点や問題点を示す。次は、本研究の考 察対象となる「自自交替」の現象が見られる複合動詞グループに絞 り、そして第三章~第六章に分け、一組ずつ順次に考察する。それ ぞ れ は 「 出 る / 出 す 」「 通 る / 通 す 」「 回 る / 回 す 」「 抜 け る / 抜 く 」 を後項とする複合動詞である。それらの複合動詞を考察するにあた って、まず、前項動詞を非能格自動詞、非対格自動詞、他動詞に分 け、自自交替を成す場合の前項動詞と後項動詞の意味特徴を考察す る。また、各自の場合が自自交替を成す原因を解明する。 第七章においては、本研究で論述してきたことをまとめ、今後の 課題について述べる。. 3. 「出す」には「木が芽を出す」「熱を出す」「汗を出す」のような非典型的 な他動詞用法があるが、本研究の「~出す」は、移動を表す典型的な使役他動 詞用法に限定する。 4.

(11) 第二章. 2.1. 先行研究と本研究の位置づけ. はじめに. 本章は、 「 家 を 飛 び 出 る ⇔ 家 を 飛 び 出 す 」の よ う な 自 自 交 替 の 現 象 が複合動詞全体の中でどのような位置づけになるかを考察する。ま ず、複合動詞の自他交替・自自交替についての先行研究を概観し、 次に問題点を提示しながら、本研究における「自自交替」の位置づ けについて述べる。. 2.2. 先行研究. 今まで語彙的複合動詞における自他交替に関する研究は数多く見 ら れ 、 盛 ん に 行 わ れ て き た 。 以 下 で は 、 ま ず 2.2.1 節 で 複 合 動 詞 の 自 他 交 替 に 関 す る 先 行 研 究 を 述 べ る 。 順 次 的 に 影 山 ( 1993)・ 松 本 ( 1998)・朱 (2009)・陳 (2010)の 分 析 を 紹 介 し て い く 。続 い て 2.2.2 節では複合動詞の自自交替に関する先行研究を取り上げる。そして 2.2.3 節 で は 、 先 行 研 究 と の 接 点 及 び 先 行 研 究 の 問 題 点 を 述 べ る 。. 2.2.1 2.2.1.1. 複合動詞の自他交替 影 山 ( 1993). 影 山 ( 1993) は 、 日 本 語 の 語 彙 的 複 合 動 詞 は 項 構 造 4 で 複 合 さ れ 、 前項と後項の項構造は適切に同定しなければならないという「他動 性 調 和 の 原 則 」 5 を 提 案 し て い る 。つ ま り 、動 詞 を 非 能 格 自 動 詞 ・ 非 4. 動詞は他動詞、非能格自動詞、非対格自動詞の3種類に大別される。また、 それぞれの項構造は次のようである。 a. 他 動 詞 の 項 構 造 : ( X 〈 y〉 ) b. 非 能 格 自 動 詞 の 項 構 造 : ( X 〈 〉 ) c. 非 対 格 自 動 詞 の 項 構 造 : ( 〈 y〉 ) 5 本 研 究 で の 語 彙 的 複 合 動 詞 の 結 合 す る 条 件 に つ い て は 基 本 的 に「 他 動 性 調 和 の原則」に従える。しかし、「自自交替」は、例えば「他動詞+他動詞」の組 み 合 わ せ( 通 常 、複 合 後 の 動 詞 は 他 動 詞 で あ る )が 自 動 詞 と 見 な さ れ る よ う に 、 表 1 の範疇から離れたものである。この場合は「他動性調和の原則」だけで説 5.

(12) 対格自動詞・他動詞に分け、外項をもつかもたないかにおいて共通 性がなければ、それらの間に複合が許されないという原則である。 「他動性調和の原則」に合致する例と合致しない例を次の表のよう に示す。. 表 1 「他動性調和の原則」に合致するタイプ a. 他動詞+他動詞. 【( x〈 y〉)+( x〈 y〉)】 奪 い 取 る 、切 り 落 と す. b. 非能格+非能格. 【( x) +( x)】. c. 非対格+非対格. 【(〈 y〉)】 +【(〈 y〉)】 滑 り 落 ち る 、. 飛 び 降 り る 、持 ち 歩 く. 張り裂ける d. 他動詞+非能格. 【( x〈 y〉) +( x)】. 探 し 回 る 、待 ち 構 え る. e. 非能格+他動詞. 【( x) +( x〈 y〉)】. 泣きはらす、 笑い飛ばす. 「他動性調和の原則」に合致しないタイプ f. 他動詞+非対格. 【( x〈 y〉) +(〈 y〉)】 *洗 い 落 ち る 、 *倒 し 滑 る. g. 非対格+他動詞. 【(〈 y〉) +( x〈 y〉)】 *揺 れ 落 と す 、 *滑 り 削 る. h. 非能格+非対格. 【( x) +(〈 y〉)】. *走 り 転 ぶ 、 *泣 き 腫 れ る. i. 非対格+非能格. 【(〈 y〉) +( x)】. *転 び 降 り る 、 *痛 み 泣 く. ( 影 山 ・ 由 本 1997 を も と に ま と め た も の で あ る ). 明 す る こ と が 難 し く な り 、一 種 の 非 典 型 的 か つ 逸 脱 し た も の で あ る と 思 わ れ る 。 このような現象の発生においては、語彙内部構成の規則より、むしろ文レベル の制限が課せられると考えられる。以上を用いて、本研究における「他動性調 和 の 原 則 」は 、 「 自 自 交 替 」現 象 を 分 析 す る 前 に 、語 彙 的 複 合 動 詞 の 判 別 基 準 で ある。 6.

(13) 影 山( 1993)は 、次 の( a)の よ う な「 他 動 性 調 和 の 原 則 」に 反 す る「 他 動 詞 + 非 対 格 自 動 詞 」の 組 み 合 わ せ は 、対 応 す る( b)の「 他 動詞+他動詞」複合動詞から派生されたものだと説明している。つ ま り 、( a) の よ う な も の は 、 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 が 直 接 複 合 し た 複 合動詞ではなく、対応する他動詞から自動詞化によって形成された ものであるため、複合動詞構成上の例外だとみなすべきだと主張し ている。. ( a) 他 動 詞 + 非 対 格 : 打ち上がる、入れ替わる、煮詰まる、積み重なる ( b) 他 動 詞 + 他 動 詞 : 打ち上げる、入れ替える、煮詰める、積み重ねる. 2.2.1.2. 朱 (2009). 朱( 2009)は 、主 に「 上 げ る 」 「 上 が る 」を 後 項 と す る 語 彙 的 複 合 動 詞 を 取 り 上 げ 、他 動 性 調 和 の 原 則 か ら 外 れ た も の を 考 察 し て い る 。 例えば「打ち上がる」のような「他動詞+非対格自動詞」のタイプ と、 「 舞 い 上 げ る 」の よ う な「 非 対 格 自 動 詞 + 他 動 詞 」の タ イ プ で あ る。また、タイプによって、異なる条件が要求されると主張してい る 。 そ の 考 察 の 結 果 は 以 下 の ( Ⅰ )( Ⅱ ) の よ う で あ る 。. ( Ⅰ )「 他 動 詞 + 非 対 格 自 動 詞 」 タ イ プ 「 他 動 詞 + 非 対 格 自 動 詞 」型 の 複 合 動 詞 が 派 生 さ れ や す い 条 件:. ①後項動詞が実質的な意味を持つか持たないかに関わらず、前 項 動 詞 が 実 質 的 な 意 味 を 持 た な い 場 合 ( 例 ( 3) と 例 ( 4))と ② 前項が抽象的な意味を、後項が実質的な意味を持つ場合である ( 例 5)。. ( 1) a.普 通 預 金 の 金 利 を 引 き 上 げ る 。 b.普 通 預 金 の 金 利 が 引 き 上 が る 。 7.

(14) ( *普 通 預 金 の 金 利 を 引 く /金 利 を 上 げ る )( 朱 2009: 93). ( 2) a.予 定 を 繰 り 上 げ る 。 b.予 定 が 繰 り 上 が る 。 ( *予 定 を 繰 る /*予 定 を 上 げ る ). ( 朱 2009: 93). ( 3) a.実 蹟 を 積 み 上 げ る b.実 蹟 が 積 み 上 が る ( 実 蹟 を 積 む ( 抽 象 的 ) /実 蹟 を 上 げ る ( 実 質 的 )) ( 朱 2009: 94). 例( 1)と 例( 2)で は 、① の 条 件 を 満 た し 、つ ま り 、 「引き上げる」 「 繰 り 上 げ る 」の 前 項 動 詞「 引 き 」 「 繰 り 」は 実 質 的 な 意 味 を 持 た な い の で 、「 普 通 預 金 の 金 利 が 引 き 上 が る 」「 予 定 が 繰 り 上 が る 」 が 派 生 さ れ る わ け で あ る 。 ま た 例 ( 3) は 、 ② の 条 件 に 合 致 し 、 つ ま り 、 「 積 み 上 げ る 」の 前 項 動 詞「 積 み 」が 抽 象 的 な 意 味 を 、後 項 動 詞「 上 げ る 」が 実 質 的 な 意 味 を 持 つ の で 、 「 実 績 が 積 み 上 が る 」が 派 生 さ れ るわけである。. ( Ⅱ )「 非 対 格 自 動 詞 + 他 動 詞 」 タ イ プ 「非対格自動詞+他動詞」型の複合動詞が派生されやすい条件:. 複合動詞における前項動詞が非意図的行為を表している場合。. ( 4) a. 彼 は 失 敗 か ら 立 ち 上 が っ た 。 b. *彼 を 失 敗 か ら 立 ち 上 げ た 。 ( 5) a. コ ン ピ ュ ー タ ー が 立 ち 上 が る 。 b. 彼 は コ ン ピ ュ ー タ ー を 立 ち 上 げ る 。 ( 朱 2009: 94). 例( 4)の「 立 つ 」は 意 図 的 行 為 を 表 す た め 、対 応 す る「 立 ち 上 げ る 」の 形 を 持 た な い の に 対 し 、例( 5)の「 立 つ 」は 非 意 図 的 行 為 を 8.

(15) 表 す た め 、対 応 す る「 立 ち 上 げ る 」の 形 を 持 つ 。要 す る に 、条 件( Ⅱ ) は 、 V1 が 非 意 図 的 な 行 為 を 表 す 場 合 、「 自 + 自 」 か ら 「 自 + 他 」 へ 派生しやすいということである。. 2.2.1.3. 陳 (2010). 陳( 2010)は 従 来 例 外 と さ れ た「 打 ち 上 げ る → 打 ち 上 が る 」 「炊き 上げる→炊き上がる」のような複合動詞の自他交替(逆形成)は、 「 結 果 一 致 性 の 仮 説 」6 と い う メ カ ニ ズ ム が 潜 ん で い る と 主 張 し て い る 。つ ま り 、 「 打 ち 上 げ る → 打 ち 上 が る 」の よ う な 前 項 動 詞 が 後 項 動 詞の「手段」を表す複合動詞は、前項と後項の結果の意味が一致す る場合のみ、複合動詞に自他交替の可能性があると指摘している。 ま た 、 陳 ( 2010) は 語 彙 概 念 構 造 を 用 い て 、 こ の よ う な 複 合 動 詞 の 形 成 を 分 析 し て い る 。た と え ば 、以 下 の( 9)の「 吊 り 上 げ る → 吊 り 上 が る 」 を 挙 げ て い る 。( 典 型 的 な 他 動 詞 の 語 彙 概 念 構 造 ( L C S ) を 以 下 の よ う に 設 定 す る 。). ( 6) 一 般 的 な 他 動 詞 の 語 彙 概 念 構 造 : [x ACT ( ON y) ]CSAUSE[y BECOME [y BE at -z]]. ( 7) 太 郎 が 風 鈴 を 天 井 に 吊 り 下 げ る → 風 鈴 が 天 井 に 吊 り 下 が る L C S 2 「 下 げ る 」: [ [ 太 郎. i. ACT. ON. 風 鈴 j]CAUSE[風 鈴. j. BECOME[風 鈴. j. BE. A T-天 井 k]]]. L C S 2 「 吊 る 」:. i. ACT. ON. 風 鈴 j]CAUSE[風 鈴. j. BECOME[風 鈴. j. BE. A T-天 井 k]]]. [[太 郎. 〈 MANNER: 無 ・ 弱 指 定 〉. 項構造:. 太郎. i. 風鈴. j. 天井. k. ( 陳 2010:44) 6. 結 果 一 致 性 の 仮 説 : V 1 と V2 の 結 果 の 意 味 が 一 致 す る 場 合 の み 、 複 合 動 詞 は 自他交替の可能性がある。 9.

(16) 例( 7)の「 吊 り 下 げ る 」は 前 項 と 後 項 が 同 じ 着 点( こ の 場 合 で は 天 井 ) を 取 る た め 、「 吊 り 下 が る 」 に 派 生 す る の で あ る 。 一 方 、「 枝 を 切 り 落 と す 」の 例 に お い て 、 「 切 る 」は「 切 断 」と い う 結 果 状 態 を 含意するのに対し、 「 落 と す 」は「 下 方 」と い う 結 果 状 態 を 含 意 す る 。 この場合、前項動詞と後項動詞が含意する結果が一致していないた め 、「 枝 が 切 り 落 ち る 」 に 派 生 し な い と し て い る 。 このように、後項動詞の自他対応があり、構文上も格の変動があ るという自他交替の現象は複合動詞間の交替の中に典型的なもので あると言える。それに対し、本研究の考察対象は後項動詞の自他対 応があるものの、構文上格の変動が見られないという点から、典型 的なものから逸脱し、周辺的なものに属すると考えられる。以下、 複合動詞の自自交替に関する先行研究を紹介する。. 2.2.2. 複合動詞の自自交替. 2.2.2.1. 姫 野 ( 1999). 「自自交替」に触れる論文は見られるが、ほとんど個別の複合動 詞 に 対 す る 研 究 で あ る 。 例 え ば 、 姫 野 ( 1999) は 以 下 の 表 の よ う に 「~出る「 」 ~ 出 す 」の 複 合 動 詞 の 言 い 換 え を 指 摘 し て い る 。し か し 、 同一の文脈で「~出る」を「~出す」に言い換えられるものと言い 換えられないものに分けるという分類にとどまっており、言い換え られる条件については述べていない。. 表 2. 「~出る」と「~出す」の言い換えについて. 後項要 素. 同 一 の 文 脈 で「 ~ で る 」が「 ~. 言い換えられぬもの. だす」に言い換えられるもの. 前項要素 「外部への. 沸き出る、溢れ出る、浮き出. 移動」の意. る 、浮 か び 出 る 、に じ み 出 る 、 咲 き 出 る. を含もの. こぼれ出る. など… 10. 生まれ出る. 現れ出る.

(17) 「外部への. 這い出る、転げ出る、飛び出. 輝き出る、進み出る. 移動」の意. る、突き出る、逃げ出る、. 捧げ出る、歩み出る. 味を含まぬ. 走り出る、流れ出るなど…. 泳ぎ出る、躍り出る. もの(移動. 暴れ出る、舞いでる. の方法・様. など…. 相を示すも の) 接頭語など. はみ出る. おん出る. さし出る. ( 姫 野 1999:85). 2.2.2.2. 徐 ( 2007). 徐 ( 2007) は 姫 野 の 主 張 を 踏 ま え た 上 で 、「 あ ふ れ ~ 」「 流 れ ~ 」 「 突 き ~ 」「 抜 け ~ 」 の 前 項 動 詞 を 取 る 「 ~ 出 る 」「 ~ 出 す 」 の 例 を 取り上げ、言い換えられる時の条件を考察している。徐の主張によ ると、 「 ~ 出 す 」は. ①「 ~ 出 す 」の 動 作 対 象 が 動 作 主 体 の 一 部 で あ. る、②動作に意志性が強く感じられないという 2 つの条件を満たす 場 合 、「 ~ 出 る 」 に 言 い 換 え る こ と が で き る ( 次 例 参 照 )。. ( 8) 目 頭 か ら は 、 熱 い 涙 が あ ふ れ 出 し た ( = あ ふ れ 出 た )。 ( 徐 2007:52) ( 9) 太 る 悪 循 環 か ら 抜 け 出 す ( *抜 け 出 る ) た め 、 今 ま で も ダ ン ベルや筋トレ用品など、様々な道具を試してみた。 ( 徐 2007:54). 例 ( 8) に お け る 「 あ ふ れ 出 す 」 は 、 徐 の 定 義 に 従 う と 、「 あ る 空 間(目頭の奥)からその空間の外(目頭の外)へ動作主体が動作対 象( 涙 )を 移 動 さ せ る 」と い う 意 味 で あ る 。こ の 場 合 の 動 作 対 象「 涙 」 は 動 作 主 体 ( こ こ で は 「 人 」 を 指 す ) の 一 部 で あ る た め 、「 ~ 出 る 」 と「 ~ 出 す 」の 言 い 換 え が 可 能 で あ る 。こ れ に 対 し て 、例( 9)に お ける「抜け出す」は「悪循環からその外へ自分が自分を出す」と考 11.

(18) えることができ、動作対象(=動作主体)は自分自身であり、強い 意志が感じられるため、 「 ~ 出 る 」へ の 言 い 換 え が 不 可 能 で あ る と 述 べている。. 2.2.3. 問題点. 本 節 で は 、 2.2.1 の 自 他 交 替 と 2.2.2 自 自 交 替 の 先 行 研 究 を 踏 ま えて、以下の二つの問題点を提出する。 まず、ひとつ目は、自他交替と自自交替の性質が同じなのかとい う問題である。複合動詞の自他交替(逆形成)は複合動詞における 内部構造と関り、複合動詞の結合原則(他動性調和の原則)を満た すかどうかに焦点が当てられている。従って先行研究は「打ち上が る⇔打ち上げる」 「 積 み 重 な る ⇔ 積 み 重 ね る 」の よ う な 組 み 合 わ せ は 、 「打ち上げる」 「 積 み 重 ね る 」か ら 逆 形 成 に よ っ て「 打 ち 上 が る 」 「積 み重なる」が派生されたと主張している。つまり、複合動詞におけ る自他交替は派生関係を持っているということである。 一 方 、本 研 究 の 自 自 交 替 は す べ て 内 部 構 造 の 問 題 と は 言 い 切 れ ず 、 自 他 交 替 と 違 う 性 質 を も っ て い る と 考 え ら れ る 。例 え ば 、 「~が飛び 出る⇔~が飛び出す」は「非能格自動詞+非能格自動詞」と「非能 格自動詞+他動詞」の組み合わせで、両方とも複合動詞の結合原則 を満たしている。つまり、自自交替は自他交替のように一方から一 方へ派生するという派生関係を持つとは言えない。従って、自自交 替は自他交替とは違う性質をもつ別物ではないかと考えられる。 二つ目の問題点は、自自交替に関する先行研究は、主に個別的な 複合動詞に対する記述で自自交替の全体像について述べていないと い う こ と で あ る 。 ま た 、 従 来 の 先 行 研 究 は 、「 ~ 出 る 」「 ~ 出 す 」 と いう個別的な複合動詞を取り上げいくつかの分析が見られるが、そ れ以外の自自交替の現象を成す複合動詞については言及していない。 本研究は従来とは違って個別的な動詞にとどまらず、自自交替現象 全般を取り上げる。 ま た 、従 来 の「 ~ 出 る / ~ 出 す 」の 先 行 研 究 に も 問 題 点 が 見 ら れ 、 12.

(19) 検討する必要があると考えられる。 例 え ば 徐( 2007)は「 ~ 出 る /~ 出 す 」の 自 自 交 替 に つ い て 言 及 し 、 言い換えられる条件として他動性の「意志性」を提出している。し かし徐の記述には解釈しきれない部分がある。徐によると、次の例 は「意志性を強く感じる」ため、自自交替が許されないということ である。. ( 10) 太 る 悪 循 環 か ら 抜 け 出 す ( *抜 け 出 る ) た め 、 今 ま で も ダ ン ベルや筋トレ用品など、様々な道具を試してみた。 ( 例( 11)再 掲 ). しかし、徐の説では次の用例を説明することができない。. ( 11) こ う い っ た 悪 循 環 か ら 抜 け 出 る の は 自 分 の 意 志 し か な い と は思っているのに、抜け出れない自分にももどかしさを感 じます。 ( http://www12.plala.or.jp/kamesun/news7.html ). 徐は「抜け出す」という動作をするのが動作の対象自身の強い意 志性による場合、意志性を強く感じない「抜け出る」に言い換えら れ な い と 述 べ て い る が 、( 11)は 二 重 下 線 の 示 す よ う に「 抜 け 出 る 」 の意志性が明らかに強く感じられるので、徐の記述の反例となる。 ( 10)と( 11)の 両 方 と も 自 身 の 意 志 性 が 強 く 感 じ ら れ る の で 、「 意 志 性 」で「 ~ 出 る /~ 出 す 」の 自 自 交 替 を 説 明 で き な い と 考 え ら れ る 。 さらに、徐の「意志性を強く感じない」場合に「~出す」を「~出 る」に置き換えることができるという記述にも問題がある。次の例 を見てみよう。. ( 12) 鋭 角 に と ん が っ た 岬 が 海 に 突 き 出 る 。 ( http://www.geocities.jp/gakuchan_nif/pa ge234.html) ( 13) 灰 色 の 空 に 、 大 鷲 の 姿 に 見 え る 一 際 巨 大 な 巌 が 山 の 頂 の 真 13.

(20) 中に突き出していた。. (瀬戸内. 寂聴. 釈迦). 例 (12)( 13)は 例( 8)と 同 様 に 、ガ 格 名 詞 が 主 体 の 一 部 で あ る と 見なされ、どちらも格の変動が見られないまま、後項動詞の自他交 替 を 成 し て い る 。し か し 、(8)の 主 体 で あ る「 人 」が 有 情 物 で 意 志 性 を 持 つ の と 違 い 、 ( 12) ( 13) の 場 合 は 主 体 「 海 」 「 山 」 は 無 情 物 で元々主体の意志性が見られない。これらの例に共通しているのは 他動性が低いということであろう。従って、語彙的複合動詞におけ る自自交替の問題は文全体の他動性とある程度関連しており、徐が 指摘した「動作対象の意志」はただその中の一因にすぎない。 以上のように、自自交替の現象は「文全体がもつ他動性」から考 える必要があるのではないかと考えられる。自自交替の例は複合動 詞においてかなりの少数であり、非典型的な現象であることは否め ないが、このような周辺的な現象にも何らかのメカニズムが潜んで いると考えられる。. 2.3. 自自交替の位置づけ. 以上のことをふまえて、筆者は、複合動詞間の交替において格変. 動を伴う自他交替と格変動を伴わない自自交替という両種類を別物 として扱うべきであると主張したい。まずそれぞれの例文を見てみ よう。. ( 14)太 郎 が 風 鈴 を 天 井 に 吊 り 下 げ る 。. ( 例( 9)再 掲 ). 風鈴が天井に吊り下がる。 ( 15)コ ン ピ ュ ー タ ー が 立 ち 上 が る 。. ( 例( 7)再 掲 ). 彼はコンピューターを立ち上げる。 ( 16) わ し は 小 屋 を 飛 び 出 た 。( 香 山 滋 『 香 山 滋 集 :: 魔 境 原 人 』) ( 17) 造 船 所 の 幹 部 た ち は 、 ニ ュ ー ス を 耳 に す る と 、 家 を 飛 び 出 し建造主任室に続々と集ってきた。 ( 磯 田 光 一『 戦 艦 武 蔵 』) ( 18) 槍 の 切 っ 先 は ひ し ゃ げ た 防 具 の 隙 間 か ら 突 き 刺 さ り 、 ザ ッ ク 14.

(21) リと騎士の身体を貫き通る。 ( http://t-walker.jp/eb/adventure/rp.cgi?sceid=3770 ) ( 19) ち ら の 気 力 も ほ と ん ど 尽 き か け て て 、 も う ダ メ か と も 思 っ た とき、ついに仲間の剣がヤツの心臓を貫き通したんだ。 ( http://www.4gamer.net/weekly/lotro/004/lotro_004.shtml ) ( 20) し か し 、 私 が こ の 猫 を 嫌 え ば 嫌 う ほ ど 、 猫 の ほ う は い よ い よ 私を好くようになってくるようだった。私のあとをつけまわ り、そのしつこさは読者に理解してもらうのが困難なくらい であった。 (『 黒 猫 エ ド ガ ー ・ ア ラ ン ・ ポ ー 』佐 々 木 直 次 郎 訳 ) ( 21) 「 監 視 し よ う じ ゃ な い か !. ぼくはやつをつけまわすよ!」. とラズミーヒンは力強く言った。. (『 罪 と 罰 』江 川 卓 ). ( 22) 煙 が 空 高 く 、 あ く ま で も 高 く 昇 り 、 横 に 棚 引 く 雲 を 突 き ぬ け て、傘の形をしたお化のような大きな煙であった。 (『 黒 い 雨 』河 上 徹 太 郎 ) ( 23) 来 年 は 筍 が 椽 を 突 き 抜 い て 座 敷 の な か は 竹 だ ら け に な ろ う と 云ったら、若い女が何にも云わずににやにやと笑って、出て 行った。. (『 草 枕 』夏 目 漱 石 ). ( 24) 勝 負 が 決 ま っ た 後 に 、 さ ら に 相 手 を 突 き 出 す / * が 突 き 出 る /*を突き出る。 相手が土俵を割った後に、もう一押し。 ( http://ameblo.jp/ryoukyuu-by-wildbunch/archive1-2009 11.html). 例( 14) ( 15)は そ れ ぞ れ「 風 鈴 [ヲ ]天 井 に 吊 り 下 げ る → 風 鈴 [ガ ] 天 井 に 吊 り 下 が る 」、「 コ ン ピ ュ ー タ ー [ガ ]立 ち 上 が る → コ ン ピ ュ ー タ ー [ヲ ]立 ち 上 げ る 」 の よ う に 、 後 項 動 詞 の 自 他 対 応 に よ っ て 構 文 上ガ格とヲ格の間の変動が見られ、典型的な自他交替として扱われ る も の で あ る 。 そ れ に 対 し て 、( 16) と ( 17) の 「 自 分 [ガ ]家 [ヲ ] 15.

(22) 飛 び 出 す ⇔ 自 分 [ガ ]家 [ヲ ]飛 び 出 る 」、( 18) と ( 19) の 「 槍 の 切 っ 先 [ガ ]騎 士 の 身 体 [ヲ ]貫 き 通 る ⇔ 剣 [ガ ]ヤ ツ の 心 臓 [ヲ ]貫 き 通 す 」、 ( 20)と( 21)の「 そ の 男 [ガ ]近 く に い た 女 性 [ヲ ]付 け 回 る ⇔ ぼ く [ガ ] や つ [ヲ ]付 け 回 す 」、 と ( 22)( 23) の 「 煙 [ガ ]雲 [ヲ ]突 き 抜 け る ⇔ 筍 [ガ ]椽 [ヲ ]突 き 抜 く 」 は 、 後 項 動 詞 が 自 他 対 応 を な し て い る が 、 構文上すべて格の変動が見られないので、非典型的な現象である。 つまり、自自交替は複合動詞全体の交替現象の中において、周辺的 なものに位置づけられる。 ここで複合動詞全体の交替現象を、構文上の特徴と後項動詞の形 態上の自他対応によって、次の表 3 のようにまとめてみる。. 表 3 後項動詞の形態 自他対応. 構文上の特徴. 交替しない. +格変動. 例文. ( 24). ヲ→ガ:. +後項動詞の形 態自他対応. 自動化. ( 14). ガ→ヲ:. ( 15). 他動化 -格変動 (複合動詞全体が自動詞 の働きをする). タイプ. なし. 従 来 の 複 合 動 詞 の 自他交替. ( 16). 筆 者 に よ. ~. る 複 合 動. ( 23). 詞 の 自 自 交替. 2.4. まとめ. 本章では、複合動詞の自他交替・自自交替についての先行研究を 16.

(23) 概観して、問題点を提出し、本研究における「自自交替」の位置づ けについて論じた。筆者が主張する自自交替というのは、従来の逆 形成による自他交替と違って、複合動詞の中での周辺的な現象だと 言ってよいものである。しかし、それらの現象は一定の規則に基づ いて形成されたものと考えられる。それらの規則を見出すために、 次 章 か ら 「 ~ 出 る /~ 出 す 」「 ~ 通 る /~ 通 す 」「 ~ 回 る /~ 回 す 」「 ~ 抜 け る /~ 抜 く 」の 四 組 を 順 次 的 に 分 析 し 、自 自 交 替 が 発 生 し や す い 条件を見い出す。. 17.

(24) 第三章. 3.1. 「出る」 「 出 す 」を 後 項 と す る 複 合 動 詞 の 自 自 交 替. はじめに. 本章では主に「~出る」と「~出す」を後項とする複合動詞の自 自交替現象について考察する。すでに前で述べたように、自自交替 とは複合動詞後項の形態上の自他対応があるにもかかわらず、構文 上格の交替が見られないというものである。例えば、「飛び出る/ 飛 び 出 す 」「 駆 け 出 る / 駆 け 出 す 」 7 な ど は 、意 味 上 両 方 と も 自 動 詞 の用法として成立し、言い換えられる可能性がある。自自交替の問 題を解明するには、語構成のレベルから構文全体の意味まで考えな ければならない。次節から、まず「~出る/出す」複合動詞につい ての先行研究とその問題点を示し、また前項動詞を非能格自動詞、 非 対 格 自 動 詞 、 他 動 詞 に 分 け 、 3.4~ 3.6 節 で は そ れ ぞ れ 見 て い く 。. 3.2. 先行研究. 「~出る/出す」複合動詞に触れた論文はいくつかあるが、ここ で「 ~ 出 る / 出 す 」の 語 構 成 と 関 連 す る も の の 中 で 、 「他動性調和の 原則」に反する「非対格自動詞+出す」の先行研究を次のように整 理する。. 3.2.1. 影 山 ( 2002). 影山は「~出る/出す」の組み合わせについて次のように指摘し て い る 。ま ず 、前 項 動 詞 が 非 能 格 自 動 詞 の 場 合 、後 項 動 詞 が「 出 す 」 で は な く 動 作 主 の 自 主 的 な 動 き を 表 す「 出 る 」で な け れ ば な ら な い 。 7. し か し 、 「 *笑 い 出 る / 笑 い 出 す 」 「 * 泣 き 出 る / 泣 き 出 す 」 の 場 合 は 同 じ 前 項動詞が非能格自動詞であるのに、 「 自 動 詞 + 出 す 」の 複 合 動 詞 が 存 在 し な い 。 それは、この場合の「笑い出す」「泣き出す」は語彙的複合動詞である「外へ の移動」の意味ではなく、アスペクト用法としての「笑い始める」「泣き始め る」の意味に変化したということである。本研究の対象は語彙的複合動詞に限 定する。 18.

(25) 例えば、次のような例が挙げられる。. ( 1) 歩 み 出 る 、 進 み 出 る 、 に じ り 出 る 、 お ど り 出 る 。. それに対し、前項動詞が非対格自動詞の場合は、後項動詞が「出 る 」「 出 す 」 両 方 と も 可 能 で あ る と し て い る 。 つ ま り 、「 自 動 詞 + 他 動 詞( 出 す )」の 造 語 が 成 立 す る の は 前 項 動 詞 が 非 対 格 自 動 詞 の 場 合 に限られる。例えば、次のような例が挙げられる。. ( 2) 湧 き 出 す 、 噴 き 出 す 、 に じ み 出 す 、 し み 出 す 、 浮 き 出 す 、 はみ出す。. こ れ に 対 し 、 松 本 ( 2009) は 「 ~ 出 す 」 の 複 合 動 詞 の う ち 、 前 項 動 詞 が 非 能 格 で あ る「 飛 び 出 す 」 「抜け出す」 「逃げ出す」 「起き出す」 のようなものをどうのように扱うのかは明らかではないとしている。. 3.2.2. 松 本 ( 2009). 松本は「湧き出す、にじみ出す、浮き出す」などのような「非対 格自動詞+他動詞」の組み合わせがなぜ許容されるのかについて次 の よ う に 説 明 し て い る 。そ れ は 「 、 出 す 」が 複 合 動 詞 の 後 項 に な る 時 、 本 動 詞 と は 違 っ て 、移 動 動 詞 と し て の 性 質 を 帯 び て い る か ら で あ る 。 つまり、複合動詞後項としての「出す」は使役移動動詞の用法だけ で は な く 、「 出 る 」 の よ う な 移 動 動 詞 の 用 法 も あ る と 説 明 し て い る 。 その説明を次のようにまとめる。 まず、 「 ~ 出 す 」の 造 語 に つ い て 、意 志 的 な 移 動 を 表 す 場 合 、起 点 の 〈 閉 じ ら れ た 領 域 〉 を 表 す ヲ 格 が 付 与 さ れ て い る 。 従 っ て 、( 3b) のように、意志的な移動の読みが取れない場合、起点を表すヲ格が 不可である。. 19.

(26) ( 3) a.ビ ル {を / か ら }飛 び 出 し た 男 b.タ ン ク {*を / か ら }漏 れ 出 し た 水. 松 本( 2009:188). ま た 、 次 の 例 で は 、〈 閉 じ ら れ た 領 域 の 境 界 に あ る 出 口 〉 も ヲ 格 と し て 取 る こ と が で き る が 、こ の 場 合 の 意 志 性 の 制 約 は 例( 3)よ り やや緩い。. ( 4) a.ビ ル の 北 口 {を / か ら }飛 び 出 し た 男 b.タ ン ク に 開 い た 穴 {? を / か ら }漏 れ 出 し た 水 松 本 ( 2009: 189). 例 ( 3)( 4) か ら 分 か る の は 、「 ~ 出 す 」 の 格 付 与 の パ タ ー ン は 、 「 出 る 」の よ う な 移 動 動 詞 に 見 ら れ る も の と 同 じ と い う こ と で あ る 。 8. 従 っ て 、松 本 は 複 合 動 詞 の 後 項 と し て の「 出 す 」は 移 動 動 詞 の「 出. る」と同じ性質を持つと主張している。 以 上 見 て き た よ う に 、 影 山 (2002)と 松 本 (2009)は 「 出 る 」「 出 す 」 複合動詞の語形成について論じており、 「 ~ 出 る / 出 す 」の 交 替 条 件 に つ い て は 論 じ て い な い 。つ ま り 、ど の よ う な 条 件 の 下 で「 ~ 出 る 」 が「~出す」と自由に交替ができるのか、という問題はまだ明らか にされていない。前項動詞の性質(例えば非能格自動詞、非対格自 動詞、他動詞)の違いによって交替条件も違ってくると思われるの で、前項動詞を非能格自動詞、非対格自動詞、他動詞に分けてそれ ぞ れ 3.4 節 、 3.5 節 、 3.6 節 で 述 べ る 。 ま た 、「 V1 + 出 す 」の 組 み 合 わ せ は す べ て 語 彙 的 な 複 合 動 詞 に な るのではなく、「降り出す」「笑い出す」のようなアスペクト化し た も の が あ る 。本 研 究 は 語 彙 的 複 合 動 詞 の み を 考 察 対 象 と す る た め 、. 8. 移動動詞の「出る」の格付与パターンは次の通りである。 ( ⅰ ) a. 家 {を / か ら }出 た 男 b . 煙 突 {*を / か ら }出 た 煙 ( ⅱ ) a . 北 口 {を / か ら }出 た 男 b . 煙 突 の 穴 {? を / か ら }出 た 煙 20.

(27) 後者を取り上げない。同じ形態をもつこの両者の混同を避けるため に、次節ではまず語彙的な「~出す」と統語的な「~出す」につい て論じる。. 3.3. 語彙的な「~出す」と統語的な「~出す」. 従来の研究では、統語的な「~出す」のアスペクト化した現象の 指摘にとどまり、判別する基準については述べていない。例えば、 今 泉 ( 2002) で は 「 走 り 出 す 」 を 統 語 的 複 合 動 詞 と し て 分 類 し て い る の に 対 し 、 姫 野 ( 1999) で は 、 そ れ を 語 彙 的 複 合 動 詞 と し て 分 類 している。「~出す」についての認定は学者によって意見が異なる が、断言できるのは語彙的な「~出す」と統語的な「~出す」とい う二種類があるということである。よって、本節はまず「語彙的複 合 動 詞 」と「 統 語 的 複 合 動 詞 」と い う 二 種 類 の「 ~ 出 す 」を 区 別 し 、 本研究の考察対象である語彙的複合動詞をより厳密に定義する。次 はまずそれについての先行研究から見てみる。. 3.3.1. 二種類の「~出す」についての先行研究. 姫 野( 1999)は 、「 雨 が 降 り 出 す 」な ど の「 ~ 出 す 」は「 開 始 」の 意 味 を 表 す 用 法 で あ り 、「 飛 び 出 す 」「 這 い 出 す 」 な ど の 「 ~ 出 す 」 は「 外 へ の 移 動 」を 表 す 用 法 で あ る と 述 べ て い る 。そ の ほ か に 今 泉 ・ 郡 司 ( 2002) 鎌 田 ( 2005) な ど の 主 張 も 見 ら れ る 。 今泉・郡司は「~出る/出す」と結合する前項動詞、特に非能格 自動詞の前項動詞を取り上げて考察している。なぜ同じ非能格動詞 と結合するのに、 「 ~ 出 す 」の 複 合 動 詞 は 語 彙 的 複 合 動 詞 に な っ た り 、 統 語 的 複 合 動 詞 に な っ た り す る の だ ろ う か を 論 じ て い る 。例 え ば「 飛 び 出 す 」 は 「 外 へ の 移 動 」 を 表 す の に 対 し 、「 歩 み 出 す 」 は 、「 歩 み 始める」のようなアスペクトの読みしか表せない。これについて、 今泉・郡司はこれらの前項動詞は動作主の意図的動作を表す点で共 通しているが、それぞれの主事象の位置が異なるため、このような 違いが生じてくると説明している。 21.

(28) 鎌 田( 2005)も「 つ ま ら な い か ら み ん な が や が や 話 し 出 し た 」 「穴 か ら ア リ が 何 匹 も 這 い 出 し て き た 」な ど の 例 を 挙 げ 、前 者 は「 開 始 」 の 意 味 で 、後 者 は「( 外 へ )の 移 動 」の 意 味 で あ る と 述 べ て い る 。つ まり、 「 ~ 出 す 」の 複 合 動 詞 に は 、語 彙 的 複 合 動 詞 と 統 語 的 複 合 動 詞 の 2 種類が見られる。 以 上 の 先 行 研 究 か ら 、「 出 す 」 の 意 味 ( つ ま り 「 外 へ 移 動 す る 」) がそのまま保持するものは語彙的複合動詞で、本動詞の意味が失わ れ「開始」の意味へと転じたものは統語的複合動詞に属するもので あ る と 言 え る 。言 い 換 え る と 、 「 ~ 出 す 」は 外 へ の 移 動 と い う 実 質 的 な 意 味 が あ る 場 合 、語 彙 的 複 合 動 詞 と し て 判 断 で き る 。し か し 、 「~ 出す」に実質的な意味があることをどのように判断するのかについ て は 詳 し く 述 べ ら れ て い な い 。従 っ て 、本 研 究 の 考 察 対 象「 ~ 出 す 」 の「語彙的複合動詞」を定義するために、まず、どのような「~出 す」が実質的な意味をもつのかについての判別が必要であると考え る 。本 節 で は 、 「 V1+ 出 る 」と「 V1+ 出 す 」の 意 味 対 照 か ら 検 証 す る 。 も し「 ~ 出 す 」が 本 動 詞 の 意 味 を 持 ち 、 「 ~ 出 す 」と「 ~ 出 る 」の 造 語も意味が対応しているなら、この場合の「~出す」は本研究の語 彙 的 複 合 動 詞 と い え る 。こ れ に 対 し 、 「 ~ 出 す 」の 意 味 が ア ス ペ ク ト 化した場合は、実質的な意味がうすくなり、当然「~出す」と「~ 出る」の意味が対応していないので、本研究の対象外である。従っ て「~出す」と「~出る」の造語の意味の対応から「~出す」の造 語 が 語 彙 的 複 合 動 詞 か 、統 語 的 複 合 動 詞 か を 確 認 す る こ と が で き る 。 次 か ら は 、前 者 の こ と を A 類 、後 者 の こ と を B 類 と 称 す る 。以 下 、A 類 の 意 味 対 応 、B 類 の 意 味 対 応 を そ れ ぞ れ 3.3.2.1、3.3.2.2 節 で 見 る。. 3.3.2「 ~ 出 る 」 と 「 ~ 出 す 」 の 意 味 的 対 応 に つ い て 3.3.2.1. A 類における「~出る」と「~出す」. 前に述べたように、 「 ~ 出 す 」が 語 彙 的 複 合 動 詞 で あ る 場 合 は 、 「~ 出 る 」の 意 味 と 対 応 し て い る と 考 え ら れ る 。つ ま り 、こ の 場 合 の「 ~ 22.

(29) 出す」は「~出る」とほぼ同じ意味を表す。例えば、次の例文を見 てみよう。. ( 5)慌 て て 清 衡 は 立 ち 上 が っ て 外 に{ 飛 び 出 た / 出 た }。( 着 点 ) ( BCCWJ/『 炎 立 つ 』) ( 6) 城 木 は 治 療 室 か ら 外 へ { と び だ し た / ( 自 分 を ) だ し た } (着点). ( 北 杜 夫『 楡 家 の 人 び と 』). ( 7)事 件 発 生 直 後 、事 件 現 場 の 路 地 か ら 少 女 が{ 飛 び 出 て / 出 て } き て 走 り 去 る の を 目 撃 し た 通 行 人 が あ る 。( 起 点 ) ( 梓 林 太 郎 『 札 幌 殺 人 夜 曲 』) ( 8)二 人 の 男 が 旅 館 の 玄 関 か ら{ 飛 び 出 し て /( 自 分 を )出 し て } 来た。 (起点). ( 井 上 靖『 寒 月 が か か れ ば 』). ( 9) わ し は 小 屋 を { 飛 び 出 た / 出 た }。( 起 点 ) ( 香 山 滋 『 香 山 滋 集 :: 魔 境 原 人 』) ( 10) 造 船 所 の 幹 部 た ち は 、 ニ ュ ー ス を 耳 に す る と 、 家 を { 飛 び 出し/(自分を)出し}建造主任室に続々と集ってきた。 (起点). ( 磯 田 光 一『 戦 艦 武 蔵 』). 例( 5)―( 10)は 、す べ て 主 体 が 今 い る 所 を 出 て 、ど こ か へ 行 く ことを表している。起点、着点のどちらかに焦点を置くことによっ て、「ヲ、カラ」格か「ニ、ヘ」格が選択される。この場合の「飛 び出る」と「飛び出す」はほぼ同じ意味を表し、お互いに言い換え る こ と が で き る 。ま た 、例( 5)―( 10)が 示 し た よ う に 、述 語 の「 飛 び出る」「飛び出す」をそれぞれ「出る」「出す」に変えても文が 成 立 す る 。例 え ば 、例( 5)の「 清 衡 は 外 に 飛 び 出 た 」は「 清 衡 は 外 に 出 た 」、例( 6)の「 城 木 は 治 療 室 か ら 外 へ と び だ し た 」は「 城 木 は治療室から(自分を)外へだした」のように、両方とも言い換え られる。つまり、これは A 類の後項動詞の「出る」「出す」が実質 的な意味をもつことを示唆している。次は「抜け出る/抜け出す」 の例を見てみよう。 23.

(30) ( 11) 二 人 、 裸 の ま ま 、 一 枚 の 丹 前 に く る ま っ て 、 部 屋 を { ぬ け 出 た / 出 た }。( 起 点 ). ( 三 浦 哲 郎『 忍 ぶ 川 』). ( 12) 七 瀬 は ウ ィ ー ク ・ デ ー の 昼 休 み に 学 校 を { 抜 け 出 し て / ( 自 分)出して}文化センター まで行ってみることにした。 (起点). ( 筒 井 康 隆『 エ デ ィ プ ス の 恋 人 』). ( 13) 『 庭 … … 噴 水 … … 』 と 、 わ た し は 思 っ た 。 … … 『 よ し 、 ひ と つ庭へ出てみよう』わたしは手早く服を着けて、家から{抜 け出した/(自分を)出した}。(起点) (神西. 清『 は つ 恋 』). ( 14) そ っ と 裏 門 か ら { 抜 け 出 た / 出 た } 。 ( 起 点 ) ( 司 馬 遼 太 郎『 国 盗 り 物 語 』) ( 15)源 氏 は 騒 ぎ に ま ぎ れ て そ っ と 自 分 の 部 屋 へ{ 抜 け 出 し て /( 自 分を)出して}いってしまった。 (着点) ( 田 辺 聖 子 『『 源 氏 物 語 』 と つ き あ っ て 』 ) ( 16) 駆 け 寄 っ て 、 い き な り 多 鶴 子 の 顔 を 撲 る ― ― と 、 咄 嗟 に 頭 に 泛 ん だ が 、 実 行 出 来 ず 、や っ と の 想 い で 足 を 引 き 抜 く よ う に しながら、急いで二人の前へ{抜け出る/出る}と、素知ら ぬ顔をつくろってゆっくりと歩き出すのが関の山だった。 (着点). ( 織 田 作 之 助『 青 春 の 逆 説 』). 例 ( 11) - ( 16) か ら 分 か る の は 、 「 抜 け 出 る / 抜 け 出 す 」 は 二 語とも主体がどこからあるいはどこかへの具体的な移動を表す「 。飛 び出る/飛び出す」と同じように起点、着点のどちらかに焦点を置 くことによって「ヲ、カラ」格か「ニ、ヘ」格が選択される。そし て 、こ こ は「 飛 び 出 る 」と「 飛 び 出 す 」の 場 合 と 同 様 に「 出 る 」「 出 す」に言い換えられるため、後項動詞が実質的な意味を持っている ことが分かる。最後、「逃げ出る/逃げ出す」の例を見てみよう。. 24.

(31) ( 17) 「 で も 、 火 事 が あ っ た 時 、 塔 か ら { 逃 げ 出 て / 出 て } き た も のはいなかったんでしょう」 「誰もいなかったらしいわ」(起点) ( 黒 崎 緑『 柩 の 花 嫁 :: 聖 な る 血 の 城 』) ( 18)出 火 直 後 、少 女 は 後 部 座 席 か ら {逃 げ 出 し た /( 自 分 を )だ し た }ら し い 。 ( 起 点 ). ( 毎 日 新 聞 2004). ( 19) そ う し た ら 、 親 父 が そ れ で 売 り そ う な 顔 に な っ た の で 、 慌 て て僕は「そは国際保護動物だろッ。そんなもの俺は買わない よッ」と言い、そこを{逃げ出た/出た}。(起点) ( http://www.pjnews.net/news/610/20090824_11 ) ( 20) 幸 い 近 所 の 人 が 保 護 し て く れ た が 、 夜 、 泣 き 叫 び 裸 足 で 家 を {逃げ出した/(自分を)出した}幼児の姿に、虐待を疑わ れ通報された。 (起点). ( 毎 日 新 聞 2004). ( 21) 市 に よ る と 、 ら っ き ー は 2 5 日 午 前 3 時 1 5 分 ご ろ 、 男 性 宅 2階に侵入し、男性がバナナを与えたところ屋外に{逃げ出 た / 出 た }。 (着点). ( 伊 豆 新 聞 20110204). ( 22) 杉 山 さ ん は 客 席 か ら ロ ビ ー へ{ 逃 げ 出 し た /( 自 分 を )出 し た}が、受付付近で倒れ、搬送された市内の病院で間もなく 失血性ショックで死亡した。 (着点). ( 毎 日 新 聞 2004). 「 逃 げ 出 る 」と「 逃 げ 出 す 」は 、( 17)-( 22)が 示 し た よ う に 、 同 じ 「 逃 げ て そ の 場 を 去 る 」 と い う 意 味 を 表 す 。 例 え ば 例 ( 17) と ( 18) は そ れ ぞ れ 「 塔 」 「 座 席 」 の 場 所 か ら 逃 げ 去 る と い う 意 味 を 表 す 。 例 ( 19) ( 20) も 同 様 に 、 「 そ こ 」 「 家 」 の 場 所 か ら 離 れ て ど こ か へ 逃 げ て い く と い う 意 味 を 表 す 。 例 ( 21) ( 22) は 例 ( 17) - ( 20) と 同 様 に 「 ど こ か ら ど こ か へ 逃 げ て い く 」 と い う 意 味 を 表 す 。 し か し 、 例 ( 17) - ( 20) は 起 点 に 焦 点 を 当 て る の に 対 し 、 例 ( 21) ( 22) は 逃 げ る 先 、 つ ま り 着 点 に 焦 点 を あ て て い る 。 以 上 の よ う に 、「 逃 げ 出 る 」と「 逃 げ 出 す 」の 意 味 が 対 応 し 、ま た「 出 る 」 「出す」に言い換えられることから、「逃げ出す」の「~出す」は 25.

(32) アスペクト化しておらず、後項動詞が実質的な「移動」の意味を表 すことが分かる。. 3.3.2.2. B 類における「~出る」と「~出す」. 「 ~ 出 る 」「 ~ 出 す 」 両 方 と も 語 彙 的 複 合 動 詞 で あ る A 類 に 対 し 、 B 類 の「 ~ 出 す 」は 意 味 が 極 め て う す く な り 、「 ~ 出 る 」と 対 応 し て いない。まず、次の「走り出る」の例を見る。. ( 23) 寝 衣 を 纏 い 、 顔 を 両 手 で 覆 っ て 部 屋 を {走 り 出 た /出 た }。 ( 磯 田 光 一『 樹 々《 き ぎ 》は 緑 か 』) ( 24) 祖 母 に 向 か っ て 叫 ん で 、 信 子 は 台 所 を {走 り 出 た / 出 た }。 ( 宮 部 み ゆ き 『 理 由 』) ( 25) 長 期 に わ た る 軟 禁 生 活 の な か で 、 八 大 山 人 は し だ い に 神 経 に異常を来し、ついに発狂、ある日、身につけていた僧服 を ず た ず た に 引 き 裂 き 火 に く べ る と 、官 舎 を {走 り 出 て / 出 て }、故 郷 の 南 昌 に 向 か っ た 。. ( 井 波 律 子『 中 国 の 隠 者 』). 例 ( 23) ― ( 25) の ヲ 格 は す べ て 「 出 と こ ろ 」、 つ ま り 「 離 脱 点 」 を 表 す 。 例 え ば 例 ( 23) の 「 部 屋 を 走 り 出 る 」 は 、 主 体 が 部 屋 以 外 の 場 所 に 移 動 す る と い う 意 味 を 表 す 。例( 24) ( 25)も 同 様 に 、そ れ ぞれ「台所、官舎から離れてどこかに出て行く」の意味を表す。そ れらの例における「~出る」は移動の意味を表すため、後項動詞の み 、 つ ま り 「 出 る 」 に 言 い 換 え る こ と が で き る 。 次 に 、「 走 り 出 す 」 がヲ格と共起する場合を見る。次の例を見てみよう。. ( 26)彼 は 、院 長 の こ わ ば っ た 身 体 を 土 の 上 に 仰 向 け に 寝 か す と 、 そ の ま ま 麦 畠 の 間 の 道 を { 走 り だ し た / *だ し た }。 ( 北 杜 夫 『 楡 家 の 人 び と 』) ( 27)わ れ に も な く 帳 台 を ぬ け 出 て 、廊 下 を{ 走 り だ し て い た / * だ し て い た }。. ( 司 馬 遼 太 郎『 国 盗 り 物 語 』) 26.

(33) ( 28) 動 か な く な っ た バ ス を 諦 め 、 私 は ま た 雨 の 中 を { 走 り 出 さ な く て は な ら な か っ た / *だ さ な く て は な ら な か っ た }。 ( 柳 田 邦 男 『 リ ア 』) ( 29) 準 備 体 操 が 終 る と 、 村 田 は 自 分 が 先 に 行 き ま す か ら つ い て きてくださいと言い、その四百十二メートルの ロングホー ル を { 走 り だ し た / *だ し た }。. ( 柳 田 邦 男 『 リ ア 』). 例 ( 26) ― ( 29) に 示 さ れ た よ う に 、 こ こ の ヲ 格 は 「 離 脱 点 」 で はなく、 「 経 路 」を 表 す も の で あ る 。先 述 の( 23)―( 25)に お い て は、 「 ~ を 走 り 出 る 」を「 ~ を 出 る 」に 言 い 換 え ら れ る こ と か ら 、右 側主要部によって、ここのヲ格名詞(離脱する場所を表している) は「 出 る 」が 支 配 す る も の で あ る と い う こ と が わ か る 。そ れ に 対 し 、 「 ~ を 走 り 出 す 」の 場 合 は 、 「 出 す 」に 言 い 換 え ら れ ず 、ヲ 格 名 詞 は 前項動詞の「走る」が支配するものである。言い換えると、ここの 「~出す」は本動詞としての「外への移動」という実質的意味を失 い 、ア ス ペ ク ト 的 な 用 法 し か 持 っ て い な い 。こ の よ う に 、B 類 は 、 「~ 出 す 」が ア ス ペ ク ト 的 用 法 に 転 じ た た め 、語 彙 的 複 合 動 詞 で あ る「 ~ 出る」との意味が対応していないのである。 「歩き出る/歩き出す」も同じ現象が見られる。例えば「彼は森 の 中 を { 歩 き 出 た / 出 た }」 の 文 に お い て は 、「 ~ 歩 き 出 る 」 を 「 出 る 」 に 置 き 換 え ら れ る の に 対 し 、「 彼 は 森 の 中 を 歩 き 出 し た / *出 し た 」は そ の よ う に 置 き 換 え ら れ な い 。こ の よ う に 、 「 歩 き 出 る 」と「 歩 き 出 す 」の 意 味 が 対 応 し て い な い こ と か ら 、 「 歩 き 出 す 」は ア ス ペ ク トした複合動詞であることが分かる。. 3.3.3. まとめ. 以上の考察結果から分かるように、 「 飛 び 出 す 、抜 け 出 す 」な ど は 「飛び出る、抜け出る」の意味と対応し、語彙的複合動詞に属する も の で あ る 。一 方 、 「 走 り 出 す 、歩 き 出 す 」な ど は「 走 り 出 る 、歩 き 出る」の意味と対応せず、統語的複合動詞に属するものである。そ 27.

(34) れらの対応を表 1 と図①のように整理した。本研究の目的は、語彙 的複合動詞における自自交替の現象を分析するので、B 類である統 語 的 複 合 動 詞 を 除 外 し 、A 類 を 考 察 対 象 と す る 。次 節 か ら は 、A 類 で ある語彙的複合動詞に絞り、その前項・後項動詞の特徴について考 察する。. 表 ( 1). 語彙的と統語的「~出す」の分類. A「 外 へ の 移 動 」 を 表 す 「 ~ 出 す 」:. 飛 び 出 す 、抜 け 出 す 、逃 げ 出 す. 語彙的. …. B「 開 始 」 の 意 味 を 表 す 「 ~ 出 す 」:. 走 り 出 す 、歩 き 出 す 、泣 き 出 す 、. 統語的. …. 3.4. 前項動詞が非能格自動詞の場合. この節では、前項動詞が非能格自動詞の場合の自自交替現象を考 察する。「~出る」「~出す」と結合して自自交替が可能な前項動 詞は次のようである。. ( 30) 飛 ぶ 、 抜 け る 、 逃 げ る な ど 9. ( 30) と 「 ~ 出 る 」 「 ~ 出 す 」 の 組 み 合 わ せ は お 互 い の 意 味 が 対 応していて、「移動」を表す語彙的複合動詞である。次節から、ま ず 3.4.1 節 で 前 項 動 詞 と 後 項 動 詞 の 特 徴 を 考 察 す る 。 そ し て 3.4.2 節で自自交替が可能な理由について述べる。. 3.4.1. 前項動詞と後項動詞の特徴. こ の 節 で は 「 飛 び 出 る ⇔ 飛 び 出 す 」「 抜 け 出 る ⇔ 抜 け 出 す 」「 逃 げ 出る⇔逃げ出す」の組み合わせにおける前項動詞と後項動詞の特徴. 9. 他 に も「 這 う 、駆 け る 」な ど が 見 ら れ る が 、共 通 の 概 念 を 持 つ と い う こ と で 、 ここでは用例数がもっとも多い「飛ぶ、抜ける、逃げる」のみ取り上げ、考察 する。 28.

(35) を 見 る 。 ま ず 後 項 動 詞 の 「 ~ 出 る 」「 ~ 出 す 」 を 見 る 。. ( 31) エ プ ロ ン を 外 し た 里 美 は ジ ー ン ズ の 上 に ジ ャ ケ ッ ト を ひ っ か けた格好で祖母の家を出た。. ( は つ 子『 密 通 和 田 』). ( 32) 古 畑 は 救 わ れ た 思 い で 立 ち 上 が っ た 。 電 話 を 持 っ て 、 廊 下 に 出た。 ( 高 野 裕 美 子『 サ イ レ ン ト・ナ イ ト :: 長 編 推 理 小 説 』) ( 33) わ が 国 で は 光 化 学 ス モ ッ グ 注 意 報 が 出 る と 、 生 徒 を 屋 外 に 出 すことを控えるようになり、被害はほとんどなくなった。 ( 安 藤 淳 平 『 環 境 と エ ネ ル ギ ー :: 21 世 紀 へ の 対 策 』) ( 34)カ ラ ッ と し た 晴 天 が 多 い し( 例 年 は )、東 北 出 身 の 私 と し て は 、 実家では冬に小さい子を外に出すのは無謀という気もします が、この気候ならなんにも問題ないんじゃないかと。 ( Yahoo!知 恵 袋 ). 「 出 る 」は 例( 31)の「 里 美 は 祖 母 の 家 を 出 た 」、例( 32)の「 古 畑 は 廊 下 に 出 た 」の よ う に 主 体 の 移 動 を 表 す 動 詞 で あ る 。一 方 、 「出 す 」は 例( 33)の「( 先 生 が )生 徒 を 屋 外 に 出 す 」、例( 34)の「( 私 は)小さい子を外に出す」のように、対象(この場合は生徒と子供 たちを指す)の移動を示すものである。移動するのは主体であろう が 、対 象 で あ ろ う が 、 「 出 る 」と「 出 す 」が 共 通 す る の は 移 動 を 表 す 概念である。次に前項動詞の特徴を見る。これらの前項動詞は「出 る」 「 出 す 」と 同 じ く 移 動 の 概 念 を 表 す 。ま た 非 能 格 動 詞 で あ る た め 、 これらの動詞はすべて主体の移動を表す。次の例を見る。. ( 35) 五 人 は 、 高 知 八 時 一 〇 分 発 の 飛 行 機 で 、 羽 田 に 飛 ん だ 。 ( 洪 誠 秀 『 奈 保 子 五 十 歳 か ら の 挑 戦 ! ! :: 国 体 ヨ ッ ト に か け た 1 カ 月 の 物 語 』) ( 36) 三 人 は ト ン ネ ル を 抜 け た 。 島 の 中 の 道 は 、 人 ひ と り が や っ とというような狭い路地だけである。 ( 川 口 祐 二 /山 本. 十 代 保 /野 上 29. 弥生子『苦あり楽あり海.

(36) 辺 の 暮 ら し 』) ( 37) そ う 言 い お く と 、 珍 念 は 、 つ ん の め る よ う に 裏 口 か ら 逃 げ た。. ( 嵐 山 光 三 郎『 変 ! :: 不 良 中 年 忍 法 帖 』). 例 ( 35) の 「 五 人 は 朝 の 飛 行 機 で 羽 田 に 飛 ん だ 」 は 、 人 と い う 主 体が飛行機に乗って空中を移動し、最後羽田に着くという意味であ る 。 ま た 、 例 ( 36)( 37) の 「 三 人 は ト ン ネ ル を 抜 け た 」「 珍 念 は 裏 口から逃げた」のように、それぞれ「人がトンネルの中を通って、 向こう側へ出る」 「 珍 念 は 裏 口 か ら ど こ か へ 逃 げ て 行 く 」と い う こ と を表す。 「 逃 げ る 、抜 け る 」な ど の 場 合 は い ず れ も 主 体 の 存 在 位 置 が 変わって、主体の移動という位置変化を表している。以上のことか ら、前項動詞が非能格自動詞の場合、自自交替が可能になるのは、 前項と後項両方とも移動の概念を含む動詞という組み合わせの場合 である。. 3.4.2. 自自交替が可能になる理由. 「非能格自動詞+出す」の組み合わせが自動詞になる理由は後項 動 詞 の「 ~ 出 す 」に あ る と 考 え る 。 「 出 す 」は「 誰 か が 何 を ど こ に / ど こ か ら 出 す 」の よ う に 使 役 の 位 置 変 化 他 動 詞 で あ る が 、こ こ の 「出す」は「自分が自分を出す」という再帰化のプロセスを経て、 結果的に「自分が出る」という意味になる。例えば「子供が車道へ 飛 び 出 す 」の 例 で は 、 「 子 供 が 自 分 へ の 意 図 的 な 働 き か け が 、子 供 自 身が車道へ出る」という結果になり、自動詞的な働きに相当する。 そのため、複合動詞全体が自動詞の働きを成しているわけである。 英語にもこの「~出す」の再帰化と似たようなものが見られる。例 え ば 、「 hide oneself」 の よ う な 「 他 動 詞 + oneself」 再 帰 用 法 は 、 日 本 語 の 自 動 詞 「 隠 れ る 」 が 表 す 意 味 に 相 当 す る 。 ま た 、「 再 帰 化 」 は「動作主と対象は同一物である」であるため、他動性の意味特徴 から見れば他動性が低いと考えられる。他動性について Hopper&Thompson( 1980:252)( 以 下 は H&T と 略 す ) は 次 の よ う に 述 30.

參考文獻

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捲土重來(一蹶不振) (成語) 比喻失敗後重新恢復勢力 寫作四 接種 動詞 把疫苗注射到人或動物體內,以預防疾病 閱讀一 排斥(吸引) 動詞 使別的人或事物離開自己這方面