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日語動轉名詞之構詞法-從認知語意學的觀點- - 政大學術集成

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Academic year: 2021

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(1)國立政治大學日本語文學系 碩士論文. 指導教授:蘇文郎. 博士. 政 治 大. 日本語動詞由来複合語の語形成 立. ‧ 國. 學. -認知意味論の観点から-. ‧. n. er. io. sit. y. Nat. al. Ch. engchi. i Un. v. 研究生:葉秉杰 撰 中華民國九十九年一月.

(2) 謝辞. この論文を執筆するにあたり、多くの方々にご指導、ご意見を頂き、ここで 感謝の意を申し上げたいと思います。審査委員の担当に当たった東呉大学の頼 錦雀先生及び政治大学の吉田妙子先生から論文に関する大変貴重なコメント を多く頂きました。指導教官の蘇文郎先生には大学生の時からたくさん面倒を 見て頂き、先生のお蔭で日本語学や言語学に目が覚めました。大学院に入って からも丁寧にご指導頂き、論文のテーマの決定から完成まで 4 年間ほど付き合 って頂きました。大学院で最初に集中講義を開いてくださった東京大学の楊凱 栄先生からは日中対照研究の方法論を教えて頂き、東京都立大学名誉教授の奥. 治 政 大 などを教えて頂きました。筑波大学に交換留学のときは矢澤真人先生や竹沢幸 立 一先生に日本語研究や理論言語学に関する授業を聴講させて頂き、いろいろ啓 津敬一郎先生とアメリカのプリンストン大学の牧野成一先生からは研究方法. ‧ 國. 學. 発されました。于乃明先生と蔡瓊芳先生にはいつも励まして頂き、一方ならぬ お世話になりました。特に于先生は、北京外国語大学で開催された「若手研究. ‧. 者合同シンポジウム」に出席する機会をくださり、感謝の気持ちでいっぱいで. sit. y. Nat. す。私が一番敬愛する先輩である王淑琴先生は語彙研究の指導のほか、研究者. io. er. であるべき態度も教えてくださいました。クラスメートの姜鈞傑君と黄志傑君 を初め、先輩の横山麻紀さんや後輩の范佩佩さんとは日ごろ研究をめぐって熱. n. al. Ch. i Un. v. き論戦を繰り広げる中、論文に関するヒントをいっぱい得ました。真如苑仏教. engchi. 会からは多額な奨学金を頂き、日本で論文に関する資料をいっぱい入手できま した。 ほかにも感謝しきれないほど私を支持してくださった方々がいらっしゃい ますが、ここで改めて感謝の意を表します。どうもありがとうございます。 なお、論文においてなお不備な点があると思われますが、それに関してはす べて筆者の責任です。.

(3) 日本語動詞由来複合語の語形成 ―認知意味論の観点から―. [要旨]. 従来の日本語の動詞由来複合語に関する研究は意味分類にとどまったもの か統語現象に注目したものが殆どであり、意味拡張の仕組みや語の複合による 選択制限はまだ解明されていない。しかし、認知意味論の方法を用いたスキー マ、理想化認知モデルなどの導入に伴い、項構造や動詞の語彙概念構造では読 み取れない次のような情報が説明できるようになると思われる。. 複合語の多義性. 2.. 複合語の選択制限. 3.. 複合語の統語的特性. ‧. ‧ 國. 立. 學. 1.. 政 治 大. まず、複合語の多義性というのは、「歯磨き」のような一つの語が二つ、或. sit. y. Nat. は二つ以上の意味を担うことであり、従来では後項動詞の名詞化による現象と. io. er. されているが、本論文はそれがメトニミーによる意味拡張だと主張したい。 次に、選択制限とは、 「?洗剤を水割りで使う」 、 「?部屋で立ち読みする」 、 「??. n. al. Ch. i Un. v. こんにゃくを輪切りにする」などといった、文法的に間違っていると言いにく. engchi. いが、不自然に感じられることである。本稿は「名づけ機能」からこの現象を 検討する。 また、複合語の統語的特性というのは、構成が「内項+動詞」か「付加詞+ 動詞」と分解できても、 「-する」が後接したりしなかったりするということで ある。 特に 1 と 2 は先行研究では殆ど言及されていない。これは、動詞由来複合語 の分析にまだ不十分なところであると思われる。本稿では、認知意味論の方法 を導入し、新しい語形成モデルを提案する。. キーワード:動詞由来複合語、スキーマ、フレーム、用法依存モデル、理想化 認知モデル.

(4) 日語動轉名詞之構詞法 -從認知語意學的觀點[摘要] 就筆者所觀察,至今有關日語動轉名詞之研究大都僅止於語義分類或是分析 其句法現象,複合詞語義擴張之結構與因詞彙複合所產生的選擇制約(selectional restriction)之原因尚未闡明。然而,透過認知語意學之基模、理想化認知模組等, 我們可以正確掌握在論元結構或是詞彙概念結構所無法得知之信息,如以下三 點。 1. 複合詞的多義現象 2. 複合詞的選擇限制 3. 複合詞的句法特徵. 立. 政 治 大. 首先,複合詞的多義現象所指的是同一個形態帶有兩種或兩種以上語義之詞. ‧ 國. 學. 彙,如「歯磨き」 。在以往的研究皆被視為是動詞語基轉為名詞時所發生之現象, 筆者則主張本現象是起因於轉喻。. ‧. 其次,選擇限制所指的是如「?洗剤を水割りで使う」 、 「?部屋で立ち読みす る」、 「??こんにゃくを輪切りにする」之類,未必不合語法但會令人感到不自然 之用法。本論文將由「命名功能」來探討此現象。. y. Nat. sit. n. al. er. io. 最後,複合詞的句法特徵所指的是,詞彙結構雖同樣能夠分解為「內部論元 +動詞」或「附加語+動詞」,卻未必能夠與「-する」結合來做為一個動詞使用 之現象。 以上三點中特別是 1 和 2 在先前研究中幾乎未被提及。筆者認為此二點在動 轉名詞中尚有待研究。因此,本論文將藉由認知語意學之方法來嘗試提出新的構 詞模式。. Ch. engchi. i Un. v. 關鍵字:動轉名詞,基模,框架,使用基礎模組,理想化認知模組.

(5) Word-Formation of Deverbal Nouns in Japanese -By the point of view of Cognitive Semantics-. Abstract. In this paper, I attempt to interpret some phenomena of deverbal nouns in Japanese as shown following, by the method of cognitive semantics.. 1. The polysemy of deverbal nouns 2. The selectional restriction of deverbal nouns. 政 治 大. 3. The syntactic characteristics of deverbal nouns. 立. At first, I will explain the polysemy of deverbal nouns as the lexicon “Hamigaki”,. ‧ 國. 學. which is considered as a phenomenon of conversion of the base verb, is due to metonymy.. ‧. Second, I will make an explanation about the selectional restriction of deverbal. sit. y. Nat. nouns such as “? Senzaiwo mizuwaride tsukau”, “? Heyade tachiyomi suru”,. io. ungrammatical usage via “naming function”.. n. al. Ch. er. “??Konnyakuwo wagirini suru”, which are easy to be regarded unnatural but not. i Un. v. Last, I will discuss the relation of the affix “-suru” and deverbal nouns which can. engchi. be analyzed to “theme + verb” or “adjunct + verb”.. Keywords: deverbal noun, schema, frame, usage-based model, idealized cognitive model.

(6) 目 第1章. 次. 序論. 1.1. 研究動機及び目的……………………………………………………………1. 1.2. 「語」に関する重要な概念…………………………………………………2. 1.2.1. 名づけ機能…………………………………………………………………2. 1.2.2. 右側主要部規則……………………………………………………………3. 1.2.3. 二分枝分かれ構造…………………………………………………………3. 1.2.4. 形態的緊密性………………………………………………………………4. 1.2.4.1. 統語的な要素の挿入……………………………………………………4. 1.2.4.2. 照応………………………………………………………………………5. 治 政 大 論文構成………………………………………………………………………6 立. 1.3. 學. 第2章. 一部の修飾………………………………………………………………5. ‧ 國. 1.2.4.3. 研究対象と先行研究. はじめに………………………………………………………………………7. 2.2. 研究範囲………………………………………………………………………7. 2.3. 研究背景………………………………………………………………………10. 2.4. 研究方法………………………………………………………………………11. ‧. 2.1. er. io. sit. y. Nat. 2.4.1. カテゴリー化………………………………………………………………11. 2.4.2. スキーマ……………………………………………………………………12. 2.4.3. 理想化認知モデル…………………………………………………………12. 2.5. n. al. Ch. engchi. i Un. v. 終わりに………………………………………………………………………13. 第3章. 動詞由来複合語の語形成. 3.1. はじめに………………………………………………………………………14. 3.2. 先行研究………………………………………………………………………14. 3.2.1. 影山(1999)………………………………………………………………14. 3.2.2. 杉岡・小林(2001)………………………………………………………15. 3.2.3. 伊藤・杉岡(2002)………………………………………………………16. 3.2.4. 先行問題のまとめ及び問題点……………………………………………18. 3.3. 本論文の提案…………………………………………………………………19.

(7) 3.4. 名づけとしての動詞由来複合語……………………………………………22. 3.5. 動詞由来複合語の機能………………………………………………………25. 3.5.1. 形容詞に使われる動詞由来複合語………………………………………27. 3.5.2. 動詞に使われる動詞由来複合語…………………………………………34. 3.5.3. 名詞に使われる動詞由来複合語…………………………………………39. 3.5.4. 機能による意味変化………………………………………………………43. 3.6. 複合語の選択制限……………………………………………………………45. 3.7. 終わりに………………………………………………………………………53. 第4章. 動詞由来複合語の多義性、音韻構造及び生産性. 治 政 大 4.2 先行研究………………………………………………………………………56 立 4.2.1 奥津(1975)…………………………………………………………………57 はじめに………………………………………………………………………56. 學. ‧ 國. 4.1. 西尾(1988)…………………………………………………………………58. 4.2.3. 影山(1993)、影山(1999)………………………………………………58. 4.2.4. 籾山(2002)、ジョン・瀬戸(2008)……………………………………59. 4.2.5. 先行研究のまとめ及び問題点……………………………………………59. ‧. 4.2.2. sit. y. Nat. 4.4. 動詞由来複合語の音韻構造…………………………………………………64. 4.5. 動詞由来複合語の生産性……………………………………………………70. 4.6. 終わりに………………………………………………………………………75. n. al. er. 動詞由来複合語の意味拡張…………………………………………………60. io. 4.3. 第5章. Ch. engchi. i Un. v. 結論. 5.1. 本論文の結論…………………………………………………………………76. 5.2. 今後の課題……………………………………………………………………77. 参考文献……………………………………………………………………………79.

(8) 第1章. 1.1. 序論. 研究動機及び目的. 日本語の動詞由来複合語は非常に生産的な語形成の方法である一方、意味が 様々であり、形態から捉えにくいと思われる。たとえば、「くず拾い」と「く ず入れ」を比較したところ、ふつう前者は「くずを拾うこと」か「くずを拾う 人」と理解されるのであるが、後者は「くずを入れる道具」としか意味しない ようである。しかし、いずれも前項と後項の関係は「~をする」となっている。 筆者の考察によれば、従来の研究は、このように語全体の意味分類や複合語の 内部構造、すなわち前項と後項の関係の分類にとどまっているものが殆どであ. 治 政 大 れつつあるが―形態が「名詞+動詞語幹 」や「形容詞語幹+動詞語幹」となっ 立 ていても、意味が二つ以上あり得るし、 「-する」がつくかつかないかも複合語 る。近年の研究は統語的振る舞いについても言及され、語形成モデルが解明さ 1. ‧ 國. 學. ごとに違う。なお、たとえ「-する」をつけて動詞として使えても、複合語の 語基動詞がとれる目的語を必ずしも受け継ぐとは限らない―といったことに. ‧. ついても議論されるような研究は、管見の限り、現時点ではまだないようであ. sit. n. al. er. io. (1) 複合語の多義性. y. Nat. る。上に述べた三つの問題点をそれぞれ. Ch. (2) 複合語の統語的特性 (3) 複合語の選択制限. engchi. i Un. v. と呼ぶことにするが、(1)と(3)は従来の分析法(項構造と語彙概念構造) だけでは十分に説明できず、認知意味論の方法を用いる分析が必要かつ有効だ と思う。しかし、認知意味論、或いはラネカー(Langacker)を代表とする認 知文法に基づいた研究は単純語扱いする傾向が強いようであり、そのような分 析は妥当かどうかまだ議論する余地があると思われる。本論文は複合語と認め る観点に立ち、認知意味論の方法を導入し、(1)~(3)の問題解決を目指し つつ、新たな語形成モデルの提案を目的とする。 1. 動詞の連用形と扱う見方もあるが、筆者は動詞の語尾変化を一種の接辞を見なし、動詞を「語 幹+時制接辞」と見るため、「語幹」と呼ぶことにする。 1.

(9) 1.2. 「語」に関する重要な概念. 本論に入る前に、まず「語」に関わる重要な概念をここで提示しておく。語 は文を構成する最も基本的な単位で、意味を担う最も小さい単位の形態素 (morpheme)からなる。通常、文に独立して現れるものを単純語2、二つ以上 の単純語が組み合わさったものを複合語、単純語に接辞(affix)3がついたも のを派生語と呼ぶが、複合語と派生語は併せて合成語と呼ぶ。同一の形態で二 つ以上の品詞を認められる語も一種の派生語と見られるが、このような現象を 転換(conversion)と称するか、ゼロ接辞(zero-affix)の添加による現象だ と見るか、研究者によって見方が分かれている。. 1.2.1. 名づけ機能. 政 治 大. 立. 奥津(1975)、斎藤(2004)で提示されているように、我々は(見知らぬ新. ‧ 國. 學. しい)語に出くわしたときに、常に当の語をパラフレーズして理解しがちであ る。例えば、奥津は斎賀(1959)で挙げられた「積雪寒冷地帯義務設置学校屋. ‧. 内運動場急速整備促進期成会」を次のように言い換えられると述べている。. sit. y. Nat. io. er. (1) 雪が積リ寒ク冷イ地帯ニ義務トシテ設置サレタ学校ノ屋内ノ運動場 ヲ急速ニ整備スルコトヲ促進シソノ成功ヲ期スル会. n. al. Ch. engchi. i Un. v. 奥津(1975:161). また、斎藤は複合語の語形成を次のように構造化している。. (2) 語構成の常識的モデル a + b →. ab 斎藤(2004:3). しかし、まさに氏が当の論文で述べているように、「綱引き」は単に「綱を 引くこと」を意味するのではなく、むしろ「綱の両端を多人数で引き合って勝. 2. 独立形態素、自由形態素(free morpheme)に当たっている。 接辞はさらに接頭辞(prefix)、接中辞(infix)、接尾辞(suffix)に分けることができ、 いずれも単独で文に使えない拘束形態素(bound morpheme)である。. 3. 2.

(10) 負を争う競技(『新明解国語辞典』第五版)」と理解されるであろう。同様な指 摘は影山(1999)もしており、このようにある慣習化されたこと(もの)に対 し、我々は常に造語を通して名づけ(naming)をするのである。 さて、上では「綱引き」や「山登り」は単に「綱を引くこと」と「山に登る こと」だけを表すのではないと述べたが、それは決して「NV」は「Nを/に V」を含意しないわけではない。 「a+b=ab+α」は認知言語学のゲシュタルトの 考え方及び「全体は部分の総和以上のものである」(河上 1996:1)という主 張とも合致しており、事実「綱引き」の意味も「山登り」の意味も「綱を引く こと」と「山に登ること」によって支持されていると思われる4。. 治 政 大 さて、合成語には全く同じ要素によって構成されるものがあるが、その意味 立 の中核をなし、しかも品詞を決める部分は主要部(head)と呼ぶ。主要部は大 右側主要部規則. 學. ‧ 國. 1.2.2. 体語の右側に位置すると一般化され、これを右側主要部規則(Righthand Head Rule(RHR))と呼ばれている。(Williams1981:248). ‧ er. io. sit. y. Nat. (4) ハチミツ、ミツバチ(竝木 1988:69). たとえば、 (4)の「ハチミツ」は「蜜」の一種であり、 「ミツバチ」は「蜂」. n. al. Ch. i Un. v. の一種である。このような複合語を内心(endocentric)複合語と呼ぶ。一方、. engchi. 主要部のない複合語もあり、たとえば英語の「redskin」は「red」でも「skin」 でもなく、このような複合語を外心(exocentric)複合語と呼ぶ。なお、「東 西南北」や「春夏秋冬」、 「松竹梅」のような等位複合語(dvandva. compound). も右側主要部規則の例外となっている。. 1.2.3. 二分枝分かれ構造. 複合語は結合要素がむやみに結びついてできるのではなく、基本的には統語. 4. 上に見たように、 「綱引き」は「綱を引くことを勝負する競技」という「a+b=ab+α」の考 え方は認知言語学の発想と重なっているが、研究者によっては、J.R. Taylor et al.(2008) のように「水割り」を「水」と「割り」の合成と見るよりも「水割り」一つと見るべきだと主 張する文法家もいる。しかし、そのような考え方に踏まえては、比較的新しい造語の「コーラ 割り」はいかに解釈すべきか問題になる。 3.

(11) 構造と同様に二つずつ結合していくのである。これは二分枝分かれ構造 (Binary Branching Condition)と呼び、複合語に見られる一般的な制約だと 思われる(Selkirk1982;影山 1999;伊藤・杉岡 2002 他)。1.2.2 で述べた等 位複合語を除き、二、三つの要素からなる複合語を始めとして、斎賀(1959) でいう「積雪寒冷地帯義務設置学校屋内運動場急速整備促進期成会」のような 長い複合語まで、内部構造は(5)、 (6)のような対等関係ではなく、 (7)、 (8) のように分解されるだろう。. (5) [[思い][出し][笑い]] (6) [[積雪][寒冷][地帯][義務][設置][学校][屋内][運動場][急速][整. 治 政 大 (7) [[[思い][出し]][笑い]] 立 (8) [[[[[[[積雪][[寒冷][地帯]]][[義務][設置]]][[学校][[屋内][運動 場]]]][[急速][整備]]][促進]][期成]]会]]. ‧. 1.2.4. 學. ‧ 國. 備][促進][期成][会]]. 形態的緊密性5. sit. y. Nat. 語が受けるもう一つの制約として形態的緊密性(lexical integrity)が挙. io. n. al. er. げられる。それを次に示すいくつかの現象で説明する。. 1.2.4.1. Ch. 統語的な要素の挿入. engchi. i Un. v. ごく少数の例外(e.g. 我が家、木の葉など)を除き、語の内部に基本的に 助詞は現れない。. にほん. くるま. にほんぐるま. (9) 日本の 車 (cf.* 日 本 車 ) にほん. しゃ. にほんしゃ. (10)*日本の 車 (cf.日 本 車 ) (11)雨(*が)降り、ボール(*を)投げ、郵便(#6の)配達(影山・柴谷 1987:143). 5. この節の内容は影山(1999)、影山・柴谷(1987) 、伊藤・杉岡(2002)に基づいて書いたも のである。 6 “#“は求める意味と異なることを意味する。 4.

(12) 助詞の省略はくだけた会話、新聞の見出し、名詞の列挙及び決まり文句以外、 基本的に不可能であり、特に(9)の名詞句における「の」はどのような文体 でも省略できないのである。(影山・柴谷 1987)それに対し、(10)、(11)に 見られるように、「語」に助詞を挿入すると、文法的に不適格になる。 助詞のほかに、時制屈折語尾、複数屈折語尾及び助動詞などの文法範疇(機 能範疇;functional category)も語の内部にふつう現れない。次の例を参照 されたい。. (12)子供新聞/*子供たち新聞(影山 1999:11). 1.2.4.2. 照応. 立. 政 治 大. 文における名詞句を代名詞で指すことを照応(anaphora)という。照応は先. ‧ 國. 學. 行詞の位置により、外向きの照応(outbound anaphora)と内向きの照応 (inbound anaphora)に分けられ、それぞれ次のように示しておく。. sit. y. ‧. Nat. (13)先行詞が語の内部にある場合(外向きの照応). io. al. n. 1999:9). er. *[山登り]の好きな人はそこで死んでも本望だと思っている。(影山. Ch. i Un. v. (14)先行詞がふつうの名詞句である場合(内向きの照応). engchi. *彼は高級な外車に乗っていて、毎晩[それ洗い]をしている。 (同:10). (13)、(14)に見られる通り、外向きの照応であれ、内向きの照応であれ、 語の構成要素の一部を代名詞で指示する、或いは代名詞を語内部に盛り込むこ とはネイティブ・スピーカーによって容認されたり、されなかったりするが、 原則的には受け入れられない。これは照応の島(anaphoric island)の制約と いう。(Postal 1969)7. 1.2.4.3. 7. 一部の修飾. ここで Postal(1969)への言及は影山(1999)によるものである。 5.

(13) 語はひとつのまとまりとして文に現れるため、語の一部だけを外部から修飾 することはできない。(15)を参照されたい。. (15)魚釣り/*[大きな魚]釣り 花見/*[満開の花]見(伊藤・杉岡 2002:7). 1.3. 論文構成. 本論文の構成は次に示す通りである。第 1 章は研究動機と目的、語に関する 重要な概念を提示する。第 2 章はまず動詞由来複合語を定義し、研究範囲につ いて述べる。その上で先行研究の概観をする。第 3 章は従来の語形成モデルを. 治 政 大 張に基づき、動詞由来複合語の意味を検討する。それから、第 5 章で本論文の 立 結論及び今後の課題を述べる。 検討した上、本論文が主張する語形成モデルを提案する。第 4 章は本論文の主. ‧. ‧ 國. 學. n. er. io. sit. y. Nat. al. 6. Ch. engchi. i Un. v.

(14) 第2章. 2.1. 研究対象及び先行研究. はじめに. 本章では研究範囲を規定した上で、先行研究を概観し、本論文で使う理論枠 組みを提示する。. 2.2. 研究範囲. 日本語に動詞成分を含んだ複合語は少なくとも(1)に挙げる 10 種類存在す るが、従来の研究では、A から J までを動詞由来複合語とすることはない。. 治 政 大 B. V+V 消し忘れ、付き添い、食べすぎ、垂れ流し、売り尽くし、差 立 し入れ… 學. C. V+V. 立ち読み、寝冷え、飢え死に、煮干し、思い出し笑い…. ‧ 國. (1) A. V+V. 使い古す、踏み潰す、降り始める、食べ損なう、見逃す、言. い忘れる.... ‧. 色褪せる、旅立つ、手放す、脈打つ、間違う…. E. N+V. ゴミ受け、風船売り、寸法直し、山登り、手作り、犬走り、. y. sit. io. 飲み水、焼き魚、飼い主、渡り鳥、迷い箸、乗り物、受け皿、. al. n. F. V+N. er. 色移り…. Nat. D. N+V. 折り紙.... Ch. engchi. i Un. v. G. V+A. 打たれ強い、見苦しい、食わず嫌い…. H. A+V. 黒こげ、白塗り、粗挽き、厚揚げ、薄切り、無理やり…. I. A+V. 高鳴る…. J. Adv+V. よちよち歩き、ポイ捨て、がちゃ切り、マジギレ、ガン見、. 苦笑い.... まず 1.2.1 で提示した右側主要部規則から、品詞別で次のように再分類する と、動詞と形容詞、名詞に分けることができる。C、D、I はふつう複合動詞と、 G は複合形容詞とそれぞれ分類されるため、考察対象から排除される。. (2) 動詞 7.

(15) C. V+V. 使い古す、踏み潰す、降り始める、食べ損なう、見逃す、言. い忘れる D. N+V. 色褪せる、旅立つ、手放す、脈打つ、間違う. I. A+V. 高鳴る. 形容詞 G. V+A. 打たれ強い、見苦しい、食わず嫌い. 名詞 A. V+V. 立ち読み、寝冷え、飢え死に、煮干し、思い出し笑い. B. V+V. 消し忘れ、付き添い、食べすぎ、垂れ流し、売り尽くし、差. し入れ E. N+V 色移り. 立. 飲み水、焼き魚、飼い主、渡り鳥、迷い箸、乗り物、受け皿、. 學. ‧ 國. F. V+N. 政 治 大. ゴミ受け、風船売り、寸法直し、山登り、手作り、犬走り、. 折り紙. よちよち歩き、ポイ捨て、がちゃ切り、マジギレ、ガン見、. io. sit. y. Nat. 苦笑い. ‧. J. Adv+V. 黒こげ、白塗り、粗挽き、厚揚げ、薄切り、無理やり. er. H. A+V. 名詞の中でも、なお様々な下位分類ができる。まず、 「V+V」型に着目すると、. n. al. Ch. i Un. v. A.と B.は対応する動詞が存在するかどうかという点で異なっている。. engchi. (3) 「V+V」型名詞 A. 立ち読み、寝冷え、飢え死に、煮干し、思い出し笑い →*立ち読む、*寝冷える、*飢え死ぬ、*煮干す、*思い出し笑う B. 消し忘れ、付き添い、食べすぎ、垂れ流し、売り尽くし、差し入 れ →消し忘れる、付き添う、食べ過ぎる、垂れ流す、売り尽くす、差し 入れる. 「立ち読み」と「消し忘れ」を例に取り上げれば、「立ち読み」は対応する 動詞「立ち読む」がなく、「立ち読みする」の形にしなければならないのに対 8.

(16) して、「消し忘れ」はそれに対応する動詞「消し忘れる」が存在するので、そ れぞれは異なった語形成プロセスをたどって形成されたと思われる。図示する と、. (4) 立ち読み→接辞附加→立ち読みする (5) 消し忘れ←時制辞削除←消し忘れる. A タイプ(i.e. 「立ち読み」タイプ)は軽動詞(light verb)「する」を添 加することによって動詞に使われ、影山(1993)が主張している「動名詞」 (verbal noun)に属する。一方、B タイプ(i.e. 「消し忘れ」タイプ)は一. 政 治 大. 般的8に動詞による派生名詞だと思われ、従来の研究でも A と別とされるので、 考察の対象外とする。. 立. F は後項が名詞である点9でほかの複合名詞の構造と異なり、 「N+N」や「A+N」. ‧ 國. 學. などと併せて一次複合語(primary compound)と呼ばれることもあり(影山 1999) 、考察対象としない。こうして、本論文の考察対象となる複合語は主に. ‧. (6)に示すような 4 種類になるが、これらは一次複合語と違う点は、前項と. 色移り H. A+V J. Adv+V. sit er. 立ち読み、寝冷え、飢え死に、煮干し、思い出し笑い. al. n. E. N+V. io. (6) A. V+V. y. Nat. 後項は文法関係10に立つということにある。. Ch. i Un. v. ゴミ受け、風船売り、寸法直し、山登り、手作り、犬走り、. engchi. 黒こげ、白塗り、粗挽き、厚揚げ、薄切り、無理やり よちよち歩き、ポイ捨て、がちゃ切り、マジギレ、ガン見、. 苦笑い 8. 伊藤・杉岡(2002:140)では「着膨れる」や「食い倒れる」 、 「寝ぼける」などが挙げられ、 それらの動詞は動詞由来複合語の「着膨れ」 、 「食い倒れ」 、 「寝ぼけ」の逆形成による複合動詞 だと指摘されている。確かに影山(1993)が提案する「他動性調和の原則」も考え合わせれば、 (4)に挙げた「垂れ流す」を含め、本来「非能格自動詞+非対格自動詞」、 「他動詞+非対格 自動詞」、 「非対格自動詞+他動詞」というような組み合わせは不可能であり、これらの複合名 詞を派生名詞ではなく、動詞由来複合語と認めるべきだと思われる。 9 「入れ墨」、 「告げ口」 、 「寄り道」などといった一部の例外を除き、大体この規則に従ってい る。これらの例は本論文の考察対象にならないので、深入りしないが、詳しくは影山(1980) と影山(1993)を参照されたい。 10 つまり、前項は後項の必須補語であったり、後項が表す動作による結果であったり、後項 が表す動作の様態であったりすることである。 9.

(17) (7) A. 水鉄砲、水羊羹、水商売、水玉、水鳥、水風呂、水枕、水メガネ B. 飲み水、焼き魚、飼い主、渡り鳥、迷い箸、乗り物、受け皿、折 り紙、はけ口. (6)に並べた例はいずれも文法関係が想定でき、たとえば A.類は「立って 読む」、「寝て冷える」、「飢えて死ぬ」、E.類は「ゴミを受ける」、「山に登る」、 「手で作る」、「色が移る」、H.類は「黒くこげる」、「白く塗る」、「粗く挽く」、 「無理にやる」、J.類は「よちよち歩く」、「ポイと捨てる」と考えられる。 それに対し、 (7)に見た一次複合語は前項と後項の関係は一定ではない。 (7) A.の水鉄砲は「ポンプ式に、筒の先の細い穴から水を押し出して飛ばす玩具」. 治 政 大 い柔らかい羊羹」(大辞林)というものである。ほかの「水商売」や「水玉」 、 立 「水鳥」などもまた違う関係が窺えられ、要するに、前項が同じ「水」となっ (大辞林)というものであるが、水羊羹は「寒天でこし餡を固めた,水分の多. ‧ 國. 學. ていても、後項との関係は実に多岐に渡っているわけである。 (7)B.は形態的にいずれも「V+N」となっているが、語の意味をよく吟味. ‧. したところ、やはり語の結合関係は様々だと気がつく。たとえば、「飲み水」. sit. y. Nat. は「飲料にする水」 (大辞林)で、 「飲まれた水」というより「我々人間に飲ま. io. er. れている清くて、体に無害の水」と考えられる。それに対し、「焼き魚」にお ける「焼き」は「焼いた」 、 「焼かれた」 、 「焼き上がった」などと意味し、動作. n. al. Ch. の完成や受身などの意味を帯びている。. engchi. i Un. v. なお、以下(8)のような前後が同じ文法関係による結合であるが、主要部 が漢語動名詞か外来語である複合語も考察の対象外とする。. (8) ジグザグ走行、ながら運転、立ち往生、銀行預金、アメリカ出張、家 庭訪問、不法投棄、無断コピー、不正アクセス. 2.3. 研究背景. 今までの動詞由来複合語に関する研究は大まか次の三段階に分けることが できる。. (9) 段階一:複合語の意味分類、内部構成の分析 10.

(18) 代表的研究:西尾(1961)、奥津(1975)、Makino(1976)その他 段階二:英語との比較による分析 代表的研究:影山(1982)、竝木(1988)、その他 段階三:英語学の概念、理論を積極的に日本語に導入した研究 代表的研究:影山(1999)、杉岡・小林(2001)、伊藤・杉岡(2002) その他. 段階一の研究は形態論(morphology)的立場からの分析が多く、殆ど複合語 の分類に止まっているが、後の研究に一つの方向付けを提供してくれたのは評 価される。段階二は英語との比較を通し、日本語の特性を見出した。 (e.g. 英. 治 政 大 るが、日本語は概して「N(A/V)+V(連用形)」で表現する)そして、段階三で 立 初めて「動詞由来複合語」という用語を日本語に適用し、非対格仮説を初め、 語の動詞由来複合語は「-er」で道具や人間を表し、 「-ing」で出来事を表現す. ‧ 國. 學. 項構造などの理論を取り入れ、大きな貢献を遂げている。但し、否めないこと に、今までの研究は形式主義を重視するものがほとんどであり、認知意味論の. ‧. 立場から見た動詞由来複合語の研究はまだ少ないようである。. y. sit. io. er. 研究方法. Nat. 2.4. 本節では本論文で使う主な理論枠組みを提示する。. n. al. 2.4.1. Ch. engchi. カテゴリー化(categorization). i Un. v. この世にあるもの、ことを様々なグループに分類するという心的過程 (mental process)を認知言語学ではカテゴリー化と呼ばれる。たとえば、飛 行機、車、船などは「交通機関」という上位レベルに帰納される。そして、車 を例にすれば、その下位分類として、軽自動車、ワゴン車、セダン、リムジン などが挙げられる。このように、カテゴリーはふつう三段階の階層構造 (hierarchical structure)となっており、それぞれ上位レベル・カテゴリー (superordinate level category)、基本レベル(basic level category)、下 位レベル(subordinate level category)と名づけられている。この概念を言 語に適用したところ、基本レベルは日常でも頻繁に使われ、外国語学習者や子 供の言語習得に当たり、一番最初に覚えることばになる。そして、上のレベル 11.

(19) に行けば行くほど、総称的になりやすいし、逆に下に行けば行くほど概念が複 雑になる。図示すると次の通りになる。. (10). 交通機関. 上位レベル・カテゴリー. 飛行機. 車. ワゴン車. セダン. 2.4.2. 船. 基本レベル・カテゴリー. リムジン. 下位レベル・カテゴリー. スキーマ(Schema). 治 政 大 カテゴリーに属するメンバーの共通点を抽象化し、その抽象化された「鋳型」 立 がスキーマである。しかも、[A]、[B]、[C]は必ず“[B]、[C]は[A]の一種”と スキーマという用語は最初認知心理学の分野で用いられた。我々人間は同じ. ‧ 國. 學. いう関係にある。具体的な例を取り上げると、(10)に挙げた「ワゴン車」も 「セダン」も「リムジン」もいずれも「エンジンで駆動し、四輪で地上を走行. ‧. するという点で「車」といえる。そして、「ワゴン車」と「車」を比べてわか. sit. y. Nat. るように、「ワゴン車」は必ず四角くて、後ろのトランクがなく、車高が何ミ. io. n. al. er. リメートルか以上でなければならず、「車」より具体的な形が頭に浮かぶ。. (11). Ch. (スキーマ) [A]. [B] (事例). i Un. v. e n g c h i (より抽象的). [C] (事例). (より具象的) ジョン・瀬戸(2008:16). 2.4.3. 理想化認知モデル(Idealized Cognitive Model). 我々はあることばを使用する際、そのことばにある様々な知識や文化背景な どを前提に、意味を単純化、理想化して捉えている。このようにある対象を特 徴付けるために稼動する知識構造は理想化認知モデルと呼ばれている。. 12.

(20) (12)経験と概念化. =対象と経験の関係 =概念の記号化. 吉村(2003:202). 政 治 大 「bachelor」を「未婚、独身男子」と理解するのだが、あまりローマ法皇を 立 最も有名な例の一つである「bachelor」の例を挙げよう。ふつう、我々は. ‧ 國. 學. 「bachelor」と呼ばないのは「ローマ法皇は結婚しないことになっている」と いう知識に起因するのではないであろうか。こうして「ローマ法皇」を. ‧. 「bachelor」と理解しない ICM が機能すると同時にプロトタイプ効果も現れる。 (i.e. ローマ法皇は bachelor のプロトタイプではないこと). y. sit. al. er. io. 終わりに. Nat. 2.5. iv n C た。2.2 で見たように、一見したところ、どれも動詞成分を含んだ複合語とし hengchi U n. 本章では本論文の研究対象、研究背景及び本論文の主な理論枠組みを見てき. か見えないが、前後の関係や対応する動詞の有無からさらに下位分類すること ができることが判った。2.3 では先行研究を年代別に分け、それぞれの段階で いかなる研究がなされたか、また認知意味論に基づいた研究が少ないことにつ いて述べた。次の章では最初に重要な先行研究をもう一度検討し、その後 2.4 で提示した理論を導入し、本論文の提案を見ていく。. 13.

(21) 第3章. 3.1. 動詞由来複合語の語形成. はじめに. 本章ではまず動詞由来複合語の語形成に関する先行研究を概観し、問題点を 提出してから 3.3、3.4 で本論文の提案について述べる。3.5 で複合語を機能 ごとに先行研究の反例を検討しながら、筆者の主張の妥当性を検証する。3.6 では従来全く見過ごされてきた複合語の選択制限について考察し、3.7 で本論 文の提案する語形成モデルを再検討して終わりにする。. 3.2. 先行研究. 治 政 大 り、従来の研究は形式重視のものがほとんどである。以下では 3 つの代表的な 立 研究を年代順で見ていく。 筆者の知る限りでは動詞由来複合語の認知意味論的な先行研究は皆無であ. ‧ 國. 學. 3.2.1. 影山(1999). ‧. 影山は Selkirk(1982)の第一投射の条件(First Order Project Condition). sit. y. Nat. を日本語に適用し、日本語の動詞由来複合語の語形成を考察している。英語で. io. er. は「子供が遊ぶこと」という意味の「*child-playing」や「赤ちゃんが泣くこ と」を意味する「*baby-crying」 (pp.126)など、 「主語+動詞」という組み合. n. al. Ch. i Un. v. わせは不可能だとされているが、日本語には「胸騒ぎ」や「地鳴り」などとい. engchi. った「主語+自動詞」の結合パターンも見られるので、影山は外項(external argument)と内項(internal argument)を区別した上で、Selkirk の主張を より正しく規定している。具体例を示すと、次の通り11である。. (1) 主語(外項)+非能格自動詞:カエル泳ぎ、ウサギ跳び、韋駄天走り … (2) 主語(内項)+非対格自動詞:雨漏り、肩こり、心変わり、胸焼け、 地響き… (3) 目的語(外項)+他動詞:*子供遊び、*赤ん坊泣き、*(子供の)親. 11. 14. これらの例はすべて影山(1999:126-127)による。.

(22) 育て12… (4) 目的語(内項)+他動詞:しりとり、缶けり、輪投げ、玉入れ、ババ 抜き…. 外項に見える複合も一二あるが(i.e. (1))、それは本当に「カエルが泳ぐ」 や「ウサギが跳ぶ」13などということを意味するのではなく、 「~のようにする」 という直喩表現である。少なくとも、現時点では「受取人払い」といったごく 少数の例外を除き、「外項+動詞連用形」型の複合は許されない14と思われる。. 3.2.2. 杉岡・小林(2001). 治 政 大 詞連用形」型と「付加詞+動詞連用形」型と分けている。そして、動詞の意味 立 構造(アクション・チェイン;action chain)を導入し、「付加詞+動詞連用 形」型の動詞由来複合語を分析している。. 學. ‧ 國. 杉岡・小林は影山(1999)の考えを受け継ぎ、動詞由来複合語を「内項+動. ‧. (5) 卵を釜で徐々に固くゆでる. io. al. 徐々に. n. 釜で. ↑. Ch. er. ↑. sit. y. Nat. <行為(ACT)>→<変化(BECOME)>→<結果状態(BE)>. iv. ↑. 固く. n(杉岡・小林 2002:253) U engchi. 「卵を釜で徐々に固くゆでる」という文における三つの副詞は(5)に示し ている意味と関わり、動詞との結合により「釜ゆで」と「固ゆで」と二つの複 合語ができる15。英語の動詞由来複合語は項構造でのみ生成されるのに対し、 日本語の動詞由来複合語は項構造のみならず、動詞の意味構造においても生成 される。. 12. 「親が子供を育てる」という意味では不適格になる。 類例として「鷲づかみ」や「うなぎ登り」 、「とんぼ返り」などが挙げられる。 14 上に述べたのは和語の場合であり、 「外項+漢語動名詞」については小林(2004)が詳しい。 15 同書では変化(BECOME)に関与する「*徐々ゆで」は言わないが、「早ゆで」などは文脈に よっていえる場合もあると説明されている。 13. 15.

(23) 伊藤・杉岡(2002)16. 3.2.3. 杉岡は上の先行研究を踏まえ、日本語の「内項+動詞」型の動詞由来複合語 も項構造で生成されると主張している。しかし、英語の動詞由来複合語はコト を表す「-ing」やモノ、人間を表す「-er」などの接辞を用いるのに対して、 日本語はどれも動詞の連用形で終わるので、次のような外心構造17をなしてい ると仮定している。. (6). N. V’. 立. Vx<yi>. 學. ‧ 國. Ni ゴミ. 政 治 大. ひろい. ‧. 主要部が動詞にもかかわらず、複合語全体としては動作の名前や職業などを. sit. y. Nat. 意味し、普通名詞として使われるため、 「-する」について述語に使えない。そ. io. er. れに対し、付加詞との複合は、前項の付加詞が主要部動詞の語彙概念構造にお いて、どの意味述語を修飾するかに従い、複合語の構造も変わると指摘されて. n. al. Ch. i Un. v. いる。たとえば、「ペン書き」における「ペン」は主要部動詞「書く」の語彙. engchi. 概念構造の「ACT」の部分を修飾するので、 「ペン書き」はやはり動詞に使える が、 「うす切り」における「うす」は主要部動詞「切る」の語彙概念構造の「BE」 を修飾するので、複合語全体も「結果状態」を表し、「~はうす切りだ」とい うように使われるのである。. 16. 筆者が参考にした部分は主に杉岡が執筆したものである。以下、特に年代を明示しない部 分は、すべてこの論文によるものである。 17 益岡(1987)でいう外心構造は、[[山口先生は][[生徒に][きびしい]]]のような属性叙述 文の統語構造のことをいい、また氏のいう内心構造は[[山口先生が][生徒を][しかった]]のよ うな事象叙述文の統語構造(述語を主要部としたものと名詞句を補足部としたものが姉妹関係 をなしている構造)のことをいうが、ここでいう外心構造は語レベルのことで、全体の意味が 主要部から読み取れないものをいう。1.2.2 も参照。 16.

(24) (7). VN x < y >. N. N. VN x < y >. A. N. ペン. 書き(する). うす. 切り(だ). 伊藤・杉岡(2002:124-125). さらに、二種類の複合語は音韻的にもそれぞれの特徴を見せている。内項と の複合は連濁せずに発音され、しかも動詞のアクセント(起伏型)となってい るが、付加詞との複合は連濁を起こし、そして名詞アクセント(平板型)とな っている18。. ――-┐. 立. 政 治 大 ─-┐. ‧ 國. ― ― ―. 學. (8) 内項:ほん よ み(本読み)(cf. 動詞用法: 本を 読 みに行く) ― ― ―. ―. 付加詞:ぼーよみ、たちよみ(立ち読み) (cf. 名詞用法:本の読みが. ‧. 浅い). Nat. al. n. 考察の結果は次の表にまとめられている。. engchi. i Un. v. 表1. 内項の複合. 付加詞の複合. 例. ゴミひろい. 手書き、薄切り. 指示物. 動作の名前. 複雑述語(動作・状態). 品詞. 普通名詞. 動作性名詞、述語名詞. 構造. 外心構造. 内心構造. 動詞アクセント. 名詞アクセント. 起こさない. 起こす. 項構造. LCS. 連用形のアクセント 連濁 レベル. 18. Ch. er. io. sit. y. 伊藤・杉岡(2002:126). 西尾(1961)も参照。 17.

(25) 伊藤・杉岡(2002:130). 3.2.4. 先行研究のまとめ及び問題点. まず、語の結合パターンについてであるが、2.2 では動詞由来複合語の構成 要素は文法関係によって結合すると述べたが、主語か目的語かということだけ 考えるのは不十分であり、影山が指摘しているように、外項と内項を区別する ことが必要だと思われる。外項との結合は、ごく限られた一部の例外(受取人 払い、犬走り、鳥居)を除き、ほとんど不可能である。 次に、付加詞との複合の場合、複合語の前項が主要部動詞の意味構造のどの 部分を修飾するかによって、複合語全体の文におけるふるまいが影響されるこ. 政 治 大. ともほぼ杉岡が指摘している通りになっている。. 立. (9) [道具-ACT ON]ペン書き、ワープロ書き、手作り、機械編み(する). ‧ 國. 學. [様態-ACT ON]はしり書き、べた書き、にわか作り、蒸し焼き、二度 塗り、下焼き、粗削り、空煎り(する). ‧. [原因-BECOME]日焼け、雪焼け、船酔い、仕事疲れ、ビール太り、着. y. sit. Nat. ぶくれ、寝冷え(するをとることができる). io. al. n. 山積み(だ). er. [結果状態-BE]四つ割り、薄切り、角刈り、白塗り、厚焼き、固ゆで、. Ch. i Un. v. [材料-BE]石造り、木彫り、モヘア編み、毛織り(だ)19. engchi. しかし、杉岡の主張に反する例も少なからず存在する。 (下線筆者). (10)私とお婆ちゃんは指切りしてお別れした。20 (11)ポン引きやおかまも店じまいしてしまったのだろう。21 (12)?パスタを早ゆでする。(cf. 早ゆでパスタ) (13)ただしホンモノの温泉のなかには、温度調節のためではなく、別の目 的で源泉を水で割っているところもあります。22 19 20 21 22. 18. (9)は伊藤・杉岡(2002:117-120)による例である。 『忘れないで不動産屋一代』 『暗闇の達人』 『一度は泊まってみたい癒しの温泉宿』pp.171.

(26) →?別の目的で源泉を水割りにしているところもあります。 (cf. ウイ スキーを水割りにする。). (10)と(11)は主要部動詞の内項との複合にもかかわらず、普通名詞とし て「~をする」に使われるのではなく、直接「-する」について動詞述語に使 われており、表 1 の「品詞」のところの反例となっている。(12)は付加詞と の複合であるが、動詞により、形容詞に使われるほうが多いようであり23、し かも杉岡の一般化にも反している24。 (13)は「水で割る」という部分を「水割 りにする」と言い換えるとふつうではないと思われる。しかし、杉岡の主張に よれば、(10)と(11)はあくまで普通名詞であるため、そもそも動詞として. 治 政 大 も LCS から複合語の選択制限がどこによるのか説明できない。 立. は使えないと予想される。また、LCS で形成されるとされている(12)と(13). ‧ 國. 學. (14)「早茹で」と「水割り」の LCS: 「早茹で」:[x ACT-ON y FAST]. ‧. 「水割り」:[[x ACT-ON y BY MEANS OF WATER] CAUSE [y BECOME[BE. er. io. sit. y. Nat. DILUTE]]]. (14)から我々は付加詞が元動詞の LCS におけるどの意味述語を修飾するか. n. al. Ch. i Un. v. という情報しか読み取れず、なぜ「源泉を水割りにする」ことが違和感を覚え. engchi. させるのかという情報は入っていない。そこで、複合語全体の統語的特性は杉 岡の指摘の通り、付加詞が修飾する LCS の意味述語によって左右されやすいと いうことは確かであっても、(10)~(13)に挙げた現象も説明できる語形成 モデルが必要だと思われる。. 3.3. 本論文の提案. 従来の研究では、語の構成に重点が置かれ、考察が行われてきた。最も代表. 23. Google 日本で『早茹での』と『を早茹でし』で絞り検索した結果、それぞれ 1380 件と 107 件だった。 24 杉岡は「手作りする」 、「手作りの人形」のように二通りの使い方を持つのは道具・様態を 意味する付加詞が作成・使役変化動詞と複合した場合に限られると指摘している。(伊藤・杉 岡 2002:121) 19.

(27) 的な研究ともいえる杉岡の研究も音韻構造と生産性などの面から、「内項+動 詞」型と「付加詞+動詞」型の動詞由来複合語を二つの異なったレベルで生成 されると証明しようとし、語形成プロセスに着目し、考察を進めているが、筆 者は認知意味論の用法基盤モデルの立場から、意味重視の語形成モデルを提案 したい。 認知意味論の言語観では、ことばはあくまでも現実世界から切り離され、独 立した存在ではなく、常に現実世界と関わり合っており、認知能力の一種とさ れている。具体的な例を挙げると、我々人間はあるものを見たときに、そのも のの成分より、用途を先に認知するのではないだろうか。たとえば、あるボー ルを見た場合、それを「セルロイドボール」や「ゴムボール」よりも、先に「ピ. 治 政 大 は言語にも反映されると考えられ、本論文の研究対象を取り上げて述べると、 立 筆者は「内項+動詞連用形」だから、動作の名前だとか、「付加詞+動詞連用 ンポン玉」、 「野球ボール」と認識するのではないだろうか。そして、この事実. ‧ 國. 學. 形」だから、複雑述語だとかいうふうに考えず、むしろ現実世界で「需要」 (動 機付け)があるので、既存の「型」(スキーマ)を通して複合語を創り出すと. ‧. 考える。ただし、筆者の知る限りでは、従来の認知意味論に基づいた研究では、. sit. y. Nat. 複合語の意味は往々にしてその構成要素の足し算で求められるものではない25. io. er. と見るものが多いようである。たとえば、ジョン・瀬戸(2008)は「ウイスキ ーの水割り」という例を挙げ、その文における「水割り」は「水」と「割り」. n. al. Ch. i Un. v. が合成したものよりも、「水割り」が一つで知覚されると述べている。確かに. engchi. その考え方に基づいては、我々がふだん食べる「油揚げ」も単に「油」と「揚 げる」による結合に過ぎないとは考えられず、「油+揚げる+豆腐」という 「1+1=2+α」と考えざるを得ないが、それにしても複合語の分析可能性 (analyzability)を完全に否定するまでもないだろう。事実、 「油揚げ」が「油 揚げ麺」のような使われ方では、むしろ全体は「油で揚げる」としか意味しな いし、つまり「1+1=2」のような結果になっているのではないかと思われる。 では、動詞由来複合語は一体いかに形成されるのだろうか。筆者は次のような 語形成モデルを考案している。. 25. 20. すなわち「1+1≠2」というゲシュタルト(Gestalt)という考え方である。 (河上 1996).

(28) (15)認知意味論に基づいた動詞由来複合語の語形成モデル26. 27. 治 政 大 れがちながらも、その構成から抽出されたスキーマは一つの語形成の仕方とし 立 て健在しているのだと考えられる。 先に挙げた「水割り」や「油揚げ」などのように、たとえ一語として意識さ. ‧ 國. 學. (16) [[主要部動詞の内項/付加詞]動詞連用形]. スキーマ. ‧ [[オリーブ油]揚げ]. 事例. er. io. sit. y. →. Nat. [[油]揚げ]]. この考え方に基づいては、動詞由来複合語は項構造レベルで形成されるか、. n. al. Ch. i Un. v. 語彙概念構造レベルで形成されるかという区別がなくなり、このような形態を. engchi. 持つすべての造語は類推もしくはアナロジー(analogy)によるものだという ことになる28。このように、前項は様々な要素を入れ替えるという範列的関係 (paradigmatic relation)が可能ながらも、それは後項、すなわち主要部動 詞の内項か付加詞のいずれかでなければならないという統合的関係 (syntagmatic relation)はふつうの文と共通し、音素レベルから文レベルま で、スキーマで統一的に捉えようとしている認知言語学の発想と重なる部分も あると思われる。ただし、本論文の第 1 章でも言及した名づけ機能が示した通 26. このモデルは吉村(2003)を参考に筆者が作成したものである。 ここでいう「既存の語」とは我々の脳内に存在する心的辞書に登録されている語のことで ある。 28 西尾(1988)も似たような考えを示しているが、生産性の格差から、複合語を創り出す「型」 が一つだけではなく、幾つか存在するとしている。また、浅尾(2007、2009)も構文形態論 (Construction morphology)を導入し、筆者と近い考えを示している。 27. 21.

(29) り、 「語」である以上、必ず「文」と違う部分があると想定される。たとえば、 影山(1999)は第一章の冒頭で、次の例を挙げて比較している。. (17)a.私は山に登るのが好きだ。 b.私は山登りが好きだ。影山(1999:2) (18)黒塗りの車. 氏の説明によると、複合語表現の「山登り」は単に「山に登ること」を意味 するに止まっているのではなく、スポーツないしリクリエーション活動として の山に登ることに意味が限定されるという。同様な現象は(18)においても見. 治 政 大 らず、特に高級な乗用車を指すという 。形式重視の研究では、 上の現象を「語 立 彙化(lexicalization)」によるものだと扱われているが、認知論の立場では、. られる。 (18)の指示対象はただ「黒く塗った/塗られた車」という意味のみな 29. ‧ 國. 學. 名づけ機能がもたらした特殊な意味は実は我々の経験と密接な関係に立って いると考えられ、なぜほかの意味が自動的に排除されるかは理想化認知モデル. ‧. (Idealized Cognition Model)によるものだと考えられる。. sit. y. Nat. (15)を通して、従来では例外と扱われてきたものが説明できるほか、語彙. io. n. al. er. 化と処理された部分も捉えることができると予期される。. 3.4. Ch. 名づけとしての動詞由来複合語. engchi. i Un. v. 筆者は二つのレベルから形成されるとされてきた二種類の動詞由来複合語 を一つのスキーマから創り出されると想定した上、どちらも動詞が表す事態に 対する名づけ30と捉え直したい。すなわち、「玉乗り」は「玉に乗ること」で、 「手縫い」は「手で縫うこと」と捉えるのである。そもそも日本語の「複雑述 語」に「ぶち壊す」や「読み始める」 、 「泡立つ」といった複合動詞及び「毛深 い」や「聞き苦しい」といった複合形容詞が存在するのに、なぜ「複雑述語」 に使われる動詞由来複合語が名詞形となっているのかというのも興味深い疑. 29. 米国、プリンストン大学の牧野成一先生による指摘である。 杉岡は内項複合語を「動作の名前」としているが、 「金魚すくい」など、「動作の名前」と してはふさわしい例もあれば、「崖崩れ」や「左利き」などといった「動作」と言いがたい例 もあるので(台湾、東呉大学の頼錦雀先生による指摘)、ここでは動詞が表す(抽象的な)事 態に対する名づけとしておく。 30. 22.

(30) 問である。 にもかかわらず、内項、付加詞という区別をせずに、一律に「動詞が表す事 態に対する名づけ」と扱っていいのかと問い掛けたくなるかもしれない。確か に内項との複合は一つの出来事として、意味が整合しているので、「動詞が表 す事態に対する名づけ」という解釈にふさわしいが、「付加詞+動詞」型も常 に主要部動詞の目的語を文に放出しなければならないというわけではない。た とえば、「早押し」といえば、何を押すか、「夜釣り」といえば、何を釣るか、 また「輪切り」といえば、何を切るかは動詞「押す」 、 「釣る」、 「切る」と比べ、 それほど重要ではないようである。なぜなら、これらの複合語は「名詞」だか らである。動詞と名詞の関係を(19)の Langacker(1987)の図で説明すると、. 治 政 大 で、過去か現在か、それとも未来かというテンスや開始、進行中、完了などの 立 アスペクトを表示しなければならないし、「誰が何を」、「何がどう?」という 動詞は(19a.)のように出来事に関与する時間的局面を一つ一つ描写するもの. ‧ 國. 學. ような動作の参与者も常に我々の念頭に置かなければならない。それに対し、 名詞は(19b.)に示しているような時間を超越する概念なので、テンスやアス. ‧. ペクト情報はすべて捨象され、しかも、ふつう名詞はあるモノやコトに用いる. y. sit. io. n. al. er. 要31ではない。. Nat. 名づけであるため、「誰が何を」や「何がどう?」といった情報は必ずしも必. Ch. (19)a. 連続走査(sequential scanning). engchi. i Un. v. b. 累積走査(summary scanning). 31. 政治大学の吉田妙子先生の指摘によると「犯人」のような「何の犯人?」という一項名詞 が存在するという。 23.

(31) Langacker(1987:144). これは動詞由来複合語に限って見られる現象ではなく、派生名詞、複合名詞 を含み、全ての名詞に共通する概念である。たとえば、「追い越す」なら、常 に「X が Y を追い越す」というふうに動作の参与者を一々明示しなければなら ないし、「今から追い越す」か「既に追い越した」かなどという情報も言明し なければならないが、名詞化された表現の「追い越し」は通常、(20)に示す ように「同じ方向に向かい、同じ車線を走行中の車が、後方にある車が車線を 変更し、前方にあった車を越えて走行すること」という行為を表すゆえ、「誰 が何/誰を追い越す/したか」は追究されない。. 治 政 (20)“追い越し”に対するイメージスキーマ大 立 ‧. ‧ 國. 學. io. sit. y. Nat. n. al. er. さて、内項との複合か付加詞との複合かを問わず、形態的に名詞となってい. i Un. v. る動詞由来複合語を一律に「動詞が表す事態に対する名づけ」としていいのだ. Ch. engchi. ろうか。ここで、斎藤(2004)を引用すると、斎藤(2004)も後項が「~投げ」 の動詞由来複合語を 8 例取り上げ、筆者と同様な扱いをしている。. (21)すくい投げ→(相手を)すくうようにして投げること 背負い投げ→(相手を)背負うようにして投げること 円盤投げ→円盤(のようなもの)を投げること ハンマー投げ→ハンマー(のようなもの)を投げること 砲丸投げ→砲丸(のようなもの)を投げること 槍投げ→槍(のようなもの)を投げること 雪投げ→雪(の玉)を投げること 輪投げ→輪を投げること 24.

(32) (22)・すくい投げ:相撲の技. ・雪投げ. ・背負い投げ:柔道の技. ・輪投げ. 子供の遊びの名称. ・円盤投げ ・ハンマー投げ. 陸上競技の名称. ・砲丸投げ ・槍投げ 斎藤(2004:80-81). (21)、 (22)では「内項+動詞」型と「付加詞+動詞」型が混ざっているが、 同書で言及されているように、それぞれ何に対する名づけなのかということが. 治 政 大 いられる「内項+動詞」型の「円盤投げ」や「ハンマー投げ」などに上位概念 立 の「陸上競技の名称」が存在するように、「すくい投げ」や「背負い投げ」な 重要である。「円盤を投げること」、「ハンマーを投げること」の名前として用. ‧ 國. 學. ど付加詞との複合の場合も上位概念の「相撲の技」 (あるいは決まり手)と「柔 道の技」が存在する。ただし、「相撲の技」という上位概念に対応する技の名. ‧. 前はまず一つしかないと考えられない。従って、動詞由来複合語か否かという. y. sit. io. n. al. er. た。. Nat. ことにかまわずに、「相撲の技」に対応する名前を調べた結果、次のものを得. Ch. i Un. v. (23)突き出し、寄り切り、押し倒し、一本背負い、上手投げ、足取り、吊. engchi. り落とし、送り投げ、合掌捻り、居反り、蹴返し、腰砕け…32. 語構成は違うものの、 「名前」として機能する点は変わらないと思われるの で、筆者が名詞形となっている動詞由来複合語をすべて「動詞が表す事態に対 する名づけ」とする主張は必ずしも不適切ではないと考えられる。. 3.5. 動詞由来複合語の機能. 語形成モデルの妥当性を検証すべく、伊藤・杉岡(2002)になぞらえて複合 語の統語、意味及び音韻等の面から検討しなければならないが、本節は統語と. 32. “Wikipedia” 大相撲の決まり手一覧項目 25.

(33) 意味(表 1 に指示物及び品詞に当たる部分)に焦点を置いて考察を進めたい。 影山(1999)等が述べているように、動詞由来複合語は次のように名詞、動 詞、形容詞33と三つの用法を併せ持っている。. (24)名詞:花見に行く。玉入れをする。絵描きがいる。二つ切りにする。 (25)動詞:ごぼうを灰汁抜きする34。料理を手作りする。ママと指切りす る。 (26)形容詞:3 人乗りの自転車。種抜きのオリーブ。石焼き芋。耳寄りの 情報。. 治 政 大 や道具(e.g.缶切り)なども表し得るし、意味が多岐に渡っている。意味から 立 分類すれば、コト名詞とモノ名詞に大別できるが、コト名詞は動作の名前にふ. まず名詞に使われる場合は出来事を始め、それに関わる人間(e.g. 絵描き). ‧ 國. 學. さわしくても、モノ名詞は到底そう言いにくいと思われる。この意味の多様性 に関して、従来では NVN という構造をなしている複合名詞の第 3 項が削除され. ‧. たものとされているか(奥津 1975)、一次複合語と扱われている(影山 1999)。. sit. y. Nat. この問題については第 4 章で詳しく検討することにするが、ここではまず複合. io. er. 語の拡張の意味はメトニミーによるもので、全ての意味は「動詞が表す事態」 に基づいたものだと考えておく。. n. al. Ch. i Un. v. 次に、動詞に使われる場合は(25)に書いているように、他動詞と自動詞と. engchi. 二種類の用法が見られる。内項との複合の場合、複合語自体は一つの出来事と して意味が明白であるので、特に問題がないが、付加詞との複合の場合、主要 部動詞が要求する目的語は動詞単独の場合に比べ、強く制限されることもあり (e.g. (12)、 (13))、 「何に対する名づけなのか」に影響される部分が大きい と考えられる。 最後に形容詞に使われる場合であるが、これは動詞の場合と同様に、複合語 が要求する項、つまり被修飾語も「何に対する名づけなのか」に強く影響され るようである。(e.g. 早茹でパスタ、?早茹でたまご) 33. ここでいう形容詞は名詞修飾形が「な」ではなく、 「の」に従うようになっているので、形 態論的には名詞に分類されるが、意味的には形容詞に近いので、形容詞として扱うのが妥当で あろう(村木(2002、2008 等)でいう第三形容詞をも参照されたい)。 34 『スーパー大辞林』 26.

(34) こうして、動詞由来複合語のスキーマ的意味は「動詞が表す事態に対する名 づけ」と統一的に捉えられても、実際の意味は使われ方によって変化するのが わかり、次の節から機能ごとに考察していきたい。. 3.5.1. 形容詞に使われる動詞由来複合語. 最初に形容詞に使われる動詞由来複合語を見る。従来の指摘では、形容詞と して機能するのは付加詞との複合の役目だとされている35。具体的には次のよ うなものが挙げられる。. (27)手作りケーキ、石焼き芋、旬摘みお茶、朝採りいちご、固ゆでたまご、. 治 政 大 階建てのアパート… (28)2 人乗りのスポーツカー、7 人がけの座席、3 立 塩茹で枝豆、平積みの本、輪切り唐辛子、黒塗りの車…. ‧ 國. 學. これらは動詞単独の場合(e.g. 焼き芋、ゆで卵)と比べ、 「何で作った/焼い た/茹でたのか」、 「いつ採ったのか」、 「いかに積んだ/切ったのか」といった材. ‧. 料、道具、時間、結果などの付加的情報が盛り込まれており、杉岡・小林(2001). sit. y. Nat. などでいわゆる「複雑述語」に当たっている。問題は、複合語の意味は本当に. io. er. 単に「手で作った/作られた36ケーキ」、「石で焼いた/焼かれた芋」、「旬に摘ん だ/摘まれたお茶」 、「2 人乗れるスポーツカー」、「3 階に建てた/建てられたア. n. al. Ch. i Un. v. パート」に止まっているのだろうか。影山(1999)では「手編み」などの例が. engchi. 挙げられ、次のようなことが指摘されている。. (29)これらの名詞要素37の働きは、 「手編み」の「手で」のように手段を表 したり、「産地直送」の「産地から」のように起点を表したりと様々 であるが、複合語であるからには、何らかの付加的な意味が含意され ることが多い。たとえば「手編み」なら「心がこもっている」 、 「産地 直送」なら「新鮮である」といったニュアンスが感じ取ることができ 35. たとえば、影山(1999:138)に挙げられた「手編み」 、 「親譲り」、 「大学出」などもほとん ど主要部動詞にとっての必須項とは思えない。 36 英語の「-ed」に訳されることから(e.g. handmade cake;morning picked strawberry; two-seated sport car;three-floored apartment)、これらの複合語が受身的解釈を受けるこ とがわかる。 (影山 1999:138 も参照) 37 複合語の前項を指す。 27.

參考文獻

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