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第四章 三項動詞の能動文におけるかき混ぜ

4.5.1 日本語母語話者による三項動詞の能動文の処理

立 政 治 大 學

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の能動文の結果は次のようにまとめられる。中国語を母語とする日本語学習者 を対象とした研究については、調べた範囲では見当たらない。そのため、本研 究における日本語学習者を対象とした三項動詞の能動文の実験は比較対象が ないということになる。目的語ニ能動文の処理において、かき混ぜ文と基本語 順文の反応時間に有意な差が見られなく、文正誤判断での誤答率にも有意な差 が見られなかった。また、結果ニ能動文の処理において、かき混ぜ文と基本語 順文の反応時間に有意な差が見られなく、文正誤判断での誤答率にも有意な差 が見られなかったのである。しかし、二項動詞の能動文を用いて実験を行った 玉岡(2005)と金・小泉(2007)と本研究の二項動詞のガヲ能動文の結果では、

二項動詞の能動文の処理において、かき混ぜ文は基本語順文より反応時間が長 く、文正誤判断での誤答率が高いことが観察された。したがって、本研究にお ける三項動詞の能動文の結果は、目的語ニ能動文と結果ニ能動文はともに項を 三つ取り、文処理負荷が二項動詞の能動文より相対的に大きいことに起因する と思われる。

4.5 総合考察

4.5.1 日本語母語話者による三項動詞の能動文の処理

すでに述べたように、日本語母語話者を対象にしたTamaoka et al.(2005)の 二重目的語動詞の能動文の実験では、二重目的語動詞の能動文の処理において、

かき混ぜ文は基本語順文より反応時間が長く、文正誤判断での誤答率が高いこ とが観察された。しかし、本研究の実験では、日本語母語話者による目的語ニ 能動文の処理において、基本語順文とかき混ぜ文の反応時間と文正誤判断での 誤答率に有意な差がないことが観察された。この結果はTamaoka et al.(2005)

で観察された結果、かき混ぜ文は基本語順文より反応時間が長く、文正誤判断 での誤答率が高かいことと異なる。つまり、本研究における日本語母語話者に よる目的語ニ能動文の処理において、反応時間にも文正誤判断での誤答率にも スクランブル効果が見られなかったということである。日本語母語話者がガヲ 能動文の処理のように、基底構造によって文処理をすることが見られなかった。

そのため、今回の実験では、日本語母語話者に目的語ニ能動文の基底構造が構 築されているかは確認できなかった。

これは、三項動詞の能動文は二項動詞の能動文より、項が一つ多く、文は相 対的に複雑であるため、三項動詞の能動文の処理において、かき混ぜ文は基本 語順文より反応時間が長く、文正誤判断での誤答率が高いことが観察されなか

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ったと思われる。また、Tamaoka et al.(2005)は、日本国内にいる日本語母語 話者を対象としたが、本研究は海外(台湾)にいる日本語母語話者を対象とし た。そのため、日本国内にいる日本語母語話者と海外(台湾)にいる日本語母 語話者による文処理には差異があるのではないかと考えられる。日本語のかき 混ぜ語順が中国語の基本語順と部分的に類似していることで、本研究における 三項動詞の目的語ニ能動文の処理において、Tamaoka et al.(2005)と異なり、

かき混ぜ文と基本語順文に対する反応時間と文正誤判断での誤答率に有意な 差が見られなかったのである。

一方、先行研究に扱っていない三項動詞の能動文である結果ニ能動文の処理 において、基本語順文とかき混ぜ文に要する反応時間には差が見られず、文正 誤判断での誤答率にも差が見られなかった。このような結果は、目的語ニ能動 文と同じである。上述したように、目的語ニ能動文における項は三つがあり、

結果ニ能動文における項も目的語ニ能動文と同じく、三つがある。文も二項動 詞の能動文と比べて、相対的に複雑である。そこで、結果ニ能動文の処理にお いても、かき混ぜ文は基本語順文より反応時間が長く、文正誤判断での誤答率 が高いことが観察されなかったのである。そして、本研究に用いられる結果ニ 能動文の基本語順には、「主語ガ目的語ヲ結果ニ動詞」と「主語ガ結果ニ目的 語ヲ動詞」とがあり、二種類の基本語順文は分けて分析した結果、ヲ格名詞句 の移動距離が文処理に顕著な影響を与えていないと考えられる。

日本語母語話者による結果ニ能動文の処理において、基本語順文とかき混ぜ 文の反応時間にも文正誤判断での誤答率にも有意な差が見られなかった。すな わち、日本語母語話者による結果ニ能動文の処理において、反応時間にも文正 誤判断での誤答率にもスクランブル効果が見られなかったということである。

日本語母語話者がガヲ能動文の処理のように、基底構造によって文処理をする ことが見られなかった。そのため、今回の実験では、日本語母語話者に結果ニ 能動文の基底構造が構築されているかは確認できなかった。

次に、二項動詞の能動文の実験と同じく、日本語母語話者の内省によると、

「不自然」だと思わせる文は「間違い」と反応される場合があるという。その ため、文の「自然さ」と誤答率との相関係数について調査した。

「文の自然さ」調査は文正誤判断課題の実験で用いられた文を使った。そし て、調査は日本語母語話者16 名に行った。また、「文の自然さ」調査は文正誤 判断課題の実験が終わってから行うものであるため、参加者は文正誤判断課題 の実験に参加していない。参加者は全員大学に所属している教職員や学生であ

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そして、反応時間のみならず、本研究における日本語母語話者による目的語ニ 能動文の基本語順文に対する誤答率は、先行研究の結果(Tamaoka et al., 2005)

より高いように見えた。本研究の実験に用いられる文は23 文で、参加者は 27 名であるのに対し、Tamaoka et al.(2005)の実験に用いられる文は 20 文で、

参加者は28 名である。そこで、本研究と Tamaoka et al.(2005)の差異は実験 に用いられる文の数や実験参加者の数と関連しないと思われる。そのため、本 研究における実験の傾向は、本研究に参加した日本語母語話者は海外(台湾)

にいることに帰結できるのではないかと思われる。つまり、日本国内にいる日 本語母語話者と海外(台湾)にいる日本語母語話者による文処理に差異がある と考えられる。

結論として、日本語母語話者による三項動詞の能動文の処理において、項の 数によって文処理負荷が二項動詞の能動文より大きくなり、基本語順文とかき 混ぜ文の反応時間および文正誤判断での誤答率に有意な差がなかったと考え られる。

4.5.2 中国語を母語とする日本語学習者による三項動詞の能動文の処理