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新聞の料理記事におけるタマネギの利用

立 政 治 大 學

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が分かるようになり、タマネギに対する抵抗感もなくなった。

5-3 新聞の料理記事におけるタマネギの利用

明治期には、庶民の間では一汁一菜の食生活が続いていた一方で、上流階層 では学問、教養としての料理が浸透し、明治後期には上流階層と一部の新中間 層のあいだで、「日常的な家庭料理」という新しい概念が誕生した62。また、

明治時代からの近代産業化が定着し資本主義が確立され、都市に人口が集中し サラリーマンや労働者などの都市生活者、つまり新中間層が増大した時代でも あった。家庭料理を作る主婦にとって、料理に関する情報の需要が高まってい ったといえよう。「日常的な家庭料理」の伝授は前述した女学校で行われるほ か、新聞に掲載されている料理記事も大きいな役割を果たしている。以下、読 者の投稿から編集した料理本である『家庭料理通』を通じ、タマネギの利用を 見ていきたい。

『家庭料理通』は明治42 年(1909)に出版され、『時事新報』63の附録「文 芸週報」64が広く読者から募集したものを一冊にまとめたものである。『家庭 料理通』の凡例では、次のように述べている。

一、本書は、時事新報文藝週報が、一般の読者より、懸賞法を以って料理法 の募集を初めたる時より、四十一年末日に至るまで、同誌上に発表したる、入 選料理を盡く集めたるものなり。

一、應募者は殆んど日本全国に亙り、各地方獨得の料理はゞ65此中に集めら る、何れも家庭實験の結果に出でたるものにして、庖丁自慢が那あでもない斯 うでもないの徒工夫とは自ら異なり、直に何れもの家庭に應用され得ることに 於いて、たしかに世間普通の料理書に優る特長あるべきを信ず。

つまり、本書は『時事新報』の附録「文芸週報」に於いて懸賞当選の料理法 を編纂してまとめたものである。また、ここに投稿した料理法は実際に家庭で 使われているものであるから、本書により、当時はどんな「日常的な家庭料理」

が作られているかがわかる。また、タマネギはどんな家庭料理に、どんな調理 法で使われているのかも分かる。

本書に載せられている料理は使用主材のいろは順に並べられており、使用主 材により「野菜料理」、「魚貝料理」、「豆腐料理」、「肉料理」、「卵料理」、「その 他」などの六種類に分けられている。その料理は【表5】のようにまとめられ

62 山尾美香『きょうも料理』(株式会社原書房、2004 年)。

63 日刊新聞。明治 15 年(1882)3 月福澤諭吉が創刊。昭和 11 年(1936)廃刊。不偏不党を掲 げ、経済記事に特色があった。

64 明治39 年(1906)5 月~明治 42 年(1909)12 月。

65 平仮名くり返し記号(濁点)。

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る。

【表5】

● タマネギが使われている料理 野菜料理

薩摩藷の田楽 里芋田樂 にんじんの柚酢あへ

里芋の二杯酢 里芋蒲鉾 夏芋の田樂

馬鈴薯の油揚 馬鈴薯のちゃら煮 馬鈴薯の海苔巻

馬鈴薯の葉の胡麻あへ 酢自然薯 照煮の豆腐薯 薯蕷汁の油揚 薯蕷の酢醬油和へ 山薯かまぼこ

焼蓮根 蓮根の酢煮 揚蓮根

蓮根の鶏卵むし 蓮根餅 芥子蓮根

蓮根の芥子葛 防風の梅酢漬 秋しぐれ

南瓜飯 南瓜の油蒸し 南瓜の酢掛け

南瓜の糠味噌漬 南瓜の黄金巻 南瓜の玉子むし

宇和島の薩摩汁 切りたんぼ 蕪の柚漬

菊ずし 琉球汁 秋月

筍の芥子漬 蒲公英の胡麻あへ 竹すし 筍豆腐の吸物 筍玉子のふわふわ 筍の煮染

木の芽竹 筍南蠻 大根なます

田舎なます 雪膾 三輪漬

味噌大根 大根味醂漬 雪汁

大根の芥子和へ すむずがり 大根葉胡麻よごし

春大根鐵砲和へ 大根の雲丹田樂 茄子煎り

土筆の梅煮 土筆卵とぢ 胡瓜の天麩羅

●玉葱の酢漬 ●玉葱味噌あへ 菜飯

三つ葉の天麩羅 海苔巻き春菊 茄子の楽み漬

●肉入茄子の油揚 茄子の豆和へ 茄子の鍋焼

秋茄子の酢和へ 茄子の芥子漬 栗の白和へ

丼蒸し 山獨活の玉子とぢ 三五八漬

白瓜の胡桃あへ 白瓜の魚肉詰め 瓜の田舎煮

胡瓜素麵 胡瓜の青膓和へ 胡瓜糟和へ

松茸てんぷら 松茸の味噌焼 椎茸茶飯

松茸の味噌漬 松茸豆腐の吸物 松茸のたまごとじ 松茸の酢味噌和へ 松茸の蒸ずし 初茸の鹽蒸し膾

松露飯 松露の白胡麻酢和へ 松露のこうじ漬け

青豆の海苔巻 比丘尼生酢 黒豆の卸し和へ

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豌豆の胡麻和へ 空豆の梅肉あへ そら豆のうに焼

いんげんの雲丹焼 落花生の焼味噌 酒煮鯉の木の芽味噌

蕗の薹油いり 蕗の薹味噌焼 蕗の子あへ

蕗の粕漬 蕗の葉の酢醬油和へ 蕗の糠漬

蕗の砂糖漬 蕗のなんばん煎 午蒡田樂

胡麻和へ午蒡 午蒡いり 午蒡の酢煮

山椒のつくだ煮 肉よせ午蒡 木の芽の切り和へ

菊胡麻酢和へ 山椒飯 百合天麩羅

湯葉の味噌焼 茗荷の酢味噌 茗荷の薹の味噌漬

茗荷の子油煮 茗荷の葛まわし 茗荷の粕漬 生姜の味噌焼 生姜でんがく 一種の巻繊汁 五加木のほろほろ 春の吸物 紫蘇巻の焼酎漬

揚紫蘇巻 紫蘇巻玉子 すぐり朝漬

魚貝料理

鰯の摺身 鰯のすき焼 鰯の田樂

鰯の味醂煮 鰯の葱酢味噌 鰯の鹽刺身

眼刺の生姜酢 烏賊の鱈の子和 烏賊の山椒味噌

烏賊の粽 烏賊の切込み 叩き烏賊と穂蕨

烏賊の半平 小烏賊の煮つめ 照りいなご

蝗の味噌焼 はだよしの吸物 雷魚の海苔巻

はやの酢煮 蛤の味噌焼 焼蛤

蛤の雲丹焼 蛤のおろし味噌煮 蛤の松笠焼

蛤松魚和へ 蛤ずし 沙魚の照焼

數の子の雲丹あへ 鰊の昆布巻 鰊、大根の麴漬 數の子の葱味噌和へ 數の子の麴漬 ほたての味噌焼

鰌の鐵砲揚げ 鰌飯 娶菜飯

若布の酢和へ 曙若布 若布のとろゝ

わらび揚 蕨の海苔巻き芥子あへ 貝の萬年漬

蟹半ぺん 蟹の生酢 蟹團子の吸物

蟹のふわふわ 蟹卵の豆腐汁 かざみ豆腐

川かに蒸し 鰈の胡桃和へ 鰹の叩き刺身

牡蠣の茶碗むし 牡蠣の胡麻味噌焼 海苔巻き牡蠣の酢貝 大豆摺りこみ牡蠣汁 かじかの海草巻 鯛の巻焼

鯛の味付刺身 鯛の子潮吸物 鯛の皮の田樂 小鯛の摺身玉子の吸物 田螺の山椒味噌焼 巻叩き汁

潮仕立海苔玉子の吸物 新鱈の葛むし 棒鱈の酢醬油漬

鱈の親子漬 鱈の子すし 鱈の昆布刺身

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海鼠の雲丹和へ たこの吸物 章魚のさくら煮

蛸の雉子焼 海藤花の吸物 鰻の鹽焼

煎子の青和へ くちこの吸物 鯰胡麻醬油焼

鯰の味噌汁 鯰の酒煮 榮螺の串焼

鮠の糟漬 白鮠の酢味噌 鯨の尾羽の酢和へ

鯨のじんだ和へ 陸鯨 こはだの叩き

魚飯 白魚の味噌漬 白子酢味噌

鮒の紫蘇膾 小鮒の三杯酢漬 小鮒のから揚げ

小鮒と大根の煮物 鮒の昆布巻 焼昆布

海老の木枯あげ 南蠻 海老團子

海老の海苔巻 海老かまぼこ 鰺の味噌焼

鰺の紫蘇葉巻 小鯵紫蘇焼 鮑の味噌焼

鮑の葉切 のぶすま 鮑の山葵漬

乾あなごの膓和へ 鮎の雲丹焼 鮎の厚焼

若鮎の紫蘇葉焼 鮎の卯の花 鮎の子和へ

鮎の切漬 鮎の蒸すし 鮟鱇の共あへ

鰆のせんば煮 鰆の焼びたし 鮭なます

鹽鮭の蒲鉾 鮭と鱈の子の卯の花煎り 鹽引の吸物 鹽引鮭のすし 鮭の道明寺漬 鮭中骨の昆布巻

鮭卵の酢味噌 鮃の酢味噌 鱸せんべい

豆腐料理

豆腐かまぼこ 卯の花豆腐 豆腐田樂

豆腐の卵巻 豆腐の海苔巻揚 豆腐の摺立汁

揚田樂 油揚の味噌焼 雪花菜飯

雪花菜詰め 豆腐滓すし 高野豆腐の揚物

酒煮とうふ 精進鴈もどき 蕎麥かき豆腐

蒟蒻雁もどき くるみ豆腐 肉料理

鶏の三杯酢 鶏のにこごり 鴨の鋤焼

雪月花の吸物 豚の卯の花煎り ●シチウヤキ 小鳥のせんば 雉の酢味噌和へ 鴫の味噌焼

肉の味噌焼 牛肉玉子やき 牛肉のふきあへ

牛肉の吸物 兎の蠟燭焼 雀の蠟燭焼

かしう汁

卵料理

ふくさ焼卵 菜葉の玉子あへ 玉子しんじょ 黄味和へ 半熟卵子の餡かけ 潮仕立卵の吸物

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その他

素麵ずし 焼結飯の吸物 吉野めし

海素麵の酢味噌和へ

『家庭料理通』より作成

以上の表によると、「野菜料理」が全体の料理における約42%を占めて最も 高く、以下「魚貝料理」が約39%、「豆腐料理」が約8%、「肉料理」が約7%、

「卵料理」が約2%、「その他」が約 2%の順となっている。つまり、一般家庭 では肉よりも魚や野菜を主とした食卓が普通であることがうかがえる。以下、

家庭の食卓に上ったタマネギが使用されている家庭料理を見ていきたい。

先ず、「玉葱の酢漬」は次のように書かれている。

極小なる玉葱を、皮を剥き、水にて洗ひ、それに酢に砂糖少々唐辛を混ぜて、

瓶に漬け置き、五日間程経て食す。66

以上のレシピによると、これはタマネギを調味した酢に漬けた漬物である。

漬物は昔から日本の食卓に登場している定番の食品であり、作る際に使用する 副材料により、塩漬け、糠漬け、酢漬け、味噌漬けなどの種類がある。また、

酢漬けには和風の酢漬けと洋風のピクルスの二種類があるが、以上のレシピに

酢漬けには和風の酢漬けと洋風のピクルスの二種類があるが、以上のレシピに