國
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る。以下、<不可能>ではない N ガデキナイ文の用例を挙げる。これらの例 は「作れない」と言い換えると、意味的に座りが悪くなる。
(162)a. 渋滞がないだけでムダな時間ができないだけでうれしい。
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
a’. ?渋滞がないだけでムダな時間が作れないだけでうれしい。
b. とにかくシミができないし、濃くもならない、最強の美容液。
(with, 2004, 一般)
b’. ?とにかくシミが作れないし、濃くもならない、最強の美容液。
c. 病院の手術室にある無影灯は影が出来ないようになっていま すが、どうして影が出来ないのですか。
(Yahoo!知恵袋, 2005, 健康、病気、ダイエット)
c’. ?病院の手術室にある無影灯は影が作れないようになっていま すが、どうして影が作れないのですか。
これは渋谷(1993)で指摘した可能文の成立要因の一つとなる「望ましさ」
に原因がある。つまり、以上の用例では、話者か動作主にとって望ましくない ことなので、可能の意味が阻止されると考えられる。
以上で、生起と完成を表す N ガデキルに否定接辞のナイが付き、不可能を 表す場合について考察した。それらが不可能を表すのは否定も一種の状態だか らである。また、ナイがついても不可能にならない用例があるが、それは可能 文が成立するためには事象自体が望ましいか否かという条件があり、それがそ 望ましくない事態であれば、「作れない」と言い換えられず不可能を表さない のである。次節からはテンス・アスペクトの観点から考察する。
5.3 テンス・アスペクト
本節では、生起、完成、可能の N ガデキル構文についてテンスとアスペク トの観点から考察する。
5.3.1 ル・タ・テイル
真野・影山(2009)では、出来事と状態は次のような違いがあるとしている。
(163)
47
真野・影山(2009:48)の表では、 「時間軸(時間幅)の認識」と書いたが、実際は時間軸 の有無を指す。
時間軸の有無47 時間による展開 現 在 時 制 で 現 在 の事実を表す
出来事 〇 〇 ×
状態 〇 × 〇
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既述したように、本論文で言う生起と完成は時間の流れにおける出来事であ り、可能は状態である。但し、ここで注意されたいのは、状態であれば必ずル 形で現在を表すというわけではなく、ル形で現在を表し得るということである。
つまり、ル形は未来のことを指せば、現在の事実を指すこともあるということ である。
それでは、以下、ル形、タ形、テイル形という順序で考察を試みる。ル形の 用例を次のように挙げる。a と b は生起を、c と d は完成を、e と f は可能を表 している。
(164)a. 「まる一年というもの、ずっと用がなくても、きみと別れたす ぐあとに、急用ができるかもしれない」
(カフカ著;池内紀訳 『城』, 2001, 943)
b. 雨の日はかげろうのように水溜まりが出来る。
(稀土祥子著 『駅の住人』, 2003, 913)
c. 準備ができるまで、ちょっと休みたい。
(小松左京著 『首都消失』, 1985, 913)
d. 店が出来ると、こんどは仲間がそこに集まる。
(堀野収著 『ウィーン素描』, 1997, 293)
e. これだけでも、楽に生活ができるのだ。
(R.A.サルバトーレ著;風見潤訳 『アイスウィンド・サーガ』, 2004, 933)
f. これからたくさん勉強ができる(笑
(Yahoo!ブログ, 2008)
生起の用例では、a がル形で現在よりも未来のことを指すのに対し、b は特 に現在でも未来でもなく、「雨の日」という特定の時間を指している。c と d の完成の用例は、いずれも「まで」と「と」を後接しているので、ル形である が、実際に、完成を表す N ガデキルが何も後接しない用例が比較的に少ない。
それは、ル形で何も後接しない場合、可能の意味になるからだと考えられる。
つまり、可能の意味が優先されるということである。このことについては 5.4 節で詳しく考察したい。また、e と f の可能の用例は、現在を指す場合もあれ ば未来を指す場合もある。これは真野・影山(2009)の指摘と一致していると 見る。
次に、タ形の用例を以下に挙げる。同様に、a と b は過去の生起、e と f は 過去の可能の用例であるが、c と d はそれぞれ完成と可能を表している。
(165)a. ちょっと急用ができたので外出します。
(森村誠一著 『悪魔の圏内』, 1992, 913)
b. おかげでチェイスには考える時間ができた。
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(ディーン・クーンツ著;白石朗ほか訳 『嵐の夜』, 2001, 933)
c. やがて料理が出来た。
(海音寺潮五郎著 『二本の銀杏』, 1998, 913)
d. また、彼女の戸籍は、それに先立つ一ヶ月ほど前、棄児発見調 書に基づいて、倉敷市長名義で新たに設けられており、注記に 記載されていた。それは、もう一枚の書類―倉敷市役所の除籍 簿の複写でも確認ができた。
「宜子さんは、養女にもらわれる前は、筆頭世帯主だったわけだ」
(二階堂黎人著 『宇宙神の不思議』, 2002, 913)
e. 食事は一年目はバイヨンヌのクラブハウスで食べました。契約 がそうなっていたので、無料で食事ができました。
(岩波書店編集部編 『世界がステージ!』, 2002)
f. 気のいいアンチャンという風貌の人物だった。日本に4年暮ら していたということで、日本語で十分に会話ができた。日本語 を学んだ外国人に特徴的な「○○デス」「××マス」という丁寧 な口調だった。
(望月健,ジン・ネット取材班著 『蛇頭「密航者飼育」アジト』, 2000)
c と d は N ガデキルでは完成と可能の両義性を持つ達成動名詞ガデキルであ るが、上記のように、c は「終わった」と言い換えられることから、完成の意 味を表しているとみなす。一方、d は「終わった」と言い換えられないことか ら、確認というコトが完成したよりも実現したという意味が捉えられる。これ は従来<実現可能>と呼ばれる意味用法である。渋谷(1993)によれば可能は 潜在可能と実現可能という二系列があるので、本研究では実現可能も可能の一 種として取り扱う。そうすると、d は可能の意味となる。
また、テイル形の用例は次のようになる。同様に、a と b は生起、c と d は 完成、e と f は可能の用例である。生起と完成は動作性を保つデキルなので、
テイルと共起することに問題はないが、テイル形のデキル可能文は実現可能で ある。
(166)a. 背中ににきびができています。
(Yahoo!知恵袋, 2005, Yahoo!知恵袋)
b. 小さな隙間ができている。
(鈴木光司著 『リング』, 1993, 913)
c. 「そろそろ食事ができてるでしょう」
(津原やすみ著 『ようこそ雪の館へ』, 1995, 913)
d. それから居間に戻ると、もう夜の用意が出来ている。
(有吉佐和子著 『和宮様御留』, 1978, 913)
e. 考えたら今週も結構ビッチリ仕事してたが、全くストレスゼ ロ!!! ずっと笑って仕事が出来てるからね♪
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
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f. なまじっか英語ができていたら、正確に訳しすぎて想像力を働 かすことができなかったような気がする。
(高田渡著 『バーボン・ストリート・ブルース』, 2001, 767)
5.1.1 節で本研究で言う完成と実現可能は動作性を保つ点で似通っていると 述べたが、e と f の「仕事ができてる」と「英語ができていたら」は「終わる」
と言い換えられない点で、完成を表していないことは確かである。しかし、い わゆる可能は状態の一種であり、動作性がなくテイルと共起しえないはずであ る。テイルと共起する場合は実現可能と呼ばれ、可能の周辺にある用法に位置 付けられる。本研究では実現可能について深入りする余裕がないので、ここに 留まることにする。
以上で、ル形・タ形・テイル形から N ガデキル文について考察した。その 結果、生起の場合、意味はすでに N ガデキルの段階で指定されており、ル形・
タ形・テイル形を後続することで変わることがないということがわかった。次 に、完成と可能の両義を有する N ガデキルについて、ル形の場合は可能の意 味が優先されることが見受けられている。また、タ形の場合も完成よりも<実 現可能>を表す場合もある。可能に関しては、タ形とテイル形の場合、<実現 可能>という用法が現れてくるが、それについて深く追及する余裕がなかった。
次節からは、「準備ができる」や「用意ができる」といったような完成を表 す達成動名詞ガデキル文と達成動名詞スル文を中心に、両形式が表す事象の違 いについて考察したい。
5.3.2 N
コトガデキルと V スルが表す事象N コトガデキル完成文が達成動名詞句の終了時点を指すということを第 4 章 で見たが、これらの完成を表す N コトガデキル文は、ル形とタ形以外に、よく テイル形で使われている。
(167)a. 人びとは結婚の準備ができている。
(洪蘭淑著;林四郎訳 『わが父文鮮明の正体』, 1998, 169)
b. 「積みこみの米と蠟燭は用意ができております」
(南原幹雄著 『銭五の海』, 1998, 913)
c. 朝食の仕度が出来ている。
(広山義慶著 『夜の総務探偵』, 2001, 913)
d. 一生付きあう覚悟ができているかどうかだよ!
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
e. また、何の目的でもってこうした混信のもとになる電波が発射 されているのか、発信源はどのようなところという推定ないしは 調査ができているのか。
(国会会議録, 1985, 常任委員会)
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これは、デキル<完成>の事象タイプが状態変化、即ち到達動詞の文法的振る 舞いをするため、以上の動名詞における終了時点がデキル<完成>の成立点とな る。そうすれば、終了時点以降の時点は「N コトガデキテイル」と言える。一 方、V テイルの場合は開始時点以降、終了時点までの状態である。図示すれば、
以下のようになる。
(168) 準備ができた
開始時点 終了時点
同様に、<完成>を表す N コトガデキル動詞句では、否定の場合、デキナイ ではなくデキテイナイの形が使われる。それは既述したように、デキナイと言 えば不可能の意味になるからである。
(169)a. 心の準備が出来てないって−汗
(Yahoo!ブログ, 2008, Yahoo!ブログ)
b. まだおれを始末する用意ができていないだけだ。
(サラ・ウルフ著;高橋豊訳 『死の長い鎖』, 1989, 933)
c. プリンターの設定が出来ていない事を課長に話しました。
(Yahoo!ブログ, 2008, 祝日、記念日、年中行事)
d. ただ医師として、エイズの蔓延を防止するためにはサーベイラ ンスが必要である、その実情を知って初めて有効な対策がとれ るのではないかということでお話をしておりますけれども、サ
d. ただ医師として、エイズの蔓延を防止するためにはサーベイラ ンスが必要である、その実情を知って初めて有効な対策がとれ るのではないかということでお話をしておりますけれども、サ