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第三章 二項動詞の能動文におけるかき混ぜ

3.2 予備調査

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誤判断での誤答率が高いということである。本研究では、先行研究のこのよう な結果に基づいて、「主語ガ目的語ヲ動詞」の能動文(以下、ガヲ能動文)と

「主語ガ目的語ニ動詞」の能動文(以下、ガニ能動文)を用いて、参加者に文 正誤判断課題を課する。そして、本研究の二項動詞の能動文の実験に対して、

「文処理において、かき混ぜ文は基本語順文より反応時間が長く、文正誤判断 での誤答率が高い」という予測を立てる。

3.2 予備調査

文正誤判断課題の実験に用いられる文を選出するよう、予備調査を行うこと にした。また、予備調査においては、基本語順文のみを使った。文正誤判断課 題に用いられる文が決まってからかき混ぜ文を作成する。

3.2.1 参加者

実験の参加者は全員参加の時点で国立政治大学日本語学科修士課程に在籍 していた。参加者は16 名で、そのうち、男性 4 名、女性 12 名であった。平均 年齢は24 歳 7 ヶ月(標準偏差 12 ヶ月)であった。最年長は 26 歳 10 ヶ月で、

最年少は23 歳 3 ヶ月であった。

参加者は全員中国語を母語とする日本語学習者1で、2 名が日本語能力試験 N2 に、14 名が N1 に合格した中上級学習者であった。また、日本語学習歴は 平均7 年 5 ヶ月(標準偏差 2 年)で、最も短いのは 5 年で、最も長いのは 13 年であった。

3.2.2 実験材料

予備調査のために、まず教科書『みんなの日本語 初級』(スリーエーネッ トワーク)から動詞を抽出し、『日本語基本動詞用法辞典』(小泉ほか編:2004)

を参考にしながら、主語を表す「ガ格」と目的語を表す「ヲ格」・「ニ格」とい う二つの項を取る動詞、すなわち本研究でいう「二項動詞」の能動文を作成し た。これら能動文のうち、「ガ格」と「ヲ格」を取る能動文は80 文で、「ガ格」

と「ニ格」を取る能動文は25 文である。また、「ガ格」と「ヲ格」を取る動能 文(以下、ガヲ能動文)と「ガ格」と「ニ格」を取る能動文(以下、ガニ能動 文)の誤った文2を各々20 文作成した。したがって、予備調査に用いられる二

1 『みんなの日本語 初級』は日本語学習者向けの教科書であるため、予備調査は日本語学習 者を対象にした。

2 本研究において、誤ったガヲ能動文は「太郎が桜子を座った」のような文で、誤ったガニ能

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項動詞の能動文は145 文である。つまり、参加者一人に与えられる二項動詞の 刺 激 文 は 145 文3で あ る 。 こ れ ら の 刺 激 文 は 、 カ ウ ン タ ー ・ バ ラ ン ス

(counterbalance)4という手法を用いて、参加者に呈示することにした。予備 調査の刺激文は付録一を参照されたい。

3.2.3 手続き

実験は、日本語学科修士課程の講義の教室で一人ずつ行った。しかし、講義 に出ていない参加者に、実験は図書館や日本語学科の院生室で行った。場所は 統一されていなかった。実験のプログラム5には、Visual Studio 2015 を使用し た。パソコンのスクリーン画面の中央にはまず、凝視点として「++++++

+」が呈示され、600 ミリ秒後、文が視覚的に提示される。参加者は、提示さ れた文を最初の一文字から最後の一文字まで読み終わると、「次に」というボ タンをクリックするよう指示された。各参加者に与える刺激文が同じ順番で提 示されると、リストの後ろの文の反応時間は疲労によって長引く可能性がある。

そこで、実験に用いられる145 文はカウンター・バランスを用いて参加者ごと に呈示された。文を最初の一文字から最後の一文字まで読み終わる時間は反応 時間としてパソコンに自動的に記録された。実験の前に練習試行はなかった。

また、参加者は一人ずつ番号を付けた。疲労効果(fatigue effect)6を避ける よう、奇数の参加者にはまず二項動詞の実験を行い、次に三項動詞の実験を行 った。一方、偶数の参加者にはまず三項動詞の実験を行い、その後、二項動詞 の実験を行った。実験の後、参加者にデブリーフィング(debriefing)7を行い、

インタビューをした。

動文は「洋子が鈴木に込んだ」のような文である。つまり、目的語の格標示が誤ったものや目 的語と動詞の組み合わせは意味をなしていないものである。

3 145 文からなる刺激文リストに対する総計反応時間は平均 4 分間ほどであった。また、凝視 点としての「+++++++」の呈示時間を含めて、二項動詞の能動文の予備調査は約5 分間 かかった。

4 心理実験において、特に反復測定の実験において、順序による影響を抑えるために用いられ る実験設計である。例えば、実験に用いられる刺激はA、B、C との三つがある場合、カウン ター・バランスを用いた刺激リストは ABC、ACB、BAC、BCA、CAB、CBA などがある。

(Christensen et al., 2011:215、溫編 2006:322)

5 プログラムの画面については、付録十六を参照されたい。

6 実験において、参加者の疲労程度が測定に及ぼす影響である。疲労度が高くなるほど、反応 の速度が遅くなり、精度が低くなるという現象である。(溫編2006:465)

7 実験の後、参加者に実験の設計、研究の目的などについて説明することである。(Christensen et al., 2011:121、溫編 2006:170)

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また、予備調査における二項動詞の能動文の反応時間の原始データは付録三を 参照されたい。

表13、予備調査における二項動詞の能動文の反応時間10(ミリ秒)

ガヲ能動文 ガニ能動文

正しい文 1395(標準偏差 198) 1416(標準偏差 147)

誤った文 1726(標準偏差 151) 1745(標準偏差 230)

文正誤判断課題の実験に用いられる文を選出するため、平均値から2 標準偏 差を境界として、まず、境界値から外れた値の文を排除した。これらの反応時 間を正規分布(normal distribution)11と仮定すると、平均値から2 標準偏差ま での間は、95%の反応時間を含むと考えられる。したがって、この基準では、

文正誤判断課題の実験において反応時間が正規分布になっていない文が削除 され、文自体の影響12を減らすことができると思われる。

正しい文の場合、ガニ能動文は25 文、ガヲ能動文は 78 文残った。さらに、

ガヲ能動文の数をしぼるため、9 文字13のものを選び出した。そこで、ガヲ能 動文は 40 文になった。また、誤った文は対照的なデータにするため、選別し ていなかった。したがって、予備調査によって、二項動詞の能動文を105 文に しぼった。

3.3 日本語母語話者によるかき混ぜ