第 4 章 ネットニュース見出しにおける記号の用法
4.5 手引きにおいて方針が示されていない記号
4.5.2 コロン
第三章の分析結果52から、コロンは「特殊性を持つ記号」の特殊 性が強い記号であり、つまり新聞社 3 社中 1 社が使っている記号で ある。研究資料では、コロンは「毎日jp」(508 件)のみに見られ た記号である。以下の例をあげる。
(例 85) 野田首相:TPP、消費増税「捨て石になってけりつけ る」 (M1203021)
(例 86) 訃報:村本周三さん96歳=元第一勧業銀行頭取
(M1201062)
(例 87)韓国:南スーダンへPKO派遣 (M1201046)
52 表 3-13 を参照。
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(例 88)掌紋登録ミス:警察庁長官「正しければ早期検挙できた」
(M1201048)
(例 89)大阪・母子殺害放火:被告に再度死刑求刑 差し戻し審
(M1205002)
(例 90)東日本大震災:大沢小「日記」題材に被災地支援ソング (M1204041)
(例 91) 台湾総統選:初の候補者テレビ討論会で論戦 (M1203012)
(例 92) プロ野球:タカ森福 年俸7000万円で契約更改 (M1203039)
(例 93)巨人:解任騒動「雨降って地固まる」 OB会で王会長 (M1204014)
(例 94)結婚:SB斉藤コーチとスザンヌ 2年の交際経て (M1202092)
(例 95)通り魔:柏でも刃物持った男 松戸との関連捜査
(M1203051)
以上の例から、見出しにおけるコロンはすべて名詞の後ろに打た れていることがわかった。
コロンの前の名詞は主語、主題、記事種類、発生地、出来事とい った記事に関する多様な情報である。見出しによって、コロンの前 に置かれている内容は異なるが、見出しの中で最も際立っていると いう点は共通している。つまり、コロンは、前の名詞と後ろの語句 の区切りで、前の名詞を記事のキーワードとして取り上げた上で、
焦点を当て、読者に対し記事の主語や主題あるいは重要点やまとめ を強調する効果があると考える。
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⑩名詞止めの後ろに 省略 動詞
⑪その他 非省略
ネットニュース見出しにおける読点の用法のうち、表の網掛け部 分【①主語や主題の後ろに】、【②並列や対立を表す】は手引きの使 用方針と一致している。また、研究資料では【①主語や主題の後ろ に】、【②並列や対立を表す】、【⑩名詞止めの後ろに】の使用例が多 く見られており、ネットニュース見出しにおける読点用法はこの三 つの用法で解釈できると思われる。
文構成から見た場合、ネットニュース見出しにおける読点用法は 単文と複文という観点から分析できる。
ネットニュース見出しにおける読点用法は主に省略に関わってい る。読点による「が」、「は」、「~について」、「と」、「や」、「の」、「で」、
「に」、「を」、「である」、「動詞」の省略の例が見られる。
b. ネットニュース見出しにおける三点リーダーは、1 字分の
「・・・」が使われており、2 種類の用法がある。
分析結果を以下の表 4-6 でまとめる。
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表 4-6 ネットニュース見出しにおける三点リーダーの用法 ネットニュース見出しにおける三
点リーダーの用法
手引きでの使用方針
①言葉の省略を表す Ⅰ.言葉の省略を表す
②間をもたせるときに 用いる
a.倒置 Ⅲ.間をもたせるときに用いる b.補足
Ⅱ.無言を表す
ネットニュース見出しにおける三点リーダーの用法は【①言葉の 省略を表す】と【②間をもたせるときに用いる】の 2 種類に分類し た。また、調査結果により、今回のデータ(319 件)では用例が一 番多く見られた【②間をもたせるときに用いる】(316 件)はさらに、
三点リーダーの前の語句と後ろの語句が相互に置き換えられる【倒 置】と三点リーダーの後ろの語句が前の語句を追加説明する【補足】
の 2 種類に分類できると考える。
手引きでの使用方針の【Ⅱ.無言を表す】はネットニュース見出し の用法では見られなかった。
c. ネットニュース見出しにおけるカギ括弧は、すべて「 」が使 われており、2 種類の用法がある。
分析結果を以下の表 4-7 でまとめる。
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表 4-7 ネットニュース見出しにおけるカギ括弧の用法 ネットニュース見出しにおけ
るカギ括弧の用法
手引きでの使用方針
①引用をくくる Ⅰ.引用をくくる
②強調させたい語句をくくる Ⅱ.強調させたい語句をくくる
ネットニュース見出しにおけるカギ括弧の用法は【①引用をくく る】と【②強調させたい語句をくくる】の 2 種類に分類した。その 2 種類は手引きの使用方針と一致していることがわかった。
調査結果では、【①引用をくくる】について、発言や文章などの引 用の場合がある。見出しと記事本文と照らし合わせたところ引用し ている語句とその順序が一致しない引用例が多く見られた。また、
【②強調させたい語句をくくる】について、団体名、作品名、書名、
地名などの名称と非名称の強調が見られた。
d. ネットニュース見出しにおける中点は 6 種類の用法がある。
結果を以下の表 4-8 でまとめる。
表 4-8 ネットニュース見出しにおける中点の用法 ネットニュース見出しにお
ける中点の用法 (A・B)
手引きでの使用方針
①同格を表す (A=B) Ⅰ.同格を表す
②人名やカタカナ語を表す Ⅳ.人名やカタカナ語を表す
③小数点を表す Ⅵ.小数点を表す
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④所属を表す (A>B、A<B)
⑤並列を表す (A,B)
⑥その他
Ⅱ.省略を表す
Ⅲ.属性を表す
Ⅴ.組み合わせや取り合わせを表 す
ネットニュース見出しにおける中点の用法は①から⑥の 6 種類に 分類した。①から③の用法は手引きの使用方針と一致しているが、
④から⑥の用法は手引きで書かれていない用法である。
分析の過程において、ネットニュース見出しにおける中点の用法 は【①同格を表す】と【④所属を表す】と【⑤並列を表す】の 3 種 類の分別が困難であった。ここで、簡潔に説明してみると、【①同格 を表す】は A=B、つまり前後語句が同位格である。【④所属を表す】
は A>B、A<B つまり前後語句に上位下位の関係があり、研究資料では A>B、前の語句が後ろの語句より上位である場合が多く見られた。【⑤ 並列を表す】は A,B、つまり前後語句が並列しており、同格と所属 ではなく、「と」「や」「読点」に置き換えられると考える。
【②人名やカタカナ語を表す】は今回の研究資料で外国人名、地 名といった名詞の区切りに使われ、【③小数点を表す】はネットニュ ース見出しにおいて、ピリオドではなく、すべて中点を使っている ことがわかった。
【⑥その他】は①から⑤の中点用法でまとめられないものであり、
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読点用法と類似している例も見られた。
また、中点は複数の用法に分類できる場合がある。
e.手引きで書かれていない記号は空白とコロンである。
ネットニュース見出しにおける空白用法は三点リーダー用法の
【③間をもたせるとき】の【倒置】・【補足】と類似しているが、三 点リーダーの用法より使用範囲が広く、自由的に使われている。空 白は記号の実体がないため、三点リーダー、また他の記号の代用と して使うことも可能であると考える。
また、ネットニュース見出しにおけるコロンは名詞の後ろに打た れている。その名詞は主語、主題、出来事、発生地などの記事のキ ーワードと強調させたい部分であると考える。
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