2.2 明治政府が取り組んだタマネギの輸入と栽培
2.2.3 三田育種場での輸入と栽培に関して
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2-2-2 内藤新宿試験場での輸入と栽培に関して
内藤新宿試験場とは明治初期に政府が牧畜園芸の改良を目的として設けた ものである。ここで行われている事業は、例えば、内外穀菜果樹の試作、繁殖、
配布、あるいは各種農産の製造加工及び分析試験、農具の試製及び展示、また は農業博物館、農事修学場の設置及び農事講習を行い、牧畜の飼養、養蚕およ び製糸の試験などがあげられる。
この試験場の穀菜果樹類試作関係文書に、明治7 年(1874)8 月 8 日付の「外 国種蔬菜菓類当場成熟ニ付回覧」の中は
外国種蔬菜菓類當場成熟ニ付回覧(明治7 年 8 月 8 日 十一等出仕 岡 毅)
英國種花耶菜 米國種大冬瓜 英國種梨形南瓜 米國種黑色大番茄 佛國 種赤番茄 米國種黄梅番茄 日國種菜豆 英國種紅色豆 同菜豆 米國種玉 葱 外國冬瓜ノ一種 同梨(但シびん入) 同桃(同上) 同李(同上)35
と書かれているように、タマネギの成熟が見られる。つまり、明治7 年(1874)
に本場で米国種のタマネギの栽培が成功したことがわかる。
しかし、この試験場は明治12 年(1879)5 月、地味がある種の植物に適さ ず、所在も僻在であり、三田育種場も整備されてきたなどの理由で廃止された。
2-2-3 三田育種場での輸入と栽培に関して
前田正名36の『興業意見』に農芸の改進を助く方法として育種場を設くる事 が挙げられた。其の要項は「一、育種場を東西便宜の地に設け、民間普通に購得 し難き中外穀菜、果樹の種苗を、人民の請求に応じて払下ぐる事」37と述べている。
そのために三田育種場が設置された。
三田育種場は明治10 年(1877)9 月 30 日に開場し、明治 12 年(1879)5 月、内藤新宿勧農局試験場の廃止に伴い、穀菜果樹に関する事業及び農具、孵 卵などの事業を本場に移管する。そして明治19 年(1886)、民間に払い下げら れた。
本場開設の主旨は「農事の本業(五穀蔬菜等)を盛大にし、其餘業(有用菓實草 木畜類)を勧奨する」38にあり、そのために施行する事業は、たとえば内外穀菜 果樹の優良種苗を輸入或は蒐集し、これを試栽範示すると共に府県及び人民の 希望に応じて頒賦する、あるいは場内に農産会市を開設し、内外動植物、其他
35 農林省農務局『明治前期勧農事蹟輯録』上(大日本農会、1939 年)P137。
36(1850−1921)明治前期に活躍した経済官僚で、農業・在来産業を重視した殖産興業政策の 実践者である。
37 前田正名『興業意見、所見他』(農山漁村文化協会、1976 年)P237。
38 農林省農務局『明治前期勧農事蹟輯録』上(大日本農会、1939 年)P148。
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農産物及び農具を自由に交互売買させ、又各地方著名の穀菜果樹種苗交換斡旋 のため特に種苗交換会市を開設する、あるいは農具の製作、家畜類の改良繁殖 に関する事業などがあげられる。本場の新しい特色は、従来の種苗の試験、頒 布のほか、種苗·農産製造諸品·肥料·農具·馬具などの交換市を開き、優良品出 品者には賞与を呈し、農談会を開く点にあった。
三田育種場の史料に、タマネギの名が最初に出たのは明治15 年(1882)2 月の「種苗交換会市府県出品物目録」である。「種苗交換会市府県出品物目録」
は次のように書かれている。
東京府下谷本清兵衛 練馬蘿蔔種以下同 尾張蘿蔔、細根蘿蔔、德利宮重 萊菔、胡蘿蔔、砂川牛蒡麻種、茼蒿、早生胡瓜、山茄子、みつば、夏蘿蔔、蓖 麻、白八ツ房菜豆、赤 無(ママ)蔓菜豆、扁豆、大南瓜、西瓜、黎豆、赤白大刀豆、黑 菜豆、冬太蔥、縮緬早生南瓜、大越瓜、清國體菜、西洋大玉蔥、早生玉蜀黍、
中生玉蜀黍、落花生、大玉蜀黍、清國早生糯蜀黍、米國蘆粟、赤青紫蘇、黑 菜豆、内外草花各種39
つまり、東京府下谷本清兵衛40が明治15 年(1882)に練馬蘿蔔種、砂川牛 蒡、早生胡瓜、山茄子など三十数種と共に、西洋大玉葱の種苗を出品したこと が分かる。
また、三田育種場のタマネギの栽培状況について、「明治十六年三田育種場 景況」では「種子ノ収穫モ一昨年ニ比スレハ多キヲ加ヘ、殊に年来東京ニ於テ種子 ヲ収メ難シト称スル葱頭甘藍ノ如キモ始メテ多量ノ良種ヲ獲、果樹モ亦好果ヲ結ヒ、
其種類ヲ判別スルヲ得タルモノ多シ」41と記している。つまり、明治16 年(1883)
に三田育種場でタマネギが多量収穫し、品質も良好であることが分かる。
そして、「明治十七年三田育種場景況」では「夏作ノ蔬菜ハ近来場圃ノ瓦礫ヲ 去リ頗ル佳土トナリシニヨリ悉ク上中ノ作ヲ得タリ、球葱其他秋作冬作ノ蘿蔔蕪菁菘 類ハ頗ル宜ク上作ト称スルヲ得ヘシ」42と書いている。つまり、明治17 年(1884)
に本育種場のタマネギはよくできたことがわかる。
また、タマネギの種子価格については、明治16 年(1883)12 月の「三田育 種場種苗払下代価表」43によると、欧州、米国種の四種類で、一升に付き30 銭とつけられており、タマネギと同じ明治以後に入ってきた甘藍は一升に付き 15 銭とつけられている。一番高い値段の茄(一升に付き 5 円)と比べると、
39 農林省農務局『明治前期勧農事蹟輯録』上(大日本農会、1939 年)P191。
40 谷本清兵衛商店から『種苗農具代価目録』という本が出るので、谷本清兵衛は種苗、農具 を販売している商人だと推定できる。
41 農林省農務局『明治前期勧農事蹟輯録』上(大日本農会、1939 年)P198。
42 同上、P198。
43 同上、P203。
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非常に安くつけられていることが分かる。値段を安くつけている理由は普及さ せたいからではないかと考えられる。
そして、三田育種場で栽培されている種類について、明治19 年(1886)2 月の「三田育種場舶来穀菜一覧表」では以下のように十三品種が詳しく記載し ている。
三田育種場舶来穀菜一覧表
(1)ホワイト·ポーチュガル(White Portugal.) 米国より舶来する所なり、球根 大にして形扁たく、往々幅三寸余厚さ二寸許に至る者あり、皮白褐色或は淡 黄褐色にして剥け易し、外皮を去れは純白色にして微青を帯ぶ、味和平にして 上品なり、初冬の菜品に供すべし。
(2)ラージ·ストラウ·カラー(Large Straw Colour.) 仏国種にして米国より舶来 する所なり、球根大にして較々扁たく、皮黄褐色にして頸小なり早種にあらさ れとも豊産にして良品なるを以て仏国にては大に之を賞美せり。
(3)ダンバース·イエルロ(Danver's Yellow.) 米国より舶来する所なり、球根 大さ中等以上にして円形をなし、皮黄褐色にして日を経るに従ひ濃黄色となる 日光に露出せすして貯へ置けば淡黄褐色を呈す肉白色にして甘味強く較々和 平にして味佳なり。
(4)レッド·ウエザースフィヒールド(Red Wethersfield.) 米国より舶来する所な り、球根或は円ろく或は扁円にして其形状甚た大なるに至る大なる者、往々径 五寸余厚さ三寸余に至る、皮深紫赤色にして頸大さ中等なり肉紫白色にして 質稍々細かく香気甚た高し、此種は極めて豊産にして貯蔵して最も久しきに耐 ふるを以て他邦に輸送するに宜しとす。
(5)ラージ·シルバー·スキン(Large Silver Skin.) 米国より舶来する所なり、
球根大にして扁形をなし、平均直径三寸許厚さ一寸五分或は二寸許とす、頸 甚た小なり皮銀白色にして肉白色に微青を帯び質緻密にして甘味多く味頗る 佳なり。
(6)ホワイト·スパニシ(White Spanish) 英国より舶来する所なり、球根大にし て扁く色白くして幅三寸余厚さ二寸許に至る、外皮淡褐或は黄褐色にして剥け 易く内皮白色にして青色を帯び頭小なり。味甘平にして美なり。
(7)ホワイト·グローブ(White Globe.) 英国より舶来する所なり、球根殆んと 卵円にして緑黄色に淡紅色を被むる、径二寸より三寸に至り厚さ四寸許あり、
品位良佳なり、貯蔵最も久しきに耐ゆ。
(8)デットフォート(Deptford.) 英国より舶来する所なり、球根大にして扁形或 は球状をなし、往々幅三寸厚さ二寸許に至る者ある、皮淡白色にして淡褐を 帯び外部淡紅を呈す、其味較々和平にして上品なり。
(9)ウェルシ·オニヨン(Welsh Onion.) 英国より舶来する所にして西伯里の原 産なり、此種は球を結ぶものあらす本邦の葱の如き者なり至て強健にして味
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佳なり秋月播種して冬食に供するに宜し。
(10)ジョーン·ペイル·デ·ウェルチウ(Jaune paille des Vertus.) 仏国より舶来 する所なり、球根扁円にして大きく淡黄色に緑色を帯ぶ良種とす。
(11)ブラン·アチーフ·ド·パリ(Blanc hâtif de Paris.) 仏国より舶来する所なり、
球根扁円にして較々大なり白色にして微青を帯ぶ極めて早生の良種とす。
(12)ド·マデール·ロンド(De Madére rond.) 仏国より舶来する所なり、根形円 ろく或は倒卵形にして極めて大きく、往々径六寸厚さ六寸以上に至る、外皮淡 赤褐色にして内皮淡紅色を帯ぶ肉味和平にして甘味に富めり然れとも此種は 球を結はしむること至て難きものとす。
(13)ルージ·フォンセー(Rouge foncé.) 仏国より舶来する所なり、根球扁円に して小さく淡紅色を帯ぶ晩種にして上品にあらす。44
(13)ルージ·フォンセー(Rouge foncé.) 仏国より舶来する所なり、根球扁円に して小さく淡紅色を帯ぶ晩種にして上品にあらす。44