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第二章 先行研究

2.1 形容詞とは何か

2.1.1 中国語において

2.1.1.1 意味、語法特徴、分類

Ⅰ、意味

中国語においての形容詞とは何か、次のような言及がある。蔡宗陽(2008)

は「所謂形容詞,是指用來區別或表達、修飾人、事、物的形狀、狀態、性質的 詞。」とし、鹿琮世ら(1988)は「形容詞とは、性質や状態を表す言葉である」

と述べている。すなわち、形容詞とは人や物事の性質や状態を表す言葉である ということが言えるだろう。

Ⅱ、語法特徴

輿水優(1985)と潘文娯ら(2000)によると、形容詞の語法特徴は次の三点 がある。

① 大部分は程度副詞(「很」、「非常」など)の修飾を受ける。

例: 老師很親切。(先生はとても親切です。)

② 後ろに賓語4を置くことができない。

例: 老師親切我。→非文

③ 重ね形を作る場合、その形式に動詞と異なる所がある。5 例: 他那大大方方的舉止,給人留下了好印象。

(彼のおっとりしている立ち振舞は、私達に好印象を与えた。)

中国語の形容詞は、述語になることや助詞「了」を後ろに置くことができる ことなど、語法の面で動詞と共通している部分が多いが、上述した三点は形容 詞の主要な特徴であり、動詞と区分する依拠にもなると言えよう。

4 賓語は中国語の文の成分の一種であり、日本語の目的語に相当する。

5 動詞の重ね形は一般的に ABAB 型である。(例:對這種人,不教訓教訓不行。)それに対し、形 容詞の重ね形は一般的に AABB である。(例:白紙黑字寫得清清楚楚。)

Ⅲ、分類

高橋弥守彦(2006)や潘文娯ら(2000)によると、形容詞はその語が文にお いてどのような成分になるかによって、さらに一般形容詞と非述形容詞6に分け ることができる。

一般形容詞は例(1)~(6)のように、文中では主に定語と述語として用い られるが、状語や補語のほか、主語や賓語にもなる。7また、程度副詞の修飾を 受けることもできる。

(1) 他是一個勇敢的孩子。[定語](彼は勇敢な子供です。)

(2) 這間屋子很安靜。[述語](この部屋はとても静かです。)

(3) 他們認真討論了這個問題。[状語](彼らは真剣にこの問題を討論しま した。)

(4) 她寫字寫得很漂亮。[補語](彼女は字をとてもきれいに書きます。)

(5) 謙虛使人進步。[主語](謙虚さは人を進歩させます。8

(6) 大家追求美麗。[賓語](みんなは美しさを求めます。)

[以上の例9は高橋弥守彦(2006)より]

ここで中国語の形容詞は主語と賓語になることに注目したい。このように主 語と賓語になり、名詞のような働きをする形容詞を、「形容詞の名詞化」や「名 詞として使われた」ということがあるが、輿水優(1985)は単に主語や賓語の

6 中国語では「非謂形容詞」と称するが、ここでは輿水優(1985)において称する日本語の名称 を用いる。

7 鹿琮世ら(1988)によると、主語、述語、賓語、定語、状語、補語はいずれも中国語の文の成 分である。主語は陳述の対象であり、述語は主語に対する陳述である。賓語は動詞の影響の及ぶ 対象であり、動詞の支配を受けるもので、動詞の後ろの置かれる。定語と状語はともに修飾語の 一種である。前者は連語の中で名詞を修飾するもので、後者は連語の中で動詞と形容詞を修飾す るものである。補語とは、動詞あるいは形容詞の後に置かれる補充成分である。動詞の後ろに置 かれ、主として動作に対して補充説明を加えるものである。 鹿琮世ら(1988)p.11-12 を参照 。

8 高橋弥守彦(2006)では「謙虚な人は進歩する」というふうに訳したが、ここは筆者が元の中 国語の文型を重視したいと考え、この文の日本語訳に使役文を用いたわけである。

9 中国語の形容詞はその構成の上から、単音節形容詞(例:大、快)、二音節形容詞(例:安静、

勇敢)、複合形容詞(例:鮮紅、雪白)、後置成分のついた形容詞(例:亮晶晶、糊里糊塗)の四 種類に分類される。ここでは、二音節形容詞を例として挙げることにした。

位置を占め得ることというだけでは、その形容詞が名詞との兼類になるとは言 いがたいと指摘した。次の例(7)~(9)が示すように、賓語の位置に置かれ た形容詞(「大膽」)は「不」で打ち消すことができるし、程度副詞の修飾を受 けることもできるなど、形容詞の文法的な性質は失われていないため、名詞と するのが適切でなく、あくまでも形容詞であると述べている。10

(7) 我要學習大膽。(私は大胆になるのを学ぶ。)

(8) 我要學習不大膽。(私は大胆にならないのを学ぶ。)

(9) 我要學習更加大膽。(私はより大胆になるのを学ぶ。)

中国語において、形容詞が名詞という品詞を兼ねているかどうかについて、そ の語が主語や賓語になることができるかのみでは判定することはできないと分 かった。11

非述形容詞は文中では定語のみとして用いられ、状語、述語、補語などにな ることができない。程度副詞の修飾を受けることもできず、「区別詞」とも呼ば れる。高橋弥守彦(2006)、潘文娯ら(2000)によると、一般形容詞と異なると ころは次の三点である。

① 一般形容詞の前には、程度を強調する副詞「很」などを用いること ができるが、非述形容詞はそれができない。

例: 【一般形容詞】簡単的方法(○)、很簡単的方法(○)

【非述形容詞】唯一的方法(○)、很唯一的方法(✕)

10 中国語において、形容詞も動詞も主語や賓語の位置に置くことができる。その場合、形式も 変わらないし、動詞や形容詞の特性も失われない。この論述について、朱德熙(1985)「关于动 词形容词“名物化”的问题」では詳しく検討されている。また、高橋弥守彦(2006)もこの言語 現象を「位置優先説」と説き、体言性の枠組み的な意味が加味されるが、形容詞は形容詞で、動 詞は動詞であると主張した。

11 潘文娯ら(2000)はある形容詞が具体的な物事を指し示すことができ、あるいは数量詞や性 質、数量を表す形容詞の修飾を受けることができる時、名詞との兼類になると指摘した。輿水優

(1985)は副詞「很」の修飾を受けるが、動詞「有」の賓語になることができ、数量詞の修飾を 受けるといった特徴を持つものは「名形詞」と呼び、形容詞の下位区分とする。

② 非述形容詞は、「不」ではなく「非」を用いて否定形を作る。

例: 不大型(✕)→非大型 不人造(✕)→非人造

③ 一般形容詞は言語環境があれば単独でも述語になれるが、非述形容 詞が述語のようになる場合は一般には「的」(de)を用いなければな らない。この場合はその前に「是」を用いるので、述語ではなく、

「的」(de)の連語で作る賓語と言うほうが良いだろう。

例:我家有一輛國產汽車12。[定語](我が家には国産自動車が一台ある。) 我家那輛汽車是國產的。(我が家の自動車は国産です。)