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名詞に使われる動詞由来複合語

3.5 動詞由来複合語の機能

3.5.3 名詞に使われる動詞由来複合語

立 政 治 大 學

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(66)の場合、「塩焼き」されたものは料理の「塩焼き」にならないので、「塩 焼き」が調理法の名前として、目的語を帯びる他動詞に使われたと考えられる。

以上の例文を検討した結果、複合語の使われ方は実は意味に影響され、そし て、複合語の意味を決定する最大の要因は、何に対する名づけだといえるだろ う。

3.5.3 名詞に使われる動詞由来複合語

上では動詞由来複合語の用法は意味に左右される部分が大きいと述べたが、

実は形態がすべて名詞形となっている動詞由来複合語を動詞が表す事態に対 する名づけと統一的に捉えられると筆者が考えている。何に対する名づけは、

動詞に使われるかないかということに影響を与えるだけではなく、後に見る複 合語の選択制限にもよほどの影響をもたらす。

(68)金魚すくい、バウムクーヘン作り、窓拭き、子育て、仕事探し、ババ 抜き、庭弄り、ボート漕ぎ、墨入れ、デカール貼り、スイカ割り、ガ ラス破り、海鳴り、興ざめ…

内項との複合は(68)に示しているように、「金魚すくい」は「金魚をすく うこと」を、「バウムクーヘン作り」は「バウムクーヘンを作ること」をそれ ぞれ意味すると思われる。しかし、今まで繰り返して述べたように、「語」で あるからには、必ず「名づけ機能」により何か付加的意味が込められる。まさ に我々が「山登り」を「スポーツないしリクリエーションの活動として山に登 ることに限定される」(影山 1999:2)と捉えるように、上の「金魚すくい」

も多く「縁日お祭りのときに屋台で遊ぶゲーム」の一種と捉えられる。同じカ テゴリーに属する複合語同士を示すと次の通りである。

(69) 縁日お祭りのときに屋台で遊ぶゲーム

金魚すくい ヨーヨー釣り 輪投げ

しかし、周知の通り、「お祭りのときに屋台で遊ぶゲーム」は(69)に示し

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たものだけではなく、さらに列挙すると(70)のようになる。

(70) 縁日お祭りのときに屋台で遊ぶゲーム

金魚すくい ヨーヨー釣り 輪投げ ダーツ 射的…

同じカテゴリーの下では動詞由来複合語だけではなく、単純語、場合によっ ては一次複合語や派生語も現れるが、要するにこれらは動作の名前を表す点で 同じであり、そして、形態に見られない意味は上位概念から来たものだと考え られる。実際、上位概念が存在しない場合、付加的意味も必ずしも感じられる とは限らない。

(71)ミニ遠足を年に何回かして滝登り、川上り、洞穴巡り、山登りをし心 を強くするように好奇心、自信、やる気を育て主体性を何気なく後押 ししている。70

(71)における「滝登り」と「川上り」、「洞穴巡り」は「山登り」と並べら れているが、前にある三つは「スポーツとしての活動」とは言いがたい。内項 との複合は動詞句に近いため、特別な意味が込められていない場合もしばしば あり得る71。類例を追加しよう。

(72)ケーキ作りの技術は、教えれば一年ですべて覚えてしまうだろうな。

逆に言えば、ケーキ作りを覚えるには、一年あればいいということに なってしまう。72

70 『新保育園物語』pp.61

71 従って、次のように形態的緊密性を破る例もときどき見受けられる。

„ [[明るい街]作り]

„ [[地球に優しい環境]作り]

„ [[今晩の宿]さがし] (テレビ番組“田舎に泊まろう”)

„ [[旬の焼き物]さがし](テレビ番組“田舎に泊まろう“)

„ [[フランチーニの墓]参り](影山 1993:333)

„ [[バーのママ]殺し](影山 1999:110)

„ [[先輩の尻]拭い](郡司 2002:54)

„ [[自分の店]の屋号]入りタオル(竝木 2005:8 出久根達郎『面一本』pp.447)

72 『ショートケーキ日記』pp.65

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(73)もみもみはミルク飲みの動作 猫がときどき見せる不思議な動作と して、飼い主の腕や肩、胸などを前足でもみもみすることがあります。

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(74)麺食いのためのページ74

(75)携帯電話を二台持ち歩いているのは、電池切れ対策です。ボイスメー ルと電子メールがそれぞれ一日 100 本も届くのを一台で受信すると、

半日で電池切れになり連絡途絶になります。75

(72)の「ケーキ作り」は「ケーキを作る(技術)」と言い換えても、意味 的に著しい違いがないと思われるし、また、(73)の「ミルク飲み」、(74)の

「麺食い」、そして(75)の「電池切れ」もそれぞれ「ミルクを飲む」、「麺を 食う」、「電池が切れる」と言い換えられるようである。こうして、語彙化は程 度こそあれ、特殊な意味を帯びることもあるという従来の指摘も実は上位概念 が存在するかどうかということを通して、形態に見られない意味を確認できる。

76

一方、付加詞との複合は述語に使われるものだと位置づけられているが、実 は同じな観点から捉えることができる。たとえば、次の例は「複雑な動作」を 意味するよりも、髪型の名前として使われていると思われる。

(76)三つ編み、丸刈り、七三分け、銀杏返し、おさげ、ちょんまげ、ポニ ーテール、ツインテール、アフロヘアー、パーマ、姫カット…77

内項との複合の場合と同様に、同じカテゴリー内に動詞由来複合語のほかに、

単純語、外来語ないし一次複合語も存在している。これらは内項複合語と比べ、

一つの出来事としてのまとまり性が弱く、「三つ編みをする」、「丸刈りをする」

といった用法が少ないように思われるが、皆無だというわけでもない。たとえ ば次の例は髪型の一種という意味ではないが、「三つ編み」という動作を行う

73 『猫の気持ちがよ~くわかる本』pp.136

74 http://ramenisno1.web.infoseek.co.jp/

75 『「やらないこと」から決めなさい!』pp.194

76 上位概念の有無は ICM と関わっていると考えられる。

77 “Wikipedia” 髪型項目

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ことを意味する点で内項複合語と似ている。(下線筆者)

(77)耳あての先に糸を通し、三つ編みをする。78

付加詞複合語は内項が欠けてこそ、目的語を要求する述語に使われるとされ ているが、事実、複合語の目的語は名づけの対象によってほぼ決まっているの で、文に目的語を具現しないこともあり得る。(下線筆者)

(78)次のステップとして、学校の敷地内を周回することにした。その過程 で車庫入れや縦列駐車の練習をした。79

(79)なぜできるのかというときっちりとした荷重移動により生み出され たコーナリングフォースに従った結果が溝落としです。極端に言うと、

ハンドルを切ると言うよりも、アクセルをちょいと踏んでコーナー内 側の前輪のタイヤを溝に落とすのです。80

(80)私はデパートの本屋で立ち読みをして、私の症状を治療するのを得意 とする医療機関を調べた。81

(81)ズッキイニがぐんと値を下げ、酢漬けにして冬に備える人たちが、箱 買いをしてぶら下げて帰る姿も見られる。82

(82)部屋干しをしたときは特に、湿気が部屋にこもりますので、ふだんよ り風通しをよくする工夫をし、窓の開け閉めを多めにします。83

(78)、(79)における「車庫入れ」および「溝落とし」は内項との複合では ないが、「何」を車庫に入れるのか、「何」を溝に落とすのか、当の行為に名前 をつけるとき、すなわち語を作る際に既に決められているので、たとえ文の中 に放出しなくても自明である(ここでは「車」と「車輪」である)。また、(80)

の「立ち読み」と(81)の「箱買い」、(82)の「部屋干し」も一つの行為とし

78 『大人かわいい手編み』pp.66

79 『あの橋を越えたら』pp.283

80 “Yahoo!知恵袋”

(http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1325087988)

81 『心をすくって』pp.33

82 『続素顔のフィンランド抄』pp.31

83 『使える!ラクラク家事の裏ワザ 556』pp.70

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て捉えられるため、常に「何」を読むのか、「何」を買うのか、「何」を干すの かというように他動詞として機能しなければならないということはない。時々

(81)のように何を買うのかは文脈から知れるが、名詞に使われた場合ははむ しろ焦点が動作全体に置かれているのだと考えられる。さらに類例を追加する と(23)で見た大相撲の決まり手が挙げられる。

(83) 大相撲の決まり手

突き出し、寄り切り、上手投げ、吊り落とし、送り投げ、一本背負い

「突き出し」、「寄り切り」は対応する動詞「突き出す」、「寄り切る」の派生 名詞として理解されるが、対応する動詞「*上手投げる」と「*吊り落とす」、

「*送り投げる」が存在しない「上手投げ」、「吊り落とし」などは動詞由来複 合語として理解される。さらに、「一本背負い」のような名詞「一本」と複合 動詞「背負う」の派生名詞「背負い」が合成する一次複合語もある。繰り返し て述べるが、これらは語形成の仕方が異なりつつも、名前として機能する点は 変わりがない。そして、焦点は「誰が何をするか」ということにあるというよ り、むしろ複合語全体にあると思われる。