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第 6 章 結論

6.1 結果と考察

本研究では、日本語学習者が日本の時事ニュースをいち早く知る ためによく利用しているネットニュースを中心に、見出しの記号に ついての調査分析を行った。

本研究の結果及び考察を以下で示す。

a.第三章では、本研究の研究資料であるネットニュース見出しの 記号の使用状況について、新聞社別63、記事種類別64

まず、ネットニュース見出しにおける記号の種類について、読点、

空白、コロン、三点リーダー、カギ括弧、中点、イコール、パーセ ント記号、波線、疑問符、ダッシュ、感嘆符、矢印、特殊記号、括 弧の 15 種類の記号が観察された。その内、読点、三点リーダー、

に量的分析を した。

63 新聞社別は「asahi.com」「YOMIURI ONLINE」「毎日jp」の 3 社に分けられて いる。

64 新聞社 3 社からまとめた本研究における記事種類は【①社会】、【②政治】、【③ ビジネス】【④国際】【⑤文化・エンタメ】【⑥スポーツ】【⑦サイエンス】【⑧ おくやみ】【⑨話題】【⑩教育】【⑪気象・地震】の 11 種類に分けられている。

しかし、【⑨話題】【⑩教育】【⑪気象・地震】は「毎日jp」だけに見られた記 事種類である。

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カギ括弧、中点、空白、コロンはいずれも出現件数が 100 件以上で あり、これらが使用頻度の高い 6 種類の記号である。

新聞社別に見たネットニュース見出しにおける記号使用の有無か ら、記号は「一般性を持つ記号」と「特殊性を持つ記号」に分けら れ、「特殊性を持つ記号」は、さらに「特殊性が強い記号」と「特殊 性が弱い記号」に分けられる。

記事種類別に見たネットニュース見出しにおける記号使用の有無 から、記号は「普遍的記号」と「限定的記号」に分けられる。

b. 第四章では、第三章の量的分析から得られた使用頻度が高い 6 種類の記号について、手引きにおける記号の使用方針を元に、用法 の分析を行った。

b-1. ネットニュース見出しにおける読点には【①主語や主題の 後ろに】、【②並列や対立を表す】、【③同格を表す】、【④場所の後ろ に】、【⑤時間の後ろに】、【⑥動作対象の後ろに】、【⑦原因・理由の 後ろに】、【⑧中止の後ろに】、【⑨終止の後ろに】、【⑩名詞止めの後 ろに】、【⑪その他】という全 11 種類の用法があり、主要な用法は【① 主語や主題の後ろに】、【②並列や対立を表す】、【⑩名詞止めの後ろ に】の三つであった。

文構成から見た場合、ネットニュース見出しにおける読点用法は 単文と複文という観点から分析できる。

ネットニュース見出しにおける読点用法は主に省略に関わってい る。具体的には、読点による「が」、「は」、「~について」、「と」、「や」、

「の」、「で」、「に」、「を」、「である」、「動詞」の省略の例が見られ

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た。

b-2.ネットニュース見出しにおける三点リーダーには【①言葉 の省略を表す】、【②間をもたせるときに用いる】という全 2 種類の 用法があり、用例が一番多く見られた【②間をもたせるときに用い る】はさらに、【倒置】と【補足】の 2 種類に分類できる。

b-3. ネットニュース見出しにおけるカギ括弧には【①引用をく くる】、【②強調させたい語句をくくる】という全 2 種類の用法があ る。【①引用をくくる】について、見出しの長さに制限がある関係で、

記事本文と一致する引用の数は少ない。

b-4. ネットニュース見出しにおける中点には【①同格を表す】、

【②人名やカタカナ語を表す】、【③小数点を表す】、【④所属を表す】、

【⑤並列を表す】、【⑥その他】という全 6 種類の用法がある。中点 の用法には、読点の用法と類似している例が見られた他、複数の種 類の用法に属する場合があった。

b-5. ネットニュース見出しにおける空白の用法は、三点リーダ ーの用法である【③間をもたせるとき〔倒置・補足〕】と類似してい るが、三点リーダーの用法より使用範囲が広い。空白は記号の実体 がないため、三点リーダー、また他の記号を代用することも可能で、

その用法は自由的に使われていると考える。

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b-6.ネットニュース見出しにおけるコロンは、全て名詞の後ろ に打たれている。その名詞は主語、主題、出来事、発生地などの記 事のキーワードと強調させたい部分である。

c.第五章では、ネットニュース見出しと新聞見出しにおける表現 特徴の比較をした。その結果、ネットニュース見出しでは「線条的」、 新聞見出しでは「非線条的」という大きな文脈上の差が見られた。

その他の表現特徴の差としては、読者の読み方、「横書き」「縦書き」

という書き方の差、見出しの数などがある。

d.以上の a~c の結果から、ネットニュース見出しは「線条的」、

「横書き」であり、使われている記号の用法は普遍的文章で使われ るものとは異なることが分かった。

また、ネットニュース見出しにおける記号間には、類似する用法 があり、それらは以下の五つの用法に分類することができる。

【主語や主題を表す】:読点、空白、コロン

【同格を表す】: 読点、中点

【所属を表す】: 読点、中点

【並列や対立を表す】:読点、中点、空白

【間をもたせるとき】:三点リーダー、空白

読点、三点リーダー、中点、空白、コロンの 5 つの記号間におい て類似する上記の五つの用法は、記号使用の自由度という観点から 序列化することができる。記号使用の自由度とは、文中において表

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れる位置の制限を持つかどうか、一文内において使われるのか、あ るいは二文以上の結合において使われるのかということを指す。こ の観点から考えると、記号使用の自由度の高い方から、

「空白﹥三点リーダー・読点﹥中点﹥コロン」という順で序列化 できると考える。

空白は記号の実体がないため、使用が三点リーダーより自由であ り、他の記号にも代用できる。三点リーダーは空白と共に、よく複 数の文の繋がりとして使われている。読点は一文内、及び複数の文 を連結させる際に使うことが可能である。中点は読点より使用範囲 が狭いが、読点と類似する用法が多く見られる。コロンの使用で多 く見られるのは「名詞:出来事に対する詳しく説明」という用法で、

使用状況は前述の 4 記号より限定的であり、自由度が最も低いと考 える。

また、単一見出しにおける出現回数について見ると、空白は複数 回出現する場合が多く、読点と中点は複数回または一回出現し、三 点リーダーとコロンは一回のみ出現していた。つまり、記号使用の 自由度の高い記号ほど、単一見出し内で複数回出現する傾向が見ら れると言える。

e.日本語学習者がネットニュースを理解しようとする際、理解に 必要な日本の社会、政治、文化という背景知識が乏しいこと、また 見出しにおいて省略や特徴的な文末表現が多いことから、ニュース の読解が困難であることが予想される。ネットニュース見出しにお ける記号の用法を知り、見出しにおける語句間関係が分かることに よって、読解への手助けになることができると考える。

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実際の応用例を以下に示し、その方法について詳述する。

(例)核燃再処理:電事連でも撤退主張…東電、経産省首脳

(M1203086)

この例ではコロン、三点リーダー、読点という三つの記号が使わ れている。

まずコロンを見ると、「核燃再処理」の後ろに打たれており、読者 はコロンの区切りによって「この記事は核燃再処理に関する記事で あり、コロンの後ろは出来事に関する説明である」と推測できる。

次に、三点リーダーについて、読者は【③間をもたせるとき】の

【倒置】や【補足】の用法から、「三点リーダーの後ろは記事の主語 や記事に関する補足である」と推測できる。

また、読点について、読者は用法から「読点は主語である東電の 後ろに打たれている」あるいは「読点は並列を表し、東電と経産省 首脳を区切っている」と推測できる。

さらに以上の記号用法から推測した内容を合わせて考えてみると、

「東電と経産省首脳は核燃再処理について、電事連でも撤退主張」

のように語句間関係を組み合わせることが可能である。

以上のことから、記号は語句の区切りであること、また記号用法 を知ることによって、見出しにおける語句が分からなくても推測す ることができると考える。

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f.新聞を対象に、省略や文末表現を中心としてきたこれまでの先 行研究に対し、本研究では新たな視点として記号に着目し、使用状 況から用法までを体系的に分析した。さらに、ネットニュース見出 しと新聞見出しにおける根本的な形態上の相違点も見出された。

また、各新聞社が編集した手引きにおける記号用法に関する記述 は、新聞社により食い違いがあり、混乱していた。これに対し、本 研究ではネットニュース見出しにおける記号用法を統合的に分析し た上で、日本語教育への提言を行った。微力ではあるが、ネットニ ュース見出しの読解の手助けとして貢献することができたと考える。