國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
を使用する。実験に用いられる動詞は全部、教科書『みんなの日本語 初級』
(スリーエーネットワーク)から選出されるものである。また、複合動詞は前 項動詞と後項動詞の組み合わせによって取る格が変わることがあるため、複合 動詞は用いないことにする。
実験において、二項動詞の能動文は「主語」と「目的語」からなるものであ る。二項動詞の能動文において、「目的語」を表すのは「ヲ格」と「ニ格」と の二種類がある。一方、三項動詞には「主語」と「間接目的語」(ニ格)と「直 接目的語」(ヲ格)からなるものと、「主語」と「目的語」(ヲ格)と「結果」
(ニ格)からなるものがある。詳しくは第二章を参照されたい。
本研究の実験は語順(基本語順かかき混ぜ語順か)を要因として(一要因・
二条件)、参加者の反応時間3と文正誤判断での誤答率4について分析し、語順が 日本語母語話者と中国語を母語とする日本語学習者による文処理に与える影 響を明らかにする。また、本研究において、かき混ぜ語順は三原(2006)でい う短距離かき混ぜを使う。つまり、要素を文頭に移動するかき混ぜである。そ して、本研究におけるかき混ぜ語順は、ヲ格名詞句を文頭に移動する語順を用 いる。統計分析には、IBM SPSS Statistics 21 を使用する。
1.3 本論文の構成
第一章では研究動機、および研究方法について述べた。第二章では先行研究 と心理言語学の考え方、および本研究が基づく理論について述べる。そして、
第三章では、二項動詞の能動文の実験について述べる。第四章では、三項動詞 の能動文の実験について述べる。最後に、第五章では、本研究の結論と今後の 課題を提示する。
3 本研究の実験において、文が呈示されてから、参加者が判断を下すまでの時間を反応時間と する。
4 例えば、ある条件での正しい文が10 文あるとする。この 10 文に対する参加者の反応に誤っ たものに1 文がある場合、誤答率は 10%である。つまり、本研究の実験において、誤答率はあ る条件での文の数を除数、誤った反応の数を被除数として、算出された比率である。
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
第一章で述べたように、日本語母語話者と日本語学習者が日本語の文を処理 するとき、かき混ぜ語順の文は基本語順の文より長い反応時間を要し、文の正 誤判断での誤答率が高いことが観察された(村岡ら2004、Tamaoka et al., 2005、
玉岡2005、金・小泉 2007 など)。そして、このような傾向は空所補充解析(gap-filling parsing)によるものとされている(村岡ら 2004、Tamaoka et al., 2005、玉 岡2005、金・小泉 2007 など)。この章では、これらの先行研究と理論的な基礎 について述べる。
まず、2.1 では、心理言語学的な研究に用いられる統計概念について述べる。
そして、2.2 では心理言語学的な手法を用いた先行研究を述べる。つづいて、
2.3 では本研究が依拠する理論基礎を述べる。2.4 では文処理負荷と空所補充解 析を説明する。
2.1 心理言語学的な研究に用いられる統計概念
近年、心理言語学的手法で日本語におけるかき混ぜの研究が盛んとなってい る。このような研究は実験を行い、実験で得たデータをもとに統計分析をし、
統計の結果により研究者の仮定を検証するものである。統計分析においては、
仮説検定が用いられる。仮説検定にはまず、帰無仮説(null hypothesis)と対立 仮説(alternative hypothesis)を立てる。有意差検定において、前者は「差がな い」という仮定で、後者は「差がある」という仮定である。そして、仮説検定 において、算出された統計量に基づき、ある基準以上の確かさで帰無仮説を棄 却できるかどうかを判断する。また、帰無仮説による条件で実測頻度の起こり やすさを算出された統計量に基づいて確率で評価する。この確率は p 値(p-value:p)と呼ぶ。p 値が十分小さければ帰無仮説を棄却し、対立仮説を採用 することができる。
しかし、検定には誤りを含む可能性がある。誤りには、「差がないが差があ ると判断した」という第一種の誤り(Type Ⅰ error)と「差があるが差がないと 判断した」という第二種の誤り(Type Ⅱ error)がある。仮説検定においては主 に第一種の誤りを小さくすることを目指す。そして、第一種の誤りの許容程度 として事前に設定した境界的な確率値を有意水準(significant level:α)と言う。
有意水準は通常、5%・1%・0.1%に設定し、α=.05・α=.01・α=.001 と表記して
‧
究において、スクランブル効果(Scrambling effect)2が見られるということは このような統計分析に基づいて判断される。本研究の分析3において、有意水2.2.1.1 Tamaoka et al.(2005)
Tamaoka et al.(2005)は他動詞能動文(Active Sentences with Transitive Verbs)、
二重目的語能動文(Active Sentences with Ditransitive Verbs)、他動詞受身文
(Passive Sentences with Transitive Verbs)、可能文(Potential Sentences)、使役文
(Causative Sentences)五種類の文を用いて日本語母語話者を対象にして実験
1 以上は『言語研究のための統計入門』(石川ら編 2010:58)と『心理・教育のための統計法
〈第2 版〉』(山内 1998:107)に基づき、まとめたものである。
2 文処理において、かき混ぜ文は基本語順文より遅く処理されることや文正誤判断の時にかき 混ぜ文の誤答率が基本語順文の誤答率より高いことであるという(Tamaoka et al., 2005、玉岡 2005)。
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
を行った。そして、実験参加者の反応に対して反復測定7による分散分析
(Repeated measure ANOVA)を行った。
実験に用いられた肯定反応の文(correct “Yes” responses、文が正しいという 反応が求められる)は次の表1 のようなものである。
表1、実験に用いられた肯定反応の文の例(Tamaoka et al., 2005:312-330)
基本語順文 かき混ぜ文
他動詞能動文 友子が太郎をほめた。 太郎を友子がほめた。
二重目的語能動文 太郎が友子にかばんを預けた。 かばんを友子に太郎が預けた。
他動詞受身文 順子が太郎に蹴られた。 太郎に順子が蹴られた。
可能文 高志にギリシャ文字が書けるだろうか。 ギリシャ文字が高志に書けるだろうか。
使役文(対格) 順子が弟子にアトリエを造らせた。 順子がアトリエを弟子に造らせた。
使役文(与格) 順子がアトリエに弟子をこもらせた。 順子が弟子をアトリエにこもらせた。
一方、各実験における否定反応の文(correct “No” responses、文が誤っている という反応が求められる)は次の表2 の通りである。
表2、実験に用いられた否定反応の文(Tamaoka et al., 2005:287-299)8 他動詞能動文 順子が健二を縫った。
二重目的語能動文 和夫が健二に洗濯機を踊った。
他動詞受身文 空が順子に洗濯された。
可能文 雅子が消しゴムに手伝えるだろうか。
実験に用いられる文が正しい文のみなら、参加者が実験において「正しい」
としか反応しない可能性があるため、否定反応の文が加えられた。
以下ではTamaoka et al.(2005)の実験結果を表で示して説明する。
まず、他動詞能動文の処理について、実験の結果、肯定反応の場合、語順は 反応時間(F1(1,27)=58.90、p<.05;F2(1,51)=61.88、p<.05)にも文正誤判断での 誤答率(F1(1,27)=15.71、p<.05;F2(1,51)=17.14、p<.05)にも影響を及ぼすこと
7 実験において、一人の参加者にある条件で複数回の測定を行う実験は反復測定をいう。例え ば、Tamaoka et al.(2005)において、参加者に複数の基本語順文とかき混ぜ文を用いて各条件 での平均値を算出するような実験設計は反復測定の実験である。本研究においても、このよう な実験設計を用いる。
8 基本語順文のみ、使役文の実験において否定反応は用いられていない。
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
が観察され、基本語順文は反応時間が短く、誤答率が低いことが明らかとなっ た。一方、否定反応の場合、基本語順文とかき混ぜ文の反応時間(F1(1,27)=14.49、
p<.05;F2(1,31)=0.02、ns)にも、文正誤判断での誤答率(F1(1,27)=0.05、ns;
F2(1,31)=1.56、ns)にも顕著な差異は見られなかった。
表3、他動詞能動文実験の反応時間と誤答率(Tamaoka et al., 2005:288)
反応類型 語順 反応時間(ms) 誤答率(%)
平均 標準偏差 平均 標準偏差 肯定反応 SOV 1209 238 3.02 3.37
OSV 1432 308 9.07 6.96 否定反応 SOV 1297 224 4.91 6.96 OSV 1388 216 9.38 9.95
次に、二重目的語の能動文の結果について、肯定反応の場合、語順は反応時 間(F1(1,27)=56.36、p<.05;F2(1,19)=70.25、p<.05)と文正誤判断での誤答率
(F1(1,27)=10.80、p<.05;F2(1,19)=24.18、p<.05)に影響を与えることが観察さ れ、かき混ぜ文は基本語順文より反応時間が長く、誤答率が高いことが分かっ た。これに対して、否定反応の場合、基本語順文はかき混ぜ文より反応時間が 短い(F1(1,27)=16.07、p<.05;F2(1,19)=8.58、p<.05)が、文正誤判断での誤答率 に顕著な差異は見られなかった(F1(1,27)=3.10、ns;F2(1,19)=3.20、ns)。
表4、二重目的語の能動文実験の反応時間と誤答率(Tamaoka et al., 2005:292)
反応類型 語順 反応時間(ms) 誤答率(%)
平均 標準偏差 平均 標準偏差 肯定反応 SO1O2V 1359 320 1.79 3.90
O2SO1V 1963 643 11.79 17.44 否定反応 SO1O2V 1436 265 1.79 4.76
O2SO1V 1597 398 4.29 10.34
つづいて、他動詞受身文の処理について、肯定反応の場合、語順は反応時間
(F1(1,23)=17.22、p<.05;F2(1,35)=16.23、p<.05)にも文正誤判断での誤答率
(F1(1,23)=10.18、p<.05;F2(1,35)=11.33、p<.05)にも影響を及ぼすことが観察 され、基本語順文はかき混ぜ文より反応時間が短く、誤答率が低いことが分か
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
った。一方、否定反応の場合、反応時間(F1(1,23)=2.67、ns;F2(1,19)=2.06、ns)
にも誤答率(F1(1,23)=0.19、ns;F2(1,19)=0.61、ns)にも語順による顕著な影響 が見られなかった。
表5、他動詞受身文実験の反応時間と誤答率(Tamaoka et al., 2005:296)
反応類型 語順 反応時間(ms) 誤答率(%)
平均 標準偏差 平均 標準偏差 肯定反応 SOV 1521 359 1.85 3.54
OSV 1722 497 6.25 8.08 否定反応 SOV 1484 309 10.83 9.74 OSV 1582 399 9.17 10.60
さ ら に 、 可 能 文 の 結 果 に つ い て 、 肯 定 反 応 の 場 合 、 語 順 は 反 応 時 間
さ ら に 、 可 能 文 の 結 果 に つ い て 、 肯 定 反 応 の 場 合 、 語 順 は 反 応 時 間