第三章 二項動詞の能動文におけるかき混ぜ
3.5 総合考察
3.5.2 中国語を母語とする日本語学習者による二項動詞の能動文の処理
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の実験に参加していない。参加者は全員大学に所属している教職員や学生であ った。そのうち、男性3 名、女性 13 名であった。平均年齢は 30 歳 7 ヶ月で、
標準誤差は10 歳 1 ヶ月であった。詳しい内容は付録十四と十五を参照された い。
文の自然さと日本語母語話者によるガヲ能動文・ガニ能動文の誤答率との相 関係数(r)は次のようである。
表18、「文の自然さ」と日本語母語話者による二項動詞の能動文の誤答率との相関係数
基本語順 かき混ぜ
ガヲ能動文 r =0.014(F(1,37) =.007、
p =.931 ns)
r =-0.039(F(1,37) =.056、
p =.814 ns)
ガニ能動文 r =0.132(F(1,22) =.389、
p =.539 ns)
r =-0.385(F(1,23) =4.004、
p =.057 ns)
限界値(α =.05):F(1,22) =4.30、F(1,23) =4.28、F(1,37) =4.107
この結果から見れば、文正誤判断の実験におけるガヲ能動文・ガニ能動文の 誤答率と「文の自然さ」との相関があるが、有意的ではないことが分かる。つ まり、文が自然かどうかは文正誤判断の実験における判断と関連しているとは 言えないということである。
最後に、本研究における日本語母語話者によるガヲ能動文の基本語順文の反 応時間は、先行研究(Tamaoka et al., 2005、村岡ら 2004)の結果より遅いよう に観察された。また、本研究における日本語母語話者によるガニ能動文の基本 語順の反応時間は、先行研究の結果より遅いように観察された。反応時間のみ ならず、本研究における日本語母語話者によるガヲ能動文の基本語順文に対す る誤答率は、先行研究(Tamaoka et al., 200、村岡ら 2004)より高いように観察 された。また、ガニ能動文の基本語順文に対する誤答率は、先行研究の結果(村 岡ら2004)より高いように観察された。これは、上に言及したように、実験の 場所と関連すると思われる。すなわち、日本語母語話者を対象とした先行研究 は日本国内で実験を行い、本研究は海外(台湾)で実験を行うことで、実験の 結果に差異が見られたのである。
3.5.2 中国語を母語とする日本語学習者による二項動詞の能動文の処理
ところが、中国語を母語とする日本語学習者の場合、ガヲ能動文の処理にお いて、基本語順文はかき混ぜ文より速く反応されることが観察された。また、‧ 國
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文正誤判断において、かき混ぜ文の誤答率はかき混ぜ文の誤答率より高いこと が観察された。この傾向は、玉岡(2005)で観察された結果、基本語順文がか き混ぜ文より速く処理され、また、文正誤判断での誤答率、かき混ぜ文が基本 語順文より高かったことと一致している。
すなわち、本研究における日本語学習者によるガヲ能動文の処理において、
反応時間にも文正誤判断での誤答率にもスクランブル効果が見られた。このこ とから、本研究に参加した日本語学習者にも、玉岡(2005)での日本語学習者 と同じように、日本語母語話者と同じく、ガヲ能動文についての基底構造が構 築されていると考えられる。
しかし、本研究の実験で観察された日本語学習者によるガヲ能動文の基本語 順文の誤答率は、玉岡(2005)で観察された結果より高いように見えた。この ことは、玉岡(2005)は文法テストによって参加者を選出し、本研究の参加者 は日本語能力試験N1・N2 に合格した者で、必ずしも文法能力で上位にあるわ けではないことに関連すると思われる。つまり、文法能力の差異によって文正 誤判断での誤答率に差異が出てくるということである。
一方、日本語学習者によるガニ能動文の処理について、調べた範囲では日本 語学習者にガニ能動文の処理について実験を行った研究は見当たらない。本研 究における日本語学習者によるガニ能動文の処理において、かき混ぜ文と基本 語順文の反応時間の差も文正誤判断での誤答率の差も統計的に有意ではなか った。すなわち、日本語学習者によるガニ能動文の処理はガヲ能動文の処理と 異なり、かき混ぜ文は基本語順文より長い反応時間を要していない。文正誤判 断において、かき混ぜ文と基本語順文の誤答率に差異がないということである。
つまり、日本語学習者のガニ能動文の処理において、反応時間にも文正誤判 断での誤答率にもスクランブル効果が見られなかった。日本語学習者がガヲ能 動文の処理のように、基底構造によって文処理をすることが見られなかった。
そのため、今回の実験では、日本語学習者にガニ能動文の基底構造が構築され ているかは確認できなかった。このことは、上に言及したように、日本語学習 者にとって、「ニ格」で目的語を表すことになじみ度が低いと思われる。また、
ガニ能動文の処理において、構文の種類の判断が必要である。この判断は文処 理に負担をかけると考えられる。そのため、日本語学習者による正しいガニ能 動文の反応時間と文正誤判断での誤答率にはかき混ぜ文と基本語順文の差が 見られなかったのである。しかし、日本語学習者による誤ったガニ能動文の処 理において、正しいガニ能動文の処理と同じく、構文の種類の判断が必要であ
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り、誤ったガヲ能動文の処理と同じく、文におけるすべての名詞句を再確認す る必要があると考えられるが、誤ったガニ能動文の反応時間にスクランブル効 果が観察された。この誤った能動文の処理にスクランブル効果が見られた原因 については、今後の課題とされたい。
また、本研究で観察された日本語学習者による二項動詞の能動文の文正誤判 断での誤答率について、ガヲ能動文の基本語順文は 34.31%で、ガニ能動文の 基本語順文は 51.19%で、ガニ能動文の誤答率はガヲ能動文より高かった。こ のような傾向は、日本語学習者が形態で、つまり、格助詞の標示(ヲ格かニ格 か)で文型を覚えることに起因するのではないかと思われる。日本語学習者が
「ヲ」で標示される格がある文を他動詞構文であると判断する傾向があるため、
「目的語」を表す項は「ニ格」であるガニ能動文の文正誤判断課題の実験にお いて、誤答率はガヲ能動文より高かったのである。
最後に、本研究の実験で、中国語を母語とする日本語学習者によるガヲ能動 文の反応時間は、玉岡(2005)の結果と大きな差が見られないように見える。
しかし、本研究の実験結果における誤答率は玉岡(2005)で観察された誤答率 より高かった。反応時間の傾向は、玉岡(2005)と本研究の実験ともに JSL の 学習者を対象にしたことに帰結できると考えられる。一方、玉岡(2005)は文 法テストを用いて実験参加者を選別したため、参加者は全員文法能力で上位に ある。これに対して、本研究の実験参加者は、日本語能力試験N2・N1 に合格 した者であるが、全員文法能力で上位にあるわけではない。そのため、誤答率 については上記のような差が見られたと考えられる。
3.6 まとめ
本研究における二項動詞の能動文の実験では、日本語母語話者と中国語を母 語とする日本語学習者による文正誤判断課題における反応時間と誤答率につ いて分析した。
まず、3.1 では、二項動詞の能動文の実験に対する予測を立てた。3.2 では文 正誤判断課題の実験に用いられる例文を選出するための予備調査について述 べた。そして、3.3 では、日本語母語話者による二項動詞の能動文の実験結果 について述べた。3.4 では、中国語を母語とする日本語学習者による二項動詞 の能動文の実験結果について述べた。最後に、3.5 では二項動詞の能動文の処 理について今回の実験結果に基づき分析した。
本研究の二項動詞の能動文の実験を通じて、海外(台湾)にいる日本語母語
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話者は日本国内の日本語母語話者(Tamaoka et al., 2005)と同じく、ガヲ能動 文についての基底構造を構築していることが分かった。また、本研究における 日本語学習者にも海外(中国)の中国語を母語とする日本語学習者(玉岡2005)
と日本語母語話者(Tamaoka et al., 2005)と同じく、ガヲ能動文についての基 底構造が構築されていることが明らかとなった。そして、日本語母語話者も日 本語学習者もこの基底構造によってガヲ能動文を処理すると考えられる。しか し、今回の実験では、日本語母語話者と日本語学習者がガヲ能動文と同じよう に、基底構造によってガニ能動文を処理するかは確認できなかった。
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第三章では、日本語母語話者と中国語を母語とする日本語学習者を対象にし て行った二項動詞の能動文の実験結果について述べた。つづいて、この章では、
日本語母語話者と中国語を母語とする日本語学習者を対象にして行った三項 動詞の能動文の実験結果について述べる。まず、4.1 では、先行研究に基づき、
三項動詞の能動文の実験に対する予測を立てる。4.2 では、三項動詞の能動文
三項動詞の能動文の実験に対する予測を立てる。4.2 では、三項動詞の能動文