第三章 調査概要
3.2 品詞判定
本節では、前節で意味を考察した四種類の中で<同形同義>に属する 2395 語 の中国語品詞を確認し、形容詞に属する同形同義語を抽出し、日本語において どの品詞に属するかを調べる。中国語と日本語の品詞判定の詳細は 3.2.1 と 3.2.2 で述べる。
3.2.1 中国語における同形同義語の品詞
<同形同義>に属する 2395 語は中国語においてどの品詞に属するかを、辞典 とコーパスを用い、両方とも品詞が同じであるものだけを採用する。ただし、「漢 語平衡語料庫」では一般形容詞が状態動詞と記されるものに含まれているので、
表 2-1(p.11)で示した中国語における形容詞と動詞の区別を参照し、一般形容 詞を確認する。
類別 語例 語数 占める率(%)
同形同義 表情 2395 73.3%
類形同義 段階 107 3.3%
同形異義 暗算 246 7.5%
日本語特有 愛想 518 15.9%
合計 3266 100%
なお、次のように示す品詞の認定に問題があるもの 43 語と確認できないもの 27 語を調査対象から除く。
辞典とコーパスに品詞標示が不一致になる語(43 語)
意外、永久、基本、共通、公用、故障、個別、失礼、終日、執着 上等、私立、新婚、親善、垂直、正規、正式、単独、中立、定期 適度、適用、徹夜、同一、同等、堂々、同様、独裁、不可、不在 不利、平行、飽和、没落、密集、無限、無数、野生、有益、優先 有望、悠々、有利
辞典に見つからず、コーパスにおいてだけ見つかる語(23 語)
有無、快適、過剰、過労、簡素、喫茶、共学、共感、強力、国定 極楽、最終、清純、適性、適切、特有、年長、微量、不吉、無礼 未知、無言、良質
コーパスに見つからず、辞典においてだけ見つかる語(2 語)
窮乏、不順
辞典にもコーパスにも見つからない語(2 語)
過密、必死
以上のように考察に適さない 70 語を除き、残りの 2325 語の中国語品詞を判 定した結果、次の表 3-2 となる。
表 3-2 中国語における<同形同義>語の品詞
表 3-2 から分かるように、中国語において名詞になる語(ア類)は約 5 割、
動詞及び動詞兼他品詞になる語(イ類)は約 4 割弱、形容詞及び形容詞兼他品 詞になる語(ウ類)は約 1 割を占めている。この 1 割の詳細については表 3-3 のように示しておく。
表 3-3 ウ類(形容詞及び形容詞兼他品詞)の詳細
表 3-3 から、ウ類の中で形容詞に属する語は約 7 割を占めており、形容詞兼 他品詞に属する語は合わせて 3 割を占めていることが分かった。
中国語品詞 語例 語数 占める率(%)
ア.名詞 表情 1224 53.4%
イ.動詞及び動詞兼他品詞 暗殺 856 36.2%
ウ.形容詞及び形容詞兼他品詞 曖昧 221 9.4%
エ.副詞及び副詞兼他品詞 大抵 23 1.0%
オ.助詞 云云 1 -
合計 2325 100%
ウ 類
中国語品詞 語例 語数 占める率(%) 形 曖昧 151 68.3%
形・名 安全 20 9%
形・動 豊富 36 16.3%
形・副 特別 12 5.4%
形・副・名 自然 2 1%
合計 221 100%
3.2.2 日本語におけるウ類の同形同義語の品詞
表 3-3 から中国語においてウ類(形容詞及び形容詞兼他品詞)に属する語は 221 語あると分かったが、以下はその中で形容詞に属する 151 語に焦点を当て、
日本語での品詞を検討してみる。品詞標示は『角川必携国語辞典』及び『岩波 国語辞典 第六版』を用い、両方とも同じであるものだけを採用するが、辞典 のみで明確にできないもの(例えば(Ⅲ)第三形容詞と(Ⅴ)規定用法のみの形容 詞)についてはさらにコーパス「書き言葉均衡コーパス NLB」を利用して記述す る。その結果は表 3-4 に示す。
表 3-4 日本語において形容詞に属する 151 語の品詞 中国語品詞 日本語品詞 語例 語数 占める率(%)
形容詞
形容詞の用法が
見られる 曖昧 129 85.5%
形容詞の用法が
見られない 一致 22 14.5%
総語数/合計(%) 151 100%
表 3-4 が示したように、この 151 語は日本語において形容詞の用法が見られ るものと見られないものの二種類に大別することができる。前者は 129 語あり、
85.5%を占めているのに対し、後者は 22 語あり、14.5%を占めていることが分 かった。中国語においては形容詞であるにもかかわらず、日本語においては形 容詞の用法が見られず、全く異なった品詞になるこの 14.5%は、学習者にとっ て非常に混乱しやすいのではないか。