第五章 終論
5.1 結び
中日同形同義二字漢語については、中国語と日本語において形も意味も同じ であるが、品詞は一致しないということは珍しくない。先行研究では、学習時 間の長い上級レベルの学習者にでも漢語の品詞の把握に誤りが生じる現象が存 在するとも指摘している。よって本研究は、学習者の漢語習得に些か力を捧げ たいと考え、中日両言語における中日同形同義二字漢語の品詞転換についての 考察を始めた。
第一章では、研究動機・目的をもとに、中国語では形容詞に属する中日同形 同義二字漢語を研究対象に絞り、本研究の位置づけを明確にした。
第二章では、中国語と日本語における形容詞とは何かを明らかにしたことに より、本研究における中国語と日本語の形容詞の範疇を確定した。また、実例 を用いて調査した中日同形語に関する先行研究を検討し、問題点を考えた。
第三章では、「日験出題基準」1・2 級の語彙表から中日同形同義二字漢語を抽 出した。そして、辞典及びコーパスを用いて中日両言語における品詞の考察基 準とし、中国語では形容詞に属する中日同形同義二字漢語が日本語においてど の品詞に属するかという品詞対応の調査を行った。
結果、中国語では形容詞に属する中日同形同義二字漢語 151 語が日本語にお いても、形容詞の用法が見られるものは 8 割を上回っているが、見られないも のもおよそ 1 割強を占めていることが分かった。そして、形容詞の用法が見ら れないものの中ではサ変動詞になるタイプが最も多いことが本研究で新たに明 らかになり、さらなる検討の価値があると示唆された。
第四章では、この 151 語を日本語において形容詞の用法が見られるグループ の 129 語と見られないグループの 22 語に分け、さらに品詞の対応傾向によって
【A】~【K】の 11 タイプに細分化した。その後、「分類語彙表」を通じ、意味
の観点から各タイプの特徴や傾向を考察すると同時に、後続の名詞を修飾する
かった。なお、「-の」を用いる傾向の有無を考察するには、(存在)(特徴)
図 5-1 は中国語では形容詞である中日同形同義二字漢語の日本語における品
中国語では形容詞である中日同形同義二字漢語は[抽象的関係]の意味を持 つか、[人間活動-精神及び行為]の意味を持つかによって二分される。[抽象 的関係]の意味を持つ語はおおよそ日本語においても形容詞の用法を持ってい る。[抽象的関係]は中項目の<様相>や<存在>、及び分類項目の(特徴)に よってさらに下位に分類できる。一方、[人間活動-精神及び行為]の意味を持 つ語は日本語において形容詞の用法が見られることもあれば、見られないこと もある。さらに中項目<心>の意味の有無、(好悪・愛憎)や“変化”という動 的過程を意味するかによって区別される。
図 5-1 は、中日同形同義二字漢語(中国語では形容詞である)の中日両言語 における品詞対応を意味の観点から考察した傾向を基に作られたものである。
無論、この傾向に当てはまらないものもあるだろうが、一種の参考基準として 学習に役立てることができるのではないかと思われる。