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完成を表す N コト ガデキル

4.2 N コト ガデキル

4.2.3 完成を表す N コト ガデキル

立 政 治 大 學

N a tio na

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上記のように、「状況」「急用」「状態」「事態」「用」は何らかの事柄から構 成されるコト名詞であるが、それらは自然に生じるコトであり、目的役割と主 体役割がない。「習慣」の場合、習慣が成り立つ前提として人がある行為を繰 り返す。しかし、主体役割が指定する意味は可能よりも完成である。主体役割 と完成の関りは 4.3.1 節で論じる。したがって、目的役割に動作主の存在がな いことがタイプ強制の適用条件なのだと考えられる。

このように、これらの 6 語は確かにコト性が低い点で「農業」や「野球」と 同じであるが、その目的役割に動作主の存在がないという点で「農業」や「野 球」と大きく異なっている。それが(114)の 6 語が N ガデキル動詞句で可能 を表しえない原因、またはタイプ強制が適用される条件だと考えられる。

このように、ほぼすべてのコト名詞が N ガデキル動詞句で可能を表すが、

コト性の極めて低い「状況」「急用」「状態」「事態」「用」「習慣」の 6 語は目 的役割に動作主の記載がないため、可能の意味を表さず、生起の意味を指定す る、ということが結論付けられる。

4.2.3 完成を表す N

コトガデキル

前節では、N コトがデキル構文は基本的に可能を表すことを見た。しかし、

それらの語の中で、<完成>を表すこともある。本節では、N コトガデキル構 文で<完成>を表す用例を取り上げ、用例に出ているコト名詞について分析し たい。

まず、用例は次のように挙げる。これらが<完成>を表すという証拠に、「終 わる」と言い換えられることが挙げられる。

(117)a. 準備ができるまで、ちょっと休みたい。

(小松左京著 『首都消失』, 1985, 913)

a’. 準備が終わるまで、ちょっと休みたい。

b. 用意ができると、差し向かいで飲んだ。

(竹花咲太郎著 『首刈り朝右衛門』, 2004, 913)

b’. 用意が終わると、差し向かいで飲んだ。

c. 支度ができたのは三十分後。

(リンダ・ハワード著;小林町子訳 『美しい悲劇』, 2005, 933)

c’. 支度が終わったのは三十分後。

なぜこれらの語が N ガデキル動詞句では<完成>も表すのであろうか。「準 備(する)」も「用意(する)」も「支度(する)」も時間幅のある事象である。

これらは類義語であるため、以下「準備(する)」を中心に見ていく。「準備(す る)」のクオリア構造を次のように想定する。

‧ 國

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(118)「準備(する)」のクオリア構造

CONS=[EVENT x ACT ON-y] CONTROL [EVENT y BECOME [STATE y BE AT-READY]]

FORM=event:達成

TELIC=[EVENT y BECOME [STATE y BE AT-READY]]

AGEN=[EVENT x ACT ON-y]

上記のように、「準備(する)」は、開始時点と終了時点を持つ達成動(名)

詞である。そのため、「準備した」といえば、開始時点を指すこともあれば、

終了時点を指すこともある。このような動名詞は N ガデキル動詞句では終了 時点を指す<完成>の意味が捉えられる。

(119)「準備ができる」と「準備した」が表す事象

準備をした 準備ができる/できた

開始時点 終了時点

それでは、なぜこのような動名詞が N ガデキル動詞句で<完成>の意味を 表すのであろうか。これについては以下の影山(1993)の指摘で説明がつく。

これを仮に「影山の一般化」と呼ぶ。

(120)影山(1993)の一般化

動名詞句(VNP)が外部から格を受けるときには、その内部でガ・

ヲの格表示は行われず、逆に、VNP が外部から格を受けない時は、

その内部でガ・ヲが可能になる。

つまり、動名詞における動作主は N ガデキル動詞句ではゼロになり、文全 体は変化の結果を注目することになる。このことはクオリア構造の共合成とい うプロセスでも説明できる。デキル<完成>のクオリア構造を再掲する。<完成

>のデキルは内項にコト名詞を指定すると仮定しているため、Y にコトの意味 範疇を下付き文字で表示する。

(121)デキル<完成>の意味構造 項構造:<Yコト

CONS=[EVENT y BECOME [STATE y BE AT-z]]

準備をしている

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FORM=event:状態変化 TELIC= -

AGEN=[EVENT x ACT (ON-y)]

「準備」と「デキル<完成>」が共合成したクオリア構造は次のようになる。

(122)「準備ができる」のクオリア構造

CONS=[EVENT y BECOME [STATE y BE AT- READY]]

FORM=event:状態変化

TELIC=[EVENT y BECOME [STATE y BE AT-READY]]

AGEN=[EVENT x ACT ON-y]

まず、構成役割は「準備」とデキル<完成>が合成したものであり、「準備」の 上位事象が主体役割に移り、構成役割ではゼロになる。次に、<完成>を表す

「準備ができる」という事象は全体的に状態変化という事象である。最後に、

目的役割は「準備」の下位事象である。但しここで注意したいのは、本来達成 動(名)詞である「準備(する)」はデキルと共合成すると、「準備ができる」

全体が状態変化の事象となる点である。つまり、N ガデキル完成文は下位事象 に注目するということである。

このように、達成動詞は N ガデキル動詞句で完成を表すことができると結 論付けられる。そのため、(91)の仮定は修正を加える必要がある。

(123)デキル<完成>は達成動名詞のコト名詞を指定する。モノ名詞の場合、

タイプ強制が適用される。

(91)の仮定では完成と可能の区別がつかなかったが上記に修正すれば、そ の違いがはっきりなってくる。Nモノガデキル完成文については 4.3.1 節で詳し く考察する。

4.2.4 まとめ

以上で、N コトがデキル構文について、<生起>、<完成>、<可能>を表 す用例を挙げ、クオリア構造により分析を試みた。想定通りに N コトがデキル 動詞句は基本的に<可能>を表す。但し、「状況」、「急用」、「状態」、「事態」

「用」「習慣」の 6 語は N ガデキル動詞句で全く可能の意味が読み取れず、<

生起>を表している。これらの語の目的役割では動作主の存在がないため、タ イプ強制が適用され、デキル<生起>と共合成し<生起>の意味を表すのである。

また、N コトがデキル動詞句が完成を表す場合、N は達成動名詞でなければな らないということがわかった。

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