第二章 先行研究
2.3 問題提起と研究課題
國
立 政 治 大 學
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l C h engchi U ni ve rs it y
2.3 問題提起と研究課題
まず、言われのない非難場面に関する先行研究の多くは日本語と他言語によ る対照研究が中心であり、とりわけ「謝罪表現」に着目している。「謝罪表現」
を焦点に置く先行研究は彭(1992)、池田(1993)、田中(2004)、阿部他(2006)
がある。また、言語行動の異同を明らかにした研究は呉(2004)と末田(2015)
のみである。学習者を対象にした研究は畑佐(2013)と末田(2015)があるが、
畑佐(2013)の研究対象は英語を母語とする日本語学習者だけであり、日本語 母語話者との比較をしなかった。一方、末田(2015)の研究対象は中国、韓国、
タイ、台湾などの留学生を対象として調査を行ったが、出身国が異なる人にそ れぞれの言語行動の特徴があり、各自の傾向を捉えることができないと考えら れる。
次に、先行研究では互いに矛盾した研究結果が出ている。まず、日本人が他 言語の人に比べ謝罪が多いかということについて、彭(1992)と末田(2015)
は日本人の言語行動を他言語の人の言語行動と比較し、日本人は謝罪が多いと いうことが明らかとなった。これに対し、池田(1993)、田中他(2004)、呉(2004)、
阿部他(2006)では、それぞれ欧米、カナダ・イギリス、台湾、中国と比較し、
日本人は謝罪が少なく、前述の先行研究と異なる結果が出ている。次に、相手 との上下関係が謝罪との関連について、大浜(2011)は日本人は同等よりも目 上の人に謝罪が少ないと指摘しているのに対し、彭(1992)、池田(1993)、末 田(2015)は目上に対してより謝罪を多く行うという研究結果が見られる。そ して、相手との親疎関係から調査する先行研究は彭(1992)、呉(2004)、畑佐
(2013)のみである。
また、考察項目については、従来の先行研究は「意味公式の選択」で考察し たが、このような方法では調査対象の一連の表現を知ることができないと考え
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られるため、本研究では「意味公式の選択」だけでなく、「意味公式の組み合 わせ(構成要素)」も考察項目に入れ、分析していく。
更に、言語行動についての研究は、社会的要因(親疎関係と上下関係)によ って、言語表現の違いを探る必要があると考えられる。そして、言語行動は人 間の心理との関連があり、その際の研究対象の意識が分かれば、収集したデー タを解釈するための補助的手段になる。従って、日本人は「言われのない非難」
に対して、一体どのように反応するか、社会的要因によって言語表現がどう変 化するか、その状況にどのような意識があるのか、本研究を通じて、もう一度 確認する必要があると言えよう。
以上の言われのない非難場面を調査する先行研究は、ほとんど日本と他の国 との間の対照研究が中心であり、日本語学習者を対象にしたものが少ない。言 い換えると、本研究の位置付けとも関連しており、言われのない非難場面にお ける台湾人日本語学習者と日本語母語話者との言語行動の異同がまだ明らか にされていない。また、多くの先行研究では研究対象に学生と社会人が混ざっ ており、統一性に欠けているため、本研究では、大学生に絞って調査を行うこ とにした。
前述の先行研究の場面設定において、外的要因場面(外的要因に主な責任が ある)では、「事故のために電車が遅れ、30 分遅刻してしまった。(あなたは携 帯電話を持っていないので、相手と連絡することができなかった)」(田中2004、
呉2004、末田 2015)という状況を設定した。しかし、携帯電話を持っていな いのは「自分の責任」ではないかという疑いが生じ、外的要因からの責任では ないように思われる。そのため、本研究では、外的要因場面は、「交通事故に 遭い、乗っているバスが動かないため、即座に相手に遅れる可能性があると連 絡したが、相手は着信に気付かなかったり、ネットの状態が悪くて繋がらなか ったりする」という状況に改めて設定した。
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先行研究を踏まえ、以下の3 点を本研究の研究課題とする。
(1) 言われのない非難場面において、日本語母語話者と台湾人日本語学習 者はそれぞれ親疎関係・上下関係による言語行動の特徴は何か、言語
行動は人間関係にどう影響されるか。
(2) 言われのない非難場面で用いられる意味公式の選択と構成要素の使用 を考察し、日本語母語話者と台湾人日本語学習者との言語行動の共通 点と相違点は何か。
(3) 言われのない非難場面において、日本語母語話者と台湾人日本語学習 者はそれぞれ自分に対する「非難」をどのように意識するか。