第四章 分析結果と考察
4.2 日本語母語話者による言語行動
4.2.1 相手誤解場面
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また、その2 つの場面における【相手の攻撃弱化】の使用割合について、JFL はJNS よりずっと頻繁に使うことが見られた。
4.2 日本語母語話者による言語行動
本節では、日本語母語話者(JNS)の相手誤解場面・外的要因場面における 意味公式と構成要素の使用傾向を考察する。
4.2.1 相手誤解場面
この節では、JNS が相手誤解場面における親しい・親しくない先生と親しい・
親しくないクラスメートに対する場合の意味公式の選択と構成要素の使用状 況を述べる。
親しい・親しくない先生に対する場合における意味公式の選択について、表 5 と図 1 のように示す。
表5 JNS が相手誤解場面における先生に対する意味公式の使用頻度とその割合
意味公式 親しい先生 親しくない先生
頻度 割合 頻度 割合 1. 謝罪 12 18.8% 23 35.4%
2. 責任承認 3 4.7% 5 7.7%
3. 責任所在の曖昧化 16 25.0% 12 18.5%
4. 責任否定•追及 20 31.2% 16 24.6%
5. 原因の説明 0 0.0% 0 0.0%
6. 事前連絡に言及 0 0.0% 0 0.0%
7. 相手の攻撃弱化 3 4.7% 4 6.2%
8. 感情表出 6 9.4% 4 6.2%
9. 配慮 0 0.0% 0 0.0%
10.呼びかけ 4 6.2% 1 1.5%
11.その他 0 0.0% 0 0.0%
合計 64 100.0% 65 100.0%
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図1 JNS が相手誤解場面における先生に対する意味公式の割合
表5 と図 1 に示されるように、親しい先生に対する場面では、JNS の意味公 式の使用が最も多いのは【責任否定•追及】で、31.2%となっている。続いて、
【責任所在の曖昧化】(25%)、【謝罪】(18.8%)である。親しくない先生に対 する場面では、意味公式の使用が最も多いのは【謝罪】で、割合が35.4%を占 めている。続いて、【責任否定•追及】(24.6%)、【責任所在の曖昧化】(18.5%)
である。
このように、JNS は相手誤解場面における先生に対する場合では、親疎を問 わず、「責任の所在」について、主に【責任否定•追及】を使用することが見ら れたが、【責任所在の曖昧化】の使用も少なくないと言える。【謝罪】の使用に ついて、親しくない先生は親しい先生より多く、割合の差は殆ど2 倍に近いと いうことが見られた。
親しい・親しくない先生に対する場合における構成要素の使用について、表 6 と図 2 のように示す。
0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40%
その他 呼びかけ 配慮 感情表出 相手の攻撃弱化 事前連絡に言及 原因の説明 責任否定•追及 責任所在の曖昧化 責任承認 謝罪
親しい先生 親しいくない先生
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するものである。親しくない先生に対する場合では、【謝罪+責任否定•追及】
(17.5%)の組み合わせが最も多く、その次には、【謝罪】(15%)を単独で使 用するパターンである。以下は実際の回答例である。
例4. 親しい先生に対して一番多く用いられる【責任否定•追及】
「確かに2 時半に約束しましたよ!」
例5. 親しくない先生に対して一番多く用いられる【謝罪+責任否定•追及】
「待たせてしまい申し訳ないです。2 時半からの約束でしたよ。」
このように、JNS は相手誤解場面における先生に対する時、親疎を問わず、
約束の時間をストレートに相手に伝える傾向が見られた。また、親しくない先 生に、責任を否定したり、「謝罪表現」を使ったりする傾向もあれば、「謝罪表 現」を単独的に使う傾向がある。これを見ると、おそらく、JNS は親しくない 先生が自分の遅刻を認知したことにとにかくお詫びの気持ちを伝え、一層丁寧 に対応した方がいいと思われるだろう。
親しい・親しくないクラスメートに対する場合における意味公式の選択につ いて、表7 と図 3 のように示す。
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である。親しくないクラスメートに対する場合では、最も多いのは【責任所在 の曖昧化】、割合が29%となっている。以下続いて、【責任否定•追及】(22.6%)、
【感情表出】(17.7%)と【謝罪】(17.7%)である。
このように、JNS は相手誤解場面における親しいクラスメートに対する時、
意味公式の使用について、【責任否定•追及】を優先的に選択する傾向があるの に対し、親しくないクラスメートに対する時、【責任所在の曖昧化】を優先的 選択する傾向がある。また、【謝罪】の使用割合について、親しくないクラス メートは親しいクラスメートより2 倍以上多いということが見られた。
親しい・親しくないクラスメートに対する場合における構成要素の使用につ いて、表8 と図 4 のように示す。
表8 JNS が相手誤解場面におけるクラスメートに対する構成要素の使用頻度とその割 合
構成要素 親しいクラスメート 親しくないクラスメート
頻度 割合 頻度 割合
謝罪 0 0.0% 2 5.0%
責任所在の曖昧化 7 17.5% 8 20.0%
責任否定•追及 9 22.5% 10 25.0%
謝罪+責任承認 0 0.0% 5 12.5%
謝罪+責任所在の曖昧化 3 7.5% 2 5.0%
感情表出+責任所在の曖昧化 6 15.0% 7 17.5%
感情表出+責任否定•追及 10 25.0% 2 5.0%
その他 5 12.5% 4 10.0%
合計 40 100.0% 40 100.0%
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図4 JNS が相手誤解場面におけるクラスメートに対する構成要素の割合
表8 と図 4 からわかるように、JNS の構成要素の使用について、親しいクラ スメートに対する場合では、【感情表出+責任否定•追及】は最も多く使われて おり、割合が 25%となっている。その次に、【責任否定•追及】(22.5%)を単 独で使用するパターンである。親しくないクラスメートに対する場合では、【責 任否定•追及】(25%)を単独で使用するパターンが最も多く使用されている。
その次に、【責任所在の曖昧化】(20%)を単独で使用するものである。以下は 実際の回答例である。
例6.親しいクラスメートに対して一番多く用いられる【感情表出+責任否定
•追及】
「え、2 時半の約束だったよ!」
例7.親しくないクラスメートに対してよく用いられる【責任否定•追及】
「約束の時間は2 時半だよ。」
このように、JNS は相手誤解場面におけるクラスメートに対する時、親疎を
0% 5% 10% 15% 20% 25% 30%
その他 感情表出+責任否定•追及 感情表出+責任所在の曖昧化 謝罪+責任所在の曖昧化 謝罪+責任承認 責任否定•追及 責任所在の曖昧化 謝罪
親しいクラスメート 親しくないクラスメート
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問わず、約束の時間を相手にはっきり伝える傾向が見られた。また、親しいク ラスメートに対する時、最初に「え」のような驚きの感情を表出するという特 徴が観察された。おそらく、JNS は親しいクラスメートに「責任の所在」を主 張する時、「え」という驚きのリアクションを始めるのは、相手に自分がこの 誤解による怒られた状況に愕然とする気持ちを与え、「何だって!?」という 信じられないようなニュアンスが含まれているだろう。
対先生・対クラスメートの場合における意味公式の使用について、表9 と図 5 のように示す。
表9 JNS が相手誤解場面における対先生・対クラスメートの意味公式の使用頻度とそ 割合
意味公式 対先生 対クラスメート
頻度 割合 頻度 割合
1. 謝罪 35 27.1% 15 11.8%
2. 責任承認 8 6.2% 7 5.5%
3. 責任所在の曖昧化 28 21.7% 35 28.2%
4. 責任否定•追及 36 27.9% 35 28.2%
5. 原因の説明 0 0.0% 0 0.0%
6. 事前連絡に言及 0 0.0% 0 0.0%
7. 相手の攻撃弱化 7 5.4% 3 2.4%
8. 感情表出 10 7.8% 29 23.4%
9. 配慮 5 3.9% 2 1.6%
10.呼びかけ 0 0.0% 0 0.0%
11.その他 0 0.0% 0 0.0%
合計 129 100.0% 126 100.0%
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図5 JNS が相手誤解場面における対先生・対クラスメートの意味公式の割合
表9 と図 5 から見ると、先生に対する場合では、【責任否定•追及】は最も多 く用いられ、割合が27.9%となっている。次に、【謝罪】(27.1%)、【責任所在 の曖昧化】(21.7%)である。クラスメートに対する場合では、【責任所在の曖 昧化】と【責任否定•追及】は最も多く使われており、両者とも28.2%となっ ている。その次に、【感情表出】(23.4%)である。
本研究におけるJNS の【謝罪】の使用割合に関しては、対先生(目上)は対 クラスメート(同等)より2 倍多いということが見られた。この結果は、これ までの先行研究と比べると、彭(1992)と末田(2015)は日本人は目上に対す る場合、同等に対する場合より謝罪が多いと述べており、本研究と同じような 結果が出るのに対し、大浜(2011)は日本人は目上に対する場合、同等に対す る場合より、謝罪が少ないと述べており、本研究と異なる結果が出る。この状 況について、JNS は「上下関係」によって謝罪表現を使用することがわかった。
おそらく、先生は社会的上位者であるから、自分のせいであるにも構わず、謝 罪表現を使用し、礼儀正しく謝ってみせることを第一の方略として用いるのだ
0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%
その他 呼びかけ 配慮 感情表出 相手の攻撃弱化 事前連絡に言及 原因の説明 責任否定•追及 責任所在の曖昧化 責任承認 謝罪
対先生 対クラスメート
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図6 JNS が相手誤解場面における対先生・対クラスメートの構成要素の割合
表10 と図 6 に示されたように、構成要素の使用について、対先生の場合で は、一番多いのは【責任否定•追及】(20%)を単独で使用するパターンであり、
二番目に多いのは【責任所在の曖昧化】(15%)を単独で使用するものである。
対クラスメートの場合では、最も多いのは【責任否定•追及】(23.8%)を単独 で使用するパターンであり、その次には、【責任所在の曖昧化】(18.8%)を単 独で使用する組み合わせである。以下は実際の回答例である。
例8. 対先生の場合と対クラスメートの場合がともに、一番多く用いられる
【責任否定•追及】
8-1 「先生がこの時間指定したんですよ。」
8-2 「約束の時間は 2 時半だよ。」
このように、JNS は相手誤解による言われのない非難場面において、対先生 の場合と対クラスメートの場合がともに【責任否定•追及】を単独で使用する パターンが最多数である。
0% 5% 10% 15% 20% 25%
その他
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