國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
語」と位置づけられてきたのは動作の及ぼす対象(目的語)が複合語の内部に 存在しないためだろう。しかし、だからといって、「ひとまとまり性」が弱い といったら、そうでもない。「車庫入れ」、「磯釣り」ないし「立ち食い」など は使用場面の頻度により、デフォルト対象が決まり、何を入れるか、何を釣る か、何を食うかを常に一々明示する必要はない。たとえ目的語をはっきりいう 必要があっても、動詞単独の場合と比べ、選択制限が厳しくなることもある。
これも名づけを行う際に決められたと考えてよいだろう。なぜほかのものが自 動的に排除されるのかというと、それは複合語が示す対象(=意味)に関わる 百科事典的知識が我々の ICM に蓄積されているからだと考えられる。筆者は ICM の導入に従って、従来「語彙化」とされてきた語に関する様々な現象が説 明できると考える。
以上は第 3 章で敷衍したことであるが、複合語の多義性及び音韻構造は第 4 章で説明した通り、形態通りの意味から離れる、つまり意味が特殊化するにつ れ、音韻構造においても変化が起きる。従って、「梅干し」は単に「梅を干し たもの」という意味ではなくても、第三種の動詞由来複合語というカテゴリー を設けるまでもないだろう。それに比べて、動詞にまつわる各種の情報、たと えばその動作を行う人やその動作を行うのに必要な道具などの意味は基本的 にメトニミーによる拡張だと見られるので、意味の透明性も高く、音韻的にも ほとんど変化が起きないのである。最後に生産性についても検討したが、本論 文の主張によれば、内項、付加詞を問わず、複合語は同じスキーマによる造語 なので、外部世界で動機付けがあれば、すぐスキーマで造語を行えるので、二 種類の複合語はどちらが生産的なのかは一言や二言では言い切れない。
5.2 今後の課題
今後の課題として、次の二点を挙げておく。
一、研究対象
二、句および他の合成語との連結
まず研究対象についてであるが、本論文では主要部が漢語動名詞である複合 語を考察対象から外したが、主要部が漢語動名詞の複合語も結合関係から内項
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
複合語と付加詞複合語と分類することができる。
(2) 内項との複合:
意思表示、世論調査、自己紹介、記者会見、交通渋滞、地盤沈下、法 律改正…
付加詞との複合:
テレビ放送、アンケート調査、衛星放送、単身赴任、個別指導、短期 研修…
外項との複合:
文部科学省認可(の財団法人)、○○大学所蔵の(専門書)、Hotmail スタッフ厳選(のメルマガ)、ミニカーファン製作(のオリジナルミ ニカー)…
主要部が漢語動名詞の場合も主要部が和語動詞の場合と同様に、内項、付加 詞に関わらず、直接に目的語を帯びる他動詞に使われることがある。この現象 について、本論文が提案した語形成モデルで説明できるか、課題にしたい。な お、ほかの二種類と比べ、生産性がそれほど高いとは思えないが、外項との複 合が許されるのも興味深い。
次に句と他の合成語との連結であるが、本稿は認知意味論のスキーマおよび ICM 理想化認知モデル、カテゴリーなどの理論を導入し、動詞由来複合語の語 形成モデルを提案したが、句、および他の合成語との連結は便宜上、特に言及 もしなかったし、筆者の今の力では及ばないところである。なお、本論文の提 案によれば、複合語に関わる百科事典的知識を語ごとの ICM に記述しなければ ならないことになるが、詳細な記述は今後の研究を待たねばならない。
‧
____(2008)「構文形態論による日本語動詞複合語の記述」『Morphology and Lexicon Forum 2008 要旨集』神戸大学
____(2009)「用法基盤モデルに基づいた複合語形成の生産的パターンの 抽出」言語処理学会第 15 回年次大会;鳥取大学
Bauer, Laurie(1983)
English Word-Formation
. Cambridge University Press Grimshaw, Jane(1990)Argument Structure、
MIT Press郡司隆男(2002)『単語と文の構造』岩波書店
John R. Taylor・瀬戸賢一(2008)『認知文法のエッセンス』大修館書店 影山太郎(1980)『語彙の構造』松柏社
‧
Langacker, R. W.(1991)
Foundations of cognitive grammar.
Vol.2,Descriptive application.
Stanford, Calif.:Stanford University Press.Makino Seiichi(1976)「Nominal Compounds」『Syntax and Semantics Vol.5:
Japanese Generative Grammar』Seminar Press 益岡隆志(1987)『命題の文法』くろしお出版
‧
奥津敬一郎(1975)「複合名詞の生成文法」『国語学』101、19-34、斎藤倫明/
石井正彦編(1997)『語構成』158-175 ひつじ書房に再録
Selkirk, Elizabeth(1982)
The Syntax of Words
, MIT Press 瀬戸賢一(1995)『空間のレトリック』海鳴社柴田武(1988)『語彙論の方法』三省堂
島村礼子(1990)『英語の語形成とその生産性』リーベル出版
____(2006)「動作主を表す-er 名詞について―事象-er 名詞と非事象-er 名詞の区別を中心に―」米倉綽(編著)『英語の語形成』368-407 英潮社 蘇文郎(2003)「変化他動詞文についての研究」『政大日本研究創刊號』95-120
國立政治大學日本語文學系
___(2006)「日本語の結果語編入動詞をめぐって」『政大日本研究第 3 號』
173-196 國立政治大學日本語文學系
杉本孝司(1998)『意味論Ⅱ-認知意味論-』くろしお出版
杉本武(2008a)「『N-書き』と『N-読み』(2)」日本語構造論研究レジュメ 筑
‧
Sugioka Yoko(1996)「Regularity in inflection vs. derivation: rule vs.
analogy in deverbal compound formation.」『Acta Linguistica 45』231–
253
杉岡洋子・小林英樹(2001)「名詞+動詞の複合語」影山太郎(編)『動詞の意 味と構文』242-268、大修館書店
Sweet、H(19)
A New English Grammar
玉村文郎(1988)「複合語の意味」『日本語学』295-303
Williams, E.(1981)On the notions “lexically related” and “head of a word.”
Linguistic Inquiry
12:245-274山梨正明(1995)『認知文法論』ひつじ書房
‧ 國
立 政 治 大 學
‧
N a tio na
l C h engchi U ni ve rs it y
辞書
スーパー大辞林 広辞苑第 5 版 コーパス Google
Google ブック検索 Yahoo! Japan