第 6 章 施設の維持及び修繕・対策
第 3 節 護岸
3.1 護岸一般(コンクリート擁壁、矢板護岸以外)
<考え方>
護岸は、水制等の構造物や高水敷と一体となって堤防を保護するため、あるいは掘込河
67
道にあっては堤内地を安全に防護するため設置するものである。護岸には、高水護岸と低 水護岸、及びそれらが一体となった堤防護岸がある。いずれの護岸にしても、流水の侵食 作用に対して河岸あるいは法面を防護する機能(耐侵食機能)が主として求められる。
護岸には以下のような被災形態がある。
①河床洗掘による被災
②すり付け部からの被災
③法覆工の流出による被災
④天端工及び天端保護工の流失
⑤背面土砂の吸出し
⑥法覆工の摩耗・破損
護岸の沈下や損傷を放置すると、それが拡大して堤防の決壊等の大災害を引き起こす危 険性もあるので、点検等により異常の早期発見に努めることが重要である。
<標 準>
護岸については、堤防や河岸防護等の所要の機能が保全されるよう維持管理を行い、治 水上の支障となる異常がある場合には、適切な工法によって早期に補修することを基本と する。
また、護岸の工種は種々あるので、維持管理にあたっては工種毎の特性や被災メカニズ ム、各河川での被災事例等を踏まえつつ、適切に維持管理を行うことを基本とする。
補修等が必要とされる場合には、各河川における多自然川づくりの目標等を踏まえ、十 分に河川環境を考慮した護岸の工種や構造となることを基本とする。
(1)護岸の状態把握
<考え方>
護岸の機能を低下させる変状は、吸い出しによる護岸背面の空洞化によるものが多いが、
空洞化の状況は、護岸表面に明らかな変状が現れない限り把握が困難である。また、護岸 が常時水面下にあるような区間においては、変状そのものを把握することが困難である。
そのため、護岸の機能を低下させないよう、目視出来ない部分の状態を把握する工夫を行 うことが重要である。
<標 準>
点検等により、維持すべき護岸の耐侵食機能が低下するおそれがある目地の開き、吸い 出しが疑われる沈下等の変状が見られた場合は、さらに点検を実施し、変状の状態から明 らかに護岸の耐侵食機能に重大な支障が生じると判断した場合には、必要な対策を実施す ることを基本とする。
68
<推 奨>
空洞化等が疑われる場合には、護岸表面を点検用ハンマーでたたく打音調査、物理探査 等により目視出来ない部分の状態の把握に努める。
吸い出しの主な要因にもなる護岸基礎等の水中部の洗掘については、目視での状態把握 はできないので、河床変動の傾向や出水時の変動特性等を既往の資料等により把握するよ う努めるとともに、個別の箇所については護岸前面の水中部の洗掘状況を定期あるいは出 水後に横断測量する等により状態把握に努める。
(2)補修等の対策
<考え方>
護岸の変状としては、脱石・ブロックの脱落、はらみ出し、陥没、間隙充填材料の流失、
目地ぎれ、天端工や基礎工の洗掘に伴う変状、鉄筋やコンクリート破損等がある。
<標 準>
護岸の変状に対しては、原因を分析し、それに対応した対策工を選定することを基本と する。ただし、水際部が生物の多様な生息環境であること等に鑑み、補修等に際しては、
積極的に河川環境の保全に配慮する事を基本とする。
<例 示>
①脱石・ブロックの脱落の補修
局部的に脱石やブロックの脱落が生じた場合は、張り直すか、又は、コンクリート を充填する方法が考えられる。
②空洞化、はらみ出し及び陥没の補修
石積(張)やブロック積(張)の構造に変化がなく、背面が空洞化している場合は、
裏込め材、土砂等の充填を行い状況に応じて積(張)替えを行うことが考えられる。
充填した箇所を保護するために、状況に応じて天端保護工等を施工することが考えら れる。はらみ出しや陥没が生じている場合は、原因を分析した上で構造を検討し、対 策を実施することが考えられる。
③目地ぎれの補修
局部的に目地に隙間が生じたため合端が接していないものは、すみやかにモルタル 等で填充することが考えられる。また、鉄筋やエポキシ系樹脂剤等で補強することも 考えられる。
④天端工の補修
法覆工の天端付近に生じた洗掘を放置すると、法覆工が上部から破損されるおそれ があるので、埋め戻しを行い十分突固める等の対応を行うとともに、状況に応じて天 端保護工を施工することも考えられる。
69
⑤基礎工の補修と洗掘対策
洗掘等により基礎が露出した場合は、根固工又は根継工を実施し、上部の護岸への 影響を抑止することが考えられる。
⑥鉄筋やコンクリート破損
連結コンクリートブロック張工等で、鉄筋の破断やコンクリートの破損あるいはブ ロックの脱落等を生じた場合には、状況に応じて鉄筋の連結、モルタル等の充填、あ るいはブロックの補充等を行うことが考えられる。
(3)自然環境への配慮について
<考え方>
護岸は、河川が本来有している生物の良好な生息・生育・繁殖環境と多様な河川景観の 保全に重要な水際部に設置されることが多いので、護岸の維持管理にあたっては、多自然 川づくりを基本として自然環境に十分に配慮する必要がある。
多自然川づくりでは画一的ではない河岸を目指して整備を行うが、施工の完了により川 づくりが完成するものではないため、施工後の出水等による河道の変化や植生の変化等に 伴う河川環境の状況を調べ、維持管理あるいは改善のための整備を行いながら川づくりを 進めていく必要がある。
<推 奨>
個々の施設の補修等にあたって、自然河岸化を含め抜本的な構造等の見直し検討を行う ことが望ましい。
<例 示>
多自然川づくりが進む中で、柳枝工、柵工、覆土工が多く用いられるようになっている。
それぞれについて、以下の視点で適切な補修等が行われている。
①柳枝工
法覆工(柳枝工、栗石粗朶工、投掛工)や法留工(粗朶柵工、鉄線柵工、板柵工等)
に植栽した柳枝が枯死して根付かない場合には、柳枝を補足するものとし、また繁茂 しすぎた場合には河積の減少とならないよう、状況に応じて間伐等を行う。柳は地域 毎に生育する種が異なり、また樹型として高木型と低木型があるので樹種の適切な選 択が重要である。法留工においては、柳枝の成育が不均等であると法崩れ等の原因と なる。
②柵工
柵工には使用材料(板柵、粗朶柵、杭柵、コンクリート柵等)により種々の工種が あるが、流水による吸い出しにより土砂が流出し裏側に空洞が生じたり、陥没したり することが多い。水面付近の木材は早期に腐食しやすい。
70
③覆土工
覆土は洪水によって流失しやすいので、流失した場合は、環境機能の保全の観点を 踏まえて補修を行う必要がある。覆土した土壌によっては外来植物の繁茂が懸念され るので、覆土材料の選定に留意する。
(4)河川利用との関係について
<考え方>
河川は、水難事故の危険性を常に内包しつつ、一般公衆の自由使用に供されているとこ ろであり、それに伴う危険は原則として利用者自身の責任で回避されるべきものである。
しかし、階段護岸等の水辺利用を促す護岸が設置された場合、河川利用に伴うリスクに遭 う蓋然性が増大する傾向になる。また、利用者に河川利用の安心感を与え、河川が常に危 険を内包しているものであることを忘れさせる面もある。リスクに遭遇する蓋然性の増大 及び利用者の危険意識の変化によって、利用者及び施設の管理者双方に責任が拡大するこ とを認識することが重要である。
護岸は、水際や高低差のある河川利用に伴い危険が内在しやすい場に設けられるもので あり、特に留意が必要である。
<標 準>
階段護岸等の水辺利用を促す護岸については、第 7 章第 3 節 3.2 の考え方に準じて、責 任の拡大に対応した危険防止措置を講じることを基本とする。
3.2 コンクリート擁壁
<標 準>
コンクリート擁壁の維持管理は、同構造の特殊堤と同様に、第 6 章第 2 節 2.2 に準じて 行うことを基本とする。
3.3 矢板護岸
<考え方>
矢板護岸には自立式構造とアンカー等によって安定を保つ構造としたものがあるが、ど ちらの構造でも矢板の倒壊は堤防又は河岸の崩壊に直結するので、洪水時、低水時及び地 震時において安全性が確保されるよう維持管理する必要がある。
矢板護岸には自立式構造とアンカー等によって安定を保つ構造としたものがあるが、ど ちらの構造でも矢板の倒壊は堤防又は河岸の崩壊に直結するので、洪水時、低水時及び地 震時において安全性が確保されるよう維持管理する必要がある。