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第一章 序論

第二節 研究目的

て、作戦範囲を拡大することになれば、現状規模の自衛隊員数では、賄うことが不可 能になることは火を見るよりも明らかである。

実際、日本の自衛官に対する一般的な日本国民の見方は、他国民の軍隊に対する見 方と大きく異なり、警察官や消防士と同様、各種国家公務員や地方公務員等の就職口 の一種として頭の中で捉えており、55 歳の定年(一般公務員の定年は 60 歳)で退職す るまで勤め上げて、退職金を貰えることを当然とする発想法である。しかし、このよ うに定年まで勤め上げる事が、自衛隊員の年齢構成において、大きな問題を齎してい る。即ち、他国の軍隊と比較して、隊員の高齢化が顕著になってきていることである。

具体的に言うと、現在の自衛隊は、士官 5 万人、下士官 14 万人、兵士 4 万人という アンバランスな構成になっている。そして、隊員の平均年齢は 1990 年には 31.8 歳で あったが、 2011 年には 35.6 歳となっていて、欧米の軍隊の平均年齢 30 歳位と比べ てかなり高く、年齢構成の見直しが求められている。

この年齢構成のアンバランスは、軍隊として兵力の劣化を意味するだけでなく、国 家公務員として勤務年数が長くなればなるほど給料、退職金などの人件費が膨らみ、

その分肝腎な軍事力を維持するための軍用機、艦艇等の装備を整えるための経費の削 減が余儀なくされることになる。その上、予算面で、自衛隊は過去何十年もの間、GDP の 1%枠という非公式な上限を課せられてきたが、少子高齢化のために例外なく増え 続ける年金、医療費等の支出を含めた人件費が膨張する中で、防衛予算への影響は避 けられない。トシ・ヨシハラが指摘しているように、日本の防衛計画では、兵員の代 替となるような技術的解決策、言い換えれば所謂ロボット技術の軍事応用が立案され ている。2009 年 12 月に自衛隊は日本初の高速無人機(UAV)の試験飛行に成功し、

国境警備やシーレーン監視から災害支援まで人間にとって危険な作業に積極的に応 用しようとしている。しかし、ロボット技術や無人機などハイテク技術を活用して任 務遂行に支障がなくても、それを操縦するのは人間であるので、やはり、トシ・ヨシ ワラが指摘するように、人口減少が日本の安全保障と国際的な安全保障環境に与える 危険性を見落としてはならない。

以上の二例から考えても、少子高齢化の齎す諸問題は待った無しで解決策が求め られており、筆者はこの問題に取り組む決意を新たにしたのである。

第二節 研究目的

一、 日本政府へ警鐘を鳴らす

日本は少子化と高齢化の点で世界のトップランナーであり、人口減少傾向が最も顕 著に見られる日本自身ばかりでなく世界のその他の国々にもどの様な影響を及ぼす のか、そして又その様な人口減少現象に対して日本が取りうる各種の対策とその効果

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を、後を追う欧州、中国、ロシア、韓国、台湾やその他の東南アジアの国々が自国の 参考にしようと、注目して見守っている。そして国連中心主義をとり、米国と経済及 び軍事同盟関係を推進する日本の政治的地位が国際社会に於いて、人口減少現象の中 でも、その高い信頼性と地位を保っていけるか否かを全世界が注目している。それ故、

多くの学者や専門家の意見や提案を参考にして、日本の取るべき最善策を描き、今ま で如何なる積極的な対策も講じようとしてこなかった日本政府への警鐘としたい。

二、 日本国民の啓蒙(問題意識の共有)

日本が現在直面している国家存亡の危機、即ち急激な少子化と高齢化による人口減 少の現象を一部の有識者以外、大部分の日本人が正しく理解していないし、全く他人 事の様に理解しようと努力していないことが正に大問題である。特にこの重大な問題 が国家にとって死活の問題であるいう意識を持つ政治家が極めて少ない事自体が正 に大問題なのである。

そのことについて、増田寛也(2013)は、前出の『中央公論』特集に収録した論文の中 で、「人口減少という日本の近未来の危機を如何に防ぐか」という問題について、以 下のように結論づけている6

残念ながら、その答えを出すのに我々に与えられた時間的余裕は少なく,解答の選択肢も 限られている。まず、人口減少に対する危機感がまだ一部の有識者にとどまっている状況を 正していく必要がある。人口減少が社会経済の各方面に与える影響を国家規模で調査分析し、

その深刻な状況を全国民が共有しなければならない。その上で、各界の有為な人材を糾合し、

国家戦略を立案し、早急に実施に移すのである。このため、国に、こうした基本構想を描く ための『中央司令塔』に当たる組織を置く。そして、その基本構想を踏まえて具体的なプラ ンを作成し、実施するために、広域ブロック単位で『地方司令塔』となる組織を置くことが 重要である。国家存立に関わる重大事態も、日本国民が真剣に立ち向かうならば、決して超 えられない課題ではない。

筆者の意見でも、誰よりも先ず政治家、特に現政府が歴代内閣の過去長年にわたっ て取り続けた殆ど効果のなかった少子化防止対策を猛省し、より有効な人口増加策を 立案し、全国民に日本国の力強い復活の未来図を示し、直ちにその実現に取り掛かる べきである。何故ならば、日本にはもう既にゆったり構えている時間の余裕が無いか らである。

さて、2014 年 9 月に、遅蒔きながら、専門家達の声を無視出来ず安倍晉三首相が第 二次安倍内閣の重要課題の一つとして『地方再生』を最大の目標に掲げて、自らの内 閣の中に地方創生大臣のポストを設けて、超大物政治家の一人である前自民党幹事長 の石破茂をその任に当たらせることになったが、その政策の具体的中身はまだ不明で

6増田寛也・藻谷浩介・小山隆夫他、前掲、31 頁。

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あり、今後を注目し続ける必要がある。上述の通り、安倍内閣はやっと重い腰を上げ たけれども、日本の少子高齢化の最大の要因である地方人口の減少を齎した農業政策 を長年に亘って推進し続けてきたのはまさに安倍晋三の属する自民党にほかならな い。

それはさておき、日本政府は勿論日本国民全員が、日本国を消滅に導く可能性大の 大変危険な現象が現在も進行中であることをしっかり認識しなければならない。そし てその現象の最大の要因の一つが正しく『人口の東京一極集中』なのである。実際、

大都市への人口集中現象はヨーロッパや東南アジア諸国に於いても見られるけれど も、『人口の東京一極集中』は日本に特有な要素を持つ現象であり、政府が強引と思 える程の対策で挑まなければ、到底解決不能な大問題である。本論文において、この 問題の幾つかの解決法を筆者の試案として呈示した。

三、 日本の取るべき国家戦略の模索

先ず最初に日本の人口減少の実態と問題点を徹底的に分析検討することにした。そ して、今後日本ではどの様に一層人口減少が進むのかを統計資料等を参考にしながら、

出来るだけ正確に推測し将来像をしっかり把握できるよう努力した。

国連統計によれば、日本は世界の高齢化の進行、出生数の減少、人口の減少のいず れの分野においてもトップに位置している。若者の数に対する高齢者の数の比率の増 大は世界の最先端にあり、その高齢化の速度は今後更に加速すると予想されている。

そして、日本の急速な高齢化の主な原因は出生率の低下、寿命の増大そして極端に少 ない移民の受け入れに由来していると言われている。

又日本の国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口」(2013 年 3 月推計)によると、2010 年に 1 億 2,800 万人の人口が、このままいけば、2060 年に 1 億人を切り、100 年後の 2110 年には 5,000 万人を下回るという驚くべき推計が出さ れている。

事ここに至っては,今迄に取られた様な小規模の対策や安易な小手先だけの対策で はどうしようもない段階にまで達しており、全国民と日本政府が一丸となって、木目 細やかで、しかも大規模な対策を本格的にかなり長期間(例えば、最低 30 年或いは 50 年以上)継続することが絶対欠かせないことである。

過去を振り返って見ると、日本では政権が短期間で交替することがあまりにも多い けれど、今後は政権を如何なる政党が掌握するかに関係なく、全国民の合意の下で 100

過去を振り返って見ると、日本では政権が短期間で交替することがあまりにも多い けれど、今後は政権を如何なる政党が掌握するかに関係なく、全国民の合意の下で 100