第三章 少子高齢化を齎した背景と要因分析
第四節 人口の東京一極集中
最近あらゆる機会や場所でよく耳にする『東京への一極集中』と言うフレーズは文 字通り、政治、経済、文化、人口など日本社会における資本、資源、学術、その他商 業活動等の拠点が東京都に一極集中している状態を指している。
表 3-6 世界の都市圏人口順位
順位 都市圏 人口
1 東京
37,126,000
2 ジャカルタ
26,063,000
3 ソウル 22,547,000
4 デリー 22,242,000
5 マニラ 21,951,000
出所:Demographia(2012 年)、インターネット「東京一極集中―Wikipedia」、
http//ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%B8%80%E6%A5%B5…
より引用。
実際、人口だけから見ても現在東京は断然世界一の巨大都市である。では何故東京
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はこの様なマンモス都市になり、今尚人口流入が続いて膨張しつづけるのか、そして 日本の人口の東京への一極集中が日本の人口動態に如何なる影響を及ぼしていて、又 将来どの様な結果が予想されるのかについて、この節で検討する。
一、現状分析
2000 年の国勢調査と 2005 の国勢調査の数字40を比べてみると、東京都、神奈川県、
千葉県、埼玉県の一都三県で約 100 万人増加し、2010 年の国勢調査によれば 2005 年 からの 5 年間で東京都は 585,140 人、神奈川県は 257,913 人、千葉県は 160,657 人、そ して埼玉県は 140,575 人人口が増加し、一都三県の増加人口は 1,144,285 人に達した。
平成 26 年 9 月 17 日付の内閣府の資料によって、このような首都圏への人口転入を 年代別に見てみると、15 歳から 24 歳までの若年層の割合が圧倒的に大きく、進学や 就職の機会に東京に移動していることが窺われる。事実、10 代後半に若者は、北関東、
中部、東北を中心に全国から相当数が首都圏の大学に進学し、地方の大学に進学した 若者も 20 代前半に首都圏の企業又は官職に就職する傾向がある。
図 3-8 首都圏の大学に進学した学生の出身地域(2013 年)
出所:学校基本調査(内閣府平成 26 年 9 月 17 日)より引用。
それでは、何故若年層の東京等の大都市への流入と地方での若年人口の減少が起こ るかといえば、地方と比べて各種産業の豊富な職種と雇用機会に恵まれるからであり、
更に所得の大きな格差も背景にある。
円高によって地方の工場が海外移転したり、閉鎖に追い込まれたりして、地方での 雇用機会が失われたこともあって、農業、建設業、製造業等の就業者数が減少してい
40「国勢調査」(平成 22 年度)、総務省統計局、http://www.stat.go.jp/data/kokusei/index.htm
総数:76,744 人
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る一方、東京圏における情報通信業や専門・技術サービス等の就業者数は増加してい る。
表 3-7 年間収益 10 億ドル以上の大企業の本社数
順位 都市圏 企業数
1 東京 613
2 ニューヨーク 217
3 ロンドン 193
4 大阪 174
5 パリ 168
出所:マッキンゼー・アンド・カンパニー、インターネット「東京一極集中ーWikipedia」、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E4%BA%AC%E4%B8%80%
E6%A5%B5 より引用。
東証一部上場企業の 52%が東京に本社を構えており、60%が首都圏に本社を置いて いる。又外資系企業の本社は 76%が東京に, 88%が首都圏に集中している。実際この ような状態は世界的に見ても異常で、上掲の表 3-7 を見れば明白である。
まず、厚生労働省の「平成 23 年人口動態統計月報年計(概数)の概況:結果の概 要」の中の表 5「都道府県別にみた合計特殊出生率」から平成 22 年と平成 23 年の出 生率の最も高い都道府県と最も低いところを十箇所ずつ選ぶとつぎのようになる。
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表 3-8:合計特殊出生率ベスト 10
順位 都道府県名 平成 23 年 東京圏 平成 22 年 東京圏
1 沖縄 1.86 -3、111 1.87 225
2 宮崎 1.68 36 1.68 846
3 鹿児島 1.64 -392 1.62 1、072
4 熊本 62 -70 1.62 1、353
5 島根 1.61 -75 1.68 273
6 佐賀 1.61 106 1.61 524
7 長崎 1.60 608 1.61 1、248
8 鳥取 1.58 167 1.54 467
9 福井 1.56 278 1.61 542
10 香川 1.56 67 1.57 760
11 大分 1.55 1.56
全国平均 1.39 1.39
注:東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の転入転出超過数(-は転出超過)
出所:厚生労働相の平成 23 年人口動態統計月報年計の概況より筆者作成。
表 3-9 合計特殊出生率ワースト 10
順位 都道府県名 平成 23 年 東京圏 平成 22 年 東京圏
1 東京 1.06 〇 1.12 〇
2 北海道 1.25 3,295 1.26 2,801
3 京都 1.25 88 1.28 1,733
4 宮城 1.25 6,154 1.30 4,023
5 奈良 1.27 423 1.29 1,089
6 神奈川 1.27 〇 1.31 〇
7 埼玉 1.28 〇 1.32 〇
8 大阪 1.30 3,719 1.33 9,094
9 千葉 1.31 〇 1.34 〇
10 秋田 1.35 2,059 1.31 2,541
全国平均 1.39 1.39
注:東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)の転入転出超過数(.○印は首都圏)
出所:厚生労働相の平成 23 年人口動態統計月報年計の概況より筆者作成。
38 図 3-9:都道府県別合計特殊出生率(2011 年)
出所:厚生労働省平成 23 年人口動態統計月報年計(概数)の概況:結果の概要を引用。
上記の二つの合計特殊出生率に関する二つの表と、分布地図から分かるように、出 生率の高い県は主として沖縄九州と山陰地方に集中している。又低い地域は北海道や 宮城は別として、首都圏と大阪や京都等関西圏の人口密集都市に多い。この原因を科 学的に正確に証明するのは難しいけれども、おおよその原因と理由は見当がつく。
2013 年の農業産出額の全国順位においても、鹿児島は北海道、茨城についで第三位 にあり、熊本は五位、宮崎は七位で、全国七都道府県中九州勢が 3 つの座を確保して いる。
表 3-10 全国農業産出額順位ベスト 7(畜産の産出額を含む)
順位 都道府県名 産出額(億円)
1 北海道 10,137
2 茨城 4,097
3 鹿児島 4,069
4 千葉 4,009
5 熊本 3,113
6 愛知 2,948
7 宮崎 2,874
全国計 93,455
出所:なるほどの素 http://blog.livedoor.jp/veritedesu/archives/1898565.html を参照。
このように、九州は農業や漁業が盛んで、2007 年 8 月の九州農政局発表の「九州の
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なく、全国民的議論を展開する必要性が生じている。
こうした状況下で、一つの救いは 2014 年の内閣府「農山漁村に関する世論調査」
によれば、都市住民の 3 割以上が農山漁村への定住願望があり、2005 年の調査時の約 1.5 倍に増加していることである。そして、彼等の定住実現の必要条件は『医療機関 の存在』、『生活を維持出来る仕事があること』、『家屋、土地を安く購入出来ること』、
『居住地の決定に必要な情報を入手出来ること』、『生活に必要な交通手段が確保出来 ること』などが上位に来ている48。この都市住民の意識の変化は、筆者の考えでは、
日本各地の農山漁業を蘇らせ、合計特殊出生率を復活させる切り札になる可能性大で あり、その為の活用法の一つとして、全国で増え続ける空き家等も有効的に利用でき るメリットも生じる。
更にもう一つ、総務省の「地域おこし協力隊の概要」及び「平成 23 年度地域おこ し協力隊の任期終了に係るアンケート結果」によれば、地方自治体が地域おこし隊員 として都市住民を受け入れ、一定期間以上、農林漁業の応援、水源保全、監視活動、
住民の生活支援等の各種の地域協力活動に従事しながら、当該地域への定住、定着を 図っていく総務省の制度で、任期は最長で 3 年で、総務省から隊員一人に対して 400 万円を上限として財政支援しており、70%近くの隊員が任期終了後も当該地域に定住 しているという49。この政策は極めて現実的で有効な政策であり、益々その規模を拡 大することを期待したい。
47道州制:北海道以外の地域に数個の州を設置し、それらの道州に現在の都道府県より高い地方自治権 を与える構想。
48 「農山漁村に関する世論調査」、内閣府世論調査、2014 年 6 月、
http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-nousan/
49 「地域おこし協力隊」、総務省、
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html;「平成 23 年度地 域おこし協力隊の任期終了に係るアンケート結果」、総務省、2012 年 4 月 12 日、
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei08_02000026.html。
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第四章 超高齢社会への対応:社会保障制度改革
日本が直面している少子高齢化が齎す最大の問題は「社会保障財政は、高齢者人口 の生産年齢人口に対する比率の上昇によって悪化する」という方程式から逃れようが ないことである。2013 年 12 月 6 日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した 2011 年の社会保障給付費(年金、医療、介護、子育て支援等)は 107 兆 4,950 億円に達し ており、これは国民所得の 31%に相当する50。
社会保険制度とは国民が病気になったり、経済的に生活が困窮した場合に備える強 制加入の公的な生活保障制度であり、主に社会保険の形をとっていて、医療保険、年 金、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険等がある。これらの中で、本論文では、
少子高齢化社会の人口減少によって特に大きな影響を受ける年金制度と医療保険制 度について、人口減少が引き起こす問題点を考察し、日本の社会保障制度の中での両 制度の理想的な方向性をコンパクトに追求する。
図 4-1:社会保障給付費の推移
注:図中の数値は、1950、1960、1970、1980、1990、2000 及び 2010 並びに 2014 年度(予算ベー ス)の社会保障給付費(兆円)である。
出所:国立社会保障・人口問題研究所「平成 23 年度社会保障費用統計」、2012 年度、2013 年度、
2014 年度(予算ベース)は厚生労働省推計、2014 年度の国民所得額は「平成 26 年度の経 済見通しと経済財政運営の基本的態度」(平成 26 年 1 月 24 日閣議決定)を参照。
50「社会保障費用統計(平成 23 年度)」、国立社会保障・人口問題研究所、
http://www.ipss.go.jp/ss-cost/j/fsss-h23/fsss_h23.asp
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第一節 年金制度
日本の年金制度は社会保険方式で、国民皆年金が特徴である。つまり、日本国籍を 有する全ての 20 歳から 60 歳までの国民が加入し、基礎的な年金を給付する国民年金 とそれに上乗せして報酬比例の年金を支給する。民間企業に勤める人達の厚生年金と 公務員等の加入する共済年金があり、更に 1961 年に設けられた自営業や農林漁業者
日本の年金制度は社会保険方式で、国民皆年金が特徴である。つまり、日本国籍を 有する全ての 20 歳から 60 歳までの国民が加入し、基礎的な年金を給付する国民年金 とそれに上乗せして報酬比例の年金を支給する。民間企業に勤める人達の厚生年金と 公務員等の加入する共済年金があり、更に 1961 年に設けられた自営業や農林漁業者