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第四章 三項動詞の能動文におけるかき混ぜ

4.5.2 中国語を母語とする日本語学習者による三項動詞の能動文の処理

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そして、反応時間のみならず、本研究における日本語母語話者による目的語ニ 能動文の基本語順文に対する誤答率は、先行研究の結果(Tamaoka et al., 2005)

より高いように見えた。本研究の実験に用いられる文は23 文で、参加者は 27 名であるのに対し、Tamaoka et al.(2005)の実験に用いられる文は 20 文で、

参加者は28 名である。そこで、本研究と Tamaoka et al.(2005)の差異は実験 に用いられる文の数や実験参加者の数と関連しないと思われる。そのため、本 研究における実験の傾向は、本研究に参加した日本語母語話者は海外(台湾)

にいることに帰結できるのではないかと思われる。つまり、日本国内にいる日 本語母語話者と海外(台湾)にいる日本語母語話者による文処理に差異がある と考えられる。

結論として、日本語母語話者による三項動詞の能動文の処理において、項の 数によって文処理負荷が二項動詞の能動文より大きくなり、基本語順文とかき 混ぜ文の反応時間および文正誤判断での誤答率に有意な差がなかったと考え られる。

4.5.2 中国語を母語とする日本語学習者による三項動詞の能動文の処理

ところが、中国語を母語とする日本語学習者の場合、中国語を母語とする日 本語学習者を対象とした三項動詞の能動文に対する文処理に関する研究につ いて、調べた範囲では見当たらない。本研究における中国語を母語とする日本 語学習者による目的語ニ能動文において、基本語順文とかき混ぜ文の反応時間 および文正誤判断での誤答率に有意な差がないことが観察された。この結果は、

玉岡(2005)の他動詞能動文の実験の結果とも本研究におけるガヲ能動文の結 果とも異なり、かき混ぜ文は基本語順文より反応時間が長くはなく、文正誤判 断での誤答率が高くはなかったのである。上述したように、これは、目的語ニ 能動文における項は三つがあり、ガヲ能動文の項より一つ多いため、文処理負 荷が相対的に大きいことに起因すると思われる。

そして、中国語を母語とする日本語学習者による目的語ニ能動文の処理にお いて、基本語順文とかき混ぜ文の反応時間にも文正誤判断での誤答率にも有意 な差が見られなかった。つまり、中国語を母語とする日本語学習者による目的 語ニ能動文の処理において、反応時間にも文正誤判断での誤答率にもスクラン ブル効果が見られなかったということである。中国語を母語とする日本語学習 者がガヲ能動文の処理のように、基底構造によって文処理をすることが見られ なかった。そのため、今回の実験では、日本語学習者に目的語ニ能動文の基底

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構造が構築されていることかは確認できなかった。

一方、結果ニ能動文の処理において、基本語順文とかき混ぜ文の反応時間お よび文正誤判断での誤答率に有意な差がないことが観察された。このような結 果は目的語ニ能動文と同じである。これは、上述したように、結果ニ能動文は 三項動詞の能動文であり、二項動詞の能動文より項が一つ多く、文処理負荷は 相対的に大きいことと関連すると考えられる。このほか、結果ニ能動文の基本 語順には、「主語ガ目的語ヲ結果ニ動詞」と「主語ガ結果ニ目的語ヲ動詞」と があり、二種類の基本語順文は分けて分析した結果、ヲ格名詞句の移動距離が 文処理に顕著な影響を及ぼしていないと考えられる。そのため、中国語を母語 とする日本語学習者による結果ニ能動文の処理において、項の数によって文処 理負荷が二項動詞の能動文より大きくなり、基本語順文とかき混ぜ文の反応時 間および文正誤判断での誤答率に有意な差がなかったのである。つまり、中国 語を母語とする日本語学習者による結果ニ能動文の処理において、反応時間に も文正誤判断での誤答率にもスクランブル効果が見られなかったということ である。中国語を母語とする日本語学習者がガヲ能動文の処理のように、基底 構造によって文処理をすることが見られなかった。そのため、今回の実験では、

日本語学習者に結果ニ能動文の基底構造が構築されていることかは確認でき なかった。

4.6 まとめ

本研究における三項動詞の能動文の実験では、日本語母語話者と中国語を母 語とする日本語学習者による文正誤判断課題における反応時間と誤答率につ いて分析した。

まず、4.1 では、三項動詞の能動文の実験に対する予測を立てた。4.2 では文 正誤判断課題の実験に用いられる例文を選出するための予備調査について述 べた。そして、4.3 では、日本語母語話者による三項動詞の能動文の実験結果 について述べた。4.4 では、中国語を母語とする日本語学習者による三項動詞 の能動文の実験結果について述べた。最後に、4.5 では三項動詞の能動文の処 理について今回の実験結果に基づき分析した。

本研究の三項動詞の能動文の実験において、海外(台湾)の日本語母語話者 は、日本国内の日本語母語話者(Tamaoka et al., 2005)のように、基底構造によ って目的語ニ能動文を処理することが観察されなかった。また、海外の日本語 母語話者が基底構造によって結果ニ能動文を処理することも観察されなかっ

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た。そして、本研究の実験において、中国語を母語とする日本語学習者が基底 構造によって目的語ニ能動文と結果ニ能動文を処理することが観察されなか った。つまり、本研究の三項動詞の能動文の実験において、日本語母語話者と 日本語学習者に目的語ニ能動文と結果ニ能動文についての基底構造が構築し ているかは確認できなかった。

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