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要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ロ「聞き手」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

そして、この例(3)は、「否定的判断を背景に展開される判断」が「通常の凌 駕」に該当するタイプと言えよう。つまり、親友のウェディングドレス姿に対 して、「天女の羽衣のように見えた」と、大仰にも感じられるような比喩を用い、

それが、通常の「美しさ」をはるかに凌駕するものであることを述べているの である。

以上、現代の女性語「わ」を数例、観察したが、その範囲においては、現代 の女性語「わ」も、明治時代の女性語「わ」と同様の要素の複合によって解析 することができた。また、「通常の凌駕」の例が見出される点においても、現代 の女性語「わ」には、明治時代の例と大きな変動がないように思われる。今後 は、以上の結果を考察への見通しとしたうえで、充分な用例を採集し、分析を 進めていくことにしたい。

5.3 今後の課題

以上、本研究は、女性が使う終助詞「わ」を考察してきた。しかし、第 1 章 でも触れたように、終助詞「わ」には、男性にも用いられる「汎性語」の「わ」

も存在する。よって、終助詞「わ」の文法的性格に関する論を完成させるため には、「汎性語」の「わ」の分析を行う必要がある。さらに、「汎性語」の「わ」

と女性語の「わ」がどのような関連性を持つのかについての解明も今後の課題 となるであろう。

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参考文献

有田 節子(1999)「テハ構文の二つの解釈について」『国語学』199

塹江 美沙子(2013)「二葉亭四迷『浮雲』『平凡』辿る女性語の変遷――<「てよ・

だわ」言葉>の受容とその社会的・歴史的要因――」『ことば』34 川端 善明(1958)「接続と修飾―『連用』についての序説―」『国語国文』27- 5 塩入 すみ(1993)「「テハ」条件文の制約について」『大阪日本語研究』5 中村 桃子(2007)『「女ことば」はつくられる』ひつじ書房

蓮沼 昭子(1987)「条件文における日常的推論―「テハ」と「バ」の選択要因 を巡って―」『国語学』150

松崎 彩子(2017)「終助詞「わ」の歴史的変遷について:後期江戸語から明治 大正期を中心に」『言語の研究』3 号 首都大学東京言語研究会

松下 大三郎(1930)『標準語日本口語法』中文館書店

三尾 砂(1942)『語言葉の文法(言葉遣篇)』帝国教育出版部 (『話言葉の文法. 言葉遣篇』くろしお出版、 1995 年 再録) 山口 明穂(2001)ほか『日本語文法大辞典』明治書院

山田 孝雄(1922)『日本口語法講義』東京寳文館

鷲 留美(1996)「現代日本語の性差についての―考察―女ことばとしての終助 詞「わ」を巡って」『日本語・日本文化研究』6 号 大阪外国語大学日本語 講座

引用した例文の出典

[明治期]

内田 魯庵「破垣」『明治文學全集24 内田魯庵集』筑摩書房 尾崎 紅葉「金色夜叉」『明治文學全集18 尾崎紅葉集』筑摩書房 菊池 幽芳「乳姉妹」『明治文學全集93 明治家庭小説集』筑摩書房 夏目 漱石「野分」『日本文學全集9 夏目漱石(一)』新潮社

廣津 柳浪「殘菊」『明治文學全集19 廣津柳浪集』筑摩書房 廣津 柳浪「河内屋」『明治文學全集19 廣津柳浪集』筑摩書房

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二葉亭 四迷「浮雲」『日本文學全集1 二葉亭四迷集』新潮社 二葉亭 四迷「平凡」『日本文學全集1 二葉亭四迷集』新潮社 徳冨 蘆花「不如帰」青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/cards/000280/files/1706_44742.html 三宅 花圃「藪の鶯」青空文庫

https://www.aozora.gr.jp/cards/000802/files/46650_26535.html 森 鴎外「不思議な鏡」『明治文學全集27 森鷗外集』筑摩書房 柳川 春葉「秋袷」『明治文學全集22 硯友社文學集』筑摩書房

若松 賤子「小公子」『明治文學全集32 女學雑誌・文學界集』筑摩書房

[現代 (昭和から平成にかけて)]

松田 昭三「人魚がくれたさくら貝」 シナリオ(映画)

小松 江里子「オンナって不思議」 シナリオ(テレビドラマ)

江連 卓「凄絶!嫁姑戦争 羅刹の家」 シナリオ(テレビドラマ)

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付録

ここでは、第3 章で挙げた女性語「わ」の例のうち、要素 A から D の組み合 わせの様相について、本文中で言及しなかったものを示し、組み合わせのあり ようを示しておく。また、最後にその一覧表を付す。

(12) (斎)「(前略)あたしはきつときつと画かきになるワ。」

(相)「オヤ斉藤さんが画工になるって。こんなめんどくさがりのくせにネ。」 (服)「斉藤さんだとて一心一到ですもの。画かきになれますワ。」

『藪の鶯』

要素A.「否定的判断」の内実が、イ「打ち消し」

要素B.「否定的判断」言語化の在り方が、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ロ「聞き手」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

(13) (侯)「房江、そちの母の乳は、亡なつた夫人や、今の君江やそちを養つて 大きうしたのぢやが、三人が三人ながら、人並優れた淑女に育つた ところを見ると、全く呑んだ乳のお蔭ぢやと見える。喃。全く乳が 善かつたぢやな。」

(房)「だつて私は外のお二人には、比べものになりはいたしませんわ。」 (侯)「イヤ、そうでないて。その中でもこの君江(と肖像を指して)の氣質

とそちの氣質は大層よう似て居る。亡なつた君江も感心ぢやつたが、

そちにも私は實に感心して居るのぢや。」

(房)「アレ、いやでござります。そンな事を仰しやつて、私などがなかな かお亡なり遊ばした奥樣に、お似申す筈がございませんわ。」

『乳姉妹』

要素A.「否定的判断」の内実が、イ「打ち消し」

要素B.「否定的判断」言語化の在り方が 、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ロ「聞き手」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

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(14) (政)「(前略)何してもこの通り気が弱いシ、それに先には文三という荒神 様が附てるからとても叶う事ちやア無いとおもつて、虫を殺ろして 黙ってましたがネ……」

(勢)「アラあんな虚言ばツかり言ツて」

(政)「虚言じやないワ真実だワ……(後略)」

『浮雲』

要素A.「否定的判断」の内実が、イ「打ち消し」

要素B.「否定的判断」言語化の在り方が、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ロ「聞き手」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

(15) (貫)「遲かつたかね。さあ御土產です。還つて之を細君に遣る。何ぞ仁な るや。」

(宮)「まあ、大變酔つて! 何如したの。」 (貫)「酔つて了つた。」

(宮)「あら、貫一さん、這樣所に寐ちや困るわ。さあ、早くお上りなさい よ。」

(貫)「恁う見えても靴が脫げない。ああ酔つた。」

『金色夜叉』

要素A.「否定的判断」の内実が、ロ「不望」

要素B.「否定的判断」言語化の在り方が、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ロ「聞き手」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

(16) (鍋)「(前略)私も家にゐる時分は是れでもヘタクタ施けたもんでしたがネ、

此家へ上ッてからお正月ばかりにして不斷は施けないの、施けても いいけれども御新造さまの惡口が厭ですワ、だツて何時かもお客樣 のいらツしやる前で、「鍋のお白粉を施けたとこは全然炭團へ霜が降 ツたやうで御座います」ツて……餘りぢやア有りませんか、ネー貴

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君、なんぼ私が不器用だツて餘りぢやアありませんか。」

『浮雲』

要素A.「否定的判断」の内実が、ロ「不望」

要素B.「否定的判断」言語化の在り方が、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ハ「話し手・聞き手のどちら でもない」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

(17) (貞)「おとぼけなさるなヨ。しれたこと。しの原さんのヨー」

(山)「アアあのおてんばか。僕がしばらく行かなかったから。英書の質問 に出かけてきたんだろう。あの西洋好きにも困るよ。傍へよるとな んだか毛唐人くさくって。」

(貞)「オヤいつ傍へよって。」

(山)「そりゃアなにサ。毎日毎日けいこに行くから。あのちぢれっ毛の前 がみをつきつけられつけていらア。」

(貞)「だけれどこうしていてもそんな別品がきちゃア気が気じゃアないワ」

とすこしわらいながら。「ほんとに姉女房は心配だワ。だけれどキッ トうしろぐらいことはないのエ。後暗いことは。エエ。」

『藪の鶯』

要素A.「否定的判断」の内実が、ロ「不望」

要素B.「否定的判断」言語化の在り方が、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ロ「聞き手」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

(18)(俊)「アア驚いてよ。球ちやん酷いわ貴方は。」

(球)「だつて貴方餘り茫然としてゐるんですもの、何を見てゐたの。」

『秋袷』

要素A.「否定的判断」の内実が、ロ「不望」

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要素B.「否定的判断」言語化の在り方が、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ロ「聞き手」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

(19) (貫)「宮さん、お前さん如何したの。ええ何處か不快なのかい。」

……… 中略 ………

(宮)「奈何したのだが私にも解らないけれど、……私は此二三日如何した のだか……變に色々な事を考へて、何だか世の中が滿らなくなつて、

唯悲くなつて來るのよ。人間と云ふものは今日恁して生きてゐても、

何時死んで了ふか解らないのね。恁して居れば、可樂な事もある代 に辛い事や、悲しい事や、苦しい事なんぞ有つて、二つ好い事は無 し、考れば考るほど私は世の中が心細いわ。」

『金色夜叉』

要素A.「否定的判断」の内実が、ロ「不望」

要素B.「否定的判断」言語化の在り方が、イ 1「否定的判断それ自体」

要素C.「否定的判断」が生じる責任の所在が、ハ「話し手・聞き手のどちら でもない」

要素D. 知識状態が更新されるのが、ロ「聞き手」

(20) (清)「兄貴が見たら氣が違ふかも知れなからうよ。ねえ、お弓さん餘り遊

(20) (清)「兄貴が見たら氣が違ふかも知れなからうよ。ねえ、お弓さん餘り遊