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表範圍的複合助詞「ni oite」「ni atte」「ni kakete」「ni watatte」之研究 - 政大學術集成

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(1)國立政治大學日本語文學系 碩士論文. 指導教授:蘇文郎. 政 治 大. 立 「範囲」を表す複合助詞「において」 「にあって」. ‧ 國. 學. 「にかけて」「にわたって」の研究. ‧. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. 研究生:李卓恩. i n U. 撰. 中華民國 104 年 1 月. v.

(2) 要旨. 本論の目的は、現代日本語における「範囲」を表す複合助詞「において」、 「にあって」、 「にかけて」、 「にわたって」を研究対象とし、この四語の動詞の から複合助詞への転化の過程における語彙的意味の変化、および複合助詞とし ての多義性と類義性を明らかにすることを目的とする。 本稿は6章で構成される。まず、第一章は序論で、複合助詞についてその定 義を述べる。第二章では、本論の先行研究と研究課題、および考察に導入する 理論を整理している。第三章では、認知意味論の視点によって、この四語の文 法化、および多義語の意味拡張の仕組みを解明する。第四章では、この四語の. 政 治 大. 統語的特徴から、各語の複合辞としての性格、いわゆる複合辞性の程度を解明 する。第五章では、叙述類型論の視点によって、各語の評価表現としての前件. 立. 名詞の特徴、および後件述語の性質と叙述のタイプを解明する。最後に、第六. ‧ 國. 學. 章は結論である。. 従来の研究では、複合助詞「において」、 「にあって」、 「にかけて」、 「にわた. ‧. って」に対して、文法化による動詞から複合助詞への意味変化に対する記述は 明らかにしていない。また、多義語同士の互いの関連づけ、複合辞性の程度、. y. Nat. sit. 後件述語の性質も解明していない。本論では、認知意味論や叙述類型論の視点. er. io. によって、これらの問題を、評価表現としての特徴とともに明らかにした。文. al. v i n C h 「において」は、元の動詞と意味上の類似 と意味上の類似性があるのに対し、 engchi U 性がない。したがって、複合辞性の程度として、 「にあって」<「にわたって」 n. 法化のタイプとして、「にあって」、「にかけて」、「にわたって」は、元の動詞. <「にかけて」<「において」の順である。また、この四語の後件述語と叙述 のタイプから見れば、「において」は最も差異性、バラエティが豊んでいるこ とがわかる。. キーワード:複合助詞、文法化、多義語、意味拡張、複合辞性、評価、類義性、 叙述のタイプ. I.

(3) 摘要. 本論文將現代日文中表示「範圍」的複合助詞「において」、 「にあって」、 「に かけて」、 「にわたって」作為研究對象,以探究這四個複合助詞由動詞轉變為複 合助詞的過程中所發生的語彙上的意思的變化,以及作為複合助詞,其多義性及 類義性為研究目的。 本論文共六個章節。第一章為序論,說明複合助詞的定義。第二章將本論文 的先行研究與研究課題,以及在考察時所導入的理論做整理。第三章透過認知意 味論的視點,將這四個複合助詞的文法化,以及多義語的意思擴張的結構進行考 察。第四章從語法上的特徵,將這四個複合助詞作為複合詞的特性,也就是複合. 政 治 大. 詞性的程度進行考察。第五章透過敘述類型論的視點,針對這些複合助詞作為評 價表達時其前項名詞的特徵,以及後項述語的性質及敘述的類型進行考察。第六. 立. 章為結論。. ‧ 國. 學. 以往的研究對於複合助詞「において」、 「にあって」、 「にかけて」、 「にわた って」藉由文法化從動詞轉變為複合助詞所產生的意思上的變化並未作詳細記述。. ‧. 此外,也未對多義語之間的關連性、複合詞性的程度、後項述語的性質進行考察。 本論文透過認知意味論及敘述類型論的視點,將以上的問題,與作為評價表達的. y. Nat. sit. 特徵一併進行考察。從考察的結果可得知,從文法化的類型來看,「にあって」、. er. io. 「にかけて」、「にわたって」與原動詞在意思上有其類似性,相較之下,「にお. al. いて」與原動詞之間。因此,其複合詞性的程度上,由高而低的排序為「にあっ. n. v i n Ch て」<「にわたって」<「にかけて」<「において」 。此外,從這些複合助詞 engchi U 的後項術語與敘述的類型來看,「において」的差異性、多樣性的程度最高。 關鍵字 : 複合助詞、文法化、多義語、意思擴張、複合詞性、評價、類義性、 敘述的類型. II.

(4) 致謝 首先感謝任教於政治大學日文系的諸位教授。指導教授蘇文郎老師,在本論文 的撰寫過程中,對於語言學領域的背景知識上的諸多教導及建議。吉田妙子老師 以及王淑琴老師,在研究課題以及研究方法上提供的意見跟指導也給了我很大的 幫助。也感謝東吳大學外國語文學院院長賴錦雀老師,幫助我在語言學領域的知 識奠定基礎。 感謝政治大學以及東吳大學日文研究所的各位同學跟助教,在課業以及學校的 事務上的支持與幫助。特別感謝東吳大學的武田牧人同學,在日文的使用上提供 的指正。. 政 治 大. 最後,感謝家人在生活上的各方面支持,使這份論文得以完成。. 立. ‧. ‧ 國. 學. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. III. i n U. v.

(5) 目次 序論........................................................ 1. 第一章 1.1. 研究動機及び目的.......................................... 1. 1.2. 複合助詞とは何か.......................................... 3. 第二章. 先行研究と問題点 ........................................... 5. 2.1. 鈴木(2007) ................................................. 5. 2.2. 蔦原(1983).............................................. 6. 2.3. Matsumoto(1998)......................................... 6. 2.4. 砂川(2000).............................................. 9. 政 治 大 2.6 研究方法と理論的背景..................................... 10 立 2.6.1 認知意味論....................................... 11. まとめと問題点........................................... 10. 學. ‧ 國. 2.5. 2.6.1.1. 文法化と意味拡張......................... 11. 2.6.1.2. 多義性、プロトタイプとスキーマ........... 12. ‧. 2.6.2 叙述類型論....................................... 15. 2.6.2.2. 叙述のタイプ............................. 17. n. al. 2.6.3.1 2.6.3.2. 第三章. sit. er. 意味分析の方法論............................... 22. io. 2.6.3. y. 評価が成り立つ範囲のタイプ............... 15. Nat. 2.6.2.1. i n U. v. 文脈的作業原則........................... 22. C対照的作業原則 h e n g c h........................... 23 i. 「において」「にあって」「にかけて」「にわたって」の文法化と意味 拡張...................................................... 24. 3.1. 「において」の文法化と意味拡張........................... 24. 3.1.1「置く」から「において」へ......................... 24 3.1.2 「において」の多義性と意味拡張................... 25 3.2. 「にあって」の文法化と意味拡張........................... 31. 3.2.1 「ある」から「にあって」へ........................ 31 3.2.2 「にあって」の多義性と意味拡張................... 32 3.3. 「にかけて」の文法化と意味拡張........................... 36 IV.

(6) 3.3.1. 「かける」から「にかけて」へ..................... 36. 3.3.2 「にかけて」の多義性と意味拡張................... 38 3.4. 「にわたって」の文法化と意味拡張......................... 42. 3.4.1 「わたる」から「にわたって」へ................... 42 3.4.2 「にわたって」の多義性と意味拡張................. 43 第四章. 「において」「にあって」「にかけて」「にわたって」の統語的特徴と 複合辞性の程度............................................ 47. 4.1 連用形になる場合......................................... 47 4.2 文末に来る場合........................................... 48 4.3. 連体修飾節になる場合..................................... 49. 治 政 大 分裂文を使う場合......................................... 51 立 まとめ................................................... 51. 4.3.1 「における」について............................. 50. 4.5. 學. 第五章. ‧ 國. 4.4. 「において」「にあって」「にかけて」「にわたって」の類義性と意味. 先行研究:森田‧松木(1989).............................. 53. sit. 考察の手順....................................... 56. 「において」と「にあって」の比較分析..................... 57. io. 5.1. y. Nat. 5.0.1. al. 5.1.1.1 5.1.1.2 5.1.2. 「において」の用法②..................... 63. 「にあって」の分析............................... 66. 5.1.2.1. 「にあって」の用法①..................... 66. 5.1.2.2. 「にあって」の用法②..................... 69. 5.1.3 5.2. v i n C「において」の用法① h e n g c h i U ..................... 57. 「において」の分析............................... 57. n. 5.1.1. er. 5.0. ‧. 特徴...................................................... 53. まとめ........................................... 70. 「にかけて」と「にわたって」の比較分析................... 74. 5.2.1. 「にかけて」の分析............................... 74. 5.2.1.1. 「にかけて」の用法①..................... 74. 5.2.1.2. 「にかけて」の用法②..................... 78. 5.2.1.3. 「にかけて」の用法③..................... 79 V.

(7) 5.2.2. 「にわたって」の分析............................. 80. 5.2.3. まとめ........................................... 84. 5.2.3.1. 第六章. 問題点の再検討........................... 86. 結論....................................................... 92. 6.1. まとめ................................................... 92. 6.2. 今後の課題............................................... 96. 参考文献........................................................... 99. 立. 政 治 大. ‧. ‧ 國. 學. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. VI. i n U. v.

(8) 第一章 1.1. 序論. 研究動機及び目的. 現代日本語において、範囲を表す表現が多い。例えば、グループジャマシイ 『日本語文型辞典』(1992)によると、範囲を表すものには以下のようなもの があるとされている。. いない 例:十人以内なら乗れます。 うち. 政 治 大. 例:この三曲のうちでどれが一番気に入りましたか。 うちにはいらない. 立. 例:通勤の行き帰りに駅まで歩くだけでは、運動するうちに入らない。. ‧ 國. 學. なか. 例:部屋の中にはだれがいるの。. ‧. きり. 例:ふたりきりで話しあった。. y. Nat. sit. から…にかけて…. al. er. io. 例:台風は今晩から明日にかけて上陸するもようです。. v. n. 北陸から東北にかけての一帯が大雪の被害に見舞われた。 から…まで…. Ch. engchi. i n U. 例:ここから目的地までは 10 キロほどあります。 10 日から 15 日まで休みます。 にいたるまで 例:旅行中に買ったものからハンドバックの中身に至るまで、厳しく調べら れた。 にわたって 例:この研究グループは水質汚染の調査を 10 年にわたって続けてきた。 首相はヨーロッパからアメリカ大陸まで八カ国にわたって訪問し、経済 問題についての理解を求めた。 にわたり 例:話し合いは数回にわたり、最終的には和解した。 1.

(9) る/…ている. かぎり. 例:この山小屋にいる限りは安全だろう。. また、以下の「期間」 「限界」 「場合‧状況」を示す用法にも、 「範囲」を表す 機能があると考えられる。. あいだ(間):期間 例:ステレオと本棚の間にテレビを置いた。 かぎり:限界 例:限りある資源を大切にしよう。 において:場合‧状況‧(領域). 政 治 大. 例:卒業式は大講堂において行われた。. 立. その時代において、女性が学問を志すのは珍しいことであった。. ‧ 國. 學. 絵付けの技術において彼にかようものはいない。 にあって:場合‧状況. ‧. 例:異国の地にあって、仕事を探すこともままならない。. いつ戦争が起こるか知れない状況にあっては、明るい未来を思い描くこ. y. Nat. er. io. al. sit. となどできない。. v. n. これらの範囲を示すものは、品詞によっておおよそ以下のように分類するこ とができる。. 名詞で表すもの:. Ch. engchi. i n U. いない/うち/きり なか/あいだ/かぎり. 複合助詞で表すもの:. から…にかけて…1/にいたるまで、 にわたって(にわたり) において/にあって. 1. 『日本語文型辞典』(1992)でば、「にかけて」は、「から」と共起して固定形式化したもの. であり、文型で表すものであるが、ここでは、「において」「にあって」「にわたって」ととも に複合助詞にしておく。 2.

(10) 文型で表すもの:. から…まで… うちにはいらない ~かぎり. 以上の整理は、現代日本語における範囲表現には、「複合助詞」というもの がいくつ存在することを示している。 本研究は主に現代日本語における範囲表現として用いられる「において」 「に あって」「にかけて」「にわたって」の四つの複合助詞を研究対象とする2。そ して、それぞれの実質的な意味を持つ動詞としての用法から、文法的機能を持. 政 治 大. つ複合辞的用法への転化などの諸現象を考察することによって、次のようなも のを明らかにすることを目的とする。. 立. ①動詞の、複合助詞への転化の過程における語彙的意味の変化。. 2.1.1. 複合助詞とは何か. Nat. y. ‧. ‧ 國. ③複合助詞の類義性。. 學. ②複合助詞の多義性。. sit. 前節で整理した現代日本語における範囲表現では、「において」「にあって」. al. er. io. 「にかけて」「にわたって」などのような「複合助詞」がいくつかある。三宅 (2005)3により、これらの複合助詞は、内容語(content word)としての動. n. v i n Ch 詞が、機能語(functional word/grammatical U e n g c h iword)としての性格を持つもの. に変化する現象、いわゆる文法化(grammaticalization)の過程を経て生まれ. たものである。また、複合助詞の定義として、砂川(1987)は「複合助詞とは、 複数の語が結び合わさって、全体として1語の助詞に準ずる機能を果たすよう になった連語のこと」と説明していて、また、語構成からみて、複合助詞は大. 2. これらの複合助詞では、 「にいたるまで」のみ「格助詞(に)+動詞テ形」の形式ではないた. め、本研究では考察の対象外にしておく。 3. 三宅(2005)にも以下のようなものを指摘している。 本来、動詞であったものから固定的な形をとることによって作られた、一般に「複合格助詞」 などと呼ばれる一群の形式がある(鈴木(1972)、塚本(1991)等)。例えば次のようなもので ある。 (34)~において、~について、~によって、~にとって、~に対して、~に関して、 ~に際して、~に限って、~をめぐって、~をもって、… 3.

(11) きく次の二つに分けることができる。. (a)動詞や名詞など、実質的な意味を持つ語が、実質的意味を失い、形態 的に固定化して助詞と同じような機能を果たすようになったもの。例え ば、「として」「だけあって」「たびに」などである。 (b)複数の助詞が結合して1語の助詞相当になったもの。例えば、「からに は」「だけに」などがある。. 以上から見れば、範囲表現の「において」「にあって」「にかけて」「にわた って」などは(a)に属し、動詞と格助詞が一つの単位として結合したもので. 政 治 大. ある。 「において」 「にあって」 「にかけて」 「にわたって」が全て「格助詞(に) +動詞テ形」の形式である。これらの語が、文中で格助詞と相当する機能を持. 立. つため、「複合格助詞」ともいう。. ‧. ‧ 國. 學. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. 4. i n U. v.

(12) 第二章 2.1. 先行研究と問題点. 鈴木(2007). 鈴木(2007)の『複合助詞がこれでわかる』における「において」と「に わたって」の意味と用法の記述により、 「において」と「にわたって」はとも に複数の用法や意味を持ち、多義性が観察できる。. ‧「において」 「X において Y」には、大きく以下の二つの用法に分けられる。 用法1:X という「場」で、Y という対象が起こる、あるいは Y という状態. 政 治 大. が存在する。前件名詞 X により、以下の四つのタイプに分類できる。 ①空間的場所. 立. 例:学生寮において発生した暴力事件の報告書が提出された。. ‧ 國. 學. ②時間的場所. 例:江戸時代において、庶民文化は大きく花開いた。. ‧. ③限定された範囲. 例:就職戦線において、インターネットが大きな役割を果たすようになっ. y. Nat. er. io. ④場面‧状況. sit. てきた。. al. v i n Ch 用法2:Y がある事象に対して評価‧判断を示すもので、X が「その評価‧判断 engchi U があてはまる範囲」を表す。 n. 例:取り調べにおいて、重大な事実が明らかになった。. 例:この技術において、彼の右に出る者はいない。. ‧「にわたって」 「X にわたって Y」には、Y という動作や状態が継続した期間や距離 X ガ大 きいという話し手の評価を表す。前件名詞 X により、以下の四つのタイプに分 類できる。 ①期間を表す 例:首相は米大統領と 45 分にわたって電話で会談した。 ②距離‧面積を表す 例:飛行機の翼には 2m にわたって亀裂が入っていた。 5.

(13) ③領域‧項目を表す 例:事件について 100 ページにわたって詳述した。 ④回数を表す 例:関係者から数回にわたって事情を聴取する。. 2.2. 蔦原(1983). 蔦原(1983)では、動詞の「かける」が元々、「A から B に橋をかける」と いったように、ある点から他の点に作用を及ぼすという意味をしている。こ ういう使い方から、以下の(1)と(2)のように「空間的、或いは時間的 にある点からある点まで及んで」の意味を表す「にかけて」といういい方が 生じたものである。. 政 治 大. (1)財前の眼に鋭い光が増し、右手に円刃刀を握って患者の胸部へ近づけ. 立. たかと思うと、胸から腹部にかけて切開した。. ‧ 國. 學. (2)宇井の衰弱は日を追って強まっていた。三月から四月にかけて癌細胞 は着実に宇井の体内で増殖し、侵蝕していくようであった。. ‧. また、他の類似表現として、以下のものがある。. ‧「~にかけて(は)」:「~に関しては」「~については」という意味で、「~. y. Nat. sit. にかけては、~どうどうだ」というように使われる。. er. io. (3)今泉見習士官は水泳にかけては自信があります。おまかせ下さい。. al. v i n Ch 失わないために、どうどうする」というようなニュア engchi U ンスが加わる。. n. ‧「~にかけて(も)」 : 「~ということに関しても」の意味を表す上に、 「~を. (4)第五連隊としてこれ以上の遅延は如何なることがあってもできないの だ。それは第五連隊の名誉にかけても、彼の軍人としての名誉にかけ てもできないことなのだ。 以上のように、 「にかけて」が元の動詞「かける」とは意味の関連性があり、 それ以上、複合助詞自身の多義性も観察できる。これは、文法化及び意味拡 張の視点によって深く探究する必要があると思われる。. 2.3. Matsumoto(1998). Matsumoto(1998)では、ヨーロッパ系と西アフリカ系の言語における文法 化の形式を提示し、この二形式がともに、日本語における動詞から複合助詞へ 6.

(14) の文法化にも観察できる。 ヨーロッパ系の言語における動詞から後置詞への文法化について、以下のよ うに記述している。. In European language, relatively specific verbs(in many cases in their participial from)have grammaticalized into adpositions having rather specific functions, and the semantic change involved is largely based on similarity of meaning(Kortmann and König 1992)…Many of the semantic change involved in Japanese complex adpositions do involved similarity of meanings (metaphor), with highly specific verbs as sources, …In all. 政 治 (Matsumoto 大 (1998)p. 34-36). of these cases in Japanese, process described by verbs have turned into metaphorically related relations.. 立. ‧ 國. 學. ヨーロッパ系の言語では、動詞がより特定の機能を持つ後置詞に変化する場 合、意味変化が二語における意味の類似性による。日本語における多くの複合. ‧. 助詞がこのタイプのように、元の動詞とはその意味と用法に類似性があり、二 語にはメタファー的な関係(metaphorically related relations)がある。例. y. Nat. er. io. 〈表 1〉. sit. として以下の表に示しておく。. -about. について. ACCOMPANIMENT. CORRELATION. ni turete. with. -take as a. -in accordance with につれて. CONTACT. n. similar example. -stick to(つく). meaning item v a target i l C n ABOUTNESS h e n g c h iniUtuite. source meaning. Companion(つれる) MOTION,ATTRIBUTION. CAUSE,MEANS. ni yotte. -come near be. -due to/. によって. attributed to(よる) by means of POSITIONING. EXTENT. ni kakete. -hang(かける). -extending through. にかけて. 7. touching/on.

(15) また、例えば「際する→に際して(be on the occasion of→ on the occasion of)」、「関する→に関して(concern→ concerning about)」などのように、動 詞と複合助詞における意味変化が顕著でなく、意味の類似性がより高いものも あり、これにより、同じく複合助詞であっても、その間に複合辞性の程度が異 なっていることが観察できる。 もう一つのタイプとして、Matsumoto(1998)が以下のように述べている。. …in this case the grammaticalized result is a marker of a semantic role that was subcategorized for by the source verb itself. That is, a verb subcategorizing for beneficiary has itself become a marker of that role. 政 治 大. for the main predicate. …locative markers typically develop from verbs meaning[be-at][stay]and [sit],which takes a locative argument4,…Another. 立. such example is ni oite [ni,at]. This adposition has developed from the. ‧ 國. 學. verb oku [put], which takes a locative argument.. (Matsumoto(1998)p.37-38). ‧. 以上のことを動詞から複合助詞への文法化に即して考えると、この場合、メ. y. Nat. sit. タファーによらず、動詞自身が下位範疇5化をし、文における意味的機能を持. er. io. 「置く」と「において」がその一例 つマーカー6として複合助詞になるもので、. al. である。 「場所」のマーカーが一般的に場所の「項」7(argument)を持つもの. n. v i n Ch から変化したのように、「置く」が意味的機能を持つマーカーになるために、 engchi U 下位範疇化をして「において」に変化した、この場合、「において」が場所の 4. Matsumoto(1998)が Givón(1975)、Heine,Claudi,and Hünnemeyer(1991)から参照のこ. と。この類の文法化が、西アフリカ系および東南アジア系の言語にはよく見られる。 5. 下位範疇(subcategorization):例えば「鶏」「スズメ」が「鳥」の下位範疇のように、複. 合助詞が下位範疇として、上位範疇の動詞の中に含まれる。下位範疇化(subcategorize)と は、上位範疇が自らを降格して下位範疇になる(動詞から複合助詞に変化する)ことである。 6. マーカー(marker):語や文に付いたりそれらを変更したりすることによって文法的機能を. 示すもの。「標識」と言うこともある。 7. 項(argument):統語論の用語。語彙項目の持つ意味特性である。 8.

(16) マーカーとして、場所の項を持つ「置く」から変化し、両方が「場所」の意味 特徴を共有しているが、この二語には意味上の類似性がない8。. 2.4. 砂川(2000). Heine,Claudi,and Hünnemeyer(1991)の文法化理論では、空間から時間へ の写像、いわゆる意味の抽象化が指摘される。これについて、砂川(2000)は、 動詞の意味変化として、空間概念に関わる実質的な意味が時間的な意味に写し 変えられていく、または実質的な意味が薄れ、動きの表す過程的な意味が残さ れ、さらには、その過程的な意味さえ失い、二つの出来事の時間的な関係しか 表さないようになるものがあると指摘している。これにより、 「において」 「に. 政 治 大. わたって」など時空間範囲を示す多義語には連続性があると考えられる。 以下では、砂川(2000)の記述から、本研究の研究対象とする「において」、. 立. 「にあって」、 「にかけて」、 「にわたって」に集約してその意味変化を示してお. 時間へ. 調査の過程において様々なこと. において. →生起時点. が明らかになった。. [存在]. [同時点]. 存在場所. 死の間際にあっても、子供たち. ある. にあって. →. io. の幸福を願い続けた。 a l→生起時点 v i n Ch 設置場所 i U e n g c h台風は今晩から明日の朝にかけ. n. →. y. 設置場所. sit. おく. 用例. er. [同時点]. Nat. [設置]. 意味関係の変化. ‧. 空間から. ‧ 國. 〈表2〉. 學. く。. [設置]. [期間]. かける→. にかけて. [移動]. [期間]. わたる→. にわたって →経過点. →到達点?9. て上陸するもようです。. 通過点?. この研究グループは水質汚染の 調査を 10 年にわたって続けて きた。. 以上のように、文法化によって、「において」と「にあって」はともに「同. 8. 他の例として、 「所有(have、take)」を表す「持つ」から、 「手段(instrument) 」を表す「を. もって」への文法化もこのタイプに属す。 9. 「?」は砂川(2000)がつけるもので、ここでは先行研究の整理を忠実にして示しておく。 9.

(17) 時点」を表す機能をもつようになり、また、「にかけて」と「にわたって」は ともに「期間」を表す機能をもつようになった。このように、これらの複合助 詞同士の間には、類義性10があるのではないかと思われる。. 2.5. まとめと問題点. 以上の先行研究から観察された問題点として、以下の①~⑤のようにまと めておく。 ①これらの複合助詞は動詞から変化したものであるが、その変化の過程にお ける実質語的性質の喪失および機能語的性質の獲得については明らかにし ていない。. 政 治 大. ②鈴木(2007)では、これらの複合助詞の多義性が観察できるが、どのよう にこの多義的用法を獲得するか、あるいは多義的用法の意味拡張の仕組み. 立. については説明していない。. ‧ 國. 學. ③鈴木(2007)と蔦原(1983)では、それぞれ「において」と「にかけて」 の、時空間範囲を表す用法の以外に、「~に関しては」「~については」の. ‧. 意味のように、後件内容のその評価‧判断があてはまる範囲を表す用法があ ることを提示しているが、その前件名詞について、その特徴はまだはっき. y. Nat. sit. りしていない。. er. io. ④Matsumoto(1998)では、同じく複合助詞であっても、文法化の程度は異な. al. v i n Ch って」の文法化の程度はまだ明らかにされていない。 e n g c h i U 、それらの複合助詞の 構文的特徴を明らかにするために、元の動詞としての性格を考察する必要 n. っていると指摘しているが、「において」「にあって」「にかけて」「にわた. があると思われる。 ⑤砂川(2000)は、 「において」と「にあって」、 「にかけて」と「にわたって」 は、元の動詞の段階では意味は異なっているが、文法化を経て類義性が生 じることが触れられている。ただし、類義語同士の異同点、特に後件述部 の特徴について、先行研究ではあまり触れられていない。. 10. 例えば森田‧松木(1989)では、「において」と「にあって」は同様に動作や作用の行われ. る時(機会)‧場所‧状況(場合)を示すものとし、文脈によって互いに置き換えることができ る。「にかけて」と「にわたって」も同じく起点‧終点‧範囲を示すものとしている。 10.

(18) 2.6. 研究方法と理論的背景. 本研究のデータは、 「中納言」KOTONOHA「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 から収集する。研究対象の複合助詞と、元の動詞の意味と用法を比較し、各 語の文法化、及び複合助詞としての意味拡張の仕組みを考察し、そして、各 語の文法化の程度や、類義用法の異同点も考えてみたい。なお、前節では先 行研究を通していくつの問題点を示したが、本研究では、これらの問題に関 する以下のような認知意味論や叙述類型論の概念を導入し、さらには意味分 析の方法論によって分析する。. 2.6.1. 認知意味論. 政 治 大. 問題点の①、②と④について、「において」、「にあって」、「にかけて」、「に わたって」の文法化の過程における意味変化、多義語としての意味拡張、及び. 立. 文法化の程度を解明するために、本研究では、以下の認知意味論についての理. ‧ 國. 學. 論を導入して考察したい。. 文法化と意味拡張. ‧. 2.6.1.1. 文法化(grammaticalization)とは何かというと、概ね以下のように定義する. al. er. io. sit. y. Nat. ことができる。. v. n. 本来語彙的な要素だったものが、通時的な過程の中で文法的な要素へと発展 していく現象である。. Ch. engchi. i n U. (cf. Heine et al.1991, Hopper&Traugott 1993, Bybee et al.1994, Heine 1997b, Haspelmath 1999,Traugott&Dasher 2002,秋元 2001,籾山‧深田 2003). また、語彙的要素には、名詞、動詞、形容詞、などの内容語(content word) が、文法的な要素には、文中で何らかの文法的な役割を果たす要素、例えば、 前置詞や助動詞、または本研究の研究対象とする複合助詞(後置詞)などの機 能語(function word)や接辞、などが含まれる11。 そして、文法化には、 「脱範疇化(decategorization)12」と「漂白化(bleaching)」 11. 12. 山梨‧深田‧仲本(2008)を参照。 Heine and Traugott(1993)が提示した文法化の不可逆性(irreversibility)の原理の一 11.

(19) という二つが側面を合わせて存在している。三宅(2005)が提示した内容語か ら機能語に変化するというような品詞転換には、「脱範疇化」が観察される。 脱範疇化とは、内容語がその形態的、統語的特徴を失い、逆に機能語の働きを 獲得するようになることであり、日本語の複合助詞に即して言えば、内容語と しての動詞が、格助詞のような機能を持つ複合助詞に転化すると考えられる。 また、漂白化とは、意味が抽象化、希薄化という意味の弱化、あるいは消失の ことであるが、意味が完全に消失してしまうことはなく、ある程度保持されて いる、ということである。 また、「抽象化(metaphorical extension)」というと、これは Heine, Claudi,and Hünnemeyer(1991)によって提唱されたもので、抽象化において、. 政 治 大. 「人>もの>過程>空間>時間>質」という順に、意味は具体から抽象へと変 化し、具体的な意味がなくなる代わりに抽象的な意味が現れるものである13。. 立. これは、砂川(2000)では中心となった空間から時間への写像で、例えば「に. ‧ 國. 學. わたって」に即して考えると、 「距離‧面積」という〈空間的範囲〉から「期間」 という〈時間的範囲〉へと、意味拡張(semantic extension)をし、結局、 「に. ‧. わたって」の多義性が達成されていることである。また、このような空間から 時間への抽象化の以外に、例えば日野(2001)では、「物理的>心理的」のよ. y. Nat. al. n. 多義性、プロトタイプとスキーマ. Ch. engchi. er. io. 2.6.1.2. sit. うに抽象度の順位づけも提示している14。. i n U. v. つで、他には「一般化(generalization)」、 「重層化(layering)」、 「保持化(persistence)」、 「分岐化(divergence)」、 「特殊化(specialization)」、 「再新化(renewal)」などがある。(秋 元(2002)を参照) 13. 日野(2001)を参照。. 14. 「物理的」から「心理的」への抽象化の例として、日野(2001)は、「する」の文法化を、. 以下の例を挙げて指摘している。 (a)のぼり立ち. 国見をすれば…(万葉-1-2). (b)太郎が行くとすれば、僕は行かない (c)もしそうだとすると… 日野(2001)は、 (a)の「する」は「見る」という目に見える動作を表すので「物理的」、 (b) と(c)の「とすれば」と「とすると」の「する」は「推測する」という意味なので「心理的」 である、としている。 12.

(20) 例えば「にわたって」のように、一つの言語形式が「期間、距離‧面積、領 域‧項目、回数」のような二つ以上の意味を持つことを多義性(polysemy)と 呼び、「にわたって」は多義語である。本研究は、多義語分析の方法として、 瀬戸(2007)、籾山‧深田(2003)を参考にして、以下の五点を設定する。. ①プロトタイプ的意味の認定:籾山‧深田(2003)では、多義語の複数の意味 全体を一つのカテゴリーと考えた場合、そのカテゴリーを構成する個々の要 素、すなわち個々の意味は、全て同等の重要性を持つのではなく、何らかの 意味で優劣がある。こういうことを前提とし、プロトタイプ(prototype) 的意味とは、ある意味カテゴリーに属するメンバーの中では、最も基本的で. 政 治 大. あり、慣習化の程度‧認知的際だち(cognitive prominence/cognitive salience)が高く、また、最初に習得され、中立的なコンテクストで最も活. 立. 性化されやすいといった特徴を備えたものである。. ‧ 國. 學. ②各別義の認定:これは、何を持って一つの意義と見なすか、という問題であ. ‧. る。瀬戸(2007)では、この「意義の認定」には、 (i)ひとつの意義のなか に明らかに領域(domain)が異なるものを混在させてはならない、(ⅱ)単. y. Nat. sit. なる文脈的ゆれ(contextual fluctuation)にすぎないものを別の意義と認. er. io. 定してはならない。ここで注目したいのは(i)で、瀬戸(2007)によると、. al. v i n Ch 別な領域に属するので意義を分けるべきである。これにより、本研究では、 engchi U 多義語の各用法、特に時空間概念を表すものを、その前件名詞の性質によっ n. 例えば、healthy の「<身体が>健康な」と「<社会が>健全な」の意義は、. てさらに意義を分ける。例えば「において」の「範囲」を表す場合、前件名 詞の性質を意味素性(semantic feature)15として〈. 〉に入れて、 〈空間的. 範囲〉、〈場面的範囲〉そして〈時間的範囲〉などの別義とする16。. 15. 意味素性(semantic feature):語彙意味論(Lexical semantics)の用語で、語彙項目の意. 味上の特性である。池上(1975)ではそれは「意味特徴」と言い、その言語において有意義な 最小の単位(その言語において示差的な機能を担いうる限りにおいての単位)である。 16. 籾山(1992)から参考したものである。籾山(1992)は、この方法によって時空間範囲を表. す「ところ」を五つの多義的用法に分けている。 13.

(21) ③各別義の関連:籾山‧深田(2003)によると、多義語の複数の意味には相互 に何らかの関連が認められるのであるから、個々の多義語の分析にあたり、 その関連の実態を明らかにし、さらに、複数の意味の間に一般にどのような 種類の関連が認められるかということを明らかにする必要がある。また、意 味の拡張を生じさせる比喩として、以下の三つのメガニズム17が複数の意味 を関連付けるには重要である。 メタファー(隠喩;metaphor) :二つの事物‧概念の何らかの類似性に基づい て、一方の事物‧概念を表す形式を用いて、他方の事物‧概念を 表す比喩。 メトニミー(換喩;metonymy):二つの事物の外界における隣接性、さらに広. 政 治 大. く二つの事物‧概念の思考内、概念上の関連性に基づいて、一 方の事物‧概念を表す形式を用いて、他方の事物‧概念を表す比. 立. 喩。. ‧ 國. 學. シネクドキー(提喩;synechdoche):より一般的な意味をもつ形式を用いて、 より特殊な意味を表す、あるいは逆に特殊な意味をもつ形式を. Nat. y. ‧. 用いて、より一般的な意味を表す比喩。. sit. ④各別義の配列:瀬戸(2007)によると、多義語の各別義の配列は、「具象義. al. er. io. から抽象義へ」、 「知覚感覚的意義から認識的な意義へ」、 「身体的意義から精. v i n C h では、「において」 例えば『日本語文型辞典』 (1998) e n g c h i U が出来事が起こったり、 ある状態が存在したりするときの背景を表す用法と、 「それに関して」 「その n. 神的な意義へ」などの原則に従うのである。本研究は瀬戸(2007)に従い、. 点で」という意味を表す用法があり、前者は客観的‧具体的な概念を表すも のであるため、配列順序が先であり、これに対し、後者は話者の主観的認識 で抽象的な概念を表すものであるため、後に置く。. ⑤複数の意味の全てを統括するモデル‧枠組みの解明:多義的意味の相互関係、 および多義構造全体における個々の意味の位置づけを明示することである。 多義語のネットワークモデルはいくつかがあり18、この中で、Langacker(1987) 17. 18. メタファー、メトニミー、シネクドキーの定義は、籾山(2002)を参照。 籾山‧深田(2003)では、先行研究を踏まえ、「集合体に基づくモデル」、「イメージ‧スキー 14.

(22) は、プロトタイプと拡張事例の共通性、いわゆるスキーマを抽出することを 提示している。それは、同一カテゴリーでは、プロトタイプから拡張したの は拡張事例(extension)であり、プロトタイプと拡張事例の間に抽出する 共通性はスキーマ(schema)である。図示すれば以下のようになる。. スキーマ (シネクドキー). 具体化. (シネクドキー). プロトタイプ事例. 拡張事例. 拡張(抽象化)(メタファー). 政 治 大. 以上の Langacker(1987)のネットワークモデルでは、実線の矢印はスキー. 立. マ関係(シネクドキーに基づく意味の拡張)を表し、カテゴリーの成員は全て. ‧ 國. 學. 何らかの抽象的なスキーマを具体化(instantiate)したものである。その一 方、破線の矢印は拡張関係(メタファーに基づく意味の拡張)を表し、また、. ‧. プロトタイプと拡張事例は完全に一致するわけではなく、部分的な共通性に基 づいて関連づけられている。本研究は、スキーマを抽出することが目的である. y. Nat. n. al. er. io. 考え方を用いる。. sit. ため、Langacker(1987)に従い、このスキーマに基づくカテゴリー化という. 2.6.2. 叙述類型論. Ch. engchi. i n U. v. 問題点の④について、 「において」、 「にあって」、 「にかけて」、 「にわたって」 の各複合助詞の意味特徴及び類義語としての異同点を探るために、本研究では、 その評価が成り立つ範囲としての前件名詞の性質と、これらの複合助詞の後件 にくる述語の性質、というこの二点に注目し、以下の叙述類型論についての理 論を導入して考察したい。. 2.6.2.1. 評価が成り立つ範囲のタイプ. マに基づくネットワーク‧モデル」 「拡張とスキーマ基づくネットワーク‧モデル」 「現象素に基 づくモデル」 「ネットワークと現象素を統合したモデル」の五つの多義語のネットワーク‧モデ ルを示している。 15.

(23) 「評価」とは何かというと、樋口(2001)は以下のように定義している。. 形容詞が人や物の特性をさししめすとき、さししめされる特性はそれらに 客観的にそなわっている特徴としてさしだされる一方で、なんらかの基準との 比較のなかでもとらえられてもいる。この基準と比較することによって、物が 他の物との関係のなかでもつ意義があきらかにされたり、それが人間の欲求、 利害、目的とかかわってもつ意義があきらかにされたりするのだが、このよう な、物の意義をあきらかにする、人間の意識的な活動のことを《評価》をよぶ ことにする。. (43 ページ). 政 治 大. また、八亀(2012)では、評価が成り立つ範囲の絞り込みの形式によって、以 下のように五つのタイプを整理している。. 立. ‧ 國. 學. ①評価主体の絞込み. 評価が、ある評価者(個人のこともあり、ある一定のグループのこともあ. ‧. る)に限定される評価である。評価が個人的なもの、またはそのグループに 属する人たちにとっての評価が表現されると同時に、 「個人の質」または「そ. y. Nat. sit. のように評価する人々(集団‧文化など)の質」も表現されている。. er. io. 例:僕のようなフィギュア好きには秋葉原はおもしろい。. al. n. v i n Ch ある特定の視点や立場、文脈においてのみ有効となる評価である。多くは engchi U 先の文脈で示された流れに立って評価をすれば、誰でもそのような評価にな. ②視点の絞込み. る、ということを明示している。 例:そういう意味では、この場所は重要だ。 ③側面の絞込み ある部分(集合)については有効となる評価であることを示す。ある具体 的な側面やある部分に着目すると、このような評価になるもので、その評価 が、評価対象の全体に及ぶものではなく、ある特定の側面や部分を対象に行 われていることを明示している。 例:山田くんは、会計処理については完璧だ。 ④成り立つ状況の絞込み ある特定の状況下でのみ有効となる評価であることを明示する表現で、そ 16.

(24) の状況は、具体的なものや抽象的なものもある。 例:日本では夏は蒸し暑い。 ⑤成り立つ条件の絞込み ある一定の条件のもとでのみ、有効な評価であることを明示する表現であ る。さまざまな条件表現が用いられる。 例:資格さえあれば、就職は簡単だ。. 以上の①~⑤では、後件の述部は全て評価の意味を持つが、評価が成り立つ 範囲の性質が異なっている。本研究の考察対象の複合助詞に即して考えれば、 後件の述部が評価の意味を表す場合、前件名詞がその評価が成り立つ範囲とし. 政 治 大. ている。本研究は、八亀(2012)の分類に踏まえ、評価表現として、複合助詞 の各用法の前件名詞にくるものの性質を考えてみたい。. 立. 叙述のタイプ. ‧ 國. 學. 2.6.2.2. (2014) 本研究では、以下の仁田(2001)と影山(2008)、そして工藤(1995)、. ‧. の理論を導入し、複合助詞の後件の述部について考察したい。. y. Nat. sit. ①仁田(2001)と影山(2008). er. io. 文は大きく、「命題(言表事態)」と「モダリティ(言表態度)」という二つ. al. v i n Ch 現実との関わりにおいて描き取ったひとまとまりの事態、文の客体化‧対象化 engchi U された内容である出来事‧事柄を表した部分である、と述べていて、さらには、 n. の部分に分かたれ、仁田(2001)では、命題とは、話し手が外界や内面世界、. その命題を大きく「動き(主体運動‧主体変化)」、 「状態」、 「属性」といった三 つに分けていて、それぞれ以下のように規定する。. 〈動き〉:ある一定の具体的な時間の流れの中に始まり展開し終わる…展開が 瞬時で、始まりと終わりが同時的である、というものも含めて…、と いうあり方で、具体的な物(人をも含めて)の上に発生‧存在する事 態である。さらには、主体に残る動きの結果の局面を有していない「主 体運動」と、主体に残る動きの結果の局面を有している「主体変化」 に分けられる。 例:今から彼は手紙を書く。/さっき彼は手紙を書いた。 (主体運動) 17.

(25) あっ、ザイルが切れる。/あっ、ザイルが切れた。(主体変化) 〈状態〉 :限定を受けた一時的な時間帯の中に出現‧存在する、物の、展開して いかない…言い換えれば、その時間帯は続く…同質的な一様なありよ う‧あり様である。 例:今この部屋に人がたくさんいる。/さっきこの部屋に人がたくさ んいた。 目が痛い。/さっき目が痛かった。 最近彼がとてもいとおしい。/結婚したての頃は彼がとてもいと おしかった。 〈属性〉:時間的限定を持たない、したがって恒常的に物に存在する、物の同. 政 治 大. 質的なありよう‧あり様である。. 例:A 先生は学生にとても{厳しい/厳しかった}。. 立. 彼はとても早く{走る/走った}。. ‧ 國. 學. 北海道の冬は寒い。 彼は北海道生まれだ。. ‧. また、仁田(2001)によると、以上の「動き」、 「状態」、 「属性」の異同点と. y. Nat. sit. して、 「動き」と「状態」は共に特定の時間の中に出現する事態であるが、 「動. er. io. き」が、発生‧展開‧終了という内的な展開過程を有しているのに対し、 「状態」. al. v i n Ch 開し終わっていく、という時間的な展開過程を有しているからではなく、同質 engchi U なあり様が時間的限定性を持って出現‧展開するに過ぎないのである。その一 n. は、その状態の内実である物のあり様自体が、ある時間の流れの中で始まり展. 方、 「状態」と「属性」は共に同質的で一様なあり様を示すのであるが、 「状態」 が時間的限定性を有するのに対し、「属性」はそれがない。 そして、影山(2008)では、言語の情報の伝達機能には二種類が認められる。 一つは、現実あるいは架空の世界において特定の時間と空間で展開する出来事 ないし状態を表現することで、「事象叙述(Event Predication)」である。こ れに対し、時間の流れに左右されない固定的な状態を表すもの、いわゆる主語 ないし主題の永続的な性質を描写する状態文は、「属性叙述(Property Predication)」である。影山(2008)は、この叙述のタイプを以下のようにま とめている。 18.

(26) 〈表3〉:影山(2008)による叙述のタイプ 叙述の. 事象叙述. 属性叙述. タイプ. 開始‧終了の時間を明示できる. 開始‧終了の時間を明示できない. 出来事 例示. 状態. 準属性. (内在的)属性. 彼は 2003 年に大. 彼は 1997 年から. 彼は(ふだんは). 彼は(*ふだんは). 学を卒業した。. 2005 年まで学生/. 愛想がよい。. 長身だ。. 彼女は 5 年間その. 高校教師/弁護士. 彼は(ふだんは). 彼は天然ボケだ。. 会社で働いた。. だった。. 善人だが…. ゾウは鼻が長い。. 彼は、学生/高校教. うちの息子はよい. 政 治 大. 師弁護師をしてい た。. 立. 子です。. 彼は病気だ/裸足. ‧ 國. e(event). 學. 事象項. だ。 e(state). e^. p(property). ‧. 影山(2008)によると、事象叙述では、活動(activity) 、達成(accomplishment)、. y. Nat. sit. 到達(achievement) 、過程(process)などの事態、いわゆる「出来事(event)」. er. io. のほかに、 「状態(state)」も含まれる。一方、属性叙述では、以上のように、. al. v i n Ch property)」であり、そういった副詞が排除されれば純然たる(内在的)属性 engchi U n. 「ふだんは」のような時間的変動を含意する表現が付けば「準属性(quasi-. ((intrinsic)property)である。また、事象叙述での「状態」は、属性叙述 と同じく状態述語であるが、前者は「場面レベル述語(stage-level states)」 で「一時的状態」を表すのに対し、後者は「個体レベル述語(individual-level states)」で「恒常的属性」を表す19。また、これにより、仁田(2001)の「動 き」は、影山(2008)の「出来事」に当たり、「動き」と「状態」は共に時間 的限定性を持つ「事象叙述」に属し、これに対し、「属性」は時間的限定性が ない永続的な性質を描写する「属性叙述」である。 つまり、本研究では、複合助詞の各用法の後件述語に対して、まず仁田(2001). 19. Carson (1980)、Krifka et al.(1995)を参照。 19.

(27) の分類に踏まえ、「動き」、「状態」、「属性」などの述語の性質を考察し、そし て、影山(2008)20によって事象叙述か属性叙述かのようにその叙述のタイプ を考えてみたい。. ②工藤(1995)、(2014) 工藤(1995)では、日本語の動詞を、時間の中に成立(開始)‧展開‧消滅(終 了)し、場合によっては、結果を残す、ものの動態的な運動を捉えている「外 的運動動詞(dynamic verb)」、思考‧感情‧知覚‧感覚という人の内的事象21を捉 えている「内的情態動詞」、そして時間のなかへの現象を問題にしえない、ま たは時間のなかに現象したとしても、時間的展開性のない22「静態動詞(static. 政 治 大. verb)」、という3グループに分けている。また、工藤(1995)は、外的運動動 詞を、 〈動作〉か〈変化〉かという観点と、 〈主体〉か〈客体〉かという観点を. 立. 組み合わせ、大きく次のように3分類できることになる、としている。. ‧ 國. 學. ①主体動作‧客体変化動詞:主体の観点からは動作を、客体の観点からは変化. ‧. を捉えていて、全て他動詞であり、そのゆえに、能動と受動の対立があり、 能動では〈動作継続〉を表すのに対し、受動では〈結果継続〉を表す。. y. Nat. sit. 例:開ける、折る、曲げる、並べる、出す、運ぶ、作る. er. io. ②主体変化動詞:基本的に自動詞であり、〈結果継続〉を表す。. al. v i n Ch ③主体動作動詞:自動詞でも他動詞でもあり、動作のみを捉えているもので、 engchi U 他動詞の場合、「回す、動かす、揺らす」のように客体の観点からいっても n. 例:開く、折れる、曲がる、並ぶ、出る、行く、立つ、就職する. 動作(動き)を捉えているか、「打つ、蹴る、押す」のように客体への接触 を捉えているだけであるので、能動―受動の対立がアスペクト的意味の違い. 20. 影山(2008)では、属性叙述をさらに「準属性」と「(内在的)属性」に分けているが、本. 研究では両方共に「属性叙述」にする。 21. 例えば「思う」 (思考)、 「恐れる」 (感情)、 「聞こえる」 (知覚)、 「痛む」 (感覚)などである。. 22. 前者は、例えば「異なる、意味する」や「甘すぎる、優れている」のような〈関係‧特性〉. を捉えているもので、後者は、例えば「いる、存在する」や「そびえている、面している」の ような〈存在‧空間的配置〉を捉えているものである。 20.

(28) に結びつかず、どちらであっても〈動作継続〉を表す。 例:動かす、回す、打つ、蹴る、食べる、見る、言う、走る、飛ぶ. そして、工藤(2014)は、奥田(1988)を踏まえ、「時間的限定性(temporal stability)23」によって、動詞述語だけでなく、形容詞述語や名詞述語も加え て、以下のように整理している。 〈表4〉 品詞 時間. 動詞述語. 形容詞述語. 名詞述語. 的限定性. 政 治 大. 〈主体動作‧客体変化動詞〉 運動. 〈主体動作動詞〉. 立. -. -. 〈主体変化動詞〉 有. 見える、聞こえる、疲れる、流行る. 痛い、眠い. 大喜びだ. 滞在∕. ある、いる、存在する、点在する、欠. ない、多い、少. 留守だ、空だ、. 存在24. けている. ない、乏しい. いっぱいだ. y. ‧. Nat. 優秀だ、堅実だ、 緑色だ、優等生. している、しゃれている、きりたって. 詳しい、博学だ、 だ、心配性だ、. Ch. er. n. al. いる、尖っている、役立つ 無. sit. 優れている、しっかりしている、精通. io. 特性. ‧ 國. 悲しい、安心だ、 病気だ、感激だ、. 學. 悲しむ、安心する、痛む、しびれる、 状態. v ni. おしゃれだ. U 同じだ、 大違いだ、共通 e n g c h i 等しい、. 一致する、違う、異なる、属する、共 関係. しっかりものだ. 通する、匹敵する、似ている. ぴったりだ. だ、先輩だ. -. -. 哺乳動物だ、人. 質 間だ、桜だ. 23. 工藤(2014)では、それは、すべての述語を捉えているカテゴリーで、偶発的な(accidental). 一時的な(temporary) 〈現象〉か、ポテンシャルな恒常的な(permanent) 〈本質〉かのスケー ル的な違いである。 24. 工藤(2014)では、〈存在〉は一時的現象の場合も恒常的な場合もある(奥田は一時的存在. を〈滞在〉としている)。 21.

(29) 意味分析の方法論. 2.6.3. 前節で述べたように、本研究では、前件名詞と後件述語の性質から、「にお いて」、 「にあって」、 「にかけて」、 「にわたって」のそれぞれの意味特徴、およ び類義語としての異同点を解明することを目標とする。そのために、方法論と して、国広(1982)の「文脈的作業原則」と「対照的作業原則」が本研究の意 味分析に適用できると考えられる。. 2.6.3.1. 文脈的作業原則. 「文脈的作業原則」について、服部(1968)は、文脈の観察のために、次の 二つの作業原則を提案した。. Ⅰ. 政 治 大. 同じ自立語と同じ統語型‧文型によって統合される自立語は同じ語義的. 立. 意義特徴を共有する。 互いに統合され得る自立語は、互いに呼応する語義的意義特徴を有する。. ‧ 國. 學. Ⅱ. ‧. 国広(1982)では、Ⅰを「同位置の作業原則」と、Ⅱを「呼応の作業原則」と 略称しているが、ここでは「同位置の作業原則」に注目したい。分析例として、. y. Nat. er. io. 次のような語と共起するとしている。. sit. 国広(1982)は英語の動詞 shed を挙げ、 〔主語+動詞+目的語〕という文型で. al. (5)A tree sheds its leaves.〈木は葉を落とす〉. n. v i n C h 〈シカはツノを生えかわらせる〉 (6)A stag sheds its horns. engchi U (7)A snake sheds its skin. 〈ヘビは脱皮する〉 (8)A crab sheds its shell. 〈カニは殻をぬぐ〉 (9)A hen sheds its feathers. 〈ニワトリは羽を生えかわらせる〉 (10)A flower sheds its petals. 〈花は花びらを落とす〉 (11)A person sheds his hair(skin). 〈人の髪は抜けかわる(皮膚はあかとなって取れる)〉 同位置の作業原則により、sheds の動作主体は〈成長物〉であることがわかる。 次に対象物全体に見られる共通の特徴は〈主語に来る成長物の本体の一部をな すもの〉である。そして、場面を見ると、その離脱は動作主体の成長の自然な 一過程そして生じ、本体に何の傷も欠損も負わせるわけではない。さらに離脱 したものは不要となっているが、離脱後、同じものが再生されてくることが観 22.

(30) 察できる。 本研究で扱う複合助詞は、その直前に名詞のような自立語がきて、文型とし ての複合助詞と統合され、範囲の意味を表す。そのため、以上のような同位置 の作業原則を適用することが可能ということがわかる。この作業原則による分 析によって、複合助詞が持つ意味特徴をつかむことができると考えられる。. 2.6.3.2. 対照的作業原則. 「対照的作業原則」について、国広(1982)は「ある語の意味を分析しよう とする場合、その語のみを対象とするよりは、意味‧用法がわずかにずれてい ると感じられる他の語と比較対照しながら分析する方が遥かに効果的である」. 政 治 大. と説明する。ある語が実例がある時、その同じ文脈に対比語を入れてみて、明 白な非文法的文ができ上がるなら、 「対照的文脈」ができ上がったことになる。. 立. また、対照する二語の間の意味の差が既に直感的に感じられている時は、その. ‧ 國. 學. ずれを浮き彫りにするような文脈を特に考案するという方法もある。具体例と して、国広(1982)は「ニギル」と「ツカム」を以下のように比較対照をする。. ‧. (12)ニギリしめる。 (13)×ツカミしめる。. y. Nat. sit. (14)×ニギリかかる。. er. io. (15)ツカミかかる。. al. v i n Ch カム」は「手をさっと伸ばしてとらえる」のような感じがあると思われたなら engchi U ば、このような対照的文脈を作って、その点を確かめることができる、として n. このように、国広(1982)は「ニギル」は「ぐっと圧力を加える」感じで、 「ツ. いる。 つまり、この作業原則によって、類義表現(文脈的同義)間の意味的な違い を分析するには有効であることが考えられる。森田‧松木(1989)では、この ように対照的文脈によって、「において」と「にあって」、「にかけて」と「に わたって」の比較対照をするが、これについて第五章で詳述しておく。. 23.

(31) 第三章. 「において」「にあって」「にかけて」「にわたって」の文 法化と意味拡張. 本章では、 「において」 「にあって」 「にかけて」 「にわたって」の文法化、お よび多義的意味拡張の仕組みを見る。. 3.1. 「において」の文法化と意味拡張. 3.1.1「置く」から「において」へ 『大辞林』によると、動詞「置く」には以下の意味がある。 ① 物や人をある場所に据える。. 政 治 大. ② その物だけを他とは別にする。 ③ 間隔を設ける。間をあける。. 立. ④ (「…に信を置く」などの形で)…の気持ちをもつ。. ‧ 國. 學. ⑤ 露や霜が葉や地面に生ずる。おりる。. ⑥ (補助動詞) 動詞の連用形に接続助詞「て(で)」を添えた形に付く。. ‧. 一方、 『日本語文型辞典』 (1998)では、文法形式化した「において」が、以 下の(16)と(17)のように、直前に場所や時代などを表すものがきて、ある. y. Nat. sit. 出来事が起こったり、ある状態が存在したりするときの背景を表す、また(18). er. al. n. ている。. io. のように「それに関して」 「その点で」という意味を表す25ものもあると説明し. Ch. (16)卒業式は大講堂において行われた。. engchi. i n U. v. (17)その時代において、女性が学問を志すのは珍しいものである。 (18)絵付けの技術において彼にかなうものはいない。 実質語の「置く」のプロトタイプとして、 『大辞林』の記述の①「(誰か)が (誰か/何か)を(どこ)に据える」といった命題を表すものであった。これ に対し、機能語の「において」から上記の命題を表す働きが失われ、「におい て」全体で「出来事が起こる、状態が存在する空間(場所)、時間を表す」ま たは「あるものに対して判断や比較の視点‧基準を表す」という文法機能を表. 25. 鈴木(2007)には、 「において」の用法について、後件内容が表すものを「事象」と「判断」. に分けられ、それぞれ「ある事象が起こったり、ある状態が存在することを示す」と「ある評 価‧判断が成り立つこの」のように二つの別義があるとしている。 24.

(32) す単位に変化している。(16)と(17)の文は「卒業式は大講堂で行われた」 (18)の文は「絵 「その時代では、女性が学問を志すのは珍しいものである」、 付けの技術に関して/について彼にかなうものはいない」という文と近似した 意味を表しており、 「において」それ全体で助詞「で(は)」や複合助詞「に関 して」 「について」と同様に空間‧時間的範囲、または判断‧評価の視点‧基準を 表す機能を持つことになる。すなわち「において」は全体で「で(は)」や「に 関して」、「について」に相当する機能語と化しており26、元の動詞「置く」に はない性格が観察できる。 Matsumoto(1998)が述べているように、通常の複合助詞とは違い、「置く」 から「において」への文法化は、メタファーによらず、動詞「置く」が、意味. 政 治 大. 機能を持つマーカー(複合助詞)になるために、下位範疇化をして複合助詞「に おいて」になる、という特殊な形式である。言い換えると、場所のマーカー. 立. (locative marker)の「において」は、場所項(locative argument)を持つ. ‧ 國. 學. 「置く」の下位範疇にある。そのため、「置く」が「において」に変化する場 合、元の「(誰か)が(誰か/何か)を(どこ)に据える」という意味が脱落. ‧. し、 「出来事が起こる、状態が存在する空間(場所)、時間を表す」という意味 を獲得していて、動詞と複合助詞の間には意味の類似性がない。. sit. y. Nat. er. io. 3.1.2 「において」の多義性と意味拡張. al. v i n C h 「ある出来事が起こったり、ある状態が存 (1998)によると、 「において」は、 engchi U 在したりするときの背景」を表す用法①と、「それに関して/その点で」とい n. 本節は、「において」の多義性と意味拡張をみる。既に『日本語文型辞典』. う意味を表す用法②があるが、日野(2001)の言う「物理的→心理的」の抽象 化の規則に従えば、時空間範囲を表す用法①に比べて、用法②が話者の主観的 26. 日野(2001)では、「置く」から「において」への文法化について、動詞「置く」は「もの. を水平面上に載せる」という意味で、例えば以下の(43a)の「置く」は、行為を指している ので指示的である。これに対し、 (43b)の「において」の「置く」は「ものを載せる」行為を 指さないので、もはや指示的機能を持たず、「において」全体で場所を表す助詞として文法的 に機能しているという。 (43)a.をとめの. 床のべに. 我が置きし. つるぎの太刀(古記謡-34). b.一刹那のうちにおいて…(徒然-92-165-1、2) 25.

(33) 認識を表す用法で、使用にもより制限されるため、後者は、前者の時空間範囲 を表すものから派生したものだと考えられる。以下では、多義語研究の視点に より、この二つの意味の互いの関連付けや意味拡張を明らかにする。. 用法①:「ある出来事が起こったり、ある状態が存在したりするときの背景」 を表す. (A)〈空間的範囲〉 (19)「要介護者であって痴呆の状態にあるものについて、その共同生活を 営むべき住居において、入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活. 政 治 大. 上の世話および機能訓練を行う」(コト). (20)労働総研と共同で開催してきた「地域政策研究交流集会」を「雇用. 立. と地域経済」を中心に十月九、十日に一泊二日で札幌市内において. ‧ 國. 學. 開催する。. (21)このようにして、千八百八十年代末期には、北炭経営下の幌内炭鉱と. るとはいえ囚人労働が展開されるのである。. Nat. y. ‧. 三井物産会社経営下の八重山・西表炭鉱において、その規模は異な. sit. (22)社会的な成熟に加え、資本力、労働力が蓄積されていた英国におい. er. io. て、繊維工業を中心に、産業革命はまずこの国から起こっていった。. al. v i n Ch が前件名詞にくる。これは、〈空間的範囲〉にまとめることができる。 engchi U n. 以上の(19)~(22)では、場所、地域、または都市、国家などを指すもの. (B)〈場面的〔=空間的+時間的〕範囲〉 (23)両議院の議員は、反逆罪、重罪、および公安を害する罪の外のあらゆ る場合において、会期中の議院に出席中、およびこれへの往復途上に、 逮捕されない特権を有する。 (24)そのアジア情勢において、日米両国が、米英同盟をモデルとした関係 を築くべきだと提言し、日米両国はバードン・シェアリング(費用分 担)をパワー・シェアリング(力の分担)へと進めるべきだとする。 (25)千九百九十年代の具体的な社会・経済的状況において移行諸国の経済 を上記の体制転換モデルのいずれかに一意的に転化させることは実 際不可能であった。 26.

(34) 抽象化に従い、〈空間的範囲〉には、〈時間的〉が付け加わり、〈場面的〔= 空間的+時間的〕範囲〉のように、空間と時間の両方によって規定されるもの になった。この場合、「において」の前件名詞にくるものが、以上の(23)~ (25)のように、前件名詞にはある時点から始まり、ある時点まで終わるよう に、時間的な幅を持つもので、場面、状況を示すもので、〈場面的範囲〉の典 型的な表現であると考えられる。 (26)あっせん手続又は調停手続において和解が成立し、当事者が仲裁合意 書を提出して、その和解の内容を主文とする仲裁判断を求めるときは、 あっせん手続又は調停手続は、仲裁手続に移行する。(コト) (27)ネットワーク上の取引において、送金したが購入物品が届かないとい. 政 治 大. うトラブルが発生している。. この(26)と(27)の前件名詞にくるものが人間の動作や行為を指す。この. 立. 動作を指す名詞が、ある時点から始まり、ある時点まで終わるように、時間的. ‧ 國. 似している。. 學. な幅を持つもので、この場合、 「において」は意味上、 「~をする場合に」に類. ‧. (28)第二次世界大戦において、当時のドイツがイギリスへV‐一およびV ‐二による攻撃を実施した際も有効な対応策はなく、イギリス国民お. y. Nat. sit. よび財産に多大な心理的・具体的被害を与えた。. al. er. io. (29)千九百九十九年九月十日に、日本心理臨床学会第十八回大会において. v. n. 、自主シンポジウム「プロセス指向心理学(POP)―フォーカシン. Ch. グとPOPの出会い」が開催された。. engchi. i n U. この(28)の前件名詞にくるものが「事件」を指す。事件ということは、あ る時点から始まり、ある時点まで終わるように、時間的な幅を持つもので、一 方、空間に基づいて行われるものでもあり、つまり、これは一つの「場面」と 見なすことができる。(29)の「日本心理臨床学会第十八回大会」は「イベン ト」を指すもので、これは、「事件」と同様に、空間と時間の両方によって規 定されるものである。. (C)〈時間的範囲〉 (30)十八世紀において、この奴隷の話はイギリス、フランスでさまざま な形で出版され、多くの人々の口をとおして語られたという。 (31)しかしながら、環境基準の達成期限であった昭和六十年度において、 27.

(35) 大都市圏を中心に達成することができなかった測定局が多く残され ている。 (32)仮に民間融資になった場合、高所得者の方にはメリットがあるが低 所得者の方は厳しくなる(二十代、鹿児島、借家) ・民間金融機関に 対する不信はこのバブル期以降において顕著に高まっていると思う。 (33)光を熱に変換して用いているために、光が本来備えている種々の特 性(波長、偏光、位相など)を記録に生かすことができていない。 光を熱に変える過程において、それらの特性は失われている。 〈場面的範囲〉から抽象化が進み、結局、 〈空間的〉が脱落し、 〈時間的範囲〉 しか残っていないことになった。以上の(30)~(33)のように、前件名詞に. 政 治 大. くるものが全て、時間的幅を指す。. 立. (D)〈範囲〉. ‧ 國. 學. (34)日本の企業において、終身雇用制度は完全に崩壊しています。 (35)非常に複雑なグローバル化された環境において、政府に効果的な統. ‧. 治力、制度、法的な枠組、民主的な政治のプロセス、それらがない ことが紛争の種になり、国家の破綻となっている。. y. Nat. sit. (36)二十一世紀初頭、ヨーロッパとアジアで起こった社会的変革の歴史. er. io. において、モンゴル民主化はまさしく特殊な歴史に含まれる。. al. v i n Ch 以上の(34)~(37)の前件名詞にくるものが、 e n g c h i U(34)と(35)は「抽象的 空間」を表すのに対し、 (36)と(37)は「領域‧分野」を表すもので、これら n. (37)皮膚科心身医学において、精神療法の併用も行われる。. のものは全て、空間的場所とは言いにくく、抽象的な領域を指す。これは、 〈空 間的範囲〉から、〈空間的〉が脱落して〈範囲〉しか残っていないものになっ たのである。. 用法②:「それに関して~」「その点で~」の意味を表す (38)たとえば発達言語学において、表面的な現象を分析して、おそらくあ る言語能力システムが脳の中に存在するに違いないと類推したとし ます。 (39)子供の漸進的な成長に合わせてその情念の制御をし、最終的には理性 的な個人を形成するような教育を提示している点で、両者の類似は明 28.

參考文獻

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