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政府の取るべき地方復興支援策

第五章 地方再生計画

第二節 政府の取るべき地方復興支援策

一、 都市と地方の賃金格差の是正

人口の一極集中現象は多くの方面で様々な社会問題を引き起こしているが、その中 で最も深刻な現象は、多くの地方では若者が都会へ出て行ってしまい、少子高齢化が 益々進み、過疎化が加速している事である。そして、この現象に追い討ちをかけてい るのが都市と地方の賃金格差である。

図 5-7 全国都道府県民の個人所得格差

出所:内閣府「2011 年度県民経済計算」に基づいて筆者作成。

先ず内閣府「平成 23 年度(2011)県民経済計算」の各県の所得格差を見ると、第一 位の東京都民の一人当たりの年間所得は 4,373,000 円で、下位から三番目の宮崎県は 2,208,000 円、下位から二番目の高知県は 2,199,000 円で、最下位の沖縄県は 2,018,000 円と三県の個人所得は全て東京都の半分以下である。

もう少し正確に説明すれば、二位の静岡県から七位の広島県までは、かろうじて 300 万円台を維持しているが、八位の栃木県から最下位の沖縄県まで一府一道三十八県全 てが 200 万円台である。この事実から、いかに東京都の収入が突出しているかがわか る。

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更に注目すべきは、最低賃金の地域格差である。そもそも最低賃金とは最低賃金法 に基づき定められた賃金が最低基準で、経営者は最低賃金額以上の賃金を労働者に支 払わなければならないとされている。この最低賃金にさえも地域格差が生じているの である。

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徳島 679 (666) 平成 26 年 10 月 1 日 香川 702 (686) 平成 26 年 10 月 1 日 愛媛 680 (666) 平成 26 年 10 月 12 日 高知 677 (664) 平成 26 年 10 月 26 日 福岡 727 (712) 平成 26 年 10 月 5 日 佐賀 678 (664) 平成 26 年 10 月 4 日 長崎 677 (664) 平成 26 年 10 月 1 日 熊本 677 (664) 平成 26 年 10 月 1 日 大分 677 (664) 平成 26 年 10 月 4 日 宮崎 677 (664) 平成 26 年 10 月 16 日 鹿児島 678 (665) 平成 26 年 10 月 19 日 沖縄 677 (664) 平成 26 年 10 月 24 日 全国加重平均値 780 (764)

注:2014 年 9 月 26 日現在の改定状況

出所:厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧を参照。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumi

厚生労働省の「平成 26 年度地域最低賃金改定状況」を見ると、東京の一時間当たり の最低賃金 888 円に対し、最も低い鳥取,高知、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄七県 の一時間当たりの最低賃金は 677 円で、その差が実に 211 円もある。仮に一日 8 時間 週 5 日一ヶ月間働いたとすると、東京都では 888×40x4=142,080 円となり、下位七県 では、677×40×4=108,320 円で、その差は 33,760 円にもなる。この差額に 12 ヶ月を掛 けると年収で 405,120 円もの大きな差額になるのだ。

労働者を保護する為に制定された最低賃金法の運用によって地域間でこんなにも 酷い格差が生じる事が許されてもいいものだろうか?これは格差と言うよりも完全 な差別であり、民主国家の「法の下での平等」の概念を大きく逸脱している。日本国の 統治者として日本政府は「地方創生」を唱える前に最低賃金法の実施内容を適正化す べきである。

二、 既存の支援策の更なる充実

(一)農業者戸別所得補償制度の改訂

本制度に関しては、本章第一節の一の(三)において、概要は既に検討しているの で、その内容を一から見直すのではなく、地方再生のために都市住民に地方への移住 を促し、農業復興の担い手になって貰えるようにするにはどうすれば良いかと言う観 点から、一言筆者の提言を申し述べることにする。

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本制度は、農業者を過保護に遇するもので、日本農業の自立発展を妨げて、現在の 農業の衰退を招いた一因であると、非難する意見をよく耳にするし、そのことを全面 的に否定する根拠を持ち合わせているわけではないが、人生での一大決断をして、不 安な要素を一杯抱えながら地方移住に踏み出そうとしている人々に出来るだけ保護 的な対策を講じてあげることが極めて重要なことである。特に筆者が問題視するのは、

本制度実施要綱の中の「対象農業者」に関する次の三項目である。

1. 本制度の交付金の対象農業者は、対象作物の生産数量目標に従って販売目的で生 産(耕作)する「販売農家」と「集落農家」である。

2. 「販売農家」については、対象作物の販売実績のある者又は農業共済の加入者であ る。

3. 「集落営農」については、複数の販売農家により構成される農作業受託組織であっ て、組織の規約及び代表者を定め、且つ対象作物の生産、販売を共同販売、経理 を行っているものである。

上記の農業者戸別所得補償制度の内容を見ると、既存の農業者や営農組織を保護し、

維持することのみに重点を置いていて、少子高齢化現象によって、農業従事者が高齢 化し、地域農業の運営が日に日に困難になりつつある現実を改善するために、若い年 代層の就農意欲を掻き立て、地域農業を活性化しようという積極的視点を全く欠いて いると言わざるを得ない。自分の農地も家も無い都市の人々が、地方に移住し、地域 の発展に貢献することを期待するならば、まず迎え入れる体制を整備すべきである。

(二)「地域おこし協力隊」と「田舎で働き隊」

1. 地域おこし協力隊

地域おこし隊とは都市地域から過疎地域等の条件不利な土地に住民票を移し、生活 の拠点を移した人に、地方自治体が「地域おこし協力隊員」として委嘱するものである。

隊員は一定期間、地域に居住して、地場産業の開発、育成等の地域おこしに協力した り、農林水産業に従事して、地域住民への生活支援活動に参加しながら、隊員自身の 地域への定住、定着を図る取り組みである。

この活動の主催者は地方自治体であるが、実質的な仕掛け人は総務省であり、特別 交付税により、次の様な財政支援を行っている。

第一、 地域おこし協力隊員の活動に要する経費として隊員一人当たり 400 万円を 上限に支給する。

第二、 又地域おこし協力隊員の募集等に要する経費については、一団体あたり 200 万円を上限に支給される。そして、隊員の活動期間は概ね一年以上三 年以下と規定している。政府は 28 年度の募集目標を約 3000 名としている が、過去の実績は次の通りである。

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表 5-2 地域おこし協力隊員数、取組団体数の推移

21 年度 22 年度 23 年度 24 年度 25 年度 隊員数 89 名 257 名 413 名 617 名 978 名 団体数 31 団体 90 団体 147 団体 207 団体 318 団体

出所:総務省「地域おこし協力隊員について」

(http://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/about/index.html)より引用。

上記の隊員数の内訳を見てみると、隊員の約 40%が女性であり、約 80%が 20 歳代 と 30 歳代であり、しかも約 60%の隊員が任期終了後同じ地域に定住していることが 平成 25 年 6 月末現在の調査で判明している。実際、この活動以上に、少子高齢化の 進行に歯止めを掛け、しかも地域再生に実効性のある試みは現在のところ考えられな い。

安倍内閣は募集目標を約 3,000 名なんて言っていないで、日本の国力の全てを集中 して、この活動を最大限に拡大することを提言する。

2. 田舎で働き隊

上述の地域おこし協力隊の場合は、総務省主管の活動事業であるのに対し、田舎で 働き隊の活動は、農林水産省が主導している。そして、農林水産省はこの制度の設立 趣旨について次のように指摘している。66

農村の活性化には、それを担う人材が必要となるが、高等教育機関や安定した就業の場が ないことから、農村では青年層を中心に都市部への人口流出等が進み、活性化の担い手とな る人材が不足している。一方、都市住民の間では、農村への関心が高まっており、また都市 住民が農村と協働して農村活性化に向けた取り組みに携わり、外部の者ならではの「気付き」

をきっかけとして、農村の活性化が進展している事例も見られる。このように、都市と農村 の協働は、農村の活性化を図る上で有効な手段の一つであると考えられるが、その推進のた めには、農村と都市部等の人材をつなぐ有効かつ、汎用性の高い仕組みの存在が必要である。

このため、「田舎で働き隊」事業(農村活性化人材育成派遣支援モデル事業)において、都市部 等の人材を農村の活性化のために活用するための人材の仲介業務を支援することとする。

筆者は「地域おこし隊」と同様、「田舎で働き隊」の活動方針に全く賛同する。何故な らば、前にも述べたように、これら二つの活動以外に現在のところ、少子高齢化を食 い止め、日本の出生率を上昇させ、人口減少に歯止めを掛ける為に有効な方策は、他 に殆ど行われていないからである。

しかし、ここで筆者が問題視しなければならないのは、日本の行政機構の悪弊の最

66 「「田舎で働き隊!」事業(農村活性化人材育成派遣支援モデル事業)の募集について」、農林水 産省、http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/081224_1.html

71 期対策(2005~2009 年)、第 3 期対策(2010~2014 年)を経て、高齢化に配慮した、

より取り組みやすい制度へと見直した上で、2015 年度より第 4 期対策として新たなス