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第 1 章 序論 1.1 研究動機及び目的

日本語教育にはよくニュース教材が使われるが、海外の日本語学 習者にとって、日本の政治、社会、経済などの時事ニュースをいち 早く知るには、新聞とネットニュースが最も重要なメディアである。

しかし、今まで日本語のニュース研究は主に新聞を中心としており、

ネットニュースを中心とする研究はまだ数が少ない。

新聞とネットニュースの特性を考えてみると、新聞の特性につい て、臼井(2008:11)は「新聞の特性は記事の重要さを大きさで表し、

一目でわかるようにしていることだ。新聞を見れば、その日のニュ ース価値がたちどころにわかる。・・・(中略)・・・こうした特色はほ かのメディアにはない。」と指摘している。このように、見出しから 記事本文までが一目瞭然である新聞に対して、ネットニュースには 紙面での記事の価値を表す字の大きさ、配置といった要素がなく、

読者は必ず見出しを見た上で、クリックすることで初めて、記事本 文を読むことができる。よって、ネットニュースにおいて見出しは 重要な役割を担っていると言える。

また、新聞見出しとネットニュース見出しに共通している点とし て、情報を簡潔且つ正確に伝えるために、読者の目をひく役割が求 められ、通常の文とは異なり省略や文末表現などの特徴が多く見ら れるということが先行研究によって指摘されている。しかし、新聞 見出しとネットニュース見出しの表現1

1 ここでの表現というのは、主に見出しの空間的配置といったレイアウト上の特徴 を指す。

には違いがあると思われる。

2

以下に例2を挙げる。

(用例 1)

新聞見出し

1~5 ミリ・シーベルトも除染支援 原発相「国が責任持つ」

(「読売新聞」2011/10/3)

ネットニュース見出し

5ミリ・シーベルト未満も除染支援…原発相

(「YOMIURI ONLINE」2011/10/2)

新聞とネットニュースの記事本文

細野原発相は2日、福島県庁で佐藤雄平知事と会談し、東京電力 福島第一原子力発電所事故で拡散した放射性物質の除染の支援につ いて、年間被曝ひばく線量が1~5ミリ・シーベルト未満の地域も 含めて国が費用負担に責任を持つ考えを伝えた。(後略)

2 現在、それぞれの新聞社は紙媒体の新聞に加え、自社のニュースサイトを開設し ている。例えば、読売新聞社には新聞の「読売新聞」とネットニュースの「YOMIURI ONLINE」がある。通常同一事件について、両者の見出し表現と記事本文は異なる。

しかし、時に同一事件について、両者の見出し表現は異なるが、記事本文は同じ場 合がある。ここでは、新聞見出しとネットニュース見出しにおける表現の異同を見 出すため、後者の異なる見出し表現、同一記事本文について例をあげる。

3

(用例 2)

新聞見出し

はやぶさ2 ピンチ

予算削減 打ち上げに暗雲 計画「奇跡の帰還」なるか

「毎日新聞」2011/12/3)

ネットニュース見出し

はやぶさ2:ピンチ 予算削減、打ち上げに暗雲

「毎日jp」2011/12/4)

新聞とネットニュースの記事本文

生命の起源とされる有機物を含んだ試料採取を目指す小惑星探査 機「はやぶさ2」計画が、延期の危機に直面していることが分かっ た。(後略)

(用例 3)

新聞見出し

三菱UFJ

カナダ太陽光発電へ融資 85 億円、主幹事行 北米で最大級

(「読売新聞」2011/10/3)

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ネットニュース見出し

三菱UFJ、カナダ太陽光発電に85億円融資へ

(「YOMIURI ONLINE」2011/10/3)

新聞とネットニュースの記事本文

三菱東京UFJ銀行は、カナダで建設中の北米最大規模の大型太 陽光発電所(メガソーラー)に、主幹事銀行として1億1700万 カナダ・ドル(約85億円)を協調融資することを決めた。(後略)

以上の 3 例について、新聞見出しは紙面の仕上がりの形を考えて 文字などの配置が工夫されており、複数の見出しが横書き、縦書き を織り交ぜて構成されているが、ネットニュース見出しは全て横書 きの単一見出しで構成されており、語句ができるだけ省略され、そ の替わりに記号によって繋げられている。

(用例 1)について、新聞では「1~5 ミリ・シーベルトも除染支 援」、「原発相「国が責任持つ」」という二つの見出しがあるが、ネッ トニュース見出しでは三点リーダー(…)を使って語句が接続され ている。

(用例 2)について、新聞見出しでは「はやぶさ2 ピンチ」、「予 算削減 打ち上げに暗雲」、「計画「奇跡の帰還」なるか」の三つの 見出しがあるが、ネットニュースでは新聞見出しの語句間にコロン

(:)と読点(、)が入れられ、さらにそれらの間が空白で接続され ている。

(用例 3)について、新聞見出しでは「三菱UFJ」「カナダ太陽 光発電へ融資」「85 億円、主幹事行」「北米で最大級」という四つの 見出しがあるが、ネットニュース見出しでは新聞見出しの語句を部

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分的に書き換え、省略し、それらを読点(、)を使って繋げている。

以上の例より、ネットニュース見出しは新聞見出しのような字の 大きさや配置というレイアウトがなく、限られたスペースで簡潔に 表現できるよう、記号によって語句を簡略化、書き換え、統合した り、語句間に記号を入れて語句間関係を示していると考える。

よって、ネットニュース見出しの記号が担う役割は多様であり、

その用法は普遍的文章で使われるものとは、様相が異なる可能性が 高いと推測される。

見出しについて、先行研究では省略や文末表現などの特徴が明ら かにされているが、本研究では記号という新しい視点から分析を行 う。

本研究の目的は、日本語学習者がネットニュース見出しを読解す る際の手助けとするため、ネットニュース見出しにおける記号の使 用状況と用法を解明することである。また、ネットニュース見出し と新聞見出しの特徴をさらに進んで比較し、考察する。

1.2 研究対象及び用語説明

ニュースという名詞は今汎用されている。ニュースは一般に新聞 やテレビニュースなどを表すが、本研究で扱うニュースの体系は以 下の図 1-1 に示す通りである。

図 1-1 本研究で扱うニュースの体系

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ニュースは「読みニュース」と「放送ニュース」の二つに分ける ことができる3

本研究のネットニュースの構造を図示すると以下のようになる

。「読みニュース」は、新聞とネットニュースに分類 でき、文字、時には写真と共に構成されるものである。一方、「放送 ニュース」はテレビニュースとラジオニュースに分類できる。本研 究ではこのようなニュースの体系から、ネットニュースを主な対象 とし研究する。

4。

図 1-2 ネットニュースの構造

図 1-2 は 2.1 で指摘しているニュースの構造に関わる研究に基づ いている。ネットニュースは新聞と同じように「読みニュース」に 属しており、構造も一致していると考えられるからである。本研究 ではこの全体的な構造を呼ぶ時に、「記事」という語を用い、前書き と本文を合わせて呼ぶ時に、「記事本文」という語を用いる。

また、本研究で扱う「記号」については、ある情報を伝達するた めに体系的に使われる符号であり、文字以外のものを指す。

3 「読みニュース」と「放送ニュース」は最上(1997)が使用している用語である。

4 本研究の「2.1 ニュースの構造について」に基づく。

記事本文 記事

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「asahi.com」「YOMIURI ONLINE」「毎日jp」で掲載されたものを研究資料とす る。また、ネットニュース見出し資料には「“新聞社”+ “日付”+ “通し番号” の順番で資料番号をつけて整理した。例えば、「A1201094」は、「A= asahi.com」の

「1201=12 月 1 日」付、「094=通し番号 94 番」のニュースであることを示す。尚、

「Y」は YOMIURI ONLINE 、「M」は毎日jpを表す。

6 新聞資料は 2011 年 12 月 1 日から 2011 年 12 月 5 日まで「朝日新聞」(名古屋本 社)「読売新聞」(中部支社)「毎日新聞」(名古屋本社)の朝刊に掲載されたもの を研究資料とする。

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1.4 本論文の構成

本研究は第一章から第六章までの全六章からなる。第一章では、

研究目的、対象、方法、構成および用語説明について述べる。第二 章では、ネットニュース見出しと新聞見出しに関する先行研究の成 果及び問題点を提示し、本研究の目的も明示する。また、ネットニ ュース見出しにおける記号について、第三章では記号の使用状況と いう量的分析、第四章では記号の用法という質的分析を行う。研究 目的で提示したように、ネットニュース見出しと新聞見出しにおけ る表現方法には違いがあるため、第五章ではネットニュース見出し と新聞見出しの特徴を分析し、両者の相違点を比較する。第六章で は、本研究の結果と考察、今後の課題を述べる。

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