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4.2 料理学校、女学校におけるタマネギの利用

4.2.1 赤堀割烹教場

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4-2 料理学校、女学校におけるタマネギの利用

それまで一般家庭における料理法の伝授は家庭内や女中奉公などで行われ ていたが、文明開化以降、教育の場所と手段が変化していく。それは新たな教 授の場所である女学校や料理講習会を通じて行われるようになる。

すでに明治15 年(1882)には、赤堀峯吉28の赤堀割烹教場が開かれており、

日本料理のみならず、西洋料理、折衷料理=洋食も教授された。その後、明治 三十年代後半に入ってから、折衷料理は女子の家政教育と雑誌、新聞などのメ ディアにより、その普及に拍車がかかる。以下、料理学校、女学校の教科書を 通じて、タマネギの利用を見ていきたい。

4-2-1 赤堀割烹教場

赤堀割烹教場は赤堀峯吉が明治15 年(1882)に一般家庭の子女に料理を教 えるために東京日本橋に開設した日本初の料理学校である29。以下、明治45 年(1912)に赤堀峯吉が日本女子大学教授赤堀菊子、女子手芸学校教授赤堀美 知子30と共に著した『実用新料理法 日本西洋支那』31(以下『実用新料理法』

と略す)を通じて、タマネギの使用を探求する。

『実用新料理法』の緒言に次のように書かれている。

一、本書に記載せる調理法は、凡て本教場に於て、日々生徒 □(ママ)氏に教授す る所のものにて、殆んどその講義をそのまゝ説明いたしたものであります。

一、本書に記載せる西洋料理法の如きは、著者多年米國及び佛國に於て、専 ら家庭用講理法を實地研究したしたるものゝ中より、最も本邦人の嗜好に適す るものを選び、何れの家庭にも用の出来得べきものゝみを説明いたしたのであ ります。32

つまり、本書に載せる調理法は授業で教えるものとほぼ同じなので、本書に より、どんな西洋料理を教授しているのかが判明できる。また、「最も本邦人 の嗜好に適するものを選び、何れの家庭にも用の出来得べきものゝみを説明いた した」と書いているから、本書に紹介されている西洋料理は日本人の好みに合

28 (1816−1904)江戸後期−明治時代の料理研究家である。

29 赤堀峯吉は明治、大正両天皇の料理人をも勤めたが、あまりにも一般の食事が貧しいこと を憂い、料理学校を開いたという。(『浄土宗新聞』第279 号(浄土宗文化局、1990 年)。)

30 原史料ではこの三人の関係を説明していないが、三人共同で書かれた著書が多いことから

(例えば、『家庭日本料理法』、『家庭日用料理』など)、この三人は家族関係ではないかと考え る。

31 赤堀峯吉等著『実用新料理法 日本西洋支那』(盛林堂、1912 年)。

32 同上、P1。

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せて改良した洋食であることがわかる。また、本書に紹介された「西洋料理」

は【表3】のようにまとめられる。

【表3】

● タマネギが使われている料理

△ タマネギが使用されていない洋食化の料理

◎ タマネギが使用されている洋食化の料理 西洋料理

◎ハンブローグステーキ エッグス、オーグラチン

△ジャーマンカツレツ フィシュ、オムレツ

●フレンチドレッシング

●オニオンスープ パーレー、オブ、ピース

△イタリヤン、チッキンシチュー

◎ポークチャップ

ボイルド、キャーべージ

◎カレードラブスター スパニッシュオムレツ

●ビーフオムレツ ブロイルドチッキン パナナオレンヂサラダ

△ランムチャップウイヅフイヂテーブル フヰッシュ、アラ、クリーム

ビーフコロッケ

●ヴヰルスチュー ヱッグスサラダ

フライマシルム、トーストブレッド マカロニ、イン、ヂンブル

△カレードヱッグス

●ヴイル、コロッケ ホワイトソース

ソール、ヲウ、グラチンホワイトソース ソールトポークウイズキャベーヂ

△チッキンオブトマトライス

△ハムライス

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クラブサラダ ライドフランド

プラムヱンドオレンヂ クラブ、アラ、ニューバーク

●オイスターオムレツ

ベックドスパニシュ、マクロル ポテートボ-ル

△ポツシド、ヱッグス コードフイシュボール

『実用新料理法』より作成

【表3】によると、『実用新料理法』に紹介された西洋料理の中で、約四分の 一は改良した洋食であり、タマネギの使用率は25%である。また、「カレード ラブスター」、「カレードヱッグス」のようなカレー類のほかに、「チッキンオ ブトマトライス」、「ハムライス」、「ポツシド、ヱッグス」など御飯と一緒に食 べる料理も紹介された。つまり、米を主食としている日本家庭にとって、西洋 料理より御飯と一緒に食べれる洋食のほうが適応している。以下、『実用新料 理法』の中に、タマネギが使用されている洋食化の料理を見ていきたい。

まずは、「ハンブローグステーキ」では次のように書いている。

ハンブローグステーキ

〔分量〕牛肉の挽肉 百匁、玉子 一個、玉葱 一個、バター 少量、食鹽 少 量、胡椒粉 少々、パン粉 少量。

〔調理法の手順〕先づ右記分量だけの挽肉を購求( マ マ )まして丼に 加(ママ)れて置き、玉 葱の両端を截去つ上皮を剥き、水洗をいたして水氣を拭ひ、四つ截りにいたし、

更に細小に刻んで右記の挽肉と共に混ぜ、それよりはフライ鍋に少量のバタ ーを 加(ママ)れて火に架け、充分によく煮溶てまいりましたらお鍋を下ろしその牛肉 に混ぜ、手早く箸にてかきまはして、ほどよく鹽と胡椒粉とをふりかけてよく混 ぜ、玉子ほどの大さに丸め、手早パン粉を摻しまして手にて叩きつけ、再びフ ライ鍋にラード又はバターを 加(ママ)れて火に架け、よく沸騰してまいりましたらその お團めました混肉を 加(ママ)れ、六七分間ほども揚げまして、ほどよく狐色になりま したら西洋紙の敷てありますお皿中にとり、よく油氣を断りまして別皿に盛り、

その上部よりトマトソースを灌ぎ注けて供します。33

33 赤堀峯吉等著『実用新料理法 日本西洋支那』(盛林堂、1912 年)P181~182。

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以上のレシピによれば、その材料と調理法は現在の洋食の定番といわれるハ ンバーグ34とほぼ同じなので、これはハンバーグの原型ではないかと考えられ る。また、「玉子ほどの大さに丸め」と書いているから、ハンバーグの最初の形 は玉子のようであることが分かる。また、ここでは「上部よりトマトソースを灌 ぎ注けて」と書いているが、後々いろんなソースに取りかえりたりすることに より、種類豊富なハンバーグ料理となった。

また、「ポークチャップ」では次のように書いている。

ポークチャップ

〔分量〕豚肉 二百匁、食鹽 少々、胡椒粉 少々、玉葱 三個、スープ 少量、

バター 中匙に一抔。

〔調理法の手順〕右記の豚肉を大截のまゝ布巾にて清浄に拭ひ、ほどよく十片 ほどに截つて置きます。直ちに表裏に食鹽と胡椒粉とをふりかけましてお皿中 のメリケン粉を少々加け、その中へ 加(ママ)れまして表裏を摻して置き、それよりフ ラィ鍋に右記分量のバターを 加(ママ)れて火に架け、よく煮溶けてまいりましたらそ の中へ右記の豚肉を投れ、表裏共に狐色になるまでいため、それを度といた して右記の玉葱を細小に刻んでその中へ投れ、且尚かきまはしながら少量の スープを加へて蓋をいたし、二三回ほど沸騰いたしましたらほどよく鹽と胡椒 粉とを加へて味の加減をいたし、直ちにお鍋下ろし、一皿に一片づゝ豚肉を盛 分け、その上面よりその煮汁を毛篩にて漉して注けます。35

『海軍五等主厨厨業教科書』では、「ポーク、チャップ」については、「豚ノ 脊『ロース』に肋骨ヲ約一寸五分位附ケ一人前四十匁乃至四十五匁位ニ切リ塩胡 椒ニテ風味シ『ビーフステーキ』ト同様ニ焼キ附合セモ同様ノモノヲ添ヘ供卓ス 豚 肉ノ骨ヲ去リ前法ニ依リ調理セシヲ『ポークステーキ』ト云フ」36と書いていることか ら、骨付き豚ロース肉を使ったのは「ポーク、チャップ」といい、骨を抜いたの は「ポーク、ステーキ」ということがうかがえる。つまり、「ポーク、チャップ」

というのは骨付き豚ロース肉を調理した料理であるが、『実用新料理法』のレ シピによると、使った豚肉は骨抜きが済んだ肉片である。これは当時の日本人

34「(材料)挽肉 300 グラム、たまねぎ 2 分の 1 個、玉子 一個、パン粉 1 カップ、塩胡椒 少々。

(作り方)1.たまねぎをみじん切りにし、いためてよく冷ます。2.挽き肉に玉ねぎ、パン粉、溶き卵、

塩、こしょうをいれ、よく混ぜ合わせる。3.混ぜたハンバーグのタネを焼くときの大きさに分けてまとめ る。4.油をひいて熱したフライパンの上にハンバーグのタネをのせて片面焼く。5.片面が焼きあがっ たら、ハンバーグを裏返して蓋をして蒸し焼きにする。」(『手作りハンバーグ チャレンジしまし ょ』(主婦の友社、1988 年)P17。)

35 赤堀峯吉等著『実用新料理法 日本西洋支那』(盛林堂、1912 年)P193~194。

36 海軍教育本部編『海軍五等主厨厨業教科書』(帝国海軍社出版部、1918 年)P92~93。

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は骨付き肉にまだ慣れていないから、日本人の口に合せて骨抜きが済んだ肉に 変えたのではないかと考えられる。また、本来の「ポーク、チャップ」はデミグ

は骨付き肉にまだ慣れていないから、日本人の口に合せて骨抜きが済んだ肉に 変えたのではないかと考えられる。また、本来の「ポーク、チャップ」はデミグ