(一)輸出自由化への背景
民国六三(1974)年から台湾政府は、バナナ輸出業務の秩序維持、輸出価格交渉能 力の増加とバナナ農家の権益保護のために、青果合作社による統一的バナナ輸出業務 を計画手配し産銷一元化(生産販売の一元化)制度を実施してきた。しかし、近年に おける台湾バナナの日本向け輸出量は年を追って減少している。また、バナナ農家・
バナナ産銷班・輸出業者は、現在の輸出一元化制度について、現状日本市場における 台湾バナナの占有率を維持することに対しすでに力不足だとして、輸出一元化への強 烈な改善策を、色々な方面を通じて度々報告している。487
この当時の、台湾バナナの日本への輸出自由化についての賛否両意見を、周妙芳(民 国九三、2004)は以下のように述べている。488
1.輸出自由化賛成意見
(1)WTO に加盟しており更に自由化を推進する、政府は青果合作社に業務の独 占をさせるべきではない。
(2)台湾バナナの日本市場における占有率は、80%から 3%に落ちている。青果
484外務省:最近の台湾情勢
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taiwan/kankei.html
485詳細は、[別表 1]を参照願う。
486文號:4554、(民国 93、2004 年 12 月 23 日)〈農業產官學界齊聚一堂,檢討加入 WTO 三年來農業因應政 策〉《農業新聞》行政院農業委員会
http://www.coa.gov.tw/show_news.php?cat=show_news&serial=9_diamond_20041224100113
487文號:4559、(民国 93、2004 年 12 月 30 日)〈我國香蕉將自明(94)年 1 月 1 日起開放自由出口〉《農業 新聞》行政院農業委員会
http://www.coa.gov.tw/show_news.php?cat=show_news&serial=9_diamond_20041230090007
488周妙芳(民国九三、2004)〈香蕉外銷制度之調整〉《農政與農情》142、行政院農業委員会 http://www.coa.gov.tw/view.php?catid=6422
合作社の力不足である。
(3)青果合作社の中間マージンは高すぎ、バナナ農家を搾取しており、バナナ農 家の生き残りは難しい。
(4)一部分バナナ農家による大規模なバナナ生産は、日本側の高品質要求に対応 している。日本での販売ルートの開拓及び農村での就業機会の増加を希望す る。
2.輸出自由化反対意見
(1)台湾バナナの生産原価は高く、単一窓口による貿易秩序を維持し日本の市場 を守ることが必要である。
(2)かんきつ類は輸出一元化を廃止し、二〇〇万箱の輸出量が一万箱強に減った ことを戒めとして。
(3)日本向けバナナの輸出自由化は、営利を目的とする。バナナの価格が低い時、
バナナ農家の権益を確保するのは難しい。
と述べ、さらに周妙芳((民国九三、2004)は「一元化輸出」及び「輸出自由化」に ついて、その利害を以下のように分析している。489
1.一元化輸出について
利:輸出秩序を維持するためには、悪性の競争は輸出価格とその品質に影響を 及ぼすことは避けられない。統一輸出は自由競争の輸出市場よりも、市場 の目的を達成することができる。
害:統一輸出は貿易業者の資格を制限し、自由化の潮流に合わない。同時に業 者がバナナ輸出市場を開拓する機会への参加を減らしている。
2.輸出自由化について
利:良好な競争状態の下、業者の日本及び日本以外の市場開拓の機会が増え、
競争力が向上する。
害:台湾バナナの日本市場における価格帯は高く、短期的には台湾バナナの市 場占有率を下げ、貿易自由化後低品質の台湾バナナが日本の価格競争でダン ピングされることもあり得る。
489同上掲注、周妙芳(民国九三、2004)
と指摘している。
農委会は周到かつ慎重に評価し、民国九三(2004)年 1 月 1 日より、日本以外の地 域に対しバナナの輸出自由化を先に実行しており、日本地域は暫時青果合作社の統一 輸出とし、1 年間の猶予期間を置いた。しかし、日本向けバナナの輸出量増加及びバ ナナ農家の所得増加は見られず、国際農産物貿易の情勢並びに、バナナ輸出の有効な 市場開拓のために、農委会は、民国九四(2005)年 1 月 1 日よりのバナナ輸出自由化 を決定した。そしてバナナ輸出の自由化後には、良好な競争環境の下、競争力の向上 及び日本市場開拓の機会増加、並びにバナナ農家は青果合作社以外の輸出業者を選択 することができることによるバナナ農家の収益増加、また安定的なバナナ産業発展等 に効果を発揮すると農委会は述べている。490
また、農委会は日本市場の開拓について、今後は、輸出バナナの品質向上、安定供 給への着手、並びに台湾バナナのイメージ作りの計画、促進販売の宣伝の有効活用、
台湾バナナ販売の風潮を作りだすとしている。そして、バナナ農家へ最新の栽培技術 を指導し、農場経営の効率向上、及び生産と販売の調整的策略による競争力の向上を 目標としている。491
(二)台湾バナナの輸出自由化後の販売経路
台湾バナナの輸出自由化に伴い、2006 年には 17 社がバナナ輸出業務に携わってい た。492また、「中華民国對外貿易發展協會・高雄辦事處」(以下略称「高雄外貿会」)
より2010 年 2 月 1 日入手した資料では、14 社が台湾バナナ輸出業務に登録されてい た。また入手資料は『Leading TAIWAN EXPORTERS 2009-2010』の内容に台湾バナナ の年間概略売上金額が記されていた。
この14 社についての状況は以下の通りである。493また、2010 年 3 月に研究者がこ の14 社に対して実施した、アンケート調査の内容を一部記す。
表3-1 台湾バナナ輸出業者に関する内容。
備考:( )内数値は、14 社に対する割合を示す。
1.ホームページを開設している ・・ 6 社(43%)
490同上掲注、文號:4559《農業新聞》
491同上掲注、文號:4559《農業新聞》
492古関善之(民国九七、2008)、p.259
493「中華民国對外貿易發展協會・高雄辦事處」から入手資料の各社ホームページを確認。
2.ホームページ内に日本語版がある・ 3 社(21%)
3.台湾バナナ輸出金額規模
・100 万㌦以下 ・・・ 8 社(57%)
・100~150 万㌦ ・・・ 3 社(21%)
・150~250 万㌦ ・・・ 1 社( 7%)
・250 万㌦以上 ・・・ 2 社(14%)
表3-2 台湾バナナ輸出業者へのアンケート調査結果 備考:( )内数値は、8 社に対する割合を示す。
1.アンケート調査実施日 2010 年 3 月 2.アンケート調査対象社数 14 社 3.アンケート回答入手数 8 社 4.バナナの入手先(複数回答有り)
A.契約農家 ・・・・・・ 7 社(88%)
B.仲買 ・・・・・・・ 1 社(13%)
C.直営農場 ・・・・・・ 2 社(25%)
D.その他 ・・・・・・・ 1 社(13%)
5.検査梱包場所
A.仲買 ・・・・・・・ 3 社(38%)
B.社内 ・・・・・・・ 3 社(38%)
C.他社集荷場、他 ・・・ 2 社(25%)
6.バナナ輸送方法
A.冷蔵コンテナ使用 ・・ 8 社(100%)
7.輸出バナナのブランド(複数回答有り)
A.北蕉 ・・・・・・・ 5 社(63%)
B.新北蕉 ・・・・・・ 1 社(13%)
C.その他 ・・・・・・ 2 社(25%)
D.OEM ブランド ・・・ 2 社(25%)
8.今後の日本向け輸出に関して(複数回答有り)
A.増加希望 ・・・・・ 3 社(38%)
B.現状維持 ・・・・・ 4 社(50%)
C.減少傾向 ・・・・・ 2 社(25%)
(三)新規輸入元を加えた台湾バナナの輸出状況
2008 年・2009 年における「財団法人日本青果物輸入安全推進協会」(以下略称、
「日青協」)会員の台湾バナナ輸入に関する資料より分析を行う。なお、日青協の資 料は、「C/T」(12kg 入り)数での統計である。495その内容を図に示すと下記[図3-3]、
[図3-4]となる。
図3-3 台湾バナナ輸出自由化後、日本市場での
台湾バナナ月別輸入数量実績 (単位;C/T、2008・09 年)
備考: ①「日青協」は、「社団法人日本青果物輸入安全推進協会」の略称を示す。
②「新台湾」は、「新台湾バナナ輸入協議会」を示す。
③「其他」は、「その他」の台湾バナナ輸入元を示す。
④「1C/T」は、「12kg入り」である。
注): 下記資料より研究者作成。
・社団法人日本青果物輸入安全推進協会・平成21年バナナ概況
http://www.fruits-nisseikyo.or.jp/asp/1ib/doc/01h21年バナナ概況 (ダウンロード;2010.03.06)
・社団法人日本青果物輸入安全推進協会【会員へのお知らせ】統計資料・バナナ http://www.fruits-nisseikyo.or.jp/asp/members_stati.asp (ダウンロード:2010.11.09) 0
20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
( 単位:C/T) 2009‐新台湾
2008‐新台湾 2009‐其他 2008‐其他
495社団法人日本青果物輸入安全推進協会・平成21年バナナ概況 http://www.fruits-nisseikyo.or.jp/asp/1ib/doc/01h21 年バナナ概況
社団法人日本青果物輸入安全推進協会【会員へのお知らせ】統計資料・バナナ http://www.fruits-nisseikyo.or.jp/asp/members_stati.asp
図3-4 日本の輸入元の台湾バナナ輸入状況(日青協統計)
新台湾 バナナ 輸入協 議会 17%
其の他 83%
(2009年)
新台湾 バナナ 輸入協 議会
14%
其の他 86%
(2008年)
注):[図3-3]より、研究者作成。
[図3-3]より、自由化以前からの輸入元であった、新台湾バナナ輸入協議会(2005 年 1 月改組、旧名称「台湾生鮮バナナ輸入協議会」)の台湾バナナの輸入状況は、従 来からの典型的な形状、3 月の春先から 7 月の初夏までの輸入となっている。冬場
(2008 年 8 月から 2009 年 1 月)の輸入は行われていない。
新規参入の輸入元への台湾バナナの供給は、基本的に春先から初夏そして秋に若干 の山を形成している。根本的に新台湾バナナ輸入協議会と異なることは、12 月~1 月 の冬場並びに8 月の夏場にも台湾バナナを供給しているということである。夏場の台 湾バナナ供給に関して、品質的に問題が無いのか疑問が生じるところである。この点 について、香蕉研究所・蔣世超博士も8 月の台湾南部のバナナは、味覚的にあまり良 くない。そのため、日本市場での台湾バナナへの印象を悪くすることが無ければ良い が、と述べている。496
また、[図3-4]より、新規参入の輸入元の占める割合が非常に多いことである。し かし、日本市場での台湾バナナの輸入量は、2008 年 9,018 ㌧(0.83%)、2009 年 8,751
㌧(0.7%)と、減少している中での数値である。497
日青協、「2008 年(平成 20 年)バナナ輸入概況」〔台湾とその他アジア〕で以下の ように述べている。498
日青協、「2008 年(平成 20 年)バナナ輸入概況」〔台湾とその他アジア〕で以下の ように述べている。498