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日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能

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(1)外國語文研究第十一期 2010 年 01 月 頁 23~49. 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能 湯廷池* 簡嘉菁**. 中文摘要 本文的目的在於探討日語多重主語結構中,以形容詞充當述語者為研究對 象來進行分析與論述。本文的結構大致如下。第 1 節 「前言」,概述論文的目的 與主要內容。第 2 節 「述語形容詞的論元結構與句子衍生」,先就日語形容詞的 次類畫分 (即 (I) 「客觀」・(II) 「直觀/中間」・(III) 「主觀」 等形容詞) 與次類 再畫分 (即 (I) 「知覺」 (可以細分為 (i) 「視覺」・(ii) 「次元」、(iii) 「聽覺」、(iv) 「嗅覺」、(v) 「味覺」、(vi) 「觸覺」、(vii) 「體覺」)・(II) 「關係」・(III) 「評價」・(IV) 「感情」 (可以再分為 (i) 「感覺」・(ii) 「情意」) 等形容詞),提出分類的依據與功 能,並討論這些形容詞的論元結構裡所包含的論元數目與所擔任的語意角色、以 及這些論元在句子的表層結構上所顯現的格位。而在第 3 節 「„wa‟ 與 „ga‟ 的語 意功能以及其排列組合」 裡,則針對 Kubo (1994) 所提出 的十六種排列組合 與其合法度,提出相當深入的分析與論證。接著,在第 4 節 「多重主語形容詞句 的語意解釋與句子衍生」 裡,分析雙重或多重主語形容詞句的句法表層結構與其 衍生過程。最後,在第 5 節 「結語」 裡,總結本文的內容與結論,並提出將來的 研究課題。. 關鍵詞:日語形容詞的次類畫分雙重・多重主語結構論元結構與句子衍生 ‘wa’與‘ga’的語意功能與其排列組合. *. 輔仁大學外語學院講座教授 東吳大學日本語文學系所博士生 98.06.02 到稿 98.10.18 通過刊登 **.

(2) 24. 外國語文研究第十一期. The Multiple-Nominative Constructions of Adjective Predicates in Japanese: Syntactic Structures and Semantic Functions Tang, Ting-Chi, * Chien, Chia-Ching, **. Abstract The present paper aims to investigate multiple-nominative constructions containing adjective predicates in Japanese. Section 1 briefly introduces the purpose and the main contents of the paper, followed by Section 2, which discusses the subcategorizations of Japanese adjectives such as objective-property adjectives (including visional, dimensional, auditory, olfactory, gustatory, tactile, thermal adjectives), intermediate-relational adjectives, intuitive-evaluative adjectives, and subjective adjectives (including sensational and emotive adjectives), along with their respective argument structures and relevant surface realizations. Then, Section 3 examines the semantic functions of the topic marker “wa” and the subject marker “ga” together with their possible combinations and linear orders, followed by Section 4, which deals with the syntactic projections as well as the semantic interpretation of multiple-nominative constructions containing adjective predicates. Finally, Section 5 summarizes the contents and conclusions of the paper.. Key words: poem, style, fragmental. *. Lecture Professor, College of Foreign Languages, FuJen Catholic University.. **. Doctoral student, Department of Japanese Language and Culture, Soochow University..

(3) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 25. 日本語の 「多重主格」 形容詞述語文 ―統語構造と意味機能― 湯廷池 簡嘉菁. 1. はじめに 日本語の文構造の特色の 1 つとして、単文 (simple sentence) の中に 2 つ (あるいは、2 つ以上)1 の 「ハ」2 格や 「ガ」 格名詞句を含むものがあることが 挙げられる。このような構文を、「ハ」 格と 「ガ」 格を区別せずに、便宜上、2 つの 「ハ格」 や 「ガ格」 を含むものを 二重主格構文 3 (double-nominative construction; あるいは 「二重主部構文」) や 2 つ以上の 「ハ格」 や 「ガ格」 を 含むものを 多重主格構文 4 (multi-nominative construction; あるいは 「多重主 部構文」) と呼ぶことにする 。 本 稿の目的は、日本語の多重主格構文のうち、 形容詞を述語としたもの5 を対象に、その統語構造と意味機能について考察す ることにある。 本稿の構成は大体次のようである。まず、第 1 節の 「はじめに」 で、本稿の 目的と内容について、簡単に述べる。次に、第 2 節の 「述語形容詞の項構造と 文形成」 で、形容詞の項構造と主題関係について述べ、これらの項構造や主題 関係がいかにして文構造に 写像 (map onto) されるかについても若干の討議 を行う。さらに、第 3 節の「『ハ』格・ 『ガ』格の意味機能とその配列・組み合 わせ」 では、「ハ」 格名詞句と 「ガ」 格名詞句の意味解釈について考察し、多 重主格形容詞述語構文におけるこの 2 つの格の配列・組み合わせに関する制約 を調査する。そして、第 4 節の 「多重主格形容詞構文の意味解釈と文生成」 で 1. 2. 3. 4. 5. 1 つの単文の中にいくつの主格が現れることができるのかに関しては、方言によって違いが 見られるようである。一般に、関西方言では主格の数が 2 つに限られるのに対し、東京方言 (すなわち、標準語) では 2 つ以上の主格が許されるという。Kubo (1994: 24) を参照。 一般には 「ハ」 は係助詞と呼ばれ、「だけ、ばかり、しか」 などの副助詞とともに 「取りた て詞」 の中に含まれ、「ガ・ヲ・ニ」 などの 格助詞 (case particle) とは別箇の助詞類の中に 含まれているが、ここでは論議の便宜上 「ハ」 格と呼ぶことにする。 その内容に応じて 「~ガ~ガ構文」・「~ハ~ハ構文」・「~ハ~ガ構文」・「~ガ~ハ構文」 な どと呼んで区別してもよい。 多重主格構文もその内容に応じて 「~ガ~ガ~ガ構文」 (「日本ガ 男性ガ 女性より平均寿命 ガ 短い」)・「~ハ~ハ~ハ構文」 (「日本ハ 男性ハ 女性より平均寿命ハ 短い」) などと呼ぶこ とができる。 形容動詞 (形容名詞 (adjectival noun) や 名容詞 (nominal adjective) とも呼ばれる) を述語 としたものについても、同じような結論が得られるものと思われるが、本稿では論述を単純 化するために、形容詞だけを取り扱うことにする。.

(4) 26. 外國語文研究第十一期. は、多重主格形容詞述語構文の 句構造 (phrase structure) を考察し、その 生成 過程 (derivational process) を論議する。最後に、第 5 節の 「結び」 では、本稿 の内容を要約し、将来の研究課題を提示する。. 2. 述語形容詞の項構造と文形成 日本語の形容詞は、動詞と同じく 用言 (predicative/verbal) に属するが、動 詞がおもに 動作述語 (action/actional predicate) に属するのに対し、形容詞は すべて 状態述語 (state/stative predicate) に属する。また、動詞が 1 項述語 (one-place predicate)、2 項述語 (two-place predicate) から 3 項述語 (three-place predicate) まであるのに対し、形容詞はほとんどが 1 項述語に属し、ごく一部 の形容詞だけが 2 項述語に属する6。さらに、形容詞は動詞と同じく7、文の述 語になることができる。このとき、個々の形容詞述語は、それぞれの語義内容 にしたがって、必要とする数の 項 (argument) を伴って文を形成する。この意 味で、動詞や形容詞述語は文の 核心 (core) 的存在であり、これら述語が必要 とする項は述語の 補足語8 (complement) として文の中に現れることになる。 それでは、形容詞述語の項とは、はたしてどんなものであり、これらの項はど ういうふうに文の表層に写像されるのであろうか。 述語動詞や形容詞が必要とする項の数や種類を明示的に表したものを 項構 造 (argument structure) という9。項構造の表し方はいろいろあるが、最近の生 成文法では、項の 意味役割 (semantic role) 10 を示す 主題関係 (thematic relation) によって表現することが多い。また、項構造の中に表示される項は、 述語が必ず取らなければならない 必須項 (obligatory argument) やそれに準ず る 疑似項/準項 (quasi-argument) に限られ、述語が必ずしも必要とせず、文 の中でも 付加詞 (adjunct) や副詞句としてしか現れない 随意項 (optional argument)11 は、項構造の中には登録されず 余剰規則12 (redundancy rule) で処 6. 小泉 (2007: 115) は 「寒い」 などを項を必要としない 無項述語 (zero-place predicate) とみ なしているが、このことについてはさらに詳しく後述する。 7 動詞と形容詞のほかに、名詞と形容名詞も述語になることができるが、このとき指定動詞の 「だ・である」 を準動詞として取らなければならない。 8 補足語の中には主語・目的語・間接目的語などが含まれる。 9 項構造は、テニエールが提唱する 結合価文法 (valence grammar) の 結合価 (valence) に相 当するが、その内容や機能はかなり異なっている。 10 「意味役割」 は、セータ役割 (theta-role) とも呼ばれ、かつての 格文法 (case grammar) では 意味格 (semantic case) や 深層格 (deep case) などとも呼ばれた。 11 「必須格」 と 「随意格」 は、結合価文法ではそれぞれ 行為項 (actant)、状況項 (circonstant) と呼ばれる。また、「疑似項」 とは、本稿による命名であり、文の形成にはなくてはならな い成分ではあるが、必須項のように 「ガ」 格や 「ヲ」 格などの 構造格 (structural case) や 文法格 (grammatical case) を取ることができず、意味格や 後置詞 (postposition; すなわち、 伝統的な国語文法で言う 助詞 (particle)) しか取れない項のことを指す。 12 例えば、動作主 (Ag(ent)) が随意的に 時間 (Ti(me))、場所 (Lo(cation)) や 道具.

(5) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 27. 理することができる。さらに、形容詞述語は動詞述語に比べて、必須項の数が 少なく、最高 2 項と制限されている上に、これらの必須項が取る意味役割の種類 もおもに 対象 (Th(eme))、経験者 (Ex(periencer)) と 場所 (Lo(cation)) に限られ、疑似 項としてもわずかに 起点 (So(urce))・着点 (Go(al))・相方 (Co(mitative))13 や 原因 (Ca(use)) などを数えるのみで、しかもその出現分布は非常に限られており、動作主 (Ag(ent))・道具 (In(strument)) や 経路 (Pa(th)) のような述語動詞が取り得る意 味役割は、形容詞の項構造の中に現れることがない。これは、形容詞がヒト・ モノ・コト・サマ名詞の属性・状態14 や感情などを表す状態述語に属するた めに、行為主体の動作主が道具を使って行為客体の対象に働きかけることがな く、また、行為客体が働きかけを受けて経路を移動することもないことによる。. 2.1 述語形容詞の項構造と主題役割 以下、述語形容詞の項構造に現れる意味役割の種類・内容とその表層格につ いて、形容詞の表す意味内容の視点から簡単に述べる。 (1) a. 対象15: 存在あるいは変化するもの、従って、ある特定の属性、あ るいは、ある特定の状態をもつ名詞(句)であることが多く、その名 詞は具体・抽象名詞であるか、有情・非情名詞であるかを問わな い。対象は形容詞の項構造の中で、もっとも頻繁に現れる意味役 割であり、文の表層構造では デフォルト格 (default case) 16 の 「ガ」 格として具現する。 b. 経験者: 心的経験・感覚や情意を表すもの、有情名詞 (ことに、ヒ ト名詞) に限られ、感情形容詞の項構造の中にのみ現れ、文の表層 構造では 「ガ」 格として具現する。 c. 起点17: 時空的な関係の始発点や心理的な移動の始発点、場所 (ト コロ)名 詞であることが多く、ごく少数の関係形容詞 (例えば、「(私 の家は駅カラ) 遠い」) に疑似項としてしか現れず、文の表層構造. 13. 14. 15. 16. 17. (In(strument)) などの付加詞を取ることは、<Ag → Ag, Ti, Lo, In> の余剰規則で処理するこ とができる。 着点の 「ニ」 格や相方の 「ト」 格が 表層格 (surface case) として現れたとき、それぞれ 与 格 (dative case) と 共格 (comitative case) と呼ばれることがある。 属性 (property) は 「空ガ青い」 のように恒常的・不変的な性質を表すのに対し、状態 (state) は 「今日ハ空が青い」 のように一時的・一過的な事態を表す。 「対象」 は、「主体」 や 「主題」 などと翻訳されることがあり、Chafe (1970) などのように、 被動体 (Patient) と呼ばれることもある。 ここでいうデフォルト格とは、語彙的に決定される 固有格 (inherent case) の 「ニ格」 を参 照対象として (すなわち、これらの名詞句に c 統御 (c-command) されて) 付与される 依存 格 (dependent case) の 「ヲ格」 以外に、デフォルト的に与えられる 「ガ格」 を指し、いわゆ る 「対象主格」の 「ガ格」 もこの中に入る。青柳 (2006: 64-65) や Marantz (1991) を参照。 「起点」 は、Hjelmslev (1935) が意味格の内容を分析するために設定した方向性の次元の中 の 近接 (rapprochement) の概念に相当するものである。小泉 (2007: 22) を参照されたい。.

(6) 28. 外國語文研究第十一期. では 「カラ」 格として具現する。 d. 着点18: 時空的な関係や心理的な移動の到着点、場所 (トコロ) 名 詞の場合には心理的な移動19 や拡張の着点を表し、ヒト名詞・モ ノ名詞やコト名詞の場合には待遇の相手 (「~ニ対して」) や範囲 の限定 (「~ニ関して」) の意味に使われることが多い。移動や拡張 の着点の意味では、ごく少数の関係形容詞 (例えば、「近い・遠い 20. ・等しい・ふさわしい」 など) の項構造の中に疑似項として現 われ、範囲限定 (つまり、範囲限定) の意味でも限られた評価形容 詞 (例えば、「(子供ニ) 甘い・(友人ニ) 冷たい・(学生ニ) 厳しい・ (日本の事情ニ) 詳しい・(金銭ニ) 乏しい」 など) の項構造の中で 疑似項として現れ、文の表層構造では 「ニ」 格として具現する。 e. 相 方: 対象と一緒にある特定の関係にある相手方、わずかに 「(~ト) 親しい」 (「(~ト) 同じ」 など) の関係形容(名)詞の項構造 の中に疑似項として起こり、待遇の相手が着点の 「ニ」 格として 具現されるのに対し、相方は文の表層構造で常に 「ト」 格として 具現する。 f. 原因: ある状態 (特に、心的状態) を引き起こす原因となるもの、 おもに感覚形容詞の項構造の中にしか現れず、しかも、常にヒト 名詞 (1 人称話し手) の身体部位を表す場所名詞と共起するのが特 徴である。原因が随意項として現れた場合には、文の表層構造で は 「デ」 格として具現される (例えば、「私は (風邪デ) 頭が痛 い・私は (木枯しデ) 頬が冷たい」) が、ときには、「(私は)運動靴 の中の小石デ足が痛い」 と 「(私は)運動靴の中の小石ガ足に痛い」 のように、原因の 「デ」 格が 「ガ」 格に (同時に、身体部位の 「ガ」 格が 「ニ」 格に) 交替することがある。 g. 場所: 話し手を表す 1 人称ヒト名詞の身体部位を表す名詞、感覚形 容詞 (例えば、「痛い・痒い・冷たい」 など) の項構造の中で、必 ず 1 人称話し手の身体部位として現れ、文の表層構造では、「私は 頭ガ痛い」 のようにデフォルトの 「ガ」 格として具現される。こ のような感覚形容詞と共起する身体部位を表す名詞の意味役割を 「場所」 と解し、「私は {昔の友人/故郷} ガ懐かしい」 のような 18. 19. 20. 「着点」 は、Hjelmslev (1935) の方向性の次元の中の 離去 (èloignement) の概念に相当する。 小泉 (2007: 22) を参照。 ここで 「心理的な移動」 と断っているのは、「私の家は駅ニ近い」 のような表現では、実際 に物理的な移動が起ってはおらず、心理的な移動しか起こっていないことを指す。 「遠い」 は、「駅カラ遠い」 のように起点格 「カラ」 として具現されることもあれば、「駅ニ 遠い」 のように着点格 「ニ」 として具現されることもある。同じように、「駅ニ近い」 を 「駅カラ近い」 のように表現する人もある。これは、認知文法でいう認知の背景 ランドマ ーク (landmark) を、認知の焦点 ターゲット (target) として始発点の立場から捉えるのか、 それとも到着点の立場から捉えるのかの認知的視点や態度の違いによるものであろう。.

(7) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 29. 情意形容詞と共起する名詞のように 「対象」 と解さないのは、後 者 が 「君は何ガ懐かしいの?」 のように疑問詞 「何ガ」 を含む特 定疑問文に対応するのに対し、後者は 「君はドコガ痛いの?」 の ように疑問詞 「ドコガ」 を含む特定疑問文に対応するからであ る。また、これらの身体部位名詞は必ず 1 人称話し手の身体部位 でなければならない21 という意味で、再帰的 (reflexive) であると 言える。. 2.2 日本語形容詞の下位分類と下位再分類 次に、日本語の形容詞は、まず客観的にヒトやモノの属性を变述する客観的 属性形容詞 (property adjective) と、主観的に 1 人称話し手の感情を表出する主 観的 感情形容詞 (emotive adjective) の 2 種類に大別することができる。また、 客観的属性形容詞と主観的感情形容詞の中間に介在するものとして、直観的に ヒト・モノ・コト・サマに対する話し手の評価を表述する直観的 評価形容詞 (evaluative adjective) が存在する。客観的属性形容詞は、社会的通念や基準に 基づいてヒトやモノの属性を認定するという意味で、多分に 「公(おおやけ) 性」 をもつ形容詞であるのに対し、主観的感情形容詞は、話し手だけに感じと られる生理的感覚や心理的状態を表出するという意味で、完全に 「私(わたく し)性」 に富んだ形容詞であると言える。 一方、直観的評価形容詞は、一応社会的通念に基づいて評価をしているもの の、その評価判断には個人的な独断が免れないという意味で、公性と私性を兼 ねもつ形容詞であると言える。従って、属性形容詞と感情形容詞が、それぞれ 客観形容詞 (objective adjective) および 主観形容詞 (subjective adjective) と呼 ばれるのに対し、評価形容詞は 直観形容詞 (intuitive adjective) や 中間形容詞 (intermediate adjective) と呼ぶことができる。 この 3 種類に下位分類された形容詞のうち、客観的属性形容詞は、人間の知 覚器官によってヒトやモノの属性や状態を認識・变述するので、知覚形容詞 (sensory adjective) とも呼ぶことができ、異なる機能をもつ知覚器官に基づい て、さらに (i) 視覚器官によって認識・判断される属性や状態 (例えば、明暗 や色彩) を表す 視覚形容詞 (visional adjective)、(ii) 一見、視覚器官によって 認識・判断されるかのように見える属性であるが、その実、線・面や体にかか わる、より総合的な認識や判断を必要とする属性を表す 次元形容詞 (dimensional adjective)、(iii) 聴覚器官によって識別・判断される属性を表す 21. 以上の意味役割のほかに、ほとんどすべての形容詞が比較の基準を表す 「~ヨリ」 と共起 することができるが、この 「~ヨリ」 は 「~ニ比べて、~ト比較して」 などと同じように 付加詞 (あるいは、随意項) に属するので、述語形容詞の必須項や疑似項が担う意味役割の 中には入れなかった。.

(8) 30. 外國語文研究第十一期. 聴覚形容詞22 (auditory adjective)、(iv) 嗅覚器官によって識別・判断される属性 を表す 嗅覚形容詞 (olfactory adjective)、(v) 味覚器官によって識別・判断され る属性を表す 味覚形容詞 (gustatory adjective)、(vi) 皮膚などの触覚器官によ って識別・判断される属性を表す 触覚形容詞 (tactile adjective)、(vii) 気候や モノの温度に対する感覚を表す 体覚形容詞 (thermal adjective) などに下位再 分類することができる。次に、評価形容詞 (evaluative adjective) は、評価対象・ 評価内容や評価のプラス・マイナスイメージ以外に、特に意義ある下位再分類 は認められないが、評価形容詞と属性形容詞の間に介在する関係形容詞を設定 することができると思われる。関係形容詞 (relational adjective) は、客観的な 属性や状態を表すという意味では属性形容詞と共通するところがあるが、属性 形容詞が 内項 (internal argument) だけを取る 1 項述語に属するのに対して、 関係形容詞は 2 つの個体間の遠近関係・親疎関係・相当関係などについて变述 するので、項構造において内項と疑似項をもつ 2 項述語に属する点で、両者の 間に違いが見られる。最後に、感情形容詞は、生理的感覚を表す 感覚形容詞 (sensational adjective) と心理的情意を表す 情意形容詞 (emotive adjective) に 下位再分類することができる。上述の日本語形容詞に関する下位分類と再分類 は、おもに形容詞の意味内容を基準にしたものであるが、このような分類は、 (i) 述 語 形 容 詞 の 項 構 造 と 項 の 主 題 役 割 、 (ii) 共 感 覚 に お け る 方 向 性 (directionality)、(iii) 1 人称話し手の制約 (First-Person Speaker Constraint)、(iv) 程 度副詞との共起関係、(v) 述定 (predicative) 対 装定 (attributive) 用法などとの 関 係 だ け で は な く 、 (vi) 複 合 (compounding) ・ 派 生 (derivation) ・ 転 換 (conversion) などを含む諸 問 題 と も 幅広くかかわり合っている23。. 2.3 日本語形容詞の項構造とその写像 以下、日本語形容詞をその意味内容と統語機能に基づいて下位分類し、それ ぞれの下位分類と再分類に応じ、語例を挙げて、その基本的な項構造の内容を 分類名称の後ろに角括弧 <…> で付記する。角括弧の中にある特定の意味役 割 (例えば、対象 (Th)) が単独で現れた場合には、その唯一の項が述語形容詞 の 内項 (internal argument) であり、角括弧の中に項が 2 つ現れた場合には、 角括弧の右端に現れたものが述語形容詞の内項、そして、角括弧の左端に現れ たものが述語形容詞の 外項 (external argument)24 である。ここで内項という 22. 23 24. 聴覚形容詞はその語例 (例えば、「(声が)大きい・小さい・高い・低い」 など) の全部が次元 形容詞と共通しているので、次元形容詞から 共感覚 (synaethesia) によって生じたものであ ると言えるかもしれない。 日本語形容詞の下位分類に関する基準と機能については、湯 (2008) を参照されたい。 「内項」 と 「外項」 は、それぞれ結合価文法の 「第 2 次行為項」 と 「第 1 次行為項」 (actant) に相当し、必須項以外の随意項は結合価文法の 状況項 (circonstant) に相当する。また、結 合価文法に依拠した論理体系のもとで、疑似項に相当するものとしては小泉 (2007: 117) の 「準行為項」 が挙げられる。.

(9) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 31. のは、述語形容詞と構造的にもっとも緊密な関係にある項のことであり、1 項 形容詞の場合にはこの内項がデフォルト格の 「ガ格」 を取り、文主語として写 像される。また、外項というのは、述語形容詞が内項を取った後、さらに取る もう 1 つの項で、X バー構造 (X-bar structure) による項構造の分析では、内項 が 主要部形容詞 (head adjective) の 補部 (complement) の位置に起こるのに 対し、外項は 指定部 (specifier) の位置に起こる25。内項と外項の両方を必須 項に取る述語形容詞は、2 項述語に属し26、内項と外項はそれぞれ文の表層で 目的語と主語に写像されることになるが、状態述語に属する形容詞は目的語に 「ヲ」 格を取ることはできず、「ガ」 格を取らなければならない27。 (2) 客観・属性・知覚形容詞: <Th> a. 視覚形容詞: 「明るい・暗い・薄暗い・赤い・白い・黒い・青い・ 黄色い・茶色い」 など。 b. 次元形容詞: 「長い・短い・大きい・小さい・広い・狭い・高い・ 低い・太い・細い・厚い・薄い・深い・浅い・幅広い」 など。 c. 聴覚形容詞: 「(声が)大きい・小さい・高い・低い」 など。 d. 嗅覚形容詞: 「臭い・香ばしい・かび臭い・なま臭い」 など。 e. 味覚形容詞: 「甘い・辛い・鹹い・苦い・酸っぱい・えぐい」 など。 f. 触覚形容詞: 「硬い・柔らかい・粘い・粘(り)っこい」 など。 g. 体覚形容詞: 「暑い・寒い・暖かい・涼しい・熱い・冷たい・ぬる い」 など。 これらの形容詞はみな <Th> の項構造をもつので、1 項述語 (すなわち、 自動形容詞 (intransitive adjective)) として写像され、「Th ハ/ガ~い」の文型に 25. 例えば、「私は 故郷が 懐かしい」 の X バー構造は (i) のように分析される。また、Larson (1988) や Radford (1997) などが主張するように、述語動詞が 動詞句 (VP) の上に VP シェ ル (VP-shell) や 軽動詞句 (vP) を想定するように、述語形容詞も 形容詞句 (AP) の上に 軽形容詞句 (aP) を想定すれば、その構造は (ii) のようになるかもしれない。. 26. 2 項形容詞は、他動形容詞 (transitive adjective) と呼ばれることもある。 状態述語の目的語が 「ヲ」 格を取らずに 「ガ」 格を取ることは、「太郎は数学ガできない」 「次郎には英語ガわかる」 「ここからは富士山ガよく見える」 「私にはお隣りの話しガよく 聞こえる」 のように、状態動詞の場合にも当てはまる。また、このように目的語に使われ る 「ガ」 格を、主語に使われる (動作主) 主格の 「ガ」 格と区別して、「対象主格」 と呼ぶ ことがあるが、すべての 「ガ」 格はデフォルト格の具現であるとみなしてよいと思われる。 青柳 (2006: 64-65) を参照。. 27.

(10) 32. 外國語文研究第十一期. 起こることになる。小泉 (2007: 115) は、無項述語 (zero-place predicate) の例 として 「寒い」 (恐らく、「熱い・涼しい」 なども) を挙げているが、これらの 気候に対する感覚を表す体覚形容詞28 は、「今日ハ/ガ 寒い」 「北海道の冬/ 冬の北海道ハ/ガ 寒い」 のように、時間 (トキ) 名詞や場所 (トコロ) 名詞を 内項に取るので、1 項述語とみなしてよかろう。一見、無項述語かのように見 える形容詞でも、音形をもたない 空の代名詞 (empty/null pronoun; すなわ ち、スモール・プロ (pro)) を想定すれば、実際には 1 項述語であると言える。 また、属性形容詞が共感覚によって評価形容詞に拡張 (あるいは、転化) した 場合、その項 構 造 の内容にも変化をもたらす 場 合 がある。例えば、「この蜂 蜜ハ/ガ 甘い」 の 「甘い」 は <Th> の項構造をもつ味覚 形 容 詞 である が、共感覚 に よ っ て 評 価 形容詞に転じると、 <(Go) Th> の項構造をもち、「先 生ハ 奥さんニ 甘い」 のように着点名詞 「奥さんニ」 を相方に取ることがで きるようになる。また、「胡椒ハ 辛い」 の 「辛い」 も 1 項述語 <Th> の項構 造をもつ味覚形容詞に属するが、共感覚によって評価形容詞に転じると、「先 生ハ 点数ガ 辛い」 のように 2 項述語に似た用法をもつ。しかし、これは 「先 生の点数ハ/ガ 辛い」 のような所有構文から、属格名詞句 (possessive NP) の 「先生(の)」 と 主(要部)名詞 (head noun) の 「点数」 の両方が取り出されて、 二重主格構文を形成したものと分析することができる。同じように、「この部 屋ハ 天井ガ 高い」 も 「この部屋ノ 天井ガ 高い」 のような所有構文から、属 格名詞句 「この部屋(ノ)」 と主名詞 「天井」 がともに取り出されて、二重主格 構文を形成したものと分析することができる。すなわち、属性形容詞の項構造 において対象を表す名詞句が、統語構造において属格名詞句と主名詞からなる 連体修飾構造を具え、かつ、意味内容において属格名詞句と主名詞の間に全体 と部分の パートニミー/包摂関係 (partonymy)29 の関係をなすとき、原則的 に属格名詞句と主名詞を同時に主格に取る二重主格構文を生成することがで きるのである。小泉 (2007: 265-266) は、このほかに、「チーターは ライオン ヨリ 足ガ 速い」 や 「この部屋ハ 書斎ニハ 狭い」 などの文例を挙げ、これら の文例はそれぞれ異なる文型 (すなわち、小泉 (2007: 264-265) の 「文型 2」 と 「文型 3」) に属し、従って、述語形容詞もそれぞれ異なる 「タイプ A」 と 「タ イプ C」 に属すると言っているが、前者の文例で比較の基準を表す 「~より」 は、必須項ではなく、随意項である上に、ほとんどすべての形容詞述語と共起 することができるという意味で余剰的であり、項構造の中に必須項であるかの より組み込む必要はないと思われる。後者の文例においても、着点の 「ニ」 は 用途や目的の意味に使われ、「この部屋は 書斎ニハ 狭い」 は 「この部屋を 書 斎ニ使うニハ/この部屋が 書斎ニ使われるニハ 狭い」 と同義であるので、こ 28. 29. 体覚形容詞には、このほかに身体のある部位の感覚を表す 「私は 手/足/頬ガ 冷たい」 の ような用法や、体覚の原因を内項に取る 「私は 夜風ガ 頬に冷たかった」 のような用法が 見られる。 「パートニミー」 は 換喩 (metonymy) の一種で、メロニミー (meronymy) とも呼ばれる。.

(11) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 33. れも随意項である。また、このような用 途 ・ 目 的を表す 「ニ」 は、範 囲 や 限 定 を表す 「ニ」 (例えば、「?このおしるこは 私ニハ 甘い」 (味覚)・「先生は 私ニハ 甘い」 (評価)・「? ジャズ音楽は 私(の耳)ニハ やかましい (聴覚・評 価)・「先生は 私ニハ 厳しい」 (評価)) のように、知覚形容詞としてよりも、 評価形容詞として使われる方が自然であり、広義の着点の中に含むことができ るので、評価形容詞の随意項として処理し、個々の述語形容詞の項構造の中で 一々リストする必要はないと思われる。 (3) 関係形容詞: <(Xx)30 Th> a. b. c. d.. <(So/Go)31 Th>: 「(~カラ/ニ) 遠い・近い」 <(Co) Th>: 「(~ト) 親しい」 <(Go) Th>: 「(~ニ) ふさわしい」 <(Co/Go) Th>: 「(~ト/ニ) 等しい」. 前述したように、関係形容詞は客観的な属性や状態を表すが、2 つの事物に かかわるので当然 2 項述語になる。このとき、内項の対象 (Th) だけが 「ガ」 格を取り、その他の項はそれぞれが担う意味役割に応じて、「カラ」 (So)・「ニ」 (Go)・「ト」 (Co) などの後置詞を取るので、疑似項と分析される。 また、関係形容詞の疑似項が担う意味役割には一種のユレが見られ、「私の家 は駅 カラ/ニ 遠い」 「私の家は駅 ニ/カラ 近い」 「3 足す 2 は 5 ト/ニ 等 しい」32 のように、後置詞の選択に個人差・方言差・語体差などが見受けられ るようである。 (4) 直観・中間・評価形容詞: <(XX) Th>33 a. <Th>: 「愛らしい・あくどい・危ない・危うい・怪しい・荒い・ 慌(あわ)ただしい・いかめしい・勇ましい・忙しい・著しい・嫌ら しい・色っぽい・美しい・巧(うま)い・美味(おい)しい・幼い・遅 い・かぐわしい・可愛(かわい)らしい・口説(くど)い・気高(けだか) い・けわしい・さえない・さもしい・騒がしい・しおらしい・慕 しい・しつこい・しぶとい・すがすがしい」34 など。 b. <(Go) Th>: 「新しい・厚い・いい・意地悪い・卑しい・うるさい・ 30. 31 32 33 34. 「Xx」 は 変項 (variable)、すなわち、任意の項を表す。また、円括弧 「(…)」 はデフォルト の 「ガ」 格を取らない疑似項を表す。このような疑似項は、当該述語の項構造の中で予め 規定されているので、与格や着点格の 「ニ」 格のように、固有格 (inherent case) とみなして よいかもしれない。青柳 (2006: 64-65) を参照。 「Xx/Yy」 は、2 つの項の中からどちらを取ってもよい、という自由選択の意味を表す。 文例の適格性判断は、小泉 (2007: 267) を根拠に。 語例とそのタイプ別は小泉 (2007: 265-267) に基づくが、少し表記法を変えている。 これらの語例は、小泉 (2007: 265-266) のタイプ A の形容詞から部分的に抜き出したもので ある。しかし、「慕しい」 などは感情形容詞の情意形容詞に含まれるべきかもしれない。.

(12) 34. 外國語文研究第十一期. 多い・おとなしい・汚い・厳しい・暗い・詳しい・細かい・さと い・しぶい・冷たい・強い・とぼしい・もろい・やかましい・や さしい・弱い・悪い」35 など。 (4a) に属する評価形容詞は、基本的に <Th> の項構造をもつ 1 項述語で ある。しかし、前述したように、対象 (Th) を表す内項が 「属格名詞句+主名 詞」 の形式を取り、かつ、属格名詞句と主名詞の間に全体と部分のパートニミ ーの関係が成立するときには、文の表層構造で二重主格構文を形成することが できる。例えば、「あの子の口元ハ/ガ 愛らしい」 は、「愛らしい」 の項構造 < Th> がそのまま文の表層構造に写像されたものであるが、この文例における 「あの子の口元」 の統語構造と意味内容は、上述の条件を満たしているので、 「あの子ハ/ガ 口元ガ/ハ 愛らしい」 のような二重主格構文に写像すること もできる。一方、(4b) に属する評 価 形 容 詞 は、内項対象 (Th) の ほかに着 点 (Go) の 疑 似 項 と し て 含む <(Go) Th> の項構造をもつので、1 項述語 <Th> としても (例えば、「あの人の考え方ハ/ガ 常に新しい」)、2 項述語 < (Go) Th> としても (例えば、「あの事件ハ/ガ いまだ 記憶ニ 新しい」)、使 うことができる。 1 項述語に使われる場合の主格名詞句 「あの人の考え方」 は、 属格名詞句の 「あの人(ノ)」 と主名詞の 「考え方」 からなり、かつ、両者の間 に全体と部分 (もっと具体的に言えば、持つヒト (持主) と持たれるモノ (持 物)) の意味関係が存在するので、二重主格構文の 「あの人ハ/ガ 考え方ガ/ ハ 常に新しい」 の表層構造に写像することができる。一方、2 項述語として 使われる場合の主格名詞句 「あの事件(ハ/ガ)」 は、属格名詞句と主名詞から なっていないので、二重 主 格 構 文 に 写 像 す ることはできない36。また、(4b) の語例が取る着 点 (Go) は 、 「 金ニ(関シテ) 卑しい/汚い/細かい/しぶ い・歴史ニ(関シテ) 明るい/暗い」 などのように 方面 (Ra(nge)) を表す 「ニ 関シテ」 と解されるものや、「部下ニ(対シテ) 意地悪い/厳しい/優しい」 な どのように心理的な着点を表す 「ニ対シテ」 と解されるものなど、いろいろあ ると思われるが、より高い一般化を期するために、敢えて着点 (Go) という概 念に一括した37。もし方面と着点などを区別する必要があれば、これは統語構 造の問題ではなく、意味解釈の問題であるので、着点 (Go) の下 (あるいは、 後ろ) に<コト>・<ヒト> (あるいは、<無情>・<有情>) などの意味素 35 36. 37. これらの語例は、小泉 (2007: 266) のタイプ B の形容詞から借用した。 「あの事件ハ/ガ いまだ 記憶ニハ 新しい」 はかなり不自然である上に、2 番目の 「ハ」 格 が後置詞句 「記憶ニ」 に後続しているので、二重主格構文とは呼びがたいと思われる。小 泉 (2007: 266) の文例でも、「あの事件ハ 記憶ニ 新しい」 のように二重主格構文になって いない。 このような着点格 (Go) の多義性は、「ガ」 格が格助詞 (すなわち、構造格 (structural case) のマーカ) としてデフォルト的に使われるように、「ニ」 格は後置詞 (すなわち、意味格 (semantic case) のマーカ) としてデフォルト的に使われることによると思われる。日本語の 着点助詞 「ニ」 の多義性とその分析については、湯 (2007) を参照されたい。.

(13) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 35. 性を添えて、それぞれ方面や心理的着点などと解釈することができよう。さら に、小泉 (2007: 266) の語例の中には、「近い」 などの関係形容詞や、「痛い」 や 「慕しい」 などそれぞれ感情形容詞の感覚形容詞や情意形容詞に属するもの (例えば、「私ハ 頭ガ 痛い」 「私ハ 妻ガ 慕しい」) が含まれているが、前者の 着点 「ニ」 格は起点 「カラ」 格と置き換えができるという意味で、また、後者 の 「痛い」 や 「慕しい」 は共感覚による感覚形容詞や情意形容詞から評価形 容詞への転用 (例えば、「(彼の)批評ガ (私の)耳ニ 痛い」 であろうという意味 で、ひとまず語例の中から外しておいた。 (5) 感情形容詞: <Ex<1 人称> , Xx> a. 感覚形容詞 <Exi , Loi<身体部位>>38: 「痛い・痒い・きつい・苦しい・ だるい・冷たい」 など。 b. 情意形容詞 <Ex , Th>: 「有難(ありがた)い・いじらしい・愛(い と)しい・恨めしい・羨ましい・嬉しい・恐ろしい・面映(おもは) ゆい・悲しい・可愛(かわい)い・悔しい・恋しい・慕しい・心苦し い・心細い・こわい・楽しい・辛(つら)い・懐かしい・憎らしい・ 欲しい・まぶしい・難かしい・珍しい」 など。 感情形容詞とその他の形容詞の違うところは、外項の経験者が必ず 1 人称の 話し手でなければならない、という 1 人称話し手の制約 (First-Person Speaker Constraint)39 を受けることである。この制約は、感情形容詞をその他の形容詞 から区別するもっとも重要な基準であり、この基準さえ満たす形容詞であれ ば、一応感情形容詞の中に分類し、その他の派生的用法 (例えば、経験者外項 が省略された (あるいは、経験者外項が音声形態をもたない空の代名詞 「pro」 である) ものは、共感覚による感情形容詞から評価形容詞への転用と見るのが 本稿の基本的な立場である。また、感覚形容詞の内項が身体部位 (Lo) を表し、 経験者 (Ex) 外項 (すなわち、1 人称話し手) と全体と部分の関係を結ばなけ ればならないという意味で、再帰的 (reflexive) であるのに対し、情意形容詞 にはこ の よ う な 制 約はなく、一般的な対象 (Th) を内項に取ることができる. 38. 39. 項構造の中に現れる経験者 <Ex> と場所 <Lo> の右肩に現れる 上付き (superscript) の小文字の 「i」 は、経験者とその身体部位が全体と部分 (あるいは、持主と持物) のパート ニミー関係にいなければならないことを意味する。 この制約は述語形容詞が (i) 非過去形の場合に限られるので、過去形には適用せず、 (ii) 裸 の形容詞 (bare adjective) の場合に限られて、「~だろう・~そうだ・~はずだ・~らしい・ ~かもしれない・~と思う」 などの推量や認知のモダリティ表現と共起したときには適用 されず、(iii) 直接話法の主文に現れたときに限られるので、理由・原因を表す従属節・間 接話法や疑問文に現れたときには適用されず、(iv) 述語形容詞の語幹に形容名詞化接尾辞の 「-そう・-げ」 や動詞化接尾辞の 「-がる・-む」 がつくと適用されず、逆に一般の動詞でも願 望を表す形容詞化接尾辞の 「-たい」 を取って情意形容詞に似た働きをもつと適用される。 詳細については 湯 (2008: 157-158) を参照されたい。.

(14) 36. 外國語文研究第十一期. 40. 。さらに、情意形容詞の内項を対象 (Th) と解し、原因 (Ca) と解さないのは、 「私は 試験の失敗ガ 悲しい」 に対応する特定疑問文が 「君は 何デ 悲しい の?」 ではなく、「君は 何ガ 悲しいの?」 であることによると同時に、原因を 表す場合には、「試験の失敗ガ 悲しい」 や 「試験ニ失敗したノガ 悲しい」 では なく、「試験の失敗デ 悲しい」、あるいは 「試験に失敗したノデ 悲しい」 という 表現を使うからである。最後に指摘しなければならないのは、すべての感覚形 容詞が同質で、みんな <Exi , Loi<身体部位>> という 1 つの項構造に納まるもの ではないということである。例えば、形容詞 「眠い・眠たい」 は 1 人称話し手 を経験者外項として取らなければならないので、感情 (恐らくは、感覚) 形容 詞に属すべきであると思われるが、この形容詞は 1 項述語として <Ex> の項 構造をもつので、文例 (6b) のように身体部位を内項に取ることはできない。 (6) a. {私/*君/*彼(女)} ハ もう眠(た)い。 b. 私ハ (*目ガ) 眠(た)い。 ま た 、 同 じ よ う に 感 覚 形 容 詞 に 属 す る 「痛 い 」 と 「眩 し い 」 は 、 <Exi<1 人称>, Loi<身体部位>> の項構造が要求するように、1 人称話し手とその身 体部位をそれぞれ外項と内項に取り、(7a) と (7b) のような二重主格構文を形 成することができるが、さらに原因を随意項や付加詞に取って、(8a) と (8b) のような文構造を形成することができる。さらに、(9a) と (9b) のように、原 因を内項に取ることもできれば、原因内項のほかに、身体部位を随意項や付加 詞に取って、(10a) と (10b) のような文構造を形成することもできる41。 (7) a. b. (8) a. b.. 私 私 私 私. (Ex) (Ex) (Ex) (Ex). ハ ハ ハ ハ. 足 (Lo) ガ 痛い。 目 (Lo) ガ 眩しい。 靴に入った小石 (Ca) デ 足 (Lo) ガ 痛い。 太陽の光 (Ca) デ 目 (Lo) ガ 眩しい。. (9) a. b. (10) a. b.. 私 私 私 私. (Ex) (Ex) (Ex) (Ex). ハ ハ ハ ハ. 靴に入った小石 (Ca) ガ 痛い。 太陽の光 (Ca) ガ 眩しい。 靴に入った小石 (Ca) ガ 足 (Lo) ニ 痛い。 太陽の光 (Ca) ガ 目 (Lo) ニ 眩しい。. そこで、これら 有標 (marked) の感覚形容詞のために、(11) のような項構 造を提議する。. 40. 41. 前述したように、「私ハ 頭ガ 痛い」 の平变文に対応する特定疑問文が 「君ハ ドコガ 痛い の?」 であるのに対し、「私ハ 故郷/昔の友人ガ 懐かしい」 の平变文に対応する特定疑問 文は 「君ハ 何ガ/誰ガ 懐かしいの?」 である。 (7) から (10) までの文例と説明は 矢沢 (1998: 55-54) を参考にした。.

(15) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 37. (11) a. <Ex <1 人称>>: 「眠い・眠たい」 b. <Exi<1 人称> , (Ca () Loi<身体部位>)>: 「痛い・眩しい」 交差した円括弧 (linked parentheses) 「(…)(…)」 は、2 つの円括弧の中の少な くとも 1 つの項が文構造に顕在化されなければならないことを表し、項が 2 つ とも選ばれた場合には、その 左右行列の順序 (linear order) は自由であること を示す。 す な わ ち 、「痛い・眩しい」 などの項 構 造 <Ex, (Ca () Lo)>では、 <Ex , Lo> (文例 (7))、<Ex , Ca> (文例 (9))、<Ex , Ca , Lo> (文例 (8))、< Ex , Lo , Ca> (文例 (10)) の都合 4 つの配列・組み合わせが可能なわけである。 以上、日本語形容詞の下位(再)分類と各々の下位形容詞がもつ項構造の内 容、およびこれらの項構造が文の表層構造でどのようにして異なる文型や文構 造に写像されるかについて説明した。この結果、日本語の二重主格構文にはお よそ次のような 2 つの異なるタイプが存在することが判明した。 (i). 1 項述語形容詞 (<Th>)、あるいは疑似項を含む 2 項述語 (<(Xx) Th>) の対象内項 (Th) が、属格名詞句と主名詞からなる名詞句であ り、かつ、属格名詞句と主名詞の間に全体と部分 (や広義の持主と持物) のパートニミーの関係が成り立つとき、属格名詞句と主名詞がそれぞれ. 「ハ」 格や 「ガ」 格を取って、「パートニミー型二重主格構文」 を形成す ることができる。 (ii) 疑似項を含まない 2 項述語 (<Ex <1 人称>, Xx>) 形容詞は、1 人称話し 手の経験者外項とその身体部位 (Lo) や対象 (Th) を表す内項が、それ ぞれ 「ハ」 格や 「ガ」 格を取って、「非パートニミー型二重主格構文」42 を形成することができる。 従って、次の文例のうち、(12b)・(13b)・(14b) は (i) の 「パートニミー型二 重主格構文」 に属し、文例 (15b)・(16b) は (ii) の 「非パートニミー型二重主 格構文」 に属することになる。 (12) a. [象の鼻] (Th) ハ/ガ 長い。. <Th> (客観・属性・知覚形容詞). b. 象 (Th) ハ/ガ 鼻 (Th') ガ/ハ 長い。 42. 43. [Th, Th']43. 感覚形容詞を述語とする二重主格構文は経験者 (外項) とその身体部位 (内項) の間にパー トニミーの関係が成立しているので、「非パートニミー型二重主格構文」 の名称は厳密に言 えば妥当ではない。しかし、1 項述語 <Th> の項構造をもつ形容詞から生成された 「パートニミー型二重主格構文」 が属格名詞句と主名詞の間のパートニミーの関係を前 提とするのに対し、「非パートニミー型二重主格構文」 は疑似項を含まない 2 項述語の形容 詞でさえあれば、パートニミーの意味制約に触れる必要はないという意味で、これらの名 称を暫定的に採用することにする。 <…> は項構造を表し、[…] は文の表層構造を表す。また、「Th'」 は対象内項 (Th) 名詞 句の中から(身体)部位や持物を表す主名詞が取り出されてできた新しい項を指す。.

(16) 38. 外國語文研究第十一期. (13) a. [私の弟] (Th) ハ/ガ その人 (Co) ト 親しい。 <Th, Co> (2 項関係形容詞). b. 私 (Th) ハ/ガ 弟 (Th') ガ/ハ その人 (Co) ト 親しい。 [Th, Th', Co] (14) a. [先生の点数] (Th) ハ/ガ 甘い/厳しい。 <Th> (評価形容詞) b. 先生 (Th)ハ/ガ 点数 (Th') ガ/ハ 甘い/厳しい。 [Ex, Th] c. (15) a. b. (16) a.. 先生 (Ex)ハ/ガ 子供 (Go) ニ/*ガ44 厳しい。 i. <Ex, Go>, [Ex, Go] i. 私 (Th) ハ/ガ 頭 (Lo) ガ/ハ 痛い。 <Ex , Lo > (2 項感覚形容詞) 私 (Ex) ハ/ガ 犬 (Th) ガ/ハ こわい。 <Ex, Th> (2 項情意形容詞) 私 (Ex) ハ/ガ (太陽の光 (Ca) デ) 目 (Lo) ガ 眩しい。 [Exi (Ca) Loi] <Exi (Ca (,) Loi)> (3 項感覚形容詞). b. 私 (Ex) ハ/ガ 太陽の光 (Ca) ガ (目 (Lo) ニ) 眩しい。 [Exi, Ca (Loi)]. 3. 「ハ」 格・「ガ」 格の意味機能とその配列・組み合わせ 前節では、述語形容詞の項構造における項 (必須項と疑似項を含む) の数に は、(i) 無標の客観・知覚形容詞と直観形容詞・評価形容詞の場合は、内項と して対象を 1 つ、(ii) 一般の主観・感情形容詞の場合は、外項として 1 人称話 し手の経験者、内項としてその身体部位 (場所) の都合 2 つ、(iii) 有標の感覚 形容詞の場合は、経験者・身体部位・原因の都合 3 つ、そして、(iv) 関係形容 詞と有標の評価形容詞の場合は、内項 (対象あるいは経験者) と疑似項 (起 点・着点・相方など) を 1 つずつ) を含むものがあることを説明した。さらに、 二重主格構文を産出する形容詞述語文には基本的に 2 つの型があり、その 1 つ は全体を表す属格名詞句と部分を表す主名詞からなる 基底構造 45 (base structure) が文の表層構造に写像されて生成された 「パートニミー型二重主格 構文」、もう 1 つは項構造に 2 つの必須項が含まれる感情形容詞から生成され た 「非パートニミー型二重主格構文」 であることを指摘した。本節では、二重 主格構文に起こる 「ハ」 格と 「ガ」 格の意味機能、および 「ハ」 格と 「ガ」 格 の二重主格構文における配列・組み合わせに関する統語制限と意味解釈につい て、先行文献を踏まえながら、分析していきたい。 日本語の 「ハ 」 格 と 「ガ 」 格 の 意味解釈と用法区分に関しては、佐久 間 (1943)、三尾 (1948)、三上 (1953)、久野 (Kuno (1973))、坂原 (1989)、益岡・ 田窪 (1992)、Kubo (1994)、野田 (1996)、国広 (2006) など長期にわたる先行 44. 45. 対象内項が 「ガ」 格を取れずに、着点の 「ニ」 格を取るのは、この 「ニ」 格が着点固有格 として述語形容詞 「甘い・厳しい」 の項構造の中に予め登記されているからである。 ここでいう 「基底構造」 とは、従来の生成文法 (標準的な生成文法 (Standard Theory) から 統率と束縛の理論 (Government-and-Binding Theory) に至るまで) 深層構造 (deep structure; D-structure) と呼ばれたいものであるが、最近の 極小主義理論 (minimalist program) では、 併合 (merge) によって句構造が 下から上へ (bottom-up) と構築され、始発の深層構造の概 念は廃棄されてしまった。.

(17) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 39. 研究の積み重ねがあるが、その結論は大体次のように整理することができる。 (一) 「ハ」 格は、基本的に 主題 (topic)46 と 対比 (contrast) の 2 通りの意味 を表し、「ハ」 格が同じ単文の中で 2 つ以上現れた場合には、文頭の 「ハ」 格 は主題の意味に解釈され、その後ろに続く 「ハ」 格は対比の意味に解釈され る。対比を意味する 「ハ」 格が 2 つ以上現れた場合には、後ろの方に起こる 「ハ」 格ほど対比の意味が強くなる。 主題とは、その後ろに続く 解説 (comment) の变述の対象であり47、一般に 既 知 の (known) 古 い (old) 情 報 を 表 す の に 対し 、 解説 には 未 知 の (unknown) 新しい (new) 情報が含まれる48。また、対比とは、比較や対照の意 味を表し、後ろの文脈に比較の対象が現れることが多い49。主題の意味・用法 は本質的なものであるという意味で 無標 (unmarked) であり、対比の意味・ 用法は派生的であるという意味で 有標 (marked) である。 (17) a. b. c. d.. 鯨ハ哺乳動物だ。 雨ハ降っているが、雪ハ降っていない。 私は今日ハ京都には行くが、明日ハ行かない。 私は京都にハ行くが、大阪にハ行かない。. (主題: (対比: (対比: (対比:. 無標) 有標) 有標) 有標). (二) 「ガ」 格は、基本的に 中立叙述 (neutral description) と 排他特立 (exhaustive listing)50 の 2 通りの意味を表し、「ガ」 格が同じ単文の中で 2 つ以 上現れた場合には、文頭の 「ガ」 格は排他特立の意味に解釈され、その後ろに 続く 「ガ」 格は中立变述の意味に解釈される。 中立变述とは、現象文や存現文に現れる 「ガ」 格51 を指し、佐久間 (1943) の 「眼前描写」 や Kuno (1973) の 「観察できる動作、一時的状態」 に相当す る。また、排他特立とは、同 類 の 項 の 中 か ら 、あ る特定の項だけを取り上 げて、「いま話題になっているヒト・モノ・コトの中では、このヒト・モノ・ コトだけが」 の意味に解釈される52。中立变述の意味・用法は基本的なもので 46. 47. 48. 49. 50 51. 52. 「主題」 は 「話題」 とも呼ばれ、「ハ」 格は 「係(り)助詞」・「取り立て(助)詞」 のほかに 「提 題助詞」 とも呼ばれる。 従って、主題と解説の間には広義の 叙述関係 (predication) が成立し、主題は 大主語 (major subject) と呼ばれることもある。 情報構造 (information structure) の上からは、古い情報 (old information) を代表する主題 は „theme‟ とも呼ばれ、新しい情報 (new information) を代表する解説は „rheme‟ とも呼ばれる。 「主題」 と 「対比」 の 2 通りの意味を総括するものとしては、益岡・田窪 (1992: 150) の 「取 り立て」 (すなわち、同類の他の項との関連において、ある項を取り上げる機能) という考 え方がある。 「排他特立」 は、「排他」・「総記」 などとも呼ばれる。 「眼前描写」 を表す 「ガ」 格の 「現象文」 や 「存現文」 に対し、「判断措定」 を表す 「ハ」 格の構文は、「有題文」・「題述文」 や 「提示文」 などと呼ばれる。 「課長ハ私です」 のように主題の 「ハ」 格が顕在化している有題文を 「顕題文」 と呼び、.

(18) 40. 外國語文研究第十一期. あるという意味で、無標の 主用法 (primary use) であり、排他特立の意味・用 法は派生的な二次的なものであるという意味で、有標の 副用法 (secondary use) と言える。また、中立变述の 「ガ」 格が使われた場合には、「ガ」 格を主 語とする文全体が新情報を表し、排他特立の 「ガ」 格が使われた場合には、 「ガ」 格の部分だけが新情報を表し、その後に続く部分は旧情報を表すので、 主語焦点 (subject-focus) の情報構造に属する。その意味で、排他特立の 「ガ」 格の前に起こる名詞句は、疑似分裂文 (pseudo-cleft sentence) における 「ノハ」 格の後ろに現れる名詞句と同じように 情報焦点 (information focus) をマーク する標識である53 と言える。 (18) a. b. c. d.. あっ、雨ガ降っている。 私ガ課長です。 これガ椿で、それハつつじです。 太郎ガ英語ガ得意です。. (中立变述: 無標) (排他特立: 有標) (排他特立: 有標) (排他特立と中立变述). また、多重主格構文を二重主格構文に限っていうと、「ハ」 格と 「ガ」 格の 配列・組み合わせは、都合 「~ハ~ハ」・「~ハ~ガ」・「~ガ~ガ」・「~ガ~ハ」 の 4 通りある。このうち、「~ガ~ハ」 の配列・組み合わせは少し不自然であ るが、完全に不適格であるとも言えない。 (19) a. b. c. d.. 太郎ハ英語ガできる。 太郎ハ英語ハできる(が、 フランス語はできない)。 (次郎や三郎ではなく、)太郎ガ英語ガできる。 英語ガ太郎?(ニ)ハできる(が次郎?(ニ)ハできない)。. (主題と中立) (主題と対比) (排他と中立) (排他と対比). さらに、上述の 「ハ」 格と 「ガ」 格の意味機能と両者の配列・組み合わせに 関する一般化は、動詞述語文だけではなく、形容詞述語文にも当てはまる。こ のとき、「~ガ~ハ」 の配列・組み合わせは、感覚形容詞と情意形容詞が述語 の場合にはやや不自然に聞こえるが、適当な文脈ではこの配列・組み合わせも 可能である。 (20) a. 象ハ鼻ガ長い。 b. 象ハ鼻ハ長い(が、尻尾ハ短い)。 c. (アリクイよりも)象ガ鼻ガ長い。. 53. (主題と中立) (主題と対比) (排他と中立). 「私ガ課長です」 のように主題の 「課長」 が述語 「課長です」 の中に潜在している排他特 立文を 「陰題文」 と呼ぶことがある。これに対して、「あっ、雨ガ降っている」 のような中 立变述文は、文全体が新情報を表すので、「無題文」 と呼ばれる。 例えば、排他特立文の 「私ガ頭ガ痛い」 における情報焦点が 「私」 であるように、疑似分裂 文の 「頭が痛いノハ私(で、君ではない)」 の情報焦点も 「私」 である。.

(19) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 41. d. (21) a. b. c. d.. (アリクイよりも)象ガ鼻ハ長い(が、尻尾ハ短い)。 (排他と対比) 私ハ頭ガ痛い。 (主題と中立) 私ハ頭ハ痛い(が、お腹ハ痛くない)。 (主題と対比) (誰よりも)私ガ頭ガ痛い。 (排他と中立) (ほかではないこの)私ガ頭ハ痛いが、お腹ハ痛くない。 (排他と対比) (22) a. 私ハ故郷ガ懐かしい。 (主題と中立) b. 私ハ故郷ハ懐かしい(が、実際に故郷に帰るノハ少し気がおくれ る)。 (主題と対比) c. 私ガ故郷ガ懐かしい(が、弟ハそうでもないようだ)。 (排他と中立) d. (ほかでもないこの)私ガ故郷ハ懐かしい(が、実際に故郷に帰るノハ 少し気おくれがする)。 (排他と対比) しかし、「ハ」 と 「ガ」 の配列・組み合わせはこの 4 通りしかないのであろ うか。このほかの配列・組み合わせがあるとしたら、それはどういうふうな内 容になるのであろうか。なぜ 「~ガ~ハ」 の配列・組み合わせは不自然に響く のであろうか。最後の問題については、「~ハ」 が既知の旧情報を表すのに対 し、「~ガ」 は未知の新情報を表すので、「~ガ~ハ」 の配列・組み合わせを許 すと、古きから新しきへの原則 (From Old to New Principle) に抵触するという 解釈が出てくるかもしれない。しかし、本当にそうであろうか。このほかに説 明の方法はないのであろうか。そもそも、「古きから新しきへ」 というのは 機 能主義的な原則 (functional principle) で、実際の作文や修辞の上ではまことに 便利なものであるが、それは絶対に違反を許さない統語構造や意味解釈に関す る規則ではなかろう。 このことについて、Kubo (1994: 28-29) は、「ハ」 と 「ガ」 のそれぞれに 主 題 (thematic) と 対 比 (contrastive) お よ び 排 他 (exhaustive) と 中 立 (neutral) の 2 通りの意味機能があることに触れた後、「ハ」 と 「ガ」 の字面の 上での配列・組み合わせは 4 通りしかないが、意味機能の上での組み合わせは、 次のように論理的には 16 通りあり、実際にはそのうちの 8 通りが適格 な 配 列 ・組み合わせであることを指摘している54。 (23) a. c.. 54. *ハ (主 < 題) *ハ (対 < 比). ガ (排他). b.. ハ (主題). <. ガ (中立). ガ (排他). d.. ハ (対比). <. ガ (中立). 「X < Y」 は X が Y に先行することを表し、星印 「*」 はその文型が不適格であることを示 す。.

(20) 42. 外國語文研究第十一期. e. g. i. k. m. o.. (排. <. ハ (主題). f.. ガ (排他). <. ハ (対比). (中. <. ハ (主題). h.. ガ (中立). <. ハ (対比). (排. <. ガ (排他). j.. ガ (排他). <. ガ (中立). (中. <. ガ (排他). l.. ガ (中立). <. ガ (中立)55. (主. <. ハ (主題). n.. ハ (主題). <. ハ (対比). 題) *ハ (対 比). <. ハ (主題). p.. ハ (対比). <. ハ (対比)56. *ガ 他) *ガ 立) *ガ 他) *ガ 立) *ハ. 論理的には配列・組み合わせが 16 通りあることに問題はないが、Kubo (1994: 29) は(不)適格性判断について一々文例が添えられていない上に、 (23l) と (23p) にはそれぞれ脚注や付記がついているので、その是非について はさらなる検証が必要であると思われる。しかし、Kubo (1994: 29) の (23) の 配列・組み合わせに関する適格性・不適格性の判断が基本的に正しいことは、 「ハ」 と 「ガ」 の意味解釈に関して次のような一般化が得られることによって 支持される。 (24) a. 主題の 「ハ」 と排他の 「ガ」 は、必ず文頭の位置に起こらなけれ ばならない。従って、両者は 相互排除 (mutually exclusive) の関係 にあり、同一文中に共起することはない。 b. よって、主題の 「ハ」 の後ろに起こる 「ガ」 (23b) は、必ず中立の 意味に解され、排他の 「ガ」 の後ろに起こる 「ハ」 (23) は、必ず 対比の意味に解される。 c. また、主題の 「ハ」 と排他の 「ガ」 は文頭の位置に 1 つしか起こ ら な い ので 、 主 題の 「 ハ 」 が 2 番 目 の位 置 に 起こ っ て いる (23e)・(23g)・(23m)・(23o) の文型や、排他の 「ガ」 が 2 番目の位 置に起こっている (23a)・(23c)・(23i)・(23k) の文型は、当然不適 格である。 d. 主題と主題が同一文中に起こることはなく、排他と排他が同一文 55. 56. Kubo (1994: 23) はその脚注 2 において、単文や複文の主節のような 根の文 (root sentence) では、「~ガ~ガ」 の前の 「ガ」 格が排他の意味に解釈されなければならないが、従属節や 補文のような 埋め込み節 (embedded cluase) では、この 「ガ」 格は中立の意味に解さなけ ればならない、と言っている。 Kubo (1994: 29) では、「~ハ~ハ」 の 「ハ」 格が 2 つとも対比の意味に解釈されるためには、 「後置詞句(PP)+名詞句(NP)」 の文型に起こらなければならないことを付記している。.

(21) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 43. 中に起こることもない 57 ので、主題の 「ハ」 の後ろに起こる 「ハ」 (23n) は、必ず対比の意味に解され、排他の 「ガ」 の後ろに 起こる 「ガ」 (23j) は、必ず中立の意味に解される。 e. 主題や排他が文頭に起こらない 4 つの配列・組み合わせ (すなわ ち、(23d)・(23h)・(23l)・(23p)) のうち、(23l) の 「~ガ~ガ」 は両 者ともに (排他の解釈が排除されて) 中立の意味に解され、(23p) の 「~ハ~ハ」 は両者ともに (主題の解釈が排除されて) 対比の 意味に解されるのに対し、(23d) の 「~ハ~ガ」 と (23h) の 「~ガ ~ハ」 はそれぞれ 「対比と中立」 および 「中立と対比」 を表すと いう意味で 可逆的な関係 (reversible relation) にある。. 4. 多重主格形容詞構文の意味解釈と文生成 (24) の論理的説明が (23) の配列・組み合わせに関する意味解釈と(不)適格 性判断の結論を支持するものであるとすれば、後に残る仕事は実際の文例に基 づいてその正確性を検証することである。以下、(23) に挙げた 16 種類の配列・ 組み合わせに基づいてそれぞれ文例を提示し、その意味解釈と統語構造の関係 について吟味し、適格性についても検証する。また、文例の前に現れた不適格 性を表す星印は、Kubo (1994: 28-29) の判断に基づいたものである。 (25) a. a'. b. b'. c. c'.. *太郎ハ (主題) 英語ガ (排他) できる。 *象ハ (主題) 鼻ガ (排他) 長い。 太郎ハ (主題) 英語ガ (中立) できる。 象ハ (主題) 鼻ガ (中立) 長い。 *太郎ハ (対比) 英語ガ (排他) できる。 *象ハ (対比) 鼻ガ (排他) 長い。. d. d'. e. e'. f. f'. g. g'. h.. 太郎ハ (対比) 英語ガ (中立) できる。 象ハ (対比) 鼻ガ (中立) 長い。 *太郎ガ (排他) 英語ハ (主題) できる。 *象ガ (排他) 鼻ハ (主題) 長い。 太郎ガ (排他) 英語ハ (対比) できる。 象ガ (排他) 鼻ハ (対比) 長い。 *太郎ガ (中立) 英語ハ (主題) できる。 *象ガ (中立) 鼻ハ (主題) 長い。 太郎ガ (中立) 英語ハ (対比) できる。. h'. 57. 象ガ (中立) 鼻ハ (対比) 長い。. この結論は、(24c) の一般化から 自然な帰結 (natural consequence) として得られる。.

(22) 44. 外國語文研究第十一期. i. i'. j. j'. k. k'. l. l'. m.. *太郎ガ (排他) 英語ガ (排他) できる。 *象ガ (排他) 鼻ガ (排他) 長い。 太郎ガ (排他) 英語ガ (中立) できる。 象ガ (排他) 鼻ガ (中立) 長い。 *太郎ガ (中立) 英語ガ (排他) できる。 *象ガ (中立) 鼻ガ (排他) 長い。 太郎ガ (中立) 英語ガ (中立) できる。 象ガ (中立) 鼻ガ (中立) 長い。 *太郎ハ (主題) 英語ハ (主題) できる。. m'. *象ハ (主題) 鼻ハ (主題) 長い。 n. 太郎ハ (主題) 英語ハ (対比) できる。 n'. 象ハ (主題) 鼻ハ (対比) 長い。 o. *太郎ハ (対比) 英語ハ (主題) できる。 o'. *象ハ (対比) 鼻ハ (主題) が長い。 p. 太郎(ニ)ハ (対比) 英語ハ (対比) できる。 p'. 象ハ (対比) 鼻ハ (対比) 長い。 以上の文例における主題 (「ハ」 格) と主語 (「ガ」 格) の配列・組み合わせ は、2 項述語に属して、経験者外項名詞句と対象内項名詞句を取り、この 2 つ の名詞句がそれぞれ主題や主語に写像される状態動詞の 「できる」 と、1 項述 語に属して対象内項名詞句のみを取るが、その対象名詞句が所有者を表す(属 格)名詞句を取り得ることによって、この 2 つの名詞句がそれぞれ主題や主語 に写像される次元形容詞の 「長い」 の 2 種類の述語から生成されるものを選 んだ。「できる」 を述語とする文例 (プライム記号 「'」 の付かないローマ数字 の番号で列記したもの) は、2 項述語に属するので、その他の 1 項・2 項の動 詞および 2 項形容詞 (例えば、感情形容詞) とも相通じるものがあろう、との 配慮から選んだものであり、1 項形容詞の 「長い」 を述語とする文例 (プライ ム記号 「'」 が付いたローマ数字の番号で列記したもの) との比較・対照に役立 つものと思われる。また、これらの文例に現れる主題はいわゆる 文内主題 (intra-sentential tipic) に属するので 、基 底構造では文内の付加詞や項から生成 され、移動 (movement) や 上昇 (raising)・付加 (adjunction) によって表層構 造に生成されたものである。一方、基底構造から直接文頭の位置に生成され、 解説との間の 主従関係 (predication) はやや漠然とした内容の 関連性条件 (Aboutness Condition) に従う、いわゆる 文外主題 (extra-sentential topic) の文例 は、(25) の文例の中に入っていないが、「ハ」 と 「ガ」 の意味解釈に限っては、 文内主題と文外主題の間にそう大きな相違はないものと思われる。 まず、文例 (25a) が主題として 「太郎は」 を提示した後、排他の 「ほかでは なく英語が」 を意味する 「英語が」 で続けているのは、かなり不自然に響く.

(23) 日語 「多重主語」 形容詞句:句法結構與語意功能. 45. 58. 。一方、文例 (25b) のように、「太郎は」 を主題と解し、「英語が」 を中立の 意味に解すれば、ごく自然な文になる。同じような理由で、文例 (25a') と文 例 (25b') もそれぞれ不適格・適格と判断される。次に、文例 (25c) が 「太郎 は」 を使って 「太郎」 をその他の人たち (例えば、「次郎や三郎」) と対比した 後、さらに、「ほかではなく英語が」 の排他の意味で 「英語が」 を取り上げて いるのも、かなり不自然に聞こえる。一方、文例 (25d) のように、「太郎は」 を 対比の意味に解し、「英語が」 を中立の意味に解すると、ごく自然な表現にな る。同じよう理由で、文例 (25c') と (25d') は、それぞれ不適格な文および適 格な文と判断される。さらに、文例 (25e) のように、「太郎が」 を排他の意味 で取り上げた後、「英語は」 ではじめて主題をもち出すのは、非常に不自然な 文である。しかし、文例 (25f) のように、排他の 「太郎が」 の後ろに起こる 「英 語は」 を、「英語はできるが、ドイツ語はできない」 というような対比の意味 に解釈すれば、ごく自然な文になる。同じような理由で、文例 (25e') と文例 (25f') もそれぞれ不適格な文・適格な文として判断される。続いて、文例 (25g) と (25g') のように、2 項述語の経験者外項 (「太郎」) や 1 項述語の対象内項 (「象」) を 「ガ」 格で取り上げて中立の意味を表した後、2 項述語の対象内項 (「英語」) や 1 項述語の対象内項 (「象」) と全体・部分の関係にある主名詞 (「鼻」) を 「ハ」 格で取り立てて主題とするのは不自然であり、文全体が新し い情報を表す中立文の中に主題という古い情報が含まれているという意味で も不適格な文と判断される。しかし、文例 (25h) と文例 (25h') のように、「英 語は」 や 「象は」 を主題の意味ではなく、対比の意味に解すれば、中立の 「太 郎が」 や 「象が」 に続く 「英語はできる (がドイツ語はできない)」 や 「鼻は 長い (が尻尾は短い)」 のように、「英語は」 と 「鼻は」 が対比の意味に解され て自然な文となる。さらに、文例 (25i) と (25i') のように、「太郎が」 と 「英 語が」 の両方、あるいは、「象が」 と 「鼻が」 の両方がともに排他の意味に解さ れるのは、文例 (25m) と文例 (25m') の 「太郎は」 と 「英語は」 の両方、およ び、「象は」 と 「鼻は」 の両方がともに主題の意味に解されるのと同じように、 1 つの文の中に 2 つ (あるいは、2 つ) 以上の排他や主題の観点が連続して現 れることになり、読者や聞き手の理解が妨げられるので、不自然・不適格な文 と判断される。一方、文例 (25j) や文例 (25j') のように、2 番目に起こる 「ガ」 格 (すなわち、「英語が」 と 「鼻が」) を排他の意味ではなく、中立の意味に解 したり、文例 (25n) や文例 (25n') のように、2 番目に起こる 「ハ」 格 (すなわ ち、「英語は」 と 「鼻は」) を主題の意味ではなく、対比の意味に解したりすれ ば、排他や主題の複数生起が回避されて自然な文になる。また、文例 (25k) や 文例 (25k') のように、中立の 「ガ」 格の後ろに排他の 「ガ」 格が起こったり、. 58. 文例 (25a) を利用して 「英語」 を排他の意味で表現しようとすれば、排他の 「ガ」 格を使 わずとも、<僅有> の意味を表す取り立て詞の 「だけ」 を使って、「太郎は英語ダケ(が) できる」 のように表現することができる。.

參考文獻

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