4.2 料理学校、女学校におけるタマネギの利用
4.2.2 日本女学校
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の違いにより、同じカレーでも使う調理法、調味料も違う。また、「仍で炊き たての御飯をプリン型又は茶呑茶碗などの中へ詰め、ポンとお皿の中央に脱出し、
その上部より右記の材料を汁と共に注けて供します。」と書いているから、ここ で紹介された「カレードラブスター」は御飯と一緒に食べる料理であることが わかる。即ち、カレーは既に御飯と一緒に食べる料理として定着している。ま た、前述のような型抜き御飯は現在でも使用されており、特に洋食の御飯とし て使われている。
以上のことから、赤堀割烹教場では西洋料理を教授するとき、一般家庭の需 要を考量し、それにふさわしく改良した料理=洋食も教授していることが分か る。また、食材が変った料理、手間が省けた料理、御飯と一緒に食べる料理が 増えたことから、当時の一般家庭が求めているのは本格な西洋料理ではなく、
自分の嗜好にあい、手間が掛からない、御飯と一緒に食べれる料理であること がうかがえる。こうして、西洋料理とは異なるジャンルの洋食が誕生した。
4-2-2 日本女学校
日本女学校は明治33 年(1900)に、西澤之助により東京市本郷区龍岡町に 設立された。その後、日本高等女学校、帝國女子専門学校を経て、昭和24 年
(1949)相模女子大学となり現在に至る。
日本女学校の設立に関し、下記の記事がある。
日本女学校規則書にはその学校設立の趣旨を説いて、「女子はただ学術技芸 に長けたるのみにては未だ足れりとすべからず。あはせて高尚なる心術堅固 なる徳操を養成するにあらざれば、女子たる本分を全くすること能はざるなり。
その婦徳養成の基本は、我が国史上におのづから備はれる高潔善美の良風 即貞淑賢良の婦徳より善きはなし」と。跡見女学校と同じく伝統主義に拠る女 学校がここに誕生をみたのである。33 年に 1 年生から 3 年生までの募集をし たところ、298 名の応募があったと伝えられる。生徒達は実業家や近隣の上流 家庭の子女達であり、日本主義をたてまえとする学校であるだけに、服装は、
袴は海老茶、髪はおさげや束髪や桃割れといったふうであった。38
つまり、日本女学校は当時の女性が学術技芸や婦徳を身につけるために設立 された。また、「生徒達は実業家や近隣の上流家庭の子女達であり」と書いてい るから、日本女学校は上流階層の子女達が通っている学校であることがわかる。
以下、日本女学校の割烹科講師を担当している亀井まき子が明治44 年(1911)
に書いた『洋食の調理』39により、日本女学校で伝授している料理を見ていき
38 文京区役所『文京区史』第 3 巻(文京区役所、1981 年)P852。
39 亀井まき子『洋食の調理』(博文館、1911 年)。
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たい。
『洋食の調理』のはしがきでは次のように書いている。
先日本人の口にあひそうな料理をしらべてかきたいと思ひました所幸ひに私 の修得したのは佛國風とでも申しませうかとにかく日本人の口にあふやうです から、それを此書にしるすことにいたしました其うへ爰に御坐いますのは私の 教場へお出の方にお教へ申しましたのをしるしたのですから所謂畳水練では 御座いません夫故分量もこまかくしるして御座いますから此書を御覧になって 一々あたって御覧になり升と家庭ですぐにお出来になります。40
つまり、本書に記されている西洋料理は教場で実際に教授されているもので ある。また、その中に、日本人の口にあう西洋料理=洋食も含まれていると述 べている。本書の西洋料理はスープの部、ソースの部、むし物の部、サラダの 部、冷し物の部、野菜の部、揚げ物の部、ゆで物の部、いりつけ物の部、煮物 の部、焼物の部など11 種から構成されており、全部は 199 品である。その 199 品は【表4】のようにまとめられる。
【表4】
● タマネギが使われている料理
△ タマネギが使用されていない洋食化の料理
◎ タマネギが使用されている洋食化の料理
●スープ(鶏) 蟹スープ
●牛肉スープ トマトスープ
●羊スープ 青豆スープ
牡蠣スープ 松茸スープ
スープの部
海老スープ
ゴールソース △ウスタソース
●ブラックソース ●トマトソース
●ドピングラス ●ホワイトソース ソースの部
マイヨネスソース
ポテミート メンチプヂング マカロニミート チキンプヂング むし物の部
ビフテキプヂング
サラダ ハムサラダ
フヰツシサラダ 野菜サラダ サラダの部
チキンサラダ ベーコンサラダ
40 亀井まき子『洋食の調理』(博文館、1911 年)P1~2。
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●ポークスチウ チキントマトスチウ
●チキンスチウ ●スライスポーク
●鳩スチウ ●鳩カロリスチウ
ハーツスチウ ●兎スチウ
●スカッチスチウ ●アラモポーク
●ボールスチウ チキンデブロスチウ マカロニトマストスチウ ●羊スチウ
ライススキン ●アラモポア
◎ポークカレースチウ チキンキャベツロール
松茸スチウ ビーフカロリスチウ
●スライスビーフ ポークボールトマトスチウ
●鴫のスチウ エッグススチウ
●デブリスチウ ハヤシビーフ
キネール ●タンダシチウ
●鴨ブロンスチウ ボールポークトマトスチウ カリフラメンチビーフ キャベツスチウ
ポークロールスチウ ●ビーフスチウ
●イチボブレデン マカロニスチウ ハルコベールスチウ メロンスチウ トマトライスチキン △ライスカレー ハルコベールソーセツ ロールキャベツスチウ
●フリカンドチキン ●メンチスチウ
●鴨カルソンスチウ △ライスビーフ 煮物の部
◎ビーフライスカレー ロールビーフスチウ マカロニチース ポテトベーキ
カランディ ロールビーフロース
パイ ●オニオンビーフ
チキンパイ 海老コキン
フヰッシパイ ポークソフル
ビーフパイ ●チキンラビオン
ミートパイ ローフ
キャベツパイ 鴫ロース
●キネールパイ ●チキンフーデメンシュー
鳩パイ 牡蛎パテ
●ソーセツパイ チキンパテ
ポテトパイ メンチパテ
焼き物の部
●キャベツロールベーキ ●ポークパテ
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カリフラワーベーキ ●エッグスベーキ ビーフソフル ゲンパイ
フヰッシロース スカラップフヰッシ
フヰッシソフル ボーフン
マカロニベーキ トマトスタッフヰン チキンロース ローストブーフ ブーフコキン ローストポーク
鳩ロース チキンソフル
スタッフヰンロース チキンコキン
雉ロース フーカデン
●蟹ベーキ マシロムベーキ
『洋食の調理』より作成 以上の表によると、洋食が出てくる回数は僅か6%であり、赤堀割烹教場と 比べると、極めて少ないと言える。これは日本女学校の生徒は富裕層の子女で あるから、一般家庭に向けた簡単で経済的な料理より、口に合う西洋料理の方 が求められているのではないかと考えられる。また、以上の表を見てみると、
タマネギの使用量は約25%である。特に煮物の部では、凡そ半分の料理にタマ ネギが使われた。つまり、タマネギの煮ると甘味が出るという特性は煮る料理 に適するから、煮物の部に多く用いられている。また、揚げ物の部では、ウス ターソースの使いが見られており、揚げ物にウスターソースをかけて食べると いう食べ方は今でも使用され続けている。つまり、ウスターソースは揚げ物の ソースとして定着している。
以下、『洋食の調理』にタマネギが使用されている洋食化の料理を見ていき たい。
まず、「オムレツ」は次のように書かれている。
オムレツといふと誠にやさしいものゝやうに思ひますが手をかけて見ると工合 よく拵へる事が一寸むづかしう御座います。これは玉子を割りまして鉢へ入れ 餘りよくかきまはしてはいけません。蛋黄と蛋白がまざり合って蛋黄がよくとけ さへすればよろしう御座います。此中へ鹽胡椒を適宜に入れて置のです。夫か らフライ鍋の小さいのにヘットを入れて火にかけとけましたら此とかした玉子を 鍋に入れ竹箸の先で鍋の中央の所をくるくると手早くかき廻しまして鍋を火の 上から少しはなして鍋の廻りを竹箸の先ではがすやうにし、フライを自分の顔 の方へ向けるやうにして持てる柄の所を右の手でたゝきますと前の方から二つ に後の方へかさなるやうになります。そうしましたら庖刀の先で又の方へくり返 しますともう出来たので御座います。形は薄くなくこんもりとあとさき細く柏餅の 中身のやうな形にやきたいので御座います。此玉子の中へハムを細かく切っ
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「ハンバクビーフ」は未だハンバーグに進化しきれていない、原始ハンバーグ である。また、ハンバーグはビーフステーキから変化してきたものではないか と推定できる。つまり、ハンバーグの調理法では、最初は牛肉の塊を使い、上 にタマネギをのせていりつけるが、だんだん挽肉を使い、中にタマネギと卵を
「ハンバクビーフ」は未だハンバーグに進化しきれていない、原始ハンバーグ である。また、ハンバーグはビーフステーキから変化してきたものではないか と推定できる。つまり、ハンバーグの調理法では、最初は牛肉の塊を使い、上 にタマネギをのせていりつけるが、だんだん挽肉を使い、中にタマネギと卵を