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動詞に使われる動詞由来複合語

3.5 動詞由来複合語の機能

3.5.2 動詞に使われる動詞由来複合語

立 政 治 大 學

N a tio na

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要するに、複合語はその構成によって機能が拘束されるのではなく、むしろ 何かに対する属性を付ける必要があれば、(15)と(16)に示したスキーマか ら複合語が作られると考えられる。

3.5.2 動詞に使われる動詞由来複合語

本節では動詞に使われる動詞由来複合語について考察する。動詞に使われる 動詞由来複合語は形容詞に使われる場合と同様に、従来では「付加詞+動詞」

型の役目とされてきた。

(47)車を水洗いする;高級品を衝動買いする;専門書を流し読みする。(影 山 1999:133)

ラーメンを早食いする;バーゲンで靴下をまとめ買いする。(杉岡・

小林 2001:252)

肌が日焼けする;街をそぞろ歩きする;部下が早死にする;切手をの り付けする;週刊誌を立ち読みする;ドレスを手作りする。(伊藤・

杉岡 2002:115)

これらと形容詞用法と比べ、必ずしも付加的意味を感じさせないし、ほぼ形 態通りの意味となっている。たとえば、「車を水洗いする」は「車を水で洗う」

とほとんど同じだと思われるし、「ラーメンを早食いする」と「靴下をまとめ 買いする」も「ラーメンを早く食べる」、「靴下をまとめて買う」と意味が変わ らない。では、なぜわざわざ複合語を作るのかという疑問が生じる。後に見る ように、実はこれらの例は内項との複合の場合と同様に、行為や何かに対する 名づけだと考えられる。しかも、こう想定した上で初めてなぜこれらの「複雑 述語」としての複合語は動詞の形態ではなく、名詞の形態となっているのか説 明できる。

「-する」について動詞に使える動詞由来複合語は多く杉岡が指摘している ように、動詞(厳密に言えば、動作動詞及び使役変化動詞)の LCS51における ACT を修飾する道具や様態などを意味する語と複合するものである。次の例を

51 ここでは LCS という用語を用いているが、基本的にアクション・チェインという概念と共 通する。

‧ 國

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参照されたい。

(48)[道具-ACT ON]:ペン書き、ワープロ書き、手作り、機械編み(する)

[様態-ACT ON]:はしり書き、べた書き、にわか作り、蒸し焼き、二 度塗り、下焼き、粗削り、空煎り(する)…

動詞の LCS における ACT は動作(activity)を表すので、その部分を修飾す る語との複合によってできた複合語も動作を表す性質を受け継いでいると考 えられる。具体的には次に示すような用法として使われている。(下線筆者)

(49)そこである年。メッセージの部分だけを手書きすることにした。52

(50)軽快な食感の秘密は、スライスとダイスを空焼きして混ぜ合わせたこ と。53

また、(51)に示すように、状態変化動詞の場合、LCS における BECOME を修 飾する原因などを修飾する語との複合したものも直接に「-する」をつけて動 詞に使える。

(51)[原因-BECOME]日焼け、船酔い、仕事疲れ、ビール太り、着ぶくれ、

寝冷え

ところが、形容詞の場合に見られたように、内項との複合にもかかわらず、

動詞に使える動詞由来複合語も報告されている。

(52)a. 私鉄各社がそろって運賃を値上げ/値下げした。

b. 運賃が値上がり/値下がりした。

c. あの喫茶店は、いつも月曜日は早めに店じまいする。

d. 煮物(の味)を味見する。 (影山 1999:134)

52 『「手書き」の力』pp.71

53 『スポンジ・パウンドケーキと焼き菓子』pp.93

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(52)の例はすべて「N の一部を~V する」と再分析できると影山(1999)が 指摘しているが、影山自身が同書の 133 ページで挙げた例の「ワインを瓶詰め する」、「庭に水撒きする」、「床をワックスがけする」などは氏の分析の「N の 一部」とは言いがたい。さらに問題になるのは影山(1993:195-196)で「動 名詞」とされている例である。(分類は筆者によるものである。)

(53)イ. 内項+他動詞:凧揚げ、人殺し、夜更かし、餅つき、草むしり、

歯磨き、 息抜き、票がため、形見分け、くじ引き、根比べ、地なら し…

ロ. 内項に当たる自動詞補語+非能格自動詞:寺参り、塾通い、里 帰り、家出、名前負け、神頼み、山登り、乳離れ、仲間入り、山ごも り、物怖じ…

ハ. 内項+非対格自動詞:雨漏り、息切れ、地割れ、心変わり、気 乗り、目移り、気抜け、色落ち、値崩れ、底冷え、家鳴り、拍子抜け

具体例を示すと次の通りである。(54)~(58)は(53)イ.に当たるもので、

そして、(59)~(61)は(53)ロ.に当たるもの、(62)~(64)は(53)ハ.

に相当するものである。なお、補足として、他動詞で、ニ格との複合の例を(65)

に示しておく。(下線筆者)

(54)髪を部分染めしたいです。54

(55)先に述べたように普通は雑草としてすぐに草むしりされてしまうカ タバミも、ヤマトシジミの幼虫のエサになる。そこで、すべてのカタ バミを草むしりしてしまうのではなく…55

(56)何年かタンスにしまわれた後、着なかったらどうするのかな。誰に形 見分けするのだろうか。56

54 “Yahoo!知恵袋”

(http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail.php?qid=1415213449)

55 『自然との共生をめざす環境学習』pp.60(i.e. この例は影山(1999)では不適格だとさ れているが、実際には使われている。)

56 『境界の糸』pp.99

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(66)の場合、「塩焼き」されたものは料理の「塩焼き」にならないので、「塩 焼き」が調理法の名前として、目的語を帯びる他動詞に使われたと考えられる。

以上の例文を検討した結果、複合語の使われ方は実は意味に影響され、そし て、複合語の意味を決定する最大の要因は、何に対する名づけだといえるだろ う。